有給休暇の計画的付与制度とは?導入方法や注意点を紹介
更新日: 2024.12.26
公開日: 2024.12.26
OHSUGI
「有給休暇の取得率が上がらない」
「閑散期に有給休暇をとってほしい」
上記のように、有給休暇に関連する悩みをお持ちではありませんか。
有給休暇に関する悩みは、計画的付与制度の導入により解決する可能性があります。有給休暇の計画的付与制度は、企業側が従業員の有給休暇日を計画的に割りあてる制度です。有給休暇を効率的に取ってもらう手段として注目されています。
本記事の内容は、有給休暇の計画的付与制度の基本情報や、導入するメリット・デメリット、注意点などです。導入方法も解説しているので、ぜひご一読ください。
1. 有給休暇の計画的付与制度とは
有給休暇の計画的付与制度とは、それぞれの従業員の年間有給休暇取得日を、あらかじめ計画的に割りあてる制度です。計画的付与制度は、2019年4月に施行された「働き方改革関連法」の影響で、さまざまな企業から注目されています。
働き方関連法では、年10日以上の年次有給休暇を得られる労働者に対して、年5日以上の有給休暇を取得させることを企業に義務付けました。
もし従業員が有給休暇を取らない場合には、企業側から時季を指定し休むよう促さなければなりません。有給休暇を取りやすい環境づくりも大切ですが、先に休暇を決めることも、従業員に休暇を取ってもらう有効な手段です。
2. 有給休暇の計画的付与ができる日数
有給休暇を計画的に付与できる日数は、年次有給休暇の付与日数から5日を引いた残りの日数となります。
具体的な例は以下のとおりです。
年次有給休暇の付与数 | 10日の場合 | 15日の場合 |
有給休暇の計画的付与の対象 | 5日 | 10日 |
従業員が取得日を選べる日数 | 5日 | 5日 |
前の年度から繰り越した有給休暇がある場合には、今年度の年次有給休暇の付与数に繰越し分を足して計算します。年次有給休暇が5日以内の従業員には、計画的付与が適用できません。
また、実際に有給休暇を付与する日数は、対象の日数より少なくても問題ありません。
3. 有給休暇の計画的付与の種類
有給休暇の計画的付与には、以下の3種類があります。
種類 | 内容 |
一斉付与方式 | 企業全体で一斉に有給休暇を取り、休業日とする方法 |
交代制付与方式 | 班やチームが交代で有給休暇を取る方法 |
個人別付与方式 | 個人の希望を基に有給休暇の取得日を決める方法 |
一斉付与方式では、企業全体で一斉に休暇を取ります。飛び石連休のなかの平日に休暇日を設定したり、お盆や年末年始の連休に合わせて設定したりする場合が多いです。
交代制付与方式では、業務に必要な人数を確保しつつ、交代で有給休暇を取ってもらいます。繁忙期や閑散期などを考慮して計画できるので、従業員の休暇により業務が圧迫されることを避けられるでしょう。
個人別付与方式は、従業員の希望に基づいて設定する方法です。従業員の私的な事情で休みを取れるため、従業員の満足度も高まります。
4. 有給休暇の計画的付与と時季指定の違い
有給休暇の計画的付与と時季指定の違いを以下の表にまとめました。
計画的付与 | 時季指定 | |
就業規則・労使協定 | 必要 | 必要 |
従業員の意見 | 意見を聞かなくてもよい | 意見を聞いた上で休暇を決める |
タイミング | 一般的には年度始め | 随時 |
付与できる日数 | 年次有給休暇付与日数+前年度から繰り越した有給休暇の日数-5日 | 5日間
※有給休暇を年間で5日取得している場合は、時季指定不要。有給休暇の取得日数が5日以下の場合は時季指定をおこなわなければならない |
計画的付与は、一般的に年度始めに休暇取得の計画を立てる場合が多いです。一方で時季指定は、従業員の有給休暇の取得状況を見ながら随時おこなわれます。
また、計画的付与の場合は従業員の意見を聞く必要がありません。しかし時季指定では、従業員の意見を聞き意見を尊重するよう努める必要があります。
5. 有給休暇の計画的付与制度導入におけるメリット
有給休暇の計画的付与制度導入におけるメリットは以下のとおりです。
- 従業員は有給休暇が取りやすくなる
- 従業員が平等に有給休暇を取れる
- 企業側にとって都合のよいタイミングで有給休暇を決められる
多くの企業は、積極的に有給休暇を取ってほしいと思っています。しかし、現場で働く従業員は、職場の雰囲気や人手不足により休暇を取りづらいと感じている場合が多いです。
また、有給休暇を積極的に消化する従業員と、業務を優先して有給休暇を取得しない従業員の間に不公平感が生じることもあります。
有給休暇の計画的付与制度を導入すれば、もろもろの事情により休暇を申請できない従業員も、平等に休めるようになるでしょう。
企業側は、繁忙期を避け業務に支障のでない時期を狙って有給休暇を取ってもらえます。休暇を取る従業員が同じ時期に集中しないよう、分散して休んでもらうことも可能です。
6. 有給休暇の計画的付与制度導入におけるデメリット
有給休暇の計画的付与制度導入におけるデメリットは以下のとおりです。
- 従業員の意思で取得できる有給休暇が減る
- 原則的に計画的付与日は変更できない
有給休暇の計画的付与制度は、従業員の意見を聞かずに付与日を決められます。従業員は、休みたい日に休めず、休みたくない日に休まなければならないと不満を持つ場合もあるでしょう。
また、計画的付与制度によって定めた付与日を変更できない点もデメリットといえるでしょう。やむを得ない場合には、労使協定に基づく手続きや再締結をする必要があります。
7. 有給休暇の計画的付与制度の導入方法
有給休暇の計画的付与制度を導入する際には、以下の手続きが必要となります。
- 就業規則に有給休暇の計画的付与について記載する
- 労使協定を締結する
それぞれの手続きを詳しく解説します。
7-1. 就業規則に有給休暇の計画的付与について記載する
有給休暇の計画的付与制度を導入するには、就業規則に計画的付与制度について記載する必要があります。年次有給休暇に関する規則が記載されている箇所へ、新たに規定を追加しましょう。
参考:計画的付与制度(計画年休)の導入に必要な手続き|働き方・休み方改善ポータルサイト(厚生労働省)
7-2. 労使協定を締結する
就業規則に年次有給休暇の計画的付与を定めたら、労働組合または労働者の過半数の代表と労使協定を締結しなければなりません。
労使協定で定めるのは以下の内容です。
- 有給休暇の計画的付与の対象者
- 計画的付与の対象となる有給休暇の日数
- 計画的付与の種類
- 有給休暇が少ない人の扱い
- 計画的付与の変更について
一斉付与方式で計画的付与をする場合、5日を超える有給休暇がない社員の扱いを決めておきましょう。有給の特別休暇とする、休業手当を支払うなどの方法があります。
また、計画的付与の変更ができるよう、変更する場合の手続きを定めておくとよいでしょう。
参考:計画的付与制度(計画年休)の導入に必要な手続き|働き方・休み方改善ポータルサイト(厚生労働省)
8. 有給休暇の計画的付与制度導入における注意点
有給休暇の計画的付与制度導入における注意点は以下のとおりです。
- 自由に取得できる有給休暇を残す
- 制度のメリットを従業員に説明する
有給休暇の計画的付与は、自由に休めないことが従業員の不満となる可能性があります。できるだけ、従業員が自由に休める有給休暇も残しておきましょう。
また、制度の導入によるメリットを従業員に説明し、理解してもらうことも重要なポイントです。
9. 有給休暇の計画的付与制度を活用し有給休暇の取得を促進しよう
有給休暇の計画的付与制度とは、従業員の年間有給休暇取得日を計画的に割りあてる制度です。
計画的に休暇を定められる日数は、年次有給休暇の付与日数から5日分を引いた日数と決められています。5日間は従業員が自由に消化できる有給休暇として残しておく分です。
有給休暇の計画的付与のメリットは、有給休暇の取得が容易になる点や企業側にとって都合のよいタイミングで休暇日を決められる点です。
しかし、自由に休める有給休暇が減ることによる従業員の不満にも目を向ける必要があります。原則的に計画的付与日は変更できない点も考慮してください。
有給休暇の計画的付与制度を活用し、有給休暇の取得を促進しましょう。
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