1年単位の変形労働時間制とは?残業の計算方法や休日の考え方もわかりやすく解説
更新日: 2026.9.30 公開日: 2021.9.8 jinjer Blog 編集部

繁忙期は残業が増えるのに閑散期は反対に時間が余る場合、1年単位の変形労働時間制を導入すると総労働時間や残業コストを減らせるかもしれません。
本記事では、1年単位の変形労働時間制の基本から残業時間の考え方、メリット・デメリット、さらに導入のポイントまで網羅的に解説します。
変形労働時間制は、通常の労働形態と異なる部分が多く、労働時間・残業の考え方やシフト管理の方法など、複雑で理解が難しいとお悩みではありませんか?
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1. 1年単位の変形労働時間制とは

変形労働時間制とは、週の労働時間が平均で40時間以内であれば、特定の日や週に法定労働時間を超過して労働させることができる制度です。1年単位の変形労働時間制では、繁忙期の労働時間を長く設定する一方、閑散期の労働時間を短くすることで、対象期間全体の労働時間を平均して週40時間以内に収めます。
1年単位の変形労働時間制の条件は主に次の6点です。
- 対象期間が1ヵ月を超え1年以内
- 対象期間の1週間の平均労働時間が40時間を超えない
- 労働時間が1日10時間・1週52時間以内
- 1年あたりの労働日数は280日が限度 ※対象期間が3ヵ月を超えるとき
- 連続して労働させる日は原則連続6日が限度 ※繁忙期(特定期間)は最長12日
- 対象期間の労働日・労働日ごとの労働時間を特定する
関連記事:1ヶ月単位の変形労働時間制とは?残業代・休日の考え方や導入フローを徹底解説
1-1. 1年単位と1ヵ月単位の変形労働時間制の違い
1年単位と1ヵ月単位の大きな違いは、1日や1週あたりの労働時間の上限が決められているかどうかです。1年単位では労働時間を1日10時間・1週52時間以内にする必要があります。一方、1ヵ月単位ではこれらの上限は設けられていません。
また、労働時間を調整する期間にも違いがあります。1ヵ月単位は「1ヵ月以内」、1年単位は「1ヵ月を超え1年以内」の期間を平均して法定労働時間の範囲内に収めます。例えば、月ごとに繁閑が変わる場合は1ヵ月単位、年間を通じて繁忙期と閑散期がある場合は1年単位の変形労働時間制が適しています。
関連記事:変形労働時間制とは?1ヵ月・1年単位の違いや導入方法をわかりやすく解説
2. 1年単位の変形労働時間制における残業時間・休日の考え方

1年単位の変形労働時間制を導入してもあらかじめ定めた労働時間を超えて働けば残業時間が生じます。また、法定休日を与える義務も免除されないため、休日の確保も必要です。
ここでは、1年単位の変形労働時間制における「残業」の考え方と休日ルールについて、日・週・年間の各観点から解説します。
なお、労働基準法で定められた時間外労働や休日労働が生じる場合は通常の労働時間制度と同様に36協定の締結および届出が必要です。
関連記事:36協定とは?基礎知識から残業上限規制や締結・届出、違反リスクまで完全解説
2-1. 1日あたりの残業時間
1日の残業とは、その日について時間外労働と見なされる時間のことです。1年単位の変形労働時間制では、日ごとにあらかじめ「その日の所定労働時間」(勤務シフト上の労働予定時間)を決めています。この所定労働時間と8時間を基準に残業時間を判断します。
- 所定労働時間が8時間を超える日:その所定労働時間を超えた分が残業時間となります。例えば協定で特定日を「10時間勤務」と定めている場合、その日は10時間までは法定内労働と扱われ、10時間を超えた分だけが時間外労働となります。
- 所定労働時間が8時間以内の日:8時間を超えた分が残業時間となります。例えば所定労働時間を6時間と計画していた日に実際は9時間働いた場合、所定6時間を超えた3時間のうち8時間を超える部分(つまり1時間)が残業という計算になります。
なお、所定労働時間は1日につき10時間までしか設定することはできません。
2-2. 週あたりの残業時間
週あたりの残業も同様に、その週の所定労働時間と法定労働時間(40時間)を比較して判断します。変形期間内の各週について、次のケースが時間外労働となります。
- 所定労働時間が週40時間を超える週:その所定時間を超えた分が週単位の残業時間です。例えば繁忙期のある週を所定48時間(1日8時間×6日など)と設定していた場合、その週は所定の48時間を超過した分が時間外労働となります(※日単位で既に残業とカウントした部分は二重計上しません)。
- 所定労働時間が週40時間以内の週:週40時間を超えた分が残業時間です(この場合も日単位で計上済みの残業時間は除きます)。例えば所定32時間の週に実際は45時間働いた場合、40時間を超える5時間が週単位の残業となります。
週あたりの所定労働時間にも上限が設けられており、1週間につき52時間までしか設定できません。
2-3. 年間あたりの残業時間
変形期間全体(1年間など)を通じた残業の考え方として、まず法定労働時間の総枠を把握する必要があります。
対象期間内の総枠は「週40時間 × (対象期間日数 ÷ 7)」で計算されます。1年単位の変形労働時間制では、実際の総労働時間がこの法定総枠を超えた分が時間外労働にカウントされます(日・週ごとに既に残業とカウントした時間を除く)。
| 対象期間 | 法定労働時間の総枠 |
|---|---|
| 1年(365日の場合) | 2,085.71時間 ※うるう年(366日)の場合は2,091.43時間 |
| 6ヵ月(183日の場合) | 1,045.71時間 |
| 3ヵ月(92日の場合) | 525.71時間 |
2-4. 対象期間が3ヵ月を超える場合の1日・1週間の労働時間の限度
1年単位の変形労働時間制では、変形期間が3ヵ月を超える場合に適用される追加の制限があります。これは長期間にわたって労働時間を変形させることによる労働者への負荷を考慮したルールで、具体的には次のとおりです。
- 週48時間超の制限:所定労働時間が週48時間を超える週(=繁忙週)が連続して発生するのは最大3週までに制限されます。また、変形期間を3ヵ月ごとに区切った各ブロック内で週48時間超は合計3週までに収める必要があります。
- 労働日数の限度:労働日数の上限は年280日です。
また、対象期間が3ヵ月を超える場合、36協定における時間外労働の限度時間は「月42時間・年320時間」となります。通常の「月45時間・年360時間」よりも厳しい限度が設けられている点に注意が必要です。
2-5. 期間途中で入社・退職した従業員の取り扱い
1年単位の変形労働時間制では、対象期間の途中で入社・退職した従業員(配置転換された従業員を含む)については、対象期間全体ではなく、実際に勤務した期間を基準に労働時間を清算する必要があります。
具体的には、実労働期間における労働時間を平均して1週間40時間を超えた時間について、原則として割増賃金の支払いが必要です。
このように、変形労働時間制では労働時間や割増賃金の計算が複雑になるので、勤怠管理システムなどで業務を効率化することが重要です。システムを活用すれば、計算の自動化によってミスを防ぎ、担当者の負担を軽減できます。
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2-6. 休日の考え方
休日の付与については、変形労働時間制であっても週1日(もしくは4週間で4日)以上の法定休日を与える義務が原則どおり存在します。
また、連続勤務は6日までが限度で、最低でも1週間に1日は休日を与える必要があります。ただし労使協定で特定期間(繁忙期)を定めた場合に限り、「1週間に1日の休日を確保すること」を条件に連続12日までの勤務を認める扱いもあります。
3. 1年単位の変形労働時間制のメリット

1年単位の変形労働時間制を正しく運用すれば、企業側・従業員側双方にメリットが生まれます。
ここでは、導入したときの主なメリットを2つ紹介します。
3-1. 残業コストを削減できる
最大のメリットは、時間外労働の発生を抑えられるため残業コストを削減できることです。
法定労働時間では、所定労働時間を1日8時間としている場合、8時間を超えると残業が発生します。
しかし、1年単位の変形労働時間制では定めた範囲内なら、1日の労働時間が10時間でも残業ではなく通常勤務扱いとなり、割増賃金を支払う必要がありません。
繁忙期の所定労働時間を長くできるため、繁忙期の残業コストを削減できます。
3-2. 総労働時間が減り従業員のプライベートな時間が増える
1年単位の変形労働時間制は、繁忙期の所定労働時間を長くする分、閑散期の所定労働時間を短く設定できます。労働者が休める時間が増えることもメリットです。
通常の勤務形態では閑散期も所定労働時間分働くのに対し、変形労働時間制では閑散期の所定労働時間が短くなります。無駄な拘束時間がなくなるため、従業員のプライベートに充てられる時間が増えるでしょう。
4. 1年単位の変形労働時間制のデメリット

一方で、1年単位の変形労働時間制には注意すべきデメリットも存在します。導入にあたって直面しやすい問題点を3つ紹介します。
4-1. 就業規則の整備および労使協定の締結・届出が必要
1年単位の変形労働時間制を導入するには、就業規則の整備および労使協定の締結・届出が不可欠です。変形労働時間制を採用する旨や対象となる従業員、具体的な運用方法などを記載する必要があります。
特に中小企業など労務担当者が少ない場合は、労使協定の作成や労働基準監督署への届出、就業規則の変更などが負担となる可能性があります。必要に応じて、社会保険労務士などの専門家に相談しながら進めることも検討するとよいでしょう。
関連記事:変形労働時間制の労使協定の内容を期間別に詳しく解説
4-2. 勤務シフトの設計や労働時間の管理が複雑になる
1年単位の変形労働時間制では、対象期間における労働日と、労働日ごとの労働時間をあらかじめ定める必要があります。原則として、対象期間が始まるまでに、対象期間中の労働日と各日の労働時間をすべて特定しておかなければなりません。
ただし、対象期間が長期間にわたる場合、1年分の労働日や労働時間を事前にすべて確定することが難しいケースもあります。そのため、対象期間を1ヵ月以上の期間ごとに区分し、各期間が始まるまでに、その期間の労働日と労働時間を定める方法も認められています。
この方法を採用する場合、対象期間が始まるまでに労使協定で、次の事項を定めておく必要があります。
- 最初の期間の労働日および労働日ごとの労働時間
- 最初の期間以外の各期間の労働日数および総労働時間
さらに、最初の期間以外の各期間については、その期間の初日の少なくとも30日前までに、労働日と労働日ごとの労働時間を、過半数労働組合または労働者の過半数を代表する者の同意を得たうえで、書面により定める必要があります。
なお、一度特定した労働日や労働日ごとの労働時間を、企業の都合で任意に変更することはできません。そのため、将来の繁忙期・閑散期を見据えて勤務シフトを計画するとともに、決定した労働日や労働時間を適切に管理することが重要です。
関連記事:変形労働時間制で従業員のシフト変更は可能?注意点を解説
4-3. 制度が複雑で従業員に伝わりにくい
1年単位の変形労働時間制は、企業側だけでなく、実際に働く従業員にとっても仕組みを理解しにくい制度です。特に、どの労働が時間外労働に当たるのかが通常の勤務形態と異なるため、十分に説明しないと「不利益を受けているのではないか」といった誤解や不安につながる可能性があります。
そのため、制度を導入する際は、仕組みや導入目的、従業員にとってのメリット・デメリットを丁寧に説明し、十分な理解を得ることが重要です。
また、部署によって適用の有無が異なる場合は、不公平感や部署間の連携に影響する可能性があります。部分導入する場合も、制度の内容や導入理由を社内に周知することが大切です。
5. 1年単位の変形労働時間制の導入ポイント

最後に、実際に1年単位の変形労働時間制を導入・運用するにあたってのチェックポイントを紹介します。自社で制度導入を検討する際は、事前に確認・準備しておきましょう。
関連記事:変形労働時間制の届出に必要なものや書き方・記入例を解説
5-1. 業種・職種が1年単位の変形労働時間制に適しているか確認する
まずは自社の業種や職種の勤務実態が、この制度にマッチするかを検討します。1年単位の変形労働時間制は、季節や時期によって業務量に大きな差がある場合に、特に効果を発揮します。
変形労働時間制に適している職種例
- 繁忙期と閑散期が明確な業種:
例)小売業(決算セール時期と通常時)、旅館・観光業(行楽シーズンとオフシーズン)、製造業(年度末や受注集中時期と通常時)など。 - 一定期間ごとに業務が集中する職種:
例)経理・財務(四半期末・年度末の決算業務)、人事(採用シーズンや年末調整時期)など、月や年単位で繁閑差があるバックオフィス業務。
繁閑差を見越して 1年単位の変形労働時間制を導入すれば、人員配置を効率化し、残業代削減や休暇増加にもつながります。一方、年間を通じて業務量が均一であったり、先の予定が読みにくかったりする場合は、無理に1年単位の変形労働時間制を導入してもメリットが少ないでしょう。
関連記事:変形労働時間制とシフト制の違いは?併用可能なの?徹底解説!
5-2. 繁忙期でも過度な長時間労働は避ける
制度を導入すれば法定労働時間の枠内で繁忙期に長時間勤務させることも可能になりますが、過度な長時間労働を許容すべきではありません。特に繁忙期は通常以上に長時間労働になりがちです。法定どおりの休日は必ず確保し、従業員の健康管理に一層配慮しましょう。
また、勤務終了後から次の勤務開始までに一定時間の休息を確保する「勤務間インターバル制度」を導入することも、従業員の睡眠時間や生活時間を確保し、健康保持や過重労働の防止につながるので有効な対策の一つです。
関連記事:勤務間インターバル制度とは?義務化のポイントや導入方法をわかりやすく解説
5-3. 特別な事情を抱える従業員へ配慮する
1年単位の変形労働時間制を導入する際には、特別な事情を抱える従業員へ配慮するよう努める必要があるとガイドラインで定められています。例えば、育児や介護と仕事を両立している従業員、あるいは職業訓練や学校に通っている従業員などが該当します。
こうした特別な配慮を要する従業員については、対象者から除外することや、繁忙期の勤務を軽減することを検討しましょう。例えば、育児中の従業員には保育園の送迎に支障が出ない範囲でシフトを組むなどの工夫が考えられます。
参考:一年単位の変形労働時間制についてのガイドライン|厚生労働省
6. 1年単位の変形労働時間制の導入には勤怠管理の見直しが不可欠

1年単位の変形労働時間制は、残業コストを削減できることがメリットです。繁忙期の労働時間を長く、閑散期の労働時間は短くして残業を減らすことができるため、繁忙期と閑散期がはっきりしている事業に向いている制度です。
しかし、変形労働時間制には勤怠管理が煩雑になるデメリットもあります。週ごと月ごとに勤務時間が異なるため、処理が複雑化するからです。1年単位の変形労働時間制を導入するなら、勤怠管理の方法も見直すとよいでしょう。
リンク先では、変形労働時間制を導入している企業における勤怠管理システムの活用方法を解説しています。勤怠管理システムの導入を検討されている方や現状の勤怠管理に課題を感じる方はぜひご覧ください。
関連サイト:勤怠管理システムを用いた変形労働時間制の運用|ジンジャー勤怠
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