給与所得控除とは?間違いやすい他の控除との違いや計算方法をわかりやすく解説
更新日: 2026.4.24 公開日: 2024.1.12 jinjer Blog 編集部

給与所得控除とは、給与収入にかかる所得税の算定に用いる控除の1つです。
本記事では給与所得控除の概要や計算方法、また所得控除や基礎控除との違い、2025年(令和7年)からの変更点を解説します。特定支出控除や給与所得控除が見直しされた場合の影響について気になる方もぜひご覧ください。
目次
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1. 給与所得控除とは


給与所得控除を理解するには、所得税を計算する上でどのような役割を担っているのか知ることが近道です。ここでは、給与所得控除とは何か、その概要や対象者、給与所得控除を踏まえた所得税の計算の流れについてわかりやすく解説します。
1. 給与収入から差し引ける「みなし経費」
給与所得控除とは、所得税を計算する際に年間の給与収入から差し引くことができる、給与所得者だけに認められた控除です。
自営業者などが通年の収入にかかる所得税を算定する際は、収入から通信費や旅費交通費などの経費を差し引くことができます。しかし給料を受け取っている人は、自営業者のように通年の収入から通年に用いた経費を減算させられる手立てがありません。
それでは給与収入者が損をすることになるため、経費の代わりとして給与所得控除を通年の給与収入から減算し、公平性を保っているのです。
1-2. 給与所得控除の対象者
給与所得控除の対象者は、勤務先から給与を受け取っているすべての給与所得者です。正社員や契約社員、パート、アルバイトなど雇用形態に関係なく、所得税を計算する際に給与所得控除を適用することができます。役員報酬についても給与所得として扱うため、企業の役員も給与所得者に含まれます。
また、年の途中で退職した人も、給与所得控除の対象者です。翌年の確定申告にて、退職した年の給与収入の総額から給与所得控除を差し引いて申告することができます。
1-3. 給与所得控除のタイミング
給与収入にかかる所得税の算定において、給与所得控除がどのようなタイミングで用いられているのかを理解しておきましょう。以下は給与収入にかかる所得税の算定手順です。
- 給与収入-給与所得控除=給与所得
- 給与所得-所得控除=課税所得
- 課税所得×税率=所得税
給与所得を算出するために給与所得控除が必要になります。給与所得は課税所得、そして所得税を計算するために必要なため、給与所得控除額がわからないと所得税も計算できなくなるわけです。
条件によっては、手順3で算定した所得税額から税額控除額をさらに減算させられるケースがあります。税額控除には種類があり、主なものは配当控除・認定NPO法人等寄附金特別控除・住宅特定改修特別税額控除などです。
参照:所得税のしくみ|国税庁
参照:No.1200 税額控除|国税庁
2. 給与所得控除と間違いやすい、その他の控除


所得税の計算に使用する控除には、給与所得控除のほかにもいくつか種類があります。それぞれ適用条件や金額が異なるため、所得税を正しく計算するうえでも、違いを押さえておくことが必要です。ここでは、給与所得控除と特に混同しやすい「所得控除」と「基礎控除」との違いについて解説します。
2-1. 給与所得控除と所得控除の違い
給与所得控除と所得控除の違いは、減算させる対象や算定目的です。
| 控除の種類 | 減算させる対象 | 算定目的 |
| 給与所得控除 | 給与収入 | 給与所得を導き出す |
| 所得控除 | 給与所得 | 課税所得を導き出す |
給与所得控除は給与収入を対象として差し引き、給与所得を導き出します。対して、所得控除は給与所得を対象として減算し、課税所得を導き出すものです。
なお、所得控除には以下15種類あります。
- 寡婦控除
- 雑損控除
- 寄附金控除
- 障害者控除
- 配偶者控除
- 医療費控除
- ひとり親控除
- 勤労学生控除
- 配偶者特別控除
- 社会保険料控除
- 生命保険料控除
- 地震保険料控除
- 扶養控除
- 基礎控除
- 小規模企業共済等掛金控除
参照:所得税のしくみ|国税庁
所得控除は本人や家族の状況により控除額が変動するため、それぞれの控除額が異なるケースが多いです。一方、前項で述べたとおり給与所得控除額は本人の通年の給与収入額により種類が決まる計算式を用いて算定します。
関連記事:所得税における控除とは?控除の種類や所得控除を受ける方法を解説
2-2. 給与所得控除と基礎控除の違い
給与所得控除は給料などを受け取る人が対象者となり、基礎控除は全納税者が対象者となる点が違います。また、基礎控除は所得控除の種類の1つです。
基礎控除額は令和7年と令和8年に関しては8種類、令和9年以降は5種類あり、それぞれの通年合計所得額により控除額が決まります。
一方、前述したように給与所得控除額は本人の通年の給与収入額によって種類が決まる計算式を用いて算定します。
ただし、通年の合計所得額が2,500万円を超える場合には基礎控除がありません。
3. 給与所得控除の対象となる給与収入の種類


給与所得控除額を算出するには、給与収入額が必要です。どの項目が給与収入に該当するのか正しく理解し、算出しましょう。
3-1. 給与収入として計算するもの
給与収入に該当するのは、給料・賃金・歳費・賞与を中心に、同じ性質を持つ給与に関連する所得を指します。
加えて残業手当や休日出勤手当、職務手当など各種手当も含まれます。
金銭による支給だけでなく、以下のような現物支給や経済的利益も対象になるため、余さずに計算しなくてはいけません。
- 物品その他の資産を無償または低い価額により譲渡したことによる経済的利益
- 土地、家屋、金銭その他の資産を無償または低い対価により貸し付けたことによる経済的利益
- 福利厚生施設の利用など(2)以外の用役を無償または低い対価により提供したことによる経済的利益
- 個人的債務を免除または負担したことによる経済的利益
給与収入額は源泉徴収票の「支払金額」欄に記載されます。また支払金額欄の右横にある「給与所得控除後の金額」欄に記載されるのが給与所得額です。
参照:No.2508 給与所得となるもの|国税庁
参照:給与所得の源泉徴収票|国税庁
3-2. 給与収入にならないもの
給与収入にならないものは、各種手当の中で一定額以下のものです。
- 月15万円以下の通勤手当
- 必要であると認められる転勤や出張による旅費
- 一定額以下の宿直や日直手当
他にも支給される食事や制服、記念品や、会社が指定する社宅や寮の費用、資格取得費用など給与や賞与とは関係のない収入は給与収入にはなりません。
ただし、研修旅行やレクリエーションの費用は、業務上必要であれば非課税(給与収入外)になりますが、必要でないと判断される場合は給与収入に該当します。
4. 令和7年(2025年)の給与所得控除の改正点


令和7年度税制改正により、給与所得控除が見直しされました。具体的には次の表のとおり、55万円の最低保障額が65万円に引き上げられています。なお、給与収入の額が190万円超に関しては、今回の改正では変更はありません。
| 給与収入の額 | 給与所得控除額 | |
| 改正前 | 改正後 | |
| 162万5千円以下 | 55万円 | 65万円 |
| 162万5千円超 180万円以下 | 収入金額×40%-10万円 | |
| 180万円超 190万円以下 | 収入金額×30%-8万円 | |
令和7年12月1日に施行され、それ以降に給与にかかる所得税を計算する際は、改正後の給与所得控除を適用する必要があります。
なお、この改正に伴い、令和7年分以後の「年末調整等のための給与所得控除後の給与等の金額の表」と、令和8年分以後の「源泉徴収税額表」についても改正されています。
今回の改正に至った経緯としては、物価高対策と年収(103万円)の壁の解消が主な目的となっています。そのため、給与所得控除だけでなく、基礎控除の見直しや特定親族特別控除の新設など、その他の控除にも動きがあるため、年末調整の際は最新の情報を押さえておくことが重要です。
関連記事:2025年(令和7年)の年末調整の変更点!手続きのポイントもわかりやすく解説
5. 給与所得控除の計算方法


年間合計給与収入額により給与所得控除の計算方法は異なります。
2025年以降の給与収入より給与所得控除を算定するときに用いるのが、以下の国税庁所定の計算式です。給与収入額に応じた計算式を使って計算しましょう。
| 年間合計給与収入額 | 給与所得控除額 |
| 190万円まで | 65万円 |
| 190万1円~360万円まで | 収入額×30%+8万円 |
| 360万1円~660万円まで | 収入額×20%+44万円 |
| 660万1円~850万円まで | 収入額×10%+110万円 |
| 850万1円以上 | 195万円 |
例えば、年間合計給与収入額が600万円の場合の計算方法は以下です。
1.600万×20%+44万円=164万円(給与所得控除)
2.600万-164万円=436万円(給与所得額)
源泉徴収票が複数枚にわたる場合はすべての収入を合算し、合計収入額の区分が当てはまる計算式を用いて計算しましょう。
給与収入が660万円以上は、以下の速算表を使うことで給与所得を簡単に算出することもできます。
| 給与等の収入金額
(給与所得の源泉徴収票の支払金額) |
給与所得額 |
| 660万円~850万円未満まで | 収入金額×90%-110万円 |
| 850万円以上 | 収入金額-195万円 |
5-1. 給与所得額は早見表でも確認できる
給与所得額は前述したように計算して求めることが可能です。
しかし、年末調整で給与所得額を確認するときには、多くの場合、手間がかかるため前項の給与所得控除額の計算をしません。
実際の確認の際に用いるのは、年末調整の実施などのために国税庁が用意・公開している表です。表を用いると、該当する合計給与収入額を探すだけで、右横に記載されている所得額を確認できます。
Excelや給与計算システムなどを使って求めることも可能ですが、表を用いた方が確実です。特別な理由がない限りは、国税庁が発表する一覧表を用いて計算するのがおすすめです。
参照:令和7年分の年末調整等のための給与所得控除後の給与等の金額の表|国税庁
6. 年末調整での申告方法


年末調整では「給与所得者の基礎控除申告書」の給与所得の欄に、給与収入と給与所得控除額を差し引いた所得金額をそれぞれ記入して申告します。所得金額は基礎控除額の判定にも影響するため、給与所得控除の額を正確に計算するよう注意しましょう。
給与所得者の基礎控除申告書は1枚の用紙で、配偶者控除等申告書と所得金額調整控除申告書も兼ねているため、その他該当がある場合は、同じ用紙に合わせて記入・申告します。なお、令和7年からは特定親族特別控除申告書が追加され、4つの控除が1枚の用紙にまとめられています。
パートやアルバイトであっても、年末調整の対象である場合は提出が必要です。提出しない場合、基礎控除が受けられず所得税が発生する可能性もあるため、必ず期限内に提出しましょう。
参照:基礎控除申告書|国税庁
7. 給与所得控除に関係する特定支出控除とは


特定支出控除とは、職務中に会社員などが出費した国税庁が認める以下などの支出において、判定基準額を超えた分についての控除です。
- 通勤費
- 職務上の旅費
- 転勤に伴う転居費
- 研修費
- 資格取得費
- 単身赴任者の帰宅旅費
- 職務遂行に必要な図書費・衣服費・交際費・接待費など(合計額が65万円を超える場合には65万円までの支出に限る)
2025年12月時点での判定基準額は、同年の給与所得控除額の2分の1です。例えば、給与収入が600万円で、給与所得控除額が164万円の場合、82万円を超える特定支出分については控除を受けられます。
ただし控除を受けるためには、判定基準額を超えた支出分についての確定申告が必要です。また確定申告には、給与支払者などが発行した証明書を添付しなければなりません。
確定申告で認められた場合には、給与所得控除後の給与所得から、特定支出控除額をさらに減算できます。
8. 給与所得控除を計算する際の注意点


ここでは、給与所得控除を適用して所得税を計算する際に、見落としやすいポイントを2つご紹介します。給与収入にかかる所得税を正しく計算するためにも、必ず押さえておきましょう。
8-1. 給与所得控除には上限がある
給与所得控除額は収入に比例して段階的に大きくなりますが、上限が設けられています。給与収入が850万円を超える場合、控除額は一律195万円となり、それ以上は収入が増えても控除額は変わりません。
ただし、本人が23歳未満の扶養親族を有する者に該当するなど一定の要件を満たす場合は、給与所得控除に加えて「所得金額調整控除」を受けられる場合があります。所得金額調整控除とは、給与収入から給与所得控除を差し引いた後、さらに一定額を控除できる制度です。
給与収入が850万円を超える場合、この要件に該当するかどうかも確認しておきましょう。
8-2. 複数の給与がある場合は合算して計算する
本業以外に副業やアルバイトなど、2箇所以上から給与を受け取っている場合は、すべての給与収入を合算した金額をもとに給与所得控除額を計算します。それぞれの給与ごとに給与所得控除を適用することはできません。
また、年末調整できるのは、扶養控除申告書を提出した1カ所の事業所のみとなります。それ以外の事業所から得た給与収入については、原則として確定申告が必要になるため、あわせて確認しておきましょう。
9. 給与所得控除と所得控除の混同に注意!正しく理解して算出しよう


給与所得控除は、通年の給与収入にかかる所得税の算定に用い、給料やボーナスなどをもらっている人が受けられる控除の1つです。控除額の算定には、国税庁が定めた計算式を用いますが、本人の通年の給与収入額により使用する計算式が違います。
所得税の算定において、通年の給与収入から給与所得控除を減算させて導き出される金額が給与所得額です。
給与所得額から所得控除を減算させた課税所得額に、税率を乗じて導き出す金額が所得税額です。ただし場合によっては、所得税額からさらに税額控除額を減算するケースもあります。
給与所得控除についての理解を深めるためには、所得控除との違いを明確にしておくことも重要です。今後の見直しについても、新しい情報を随時チェックしておきましょう。



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