有給休暇の取得率とは?現状や計算方法・メリット・向上させる方法を解説
更新日: 2024.12.25
公開日: 2024.12.25
OHSUGI
「有給休暇の取得率の定義を詳しく知りたい」
「自社の有給取得率が日本の平均と比べてどの程度か知りたい」
このようにお悩みの人事労務担当者も多いのではないでしょうか。
有給休暇の取得率は、有給休暇を付与する日数に対して、従業員が実際に休みを取った日数の割合です。取得率を知ることにより、自社の状況を客観的に把握できるため、有給取得について、どのような対策が必要かわかりやすくなります。
本記事では有給休暇の取得率の定義や日本の現状、計算方法を解説します。取得率を向上させる方法も紹介していますので、自社に合った対策の参考にしてください。
1. 有給休暇の取得率とは
有給休暇の取得率とは、付与される日数のうち実際に従業員が何日間の休みを取得したか、割合を示すものです。
年次有給休暇は従業員の心身のリフレッシュを目的とされており、希望するタイミングで取得できる決まりとなっています。しかし、日本において有給休暇の取得率が低い状況が続いており、働き方改革の一環として、2019年4月に年5日の取得が義務化されました。
年5日の有給休暇取得の義務化や企業の努力により、取得率は年々向上しています。
参考:年5日の年次有給休暇の確実な取得 わかりやすい解説|厚生労働省
2. 有給休暇取得率の現状|日本の平均数値
厚生労働省の調査によると、2023年の従業員1人あたりの有給休暇取得率は約62%です。日本における有給休暇の取得率は、直近10年で以下のように推移しています。
年度 | 取得率 |
2023年 | 約62% |
2022年 | 約58% |
2021年 | 約57% |
2020年 | 約56% |
2019年 | 約52% |
2018年 | 約51% |
2017年 | 約49% |
2016年 | 約49% |
2015年 | 約48% |
2014年 | 約49% |
有給休暇取得率の調査を厚生労働省が始めた1983年以降、2023年の取得率はもっとも高い数値となっています。日本政府の目標は2025年までに有給休暇の取得率を70%まで引き上げることです。年々、取得率は上昇していますが、目標には届いていません。
独立行政法人労働制作研究・研修機構によると、世界と比較して日本は年間の有給休暇の日数が少ない状況です。有給休暇の取得日数が多いドイツは、年平均で30日に対し、日本は17. 6日と半数近くになっています。
参考:6.労働時間・労働時間制度|データブック国際労働比較2024|独立行政法人労働制作研究・研修機構
3. 有給休暇取得率が日本において低い理由
日本において有給休暇取得率が低い理由は、主に以下の2つあります。
- 休むことにためらいを感じる従業員が一定数いるため
- 企業規模や産業の種類によっては休みを取りにくいため
それぞれ見ていきましょう。
3-1. 休むことにためらいを感じる従業員が一定数いるため
休む行為にためらいを感じる従業員がいる状況が、日本の有給休暇取得率が低い理由の一つです。三菱UFJリサーチ&コンサルティングの意識調査によると、有給休暇の取得に対して、約41%が「ためらいを感じる」と回答しています。
有給休暇の取得をためらうのは、主に以下のような理由があるためです。
チームや顧客に迷惑がかかる | 約51% |
有給休暇の取得後に忙しくなる | 約36% |
休むための調整が手間になる | 約28% |
上司が良い顔をしない | 約20% |
取得率を向上させるためには、だれがいつ休んでも業務に支障が出ない体制や、休みやすい空気を作るのが必要といえます。
参考:令和4年度「仕事と生活の調和」の実現および特別な休暇制度の普及促進に関する意識調査報告書|三菱UFJリサーチ&コンサルティング
3-2. 企業規模によっては休みを取りにくいため
働く企業の規模の大小により、従業員が休みを取りにくいことも、日本の有給休暇取得率が低い理由です。
厚生労働省の就労条件調査によると、2023年の企業規模別の有給休暇取得率は、以下の表のようになります。
企業規模 | 有給休暇の取得率 |
1,000人以上 | 約66% |
300~999人 | 約62% |
100~299人 | 約62% |
30~99人 | 約57% |
企業規模が小さく従業員の人数が少ない企業は、有給休暇の取得率が低い傾向です。少人数で運営しているため、誰かがいない日は出社している従業員に負担がかかるケースもあり、休みにくい環境といえるでしょう。
4. 有給休暇の取得率を算出する方法
厚生労働省が就労条件総合調査において、有給休暇の取得率を算出している計算方法は、以下のとおりです。
実際に有給休暇を取得した日数の合計÷有給休暇の付与日数の合計×100
入社から半年が経過した従業員に10日間の有給休暇を付与し、1年間に6日休みを取った場合の取得率は、以下のように計算できます。
6÷10×100=60%
政府の有給休暇の取得率に関する目標は、2025年までに70%以上への引き上げです。自社の有給休暇の取得率が70%より低い場合、休みやすい環境作りを検討してみてください。
5. 有給休暇の取得率を高める企業へのメリット
従業員の有給休暇の取得率を高めることで、企業が得られるメリットは以下の2つです。
- 優秀な人材の確保・定着が期待できる
- 適度な休息により作業効率が向上する
それぞれ解説します。
5-1. 優秀な人材の確保・定着が期待できる
年次有給休暇の取得率を高めることにより、優秀な人材を確保できるメリットがあります。NPO日本ネットワークセキュリティ協会の調査によると、就職活動する際に休みの取りやすさを重視する学生は全体の約14〜17%です。
理想の働き方ができる企業のイメージがあれば、求人に多くの応募が期待できるほか、従業員の離職を減らし定着も見込めます。求人に多数の応募があれば、母数が増えるため、優秀な人材を採用できる可能性を高められるでしょう。
参考:学生のキャリア意識調査レポート|NPO日本ネットワークセキュリティ協会
5-2. 適度な休息により作業効率が向上する
有給休暇の取得率を高めることで、従業員が適度な休憩を取れるようになり、作業効率の向上を期待できます。また、疲労をためずに従業員が働けるため、ミスの防止やリフレッシュ効果による仕事へのモチベーション向上も見込めます。
従業員が高いモチベーションを維持できれば、作業効率の向上により営業利益の向上につながるでしょう。
6. 有給休暇の取得率を向上させる効果的な方法
効果的に有給休暇の取得率を向上させる方法は、以下のとおりです。
- 計画的付与制度を導入する
- 時間単位の有給休暇を付与する
- 従業員が休みやすい空気を作る
順に解説します。
6-1. 計画的付与制度を導入する
年次有給休暇の計画的付与制度の導入により、取得率を向上できます。計画的付与制度とは、以下4つの事例のように企業側から有給休暇の取得日を指定して、従業員が休みやすくする制度です。
- 夏季や年末年始の休暇の前後を有給休暇の取得日とする
- 祝日と土曜日・日曜日の間に1日だけある平日を有給休暇の取得日とする
- 自社の閑散期を有給休暇の取得日に指定する
- アニバーサリー休暇で従業員本人や家族の記念日を休みやすくする
従業員が有給休暇を取得しても業務に支障が出ないよう、自社の現状に適した計画的付与制度を導入しましょう。
参照:年5日の年次有給休暇の確実な取得 わかりやすい解説|厚生労働省
6-2. 時間単位の有給休暇を付与する
1日ではない、時間単位での有給休暇制度の導入で、取得率の向上を期待できます。年次有給休暇は1日単位での付与が原則とされていますが、年5日まで時間単位での付与が可能です。
通院や子どもの学校行事への参加など、必要な分だけ取得できる時間単位の有給休暇制度があれば、従業員が休みやすくなります。丸1日休むほどではない場合でも、時間単位の有給休暇制度の利用により従業員が休みを取るようになれば、取得率を向上させられるでしょう。
参照:年次有給休暇の付与日数は法律で決まっています|厚生労働省
6-3. 従業員が休みやすい空気を作る
有給休暇の取得率を向上させるために、従業員が休みやすい空気を作りましょう。日本において有給休暇取得率が低いのは、休みにくいと感じている従業員が多いことも要因の一つです。
以下のような対策により、休みやすい空気を社内に広げられます。
- 有給休暇の取得を呼びかける
- 「休むこと」への意識改革を実施する
意識改革には「休むこと」がもたらすメリットを提示したり、長時間労働を評価しない風土を構築したりします。
休みを取得することに後ろめたさを感じさせない空気作りは、有給休暇の取得率を向上させるための対策方法といえるでしょう。
7. 有給休暇の取得率を上げて働きやすい環境を整えよう
年次有給休暇の取得率は、付与する日数と実際に休んだ日数の割合をさします。取得率を確認するための計算式は、以下のとおりです。
実際に有給休暇を取得した日数の合計÷有給休暇の付与日数の合計×100
数値が大きいほど、有給休暇を取得する日数が多く、休みやすい環境といえます。
優秀な人材の確保や作業効率の向上などが、有給休暇の取得率を高めると企業が得られるメリットです。
従業員が休みやすくなるように対策して有給休暇の取得率を上げ、働きやすい環境を整えましょう。
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