【2026年最新】所得控除16種類一覧|申告方法やよくあるミスも解説
更新日: 2026.4.27 公開日: 2022.3.16 jinjer Blog 編集部

所得控除とは、納税者の個々の事情に応じて、所得から一定の金額を差し引くことで課税所得を軽減する仕組みです。給与計算や年末調整では、この所得控除の内容を正しく理解しておくことが、正確な税務処理をおこなううえで欠かせません。
本記事では、所得控除の基本的な考え方をはじめ、人的控除・物的控除を含む全16種類(2026年時点)の控除一覧を解説します。さらに、給与計算への反映方法や、年末調整・確定申告での所得控除の申告ポイントについても紹介します。
関連記事:所得税とは?源泉所得税や定額減税など複雑な処理を詳しく解説
目次
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1. 所得控除とは


所得控除とは、所得税を計算する際に、納税者の個人的な事情を考慮して各種所得の合計額から一定額を差し引くことができる制度です。そもそも控除とは「金銭や数量などを差し引くこと」を意味する言葉です。
税金では、納税額を算出する際に、所得から一定の金額を差し引くことで課税対象となる所得を減らす仕組みがあります。所得控除は、税負担の公平性や社会的配慮を反映するために設けられており、納税者本人や家族の状況、一定の支出などに応じて適用される控除の金額や条件が定められています。
例えば、世帯の生活費などを考慮せずに所得の全額を課税対象とすると、一定の人に税負担が過重になる可能性があります。そのため、納税者やその家族の生活状況、経済的な負担などを考慮し、所得から一定額を差し引くことで税負担を調整する仕組みとなっているのです。
1-1. 所得控除は課税対象の所得から一定額を差し引ける制度
所得税は、基本的に給与所得や事業所得などの各種所得を合計した金額から所得控除を差し引き、その残額である「課税所得」に税率を掛けて算出されます。
つまり、所得控除は課税対象となる所得を減らすための制度であり、控除額が大きいほど課税所得は小さくなります。その結果、納める所得税額も少なくなる仕組みです。
企業の給与計算や年末調整、また確定申告の実務においては、所得控除の内容を正しく理解しておくことが重要です。正確な税務処理をおこなうためにも、担当者は控除の種類や適用条件、仕組みを十分に把握しておく必要があります。
関連記事:【企業担当者向け】所得税計算の仕組みとは?源泉徴収・年末調整のポイントを徹底解説
1-2. 所得控除には人的控除と物的控除がある
所得控除は、大きく 「人的控除」 と 「物的控除」 の2種類に分けられます。
人的控除とは、納税者本人や家族の状況など、人に関する事情を考慮して適用される控除です。代表的なものとして、次が挙げられます。
- 基礎控除
- 配偶者控除
- 配偶者特別控除
- 扶養控除
- 特定親族特別控除
- 障害者控除
- 寡婦控除
- ひとり親控除
- 勤労学生控除
これらの控除は、家族構成や生活状況によって納税者の負担能力が異なることを踏まえ、税負担を調整する目的で設けられています。
一方、物的控除は、一定の支出や経済的な負担が生じた場合に適用される控除です。代表的なものとして、次のような控除があります。
- 社会保険料控除
- 小規模企業共済等掛金控除
- 生命保険料控除
- 地震保険料控除
- 医療費控除
- 寄附金控除
- 雑損控除
これらは、社会保険料の負担があった場合や医療費・寄附などの支出があった場合に、その負担を税制面で一定程度軽減することを目的としています。
このように、所得控除は納税者の生活状況や経済的な負担を税額計算に反映させることで、より実態に即した公平な課税を実現するための仕組みとなっています。
2. 【16種類】所得控除を一覧で紹介


所得控除には次の16種類があります。
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所得控除の種類 |
概要 |
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雑損控除 |
災害や盗難などによって生活に通常必要とされる資産に損害を受けた場合に適用される控除です。 |
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医療費控除 |
納税者本人やその配偶者、その他の親族のために一定額以上の医療費を支払った場合に適用できます。控除額の上限は200万円です。 |
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社会保険料控除 |
社会保険料を支払った場合に適用されます。支払った金額が全額控除対象です。 |
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小規模企業共済等掛金控除 |
小規模企業共済やiDeCo(イデコ)などの掛金を支払った場合に適用される控除です。支払った金額が全額控除対象です。 |
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生命保険料控除 |
生命保険料・介護医療保険料・個人年金保険料の3区分のうち、支払った保険料がある場合に適用されます。控除額の上限は12万円です。 |
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寄附金控除 |
ふるさと納税などの地方公共団体や特定公益増進法人、社会福祉法人などに寄附した場合に適用される控除です。基本的には支出した特定寄附金額の合計額から2,000円を控除した金額が控除額となります。 |
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地震保険料控除 |
地震保険料を支払った場合、最高5万円の所得控除が適用されます。火災保険料は控除対象外です。 |
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障害者控除 |
納税者や生計を同じくする一定の配偶者、扶養親族が障害者に該当する場合、原則27万円の控除が受けられます。 |
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ひとり親控除 |
納税者本人が税法上の「ひとり親」に該当する場合に35万円のひとり親控除が受けられます。 |
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寡婦控除 |
納税者本人が税法上の「寡婦」に該当する場合に27万円の寡婦控除が受けられます。 |
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勤労学生控除 |
納税者本人が税法上の「勤労学生」に該当する場合に27万円の勤労学生控除が受けられます。 |
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配偶者控除 |
納税者に控除対象配偶者がいる場合、最大38万円(控除対象配偶者が70歳以上の場合は最大48万円)の配偶者控除が受けられます。 |
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配偶者特別控除 |
配偶者控除を受けられない場合でも、配偶者の所得金額が一定以下であれば、最大38万円の配偶者特別控除が受けられます。 |
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扶養控除 |
納税者に控除対象扶養親族がいる場合に適用されます。一般の控除対象扶養親族がいる場合の控除額は38万円です。特定扶養親族がいる場合は63万円、老人扶養親族がいる場合は48万円(同居老親等に該当すれば58万円)の扶養控除が受けられます。 |
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特定親族特別控除 |
納税者に特定親族がいる場合、最大63万円の特定親族特別控除が受けられます。 |
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基礎控除 |
基本的にすべての納税者が適用できる所得控除です。控除額は最大95万円です(2025年分)。 |
ここからは、それぞれの控除の内容をわかりやすく紹介します。
2-1. 雑損控除
雑損控除とは、災害・盗難・横領によって、生活に通常必要とされる資産に損害を受けた場合に適用できる所得控除です。そのため、詐欺や恐喝による損害は対象外とされています。また、棚卸資産や事業に使用している固定資産の損失についても、雑損控除の対象にはなりません。
雑損控除は、納税者本人だけでなく、生計を一にするかつ要件を満たす親族が被った損害についても適用することができます。控除額は、次のいずれか多い金額となります。
- (損失額 + 災害関連支出 − 保険金等) − (総所得金額等 × 10%)
- (災害関連支出 − 保険金等) − 5万円
なお、雑損控除は所得控除の中でも最初に適用される点が特徴です。
また、確定申告をおこなえば、その年に控除しきれなかった損失(雑損失)は、翌年以後3年間(一定の場合は5年間)にわたって繰り越して控除できます。
参考:No.1110 災害や盗難などで資産に損害を受けたとき(雑損控除)|国税庁
2-2. 医療費控除
医療費控除とは、1年間に支払った医療費が一定額を超えた場合に適用できる所得控除です。納税者本人だけでなく、生計を一にする親族(配偶者や親、子など)のために支払った医療費も対象となります。
控除額は、次の計算式で求めます。なお、総所得金額等が200万円未満の場合は、「10万円」の代わりに「総所得金額等の5%」を差し引きます。
控除額(最大200万円)= 支払った医療費 − 保険金などで補填された金額 − 10万円
また、セルフメディケーション税制とは、健康の保持増進や疾病の予防への取り組みとして、特定一般用医薬品等購入費(OTC医薬品の購入費)を支払った場合に適用できる所得控除です。控除額は、次の計算式で求めます。
控除額(最大8万8,000円)= 特定一般用医薬品等購入費 − 保険金などで補填された金額 − 1万2,000円
なお、医療費控除とセルフメディケーション税制は選択適用となるので、同一年分の確定申告において両方を併用することはできません。
参考:No.1120 医療費を支払ったとき(医療費控除)|国税庁
参考:No.1129 特定一般用医薬品等購入費を支払ったとき(医療費控除の特例)【セルフメディケーション税制】
2-3. 社会保険料控除
社会保険料控除とは、その年に支払った社会保険料の全額を所得から差し引くことができる所得控除です。給与から天引きされている社会保険料も控除の対象に含まれます。
また、控除の対象となるのは納税者本人が支払った保険料だけではありません。生計を一にする配偶者や親族の社会保険料を納税者が負担している場合は、その保険料も社会保険料控除として適用できます。なお、主な対象となる社会保険料には、次のようなものがあります。
- 国民健康保険料・健康保険料
- 国民年金保険料・厚生年金保険料
- 介護保険料
- 雇用保険料 など
なお、社会保険料控除は、原則として実際に支払った年を基準として適用される点にも注意が必要です。そのため、例えば翌年分の保険料をその年のうちに支払った場合や、国民年金保険料を2年分前納した場合には、支払った年の所得控除としてまとめて適用できます。
関連記事:社会保険料控除とは?年末調整での対象範囲や手続き・計算方法をわかりやすく解説
2-4. 小規模企業共済等掛金控除(iDeCo)
小規模企業共済等掛金控除は、次の制度の掛金を支払った場合に適用されます。
- 小規模企業共済
- 確定拠出年金(iDeCoなど)
- 心身障害者扶養共済制度
これらの掛金は全額が所得控除の対象になります。とくに、個人型確定拠出年金であるiDeCoの掛金も小規模企業共済等掛金控除の対象となり、支払った金額のすべてが所得控除として認められる点を押さえておくことが大切です。
2-5. 生命保険料控除【2026年分から拡充】
生命保険料控除とは、生命保険料を支払った場合に受けられる所得控除です。控除の区分は、次の3種類に分かれています。
- 一般生命保険料控除
- 介護医療保険料控除
- 個人年金保険料控除
それぞれの控除の上限額は原則として4万円で、3つすべてを適用した場合、最大12万円まで所得から差し引くことができます。
なお、旧契約に基づく旧生命保険料控除と旧個人年金保険料控除については、控除額の上限がそれぞれ5万円とされています。ただし、新契約と旧契約の両方がある場合でも、生命保険料控除全体の上限は12万円で変わりません。
また、2026年分に限り、23歳未満の扶養親族がいる場合には、一般生命保険料控除の上限額が6万円に引き上げられます。ただし、この特例が適用される場合でも、生命保険料控除全体の上限額は12万円のままである点に注意が必要です。
参考:No.1140 生命保険料控除|国税庁
参考:租税特別措置法第41条の15の5|e-Gov法令検索
関連記事:介護医療保険料は年末調整の控除対象?控除額や書き方・注意点を解説
2-6. 寄附金控除
寄附金控除とは、国や地方公共団体、公益法人などに対して一定の寄附をおこなった場合に適用される所得控除です。寄附金控除の対象となる寄附金は「特定寄附金」とよばれます。控除額は、次の計算式によって求めます。
控除額 = 特定寄附金の合計額(※総所得金額等の40%が上限) − 2,000円
なお、一定の寄附金については所得控除(寄附金控除)に代えて、税額控除(寄附金税額控除)を選択できます。また、ふるさと納税は地方自治体への寄附に該当するので、寄附金控除の対象となります。
参考:No.1150 一定の寄附金を支払ったとき(寄附金控除)|国税庁
2-7. 地震保険料控除
地震保険料控除は、生活用資産(住宅や家財など)を保険目的とする地震保険料を支払った場合に受けられる所得控除です。本人だけでなく生計を一にする親族が所有する資産に対する地震保険料を支払った場合にも控除の対象となります。
地震保険料控除の上限は5万円です。この控除額は、支払った保険料の金額に応じて次のように計算されます。
- 支払保険料が5万円以下:支払った金額の全額
- 支払保険料が5万円超:一律5万円
なお、平成18年の税制改正により、従来の損害保険料控除は廃止され、平成19年分以降は地震保険料控除へと制度が変更されました。ただし、一定の条件を満たす旧長期損害保険契約については経過措置が設けられており、「旧長期損害保険料」として最大1万5,000円まで控除を受けられます。
2-8. 障害者控除
障害者控除とは、納税者本人、同一生計配偶者、または扶養親族が障害者である場合に適用される所得控除です。そのため、納税者本人だけでなく、配偶者や子どもなどの親族が障害者である場合にも控除を受けられる可能性があります。
ただし、配偶者や親族について控除を適用する場合は、同一生計配偶者や扶養親族としての要件(所得要件など)を満たしている必要があります。控除額は、障害の程度や同居の有無によって次のように定められています。
- 障害者:27万円
- 特別障害者:40万円
- 同居特別障害者:75万円
なお、特別障害者とは、身体障害者手帳1級・2級に該当する人など、重度の障害があると認められる人を指します。また、同居特別障害者とは、特別障害者である扶養親族のうち、納税者や配偶者、または納税者と生計を一にする親族と同居している人をいいます。
2-9. ひとり親控除
ひとり親控除とは、子どもを扶養しているひとり親に適用される所得控除です。控除額は35万円です。ひとり親とは、男女を問わず、現在婚姻していない、または配偶者の生死が明らかでない者のうち、次の条件を満たす人をいいます。
- 事実上婚姻関係にあると認められる者がいないこと
- 生計を一にする子ども(総所得金額等が58万円以下)がいること
- 納税者本人の合計所得金額が500万円以下であること
なお、令和8年度税制改正大綱では、令和9年分(2027年分)以降のひとり親控除について、控除額を35万円から38万円へ引き上げる案が示されています。現時点では法改正の内容や適用時期が確定しているわけではないので、今後の動向に注意が必要です。
参考:No.1171 ひとり親控除|国税庁
参考:令和8年度税制改正の大綱|財務省
関連記事:年末調整のひとり親控除とは?寡婦控除との違いや対象者を解説
2-10. 寡婦控除
寡婦控除とは、納税者本人が税法上の「寡婦」に該当する場合に適用される所得控除です。控除額は27万円で、対象となるのは女性のみです。寡婦とは、ひとり親控除の対象にはならないものの、原則として、次の要件を満たす人をいいます。
- 事実上婚姻関係にあると認められる者がいないこと
- 扶養親族(親や子など)がいること
- 納税者本人の合計所得金額が500万円以下であること
ただし、配偶者と死別している場合は、扶養親族がいなくても寡婦控除の対象となります。なお、寡婦控除は、ひとり親控除の適用を受けられない場合に検討される控除である点を理解しておくことが大切です。
2-11. 勤労学生控除
勤労学生控除は、働きながら学校に通う学生を対象とした所得控除です。控除額は27万円です。勤労学生の主要な要件は次のとおりです。
- 特定の学校に在学していること
- 給与所得など、勤労による所得があること
- 合計所得金額が85万円以下であり、かつ勤労による所得以外の所得が10万円以下であること
例えば、給与所得のみの学生であれば、給与収入が150万円以下の場合、給与所得控除65万円を差し引くことで合計所得金額は85万円以下となり、要件を満たす可能性があります。
なお、勤労学生控除の対象となる者は、その要件のひとつが「合計所得金額が85万円以下」であるので、基礎控除(令和7年分は95万円)の範囲内に収まります。したがって、原則として、勤労学生控除を適用しなくても課税所得は生じず、結果として所得税は課されません。
しかし、住民税は所得税と計算の仕組みや所得控除の金額が異なるため、勤労学生控除を適用するかどうかによって税額が変わる可能性があります。したがって、所得税だけで判断するのではなく、住民税への影響も必ず確認しておくことが重要です。
関連記事:150万円の壁とは?特定扶養控除の要件引き上げで学生バイトの年収の壁はどう変わる?
2-12. 配偶者控除
配偶者控除とは、「控除対象配偶者」がいる場合に受けられる所得控除です。配偶者がいる場合でも、本人や配偶者の所得が一定を超えると、配偶者控除は適用できません。
配偶者控除の控除額は、一般の控除対象配偶者の場合は最大38万円です。配偶者が年齢70歳以上(原則としてその年の12月31日時点)である場合には、老人控除対象配偶者として最大48万円の控除が受けられます。
なお、控除額は納税者本人の合計所得金額に応じて異なり、合計所得金額が900万円を超える場合には、所得区分に応じて控除額が減額されます。
2-13. 配偶者特別控除
配偶者特別控除とは、配偶者控除の所得要件を超える場合でも、一定の所得範囲内であれば適用できる所得控除です。控除額は最大38万円で、本人や配偶者の合計所得金額に応じて段階的に減少します。
配偶者特別控除は、控除額の判定を誤りやすい控除のひとつであるため注意が必要です。なお、配偶者控除のように、配偶者の年齢によって控除額が加算される仕組み(老人控除対象配偶者)は、配偶者特別控除には設けられていません。
2-14. 扶養控除
扶養控除とは、「控除対象扶養親族」がいる場合に適用できる所得控除です。控除対象扶養親族とは、原則としてその年の12月31日時点で16歳以上であり、納税者と生計を一にする親族で、合計所得金額が58万円以下である人をいいます。
したがって、親や子がいる場合でも、年齢や所得の要件を満たさなければ扶養控除を適用することはできません。扶養控除の控除額は、扶養親族の年齢などによって次のように定められています。
- 一般扶養親族:38万円
- 特定扶養親族(19歳以上23歳未満):63万円
- 老人扶養親族(70歳以上):48万円
なお、老人扶養親族のうち、納税者またはその配偶者の直系尊属(父母や祖父母など)で、納税者または配偶者と同居を常としている場合には「同居老親等」に該当し、控除額は58万円となります。ただし、老人ホームなどに入所している場合には、原則として同居を常としているとは認められません。
2-15. 特定親族特別控除【2025年分から適用可能】
特定親族特別控除とは、令和7年度税制改正により新設された所得控除で、特定親族(19歳以上23歳未満の一定の親族)がいる場合に適用できます。控除額は最大63万円で、特定親族の所得に応じて段階的に減少します。
通常、19歳以上23歳未満の扶養親族は「特定扶養親族」として63万円の扶養控除が適用されます。しかし、その親族の所得が扶養控除の所得要件を超えると、扶養控除は適用できなくなります。
特定親族特別控除は、このような場合でも、特定親族の所得が一定の範囲内であれば段階的に控除を受けられる制度です。この制度は、大学生などのアルバイト収入が増えた場合でも、扶養している親の税負担が急激に増えることを防ぐことを目的としています。
関連記事:2025年新設!特定親族特別控除の概要や控除額・申請方法をわかりやすく解説
2-16. 基礎控除
基礎控除とは、すべての納税者が原則として適用できる所得控除です。控除額は最大95万円(2025年分)で、納税者本人の合計所得金額に応じて段階的に減少します。合計所得金額が2,500万円を超える場合、基礎控除は適用されません。
関連記事:所得税は年収いくらから?年収160万円を超える場合や年末調整・確定申告の義務も解説!
2-17. 【ポイント】令和8年度税制改正により2026年分の所得控除制度も変わる?
日本では、毎年の税制改正によって所得控除の制度が見直される可能性があります。実際に、物価上昇や賃金水準の変化といった社会状況を踏まえ、控除額や適用要件が調整されることがあります。
令和8年度税制改正大綱では、給与所得控除の最低保障額と基礎控除について、2年連続での引き上げが検討されています。現行制度では、給与所得控除の最低保障額は65万円、基礎控除は最大95万円です。この2つの控除を合計すると、給与収入が160万円以下であれば、所得税は課税されません。
しかし、税制改正大綱の内容が実現した場合、2026年分以降は給与所得控除の最低保障額が74万円、基礎控除が104万円へ引き上げられる可能性があります。これにより、給与収入が178万円以下であれば、所得税が課税されないケースが生じると考えられます。
このように、いわゆる所得税の「年収の壁」は、従来の160万円から178万円へ引き上げられる見通しです。年収の壁が引き上げられることで、パートやアルバイトとして働く人が就業時間を調整する必要性が緩和されるなど、働き方に一定の影響を与える可能性も指摘されています。
なお、住民税については所得税とは控除の仕組みが異なり、基礎控除の引き上げは予定されていないとされています。そのため、所得税が課税されない場合でも、所得水準によっては住民税が課税される可能性がある点には注意が必要です。
関連記事:178万円の壁とは?引き上げはいつから?
3. 所得控除の申告方法


所得控除を受けるには、基本的に「年末調整」と「確定申告」のいずれかで申告をおこなう必要があります。会社員の場合、多くの控除は年末調整で自動的に適用されますが、一部の控除は確定申告をしなければ受けられません。この違いを理解しておくことで、従業員への説明や案内もスムーズにおこなえるようになります。
3-1. 年末調整で申告する
年末調整は、企業が従業員の給与から源泉徴収した所得税を精算するためにおこなう手続きです。従業員が提出する年末調整関連書類(扶養控除等申告書など)の情報をもとに、企業が税額を再計算し、過不足があれば調整します。
この結果は管轄の税務署に提出され、所得控除が適用されます。ただし、年末調整で受けられる控除には限りがあり、すべての所得控除を適用できるわけではありません。2025年分(令和7年分)以降、年末調整で適用できる所得控除は次の通りです。
- 基礎控除
- 配偶者控除
- 配偶者特別控除
- 扶養控除
- 特定親族特別控除
- 生命保険料控除
- 地震保険料控除
- 小規模企業共済等掛金控除
- 社会保険料控除
- 障害者控除
- ひとり親控除
- 寡婦控除
- 勤労学生控除
関連記事:年末調整はいつまでにするべき?確定申告との違いや計算方法を解説
3-2. 確定申告で申告する
年末調整の対象とならない人(その年の給与収入が2,000万円を超える人など)は、年末調整による税額の精算を受けられないので、自分で確定申告をおこなう必要があります。また、年末調整の対象者であっても、副業による所得が20万円を超える場合などには、年末調整だけでは税額の精算が完了しません。
このような場合には、確定申告において収入金額や所得控除の内容をあらためて申告し、税額を計算したうえで、追加で納付する税額があれば納付し、源泉徴収税額が多い場合には還付を受けることになります。なお、年末調整で所得控除を適用している場合でも、確定申告書にはその控除の内容を改めて記載する必要があるので注意が必要です。
確定申告の期間は、原則として翌年2月16日から3月15日までです。ただし、還付を受けるための申告(還付申告)の場合は、翌年1月1日から5年間提出できます。年末調整の段階でこれらの点をあらかじめ案内しておくことで、従業員が混乱せずに手続きを進めやすくなります。
参考:確定申告が必要な方|国税庁
参考:No.2030 還付申告|国税庁
関連記事:年末調整の対象者とは?必要書類や確定申告との関係も解説
3-3. 【注意】雑損控除・医療費控除・寄附金控除は確定申告が不可欠
「雑損控除」「医療費控除」「寄附金控除」は、年末調整では適用できない所得控除です。そのため、年末調整を受けている給与所得者であっても、これらの控除を適用する場合には、別途確定申告をおこなう必要があります。
これらの控除は、確定申告によって所得金額から差し引くことができ、結果として納め過ぎていた所得税が還付される可能性があります。したがって、該当する支出や損失がある従業員に対しては、領収書や証明書などの必要書類を保管しておくとともに、確定申告の時期に手続きをおこなうよう案内しておくとよいでしょう。
関連記事:年末調整に必要な領収書の種類や紛失時の対処法を解説
3-4. 【例外】ふるさと納税(ワンストップ特例制度)
ふるさと納税は、自分の故郷や応援したい地域の自治体に寄附をすることでその地域の活性化に貢献できる制度です。寄附をおこなうと、原則として確定申告を通じて所得控除(寄附金控除)が受けられます。
ただし、確定申告が不要な給与所得者などの場合は「ワンストップ特例制度」を利用すれば、確定申告をせずに寄附金控除を受けることが可能です。この制度を利用した場合、控除は所得税ではなく、翌年度の住民税からまとめて差し引かれます。
なお、ワンストップ特例制度を利用するには条件があります。主な条件として、1年間に寄附できる自治体は5団体までという上限があり、6団体以上に寄附した場合はワンストップ特例の対象外となります。その場合は、確定申告をすることで寄附金控除を適用しなければならないので注意が必要です。
関連記事:所得税と住民税の違いは?高いのは?計算方法の違いについても解説
4. 所得控除の申告で誤りが生じやすいケースとは?


所得控除は税負担を軽減できる重要な制度ですが、適用条件が細かく定められているため、誤って申告してしまうケースも少なくありません。
とくに扶養関係や配偶者に関する控除などは混同されやすく、誤りが生じやすいポイントです。ここでは、実務や従業員からの質問でも多い、所得控除の申告で注意すべきケースを解説します。
4-1. 16歳未満の扶養親族は控除対象になる?
16歳未満の子どもは、税法上は「扶養親族」に該当しますが、扶養控除の対象にはなりません。そのため、年末調整や確定申告において、扶養控除として所得から差し引くことはできません。
なお、16歳未満かどうかの判定は、原則としてその年の12月31日時点の年齢でおこないます。そのため、年末調整の時点では15歳であっても、その年の12月31日までに16歳になる場合は、その年から扶養控除の対象となります。
また、16歳未満の子どもは、住民税の非課税判定や各種行政制度において、扶養人数としてカウントされる場合があります。そのため、税額計算上の扶養控除は適用できないものの、まったく意味がないわけではありません。扶養控除等申告書には、16歳未満の子どもも記載する必要がある点に注意しましょう。
参考:専門用語集|国税庁
4-2. 同一親族に配偶者控除と扶養控除は重ねて適用できる?
同一人物に対して、配偶者控除と扶養控除を同時に適用することはできません。配偶者控除は、納税者と法律上の婚姻関係にある配偶者を対象とする所得控除です。
一方、扶養控除は、配偶者以外の親族(子や親など)を対象とする制度であり、配偶者は扶養控除の対象には含まれません。したがって、配偶者については扶養控除を適用することはできず、一定の要件を満たす場合に配偶者控除または配偶者特別控除の適用を検討することになります。
また、AさんがBさんの配偶者であり、同時にCさんの子である場合、Aさんを誰の控除対象とするかが問題となります。この場合、BさんがAさんを配偶者控除の対象とすることも、CさんがAさんを扶養控除の対象とすることも制度上は考えられますが、同一人物を複数の納税者の控除対象とすることはできません。
そのため、Bさんが配偶者控除を適用するか、Cさんが扶養控除を適用するかのいずれか一方を選択する必要があります。このように、同一人物を複数の納税者の控除対象として重複して適用することは認められていない点が重要です。
4-3. 同一親族に扶養控除と障害者控除は併用可能?
扶養控除と障害者控除は、要件を満たしていれば同時に適用できます。例えば、同居している子どもや親が扶養親族に該当し、かつ障害者に該当する場合には、扶養控除と障害者控除を併用することが可能です。
また、16歳未満の子どもは税法上「扶養親族」には該当するものの、扶養控除の対象にはなりません。ただし、その子どもが障害者に該当する場合には、障害者控除の適用を受けることができます。
このように、扶養控除の対象とならない場合でも障害者控除が適用できるケースがあるので、控除の申告漏れがないよう注意が必要です。
4-4. 配偶者と死別した場合に配偶者控除とひとり親控除は両立する?
配偶者と死別した場合には、控除要件を満たせば、配偶者控除とひとり親控除を同時に適用できます。
控除対象配偶者に該当するかどうかは、原則としてその年の12月31日時点の現況により判定します。ただし、控除対象配偶者が年の途中で死亡した場合には、死亡した時点の状況に基づいて判定することとされています。
一方、ひとり親控除については、原則どおり12月31日時点の状況で判定します。その時点でひとり親の要件を満たしていれば、ひとり親控除の適用を受けられます。
なお、配偶者と死別した後、同じ年のうちに再婚した場合には、配偶者控除の判定対象となる配偶者は1人に限られるので、死亡した配偶者または再婚した配偶者のいずれか一方についてのみ配偶者控除を適用することになります。
4-5. 医療費控除の対象に人間ドック費用は含まれる?
一般的に、人間ドック費用は医療費控除の対象にはなりません。医療費控除の対象となるのは、病気やけがの治療を目的として支払った医療費です。
人間ドックは、主に病気の予防や健康状態の確認を目的として実施されるため、原則として医療費控除の対象外とされています。ただし、人間ドックの結果、重大な疾病が見つかり、そのまま治療を受けることになった場合には、その人間ドック費用も医療費控除の対象として認められることがあります。
また、企業の福利厚生制度により企業が人間ドック費用の全部または一部を負担している場合、その企業負担分は医療費控除の対象になりません。医療費控除の対象となるのは、あくまで従業員が自己負担した部分に限られます。
なお、医療費控除は年末調整では適用できず、適用を受けるためには従業員本人が確定申告をおこなう必要があります。そのため、確定申告の際に従業員から企業へ問い合わせが寄せられることも考えられます。適切に対応できるよう、制度の内容を理解しておくことが大切です。
参考:人間ドックの費用|国税庁
5. 所得控除の申告に誤りがあったら?


所得控除の申告内容に誤りがあると、所得税の納めすぎや不足が生じる可能性があります。その結果、年末調整で還付される金額にも影響が出て、従業員の手取り額が本来より少なくなることも考えられます。
ただし、所得控除の申告ミスに気づいた場合でも、状況に応じて適切な手続きをおこなえば訂正することが可能です。ここでは、主な対応方法を解説します。
5-1. 年末調整のやり直しをする
従業員から「扶養控除の対象者を誤って申告していた」「生命保険料控除の申告が漏れていた」など、年末調整の完了後に所得控除の内容について問い合わせがある場合があります。
このようなケースでは、原則として年末調整をやり直す必要があります。ただし、その誤りによって税額が減少し、還付が生じる場合には、企業で年末調整を再計算するのではなく、従業員本人が確定申告で訂正することも可能です。
一方で、誤りによって源泉所得税の徴収不足が発生する場合には注意が必要です。この場合は源泉徴収義務の観点から、期限が過ぎていても年末調整を再計算し、不足分を適切に処理しなければなりません。
また、すでに源泉徴収票を交付している場合は、従業員が収入証明や確定申告などに使用していないかを確認したうえで回収し、内容を修正した源泉徴収票を改めて発行する必要があります。
参考:No.2671 年末調整の後に扶養親族等の人数が異動したとき|国税庁
関連記事:年末調整の再調整は可能!方法やポイントをわかりやすく解説
5-2. 従業員自身が還付申告・修正申告をおこなう
年末調整や確定申告の手続きが完了したあとでも、所得控除の申告ミスに気づくことがあります。年末調整後に控除の反映漏れなどがあり、所得税を本来より多く納めていた場合は、「還付申告」をおこなうことで、納め過ぎた税金の還付が受けられます。
還付申告は、対象となる年の翌年1月1日から5年間申請することが可能です。また、すでに確定申告をおこなったあとに誤りに気づき、本来より多く税額を申告していた場合には、「更正の請求」によって訂正をおこないます。
一方、本来より少ない税額で申告していた場合には、「修正申告」をおこない、不足している税額を納付する必要があります。申告が遅れると、延滞税や加算税が課される可能性もあるので、誤りに気づいた時点で早めに手続きをおこなうことが大切です。
関連記事:年末調整の間違いをやり直しする方法は?よくあるミスと訂正を防ぐコツも紹介
6. 所得控除を考慮した給与計算方法


ここでは、所得税の計算手順に沿って、所得控除の計算方法をわかりやすく解説します。対象は給与収入のみを得ている従業員をモデルケースとしており、年末調整の際にも役立つ内容となっています。
関連記事:【2025年分】年末調整の計算方法を5ステップで解説!計算例も紹介
6-1. 年間給与額、社会保険料、源泉徴収税を算出する
まずは年間の給与額と、毎月の給与から差し引いている社会保険料、源泉徴収税を算出しましょう。その際、従業員に支給した一定の通勤手当など、所得税法上で非課税とされる項目は含めずに計算することが大切です。
関連記事:年末調整で通勤手当や交通費は給与に含まれる?非課税限度額や処理方法を解説
6-2. 給与所得控除額を差し引いて給与所得額を算出する
続いて、年間の給与総額から「給与所得控除額」を差し引いて、「給与所得」の金額を算出します。給与所得控除額は、収入金額に応じて次のように定められています。
|
給与等の収入金額 |
給与所得控除額 |
|
190万円以下 |
65万円 |
|
190万円超360万円以下 |
収入金額 × 30% + 8万円 |
|
360万円超660万円以下 |
収入金額 × 20% + 44万円 |
|
660万円超850万円以下 |
収入金額 × 10% + 110万円 |
|
850万円超 |
一律195万円(上限) |
例えば、年間の給与総額が800万円の場合、給与所得控除額は190万円となり、給与所得額は610万円と計算できます。所得控除の中には合計所得金額を基準に判定をおこなうもの(基礎控除や配偶者控除など)もあるので、正確に給与所得を計算することが重要です。
なお、給与等の収入金額が660万円未満の場合、上記の表を用いず、所得税法別表第5「年末調整等のための給与所得控除後の給与等の金額の表」により給与所得の金額を算出する点に留意が必要です。
関連記事:給与所得控除とは?間違いやすい他の控除との違いや計算方法をわかりやすく解説
6-3. 給与所得−所得控除で課税所得を算出する
次に、給与所得から各種の所得控除を差し引いて、課税所得を算出します。所得金額調整控除の適用がある場合は、あらかじめその控除額を給与所得から控除したうえで計算をおこないます。なお、所得税は「収入」ではなく、「課税所得(所得控除を差し引いた後の金額)」を基準として算出される点がポイントです。
関連記事:所得税率の種類一覧|給与や賞与の所得税の計算方法も解説
6-4. 課税所得×所得税率で所得税額を算出する
算出した課税所得に所得税率を乗算して、最終的な所得税額を計算します。所得税は、所得が多いほど税率が上がる「超過累進課税制度」を採用しており、税率は5%から45%までの7段階に区分されています。
計算の際は、次に示す「所得税の速算表」を活用すると、税額を効率的に求めることが可能です。
|
課税所得金額 |
税率 |
控除額 |
|
1,000円から1,949,000円まで |
5% |
0円 |
|
1,950,000円から3,299,000円まで |
10% |
97,500円 |
|
3,300,000円から6,949,000円まで |
20% |
427,500円 |
|
6,950,000円から8,999,000円まで |
23% |
636,000円 |
|
9,000,000円から17,999,000円まで |
33% |
1,536,000円 |
|
18,000,000円から39,999,000円まで |
40% |
2,796,000円 |
|
40,000,000円以上 |
45% |
4,796,000円 |
例えば、課税所得金額が600万円だった場合、所得税額の計算方法は下記のようになります。
6,000,000円(課税所得) × 20%(税率) − 427,500円(控除額)= 772,500円(所得税額)
この算出された所得税額から、該当する税額控除(住宅ローン控除など)を差し引いて基準所得税額を求めます。
この基準所得税額に2.1%を乗じて復興特別所得税を計算し、両者を合算することで実際の納付所得税額(復興特別所得税を含む)を求めることが可能です。
年末調整では、この年間の所得税額と、1年間に源泉徴収された所得税額を比較し、過不足分の精算をおこないます。
本章で解説したように、控除の有無で所得税額は異なるため、自社の従業員が控除対象か忘れずに確認するようにしましょう。
当サイトでは、本記事で解説した税金の計算方法や、税金の計算時に気を付けるべきポイントなどを解説した資料を無料で配布しております。
所得税だけでなく住民税も併せて解説しているため、税金の計算方法に関して不安な点があるご担当者様は、こちらから「所得・住民税 給与計算マニュアル」をダウンロードしてご確認ください。
6-5. 【具体例】所得控除を踏まえた所得税の計算方法
ここでは例として、年収700万円(令和7年分)の会社員を想定し、所得控除を考慮した所得税額を簡単にシミュレーションしてみます。まず、給与収入が700万円の場合の給与所得控除は、次のように計算できます。
1,800,000円(給与所得控除)=7,000,000円 × 10% + 1,100,000円
給与所得は、給与収入から給与所得控除を差し引いて算出します。
5,200,000円(給与所得)=7,000,000円 − 1,800,000円
次に、課税所得を求めるため、適用できる所得控除を差し引きます。今回は次の控除が適用されるものと仮定します。
- 社会保険料控除:100万円(令和7年中に支払った社会保険料)
- 地震保険料控除:5万円(令和7年中に支払った地震保険料)
- 扶養控除:38万円(一般の控除対象扶養親族が1人いると仮定)
- 基礎控除:63万円(合計所得金額520万円の場合)
これらの所得控除を差し引くと、課税所得は次のようになります。
3,140,000円(課税所得)=5,200,000円 − 1,000,000円 − 50,000円 − 380,000円 − 630,000円
この課税所得に対して累進税率を適用し、所得税を計算します。ここでは、国税庁が公表している「所得税の速算表」を使用します。
216,500円(所得税)=3,140,000円 × 10% − 97,500円
今回は税額控除がないものとすると、基準所得税は216,500円です。これに復興特別所得税(2.1%)が加算されます。
221,000円(所得税および復興特別所得税)≒216,500円 × 102.1%(100円未満切り捨て)
したがって、このケースにおける最終的な所得税および復興特別所得税の合計額は221,000円となります。このように、所得控除の金額や適用の有無によって、最終的な所得税額は大きく変わります。
なお、本例では「雑損控除」「医療費控除」「寄附金控除」などの適用はないものとしているので、通常は年末調整のみで手続きが完結し、確定申告は不要となります。
関連記事:年末調整のやり方とは?必要書類や手順、従業員への周知方法をわかりやすく解説!
6-6. 【補足】所得金額調整控除とは?
所得金額調整控除とは、給与収入が850万円を超える人で、次のいずれかに該当する場合に適用される給与所得の調整制度です。所得控除とは仕組みが異なるため注意が必要です。
- 本人が特別障害者である
- 23歳未満の扶養親族がいる
- 特別障害者である同一生計配偶者または扶養親族がいる
これらの要件を満たす場合、給与収入(1,000万円を超える場合は1,000万円)から850万円を差し引いた金額に10%を乗じた額を、給与所得の金額から控除できます。この所得金額調整控除は、年末調整でも適用が可能です。
また、給与所得と公的年金等に係る雑所得の両方がある場合には、別の仕組みの所得金額調整控除が適用されることがあります。この場合は年末調整では対応できないので、確定申告によって適用を受ける必要があります。
6-7. 【補足】特定支出控除とは??
特定支出控除とは、給与所得者が次の特定支出をした場合に、その年の特定支出の合計額が給与所得控除額の2分の1相当額を超えるとき、その超える部分の金額を給与所得控除後の所得金額から差し引くことができる制度です。
なお、特定支出控除は基礎控除や扶養控除などの所得控除とは異なり、給与所得の計算過程で適用される制度です。特定支出には、主に次のようなものがあります。
- 通勤費
- 旅費交通費
- 転居費
- 研修費
- 資格取得費
- 帰宅旅費
- 図書費・衣服費・交際費などの勤務必要経費(最大65万円)
なお、勤務先から補てんされ、かつ非課税とされる部分の金額は特定支出に含まれません。また、特定支出控除を適用するためには確定申告が必要であり、原則として勤務先などによる証明書の添付が求められます。
7. 所得控除の申告の際に押さえておきたいポイント【人事担当者向け】


所得控除の申告は、従業員の税額計算に直接関わる重要な工程です。ここでは、人事担当者が年末調整において所得控除を取り扱う際に、とくに注意すべきポイントを整理します。
7-1. 住宅ローン控除は所得控除ではなく税額控除
住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)は、所得控除ではなく税額控除に分類されます。所得控除が課税所得を減らすことで間接的に税額を軽減するのに対し、税額控除は算出された所得税額から直接控除されるので、控除の効果が明確で還付額も具体的に確定します。
住宅ローン控除を年末調整で適用できるのは2年目以降です。初年度は、住宅の取得や入居の状況を税務署に申告する必要があるため、従業員本人が確定申告をしなければなりません。2年目以降は、税務署から送付される「住宅借入金等特別控除申告書」と、金融機関が発行する「年末残高証明書」を提出してもらうことで、企業が年末調整時に控除額を計算・適用します。
7-2. 年末調整関係書類の書き方や提出期限を理解しておく
年末調整で所得控除を適用する際は、従業員に次の書類を作成・提出してもらう必要があります。
- 扶養控除等(異動)申告書
- 基礎控除申告書 兼 配偶者控除等申告書 兼 特定親族特別控除申告書 兼 所得金額調整控除申告書
- 保険料控除申告書
これらの書類に記入漏れや誤った記載があると、間違った所得控除が適用され、納税額の計算ミスにつながるおそれがあります。したがって、あらかじめ記入例を配布するなど、従業員が正しく記載できるようサポートすることが重要です。
また、年末調整関係書類には提出期限が定められています。原則として、その年の最後の給与を支払う日の前日までに提出を受ける必要があります。ただし、「扶養控除等申告書」については、その年の最初の給与を支払う日の前日が提出期限です。年末調整をスムーズにおこなうため、事前に提出スケジュールを明確にし、余裕をもって回収・確認を進めましょう。
関連記事:年末調整はいつが期限?具体的なスケジュールや提出書類を解説
7-3. 源泉徴収票に適用する所得控除を具体的に記載する
年末調整の手続きが完了した後は、給与を支払ったすべての従業員に対して源泉徴収票を作成し、確実に交付する必要があります。源泉徴収票には、その年に支払った給与の総額や源泉徴収税額のほか、基礎控除や扶養控除、社会保険料控除など適用した各種控除の内容と金額を正しく記載しなければなりません。
この源泉徴収票は、従業員が確定申告をおこなう際などに使用される重要な書類です。記載内容に誤りがあると、申告内容に影響し、本来より多くの税金を納めてしまったり、還付を受けられなくなったりする可能性があります。
このようなトラブルを防ぐためにも、国税庁が公表している最新版の源泉徴収票の書き方マニュアルを参照し、記載ルールや改正点を正確に把握しておくことが大切です。さらに、給与計算ソフトや年末調整支援システムを活用し、源泉徴収票の作成・確認作業を自動化すれば、人的ミスの防止や業務効率化にもつながります。
参考:令和7年分 給与所得の源泉徴収票等の法定調書の作成と提出の手引|国税庁
関連記事:源泉徴収票の発行の仕方とは?いつ発行するか、どこでもらえるか解説
8. 所得税の控除を理解して従業員が受けられる控除を正確に処理しよう


所得控除とは、所得税を計算する際に、各種所得から一定額を差し引くことができる制度です。会社員やパート・アルバイトなどの給与所得者は、年末調整の際に多くの所得控除を適用できます。ただし、医療費控除・寄附金控除・雑損控除といった一部の控除は年末調整では対応できず、従業員が確定申告をおこなわなければなりません。
給与計算や年末調整の担当者は、所得控除の内容と仕組みを正しく理解し、所得税の計算を正確におこなうことが求められます。また、法改正や制度変更に応じて最新情報を従業員へ周知し、申告ミスを防ぐ体制を整えることも重要です。



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