自主的なサービス残業は違法?企業の残業代の支払義務や撲滅対策を解説
更新日: 2024.12.19
公開日: 2024.12.19
OHSUGI
「自主的なサービス残業は違法なのか知りたい」
「自主的なサービス残業の残業代の支払義務について知りたい」
上記のようにお困りの方も多いでしょう。
自主的なサービス残業は、多くの場合、労働基準法違反となる可能性が高いです。
本記事では、自主的なサービス残業について、労働基準法に違反するのか・残業代の支払義務はあるのか・黙認した場合の罰則を紹介します。
会社が禁止しているにもかかわらず、従業員が自主的に残業するケースの企業側の対応も解説しているため、ぜひ参考にしてください。
目次
1. 自主的なサービス残業も労働基準法違反の可能性がある
従業員の意思で自主的なサービス残業をした場合でも、労働基準法違反の可能性があります。理由は以下の2つです。
- 休憩時間を除く1日8時間・週40時間の法定労働時間を超えた労働が禁止されている
- 36協定を結んで法定労働時間を超えた労働をさせる場合は残業代の支払い義務がある
サービス残業が指示されたものか従業員による自主的なものかは関係なく、事実上の労働時間が法定労働時間を超えているかどうかが重要となります。
また、36協定を結んで法定労働時間を超えた労働が認められている場合も、残業代を支払わずにサービス残業をさせていると労働基準法違反です。
自主的なサービス残業における労働基準違反を避けるために、サービス残業について正確に把握しておきましょう。
2. 自主的なサービス残業でも残業代の支払義務が生じる可能性大
従業員の意思により自主的にサービス残業をする場合でも、残業代の支払義務が生じる可能性が高いといえます。一般的な所定労働時間は法定労働時間と同一であることが多く、残業が法定労働時間を超えた労働となるためです。
所定労働時間と法定労働時間の違いや残業代の支払い義務の有無を以下にまとめました。
所定労働時間 | 法定労働時間 | |
定めの根拠 | 就業規則や雇用契約書など | 労働基準法 |
概要 | 始業から終業までの労働時間から、休憩時間を除いたもの(法定労働時間の範囲内) | 労働時間の上限の定めで、
1日あたり8時間まで、1週間あたり40時間まで |
労働時間を超えた労働に対する残業代の支払義務 | ・有(就業規則や契約書に記載のある場合)
・無(就業規則や契約書に記載のない場合) |
有 |
労働時間を超える労働(残業)の一般的な名称 | 法内残業 | 法外残業 |
従業員が働いた時間が所定労働時間を超えるものの法定外労働時間を超えない場合には、就業規則や雇用契約書に記載がある場合のみ残業代を支払います。
なお、休日出勤の残業の取り扱いは以下のように休日の種類により異なるため、注意しなければなりません。
法定休日 | 所定休日(法定外休日) | |
法の定め | 有 | 無 |
残業代の概要 | ・休日出勤の割増賃金の支払いのみで、残業代を別途支払う必要はない
・深夜労働には深夜手当の支払義務が生じる |
・休日出勤の割増賃金の対象ではないため、残業代を支払う必要がある
・深夜労働には深夜手当の支払義務が生じる ・1ヵ月に60時間を超えて時間外労働を実施した場合には50%以上の割増賃金が必要 |
代休・振替休日などの場合は取り扱いが異なるため注意しましょう。
3. 自主的なサービス残業を黙認した会社への罰則
自主的なサービス残業を黙認した会社への罰則は、以下のいずれかの刑事罰です。
- 6ヵ月以下の懲役
- 30万円以下の罰金
刑事罰が科されるのは会社だけでなく経営者や従業員も対象となります。
企業が罰則を受けるまでには、次のような流れがあるため、すぐに罰則を受けるわけではありません。
- 労働基準監督署への従業員などによる自社の自主的なサービス残業についての申告
- 労働基準監督署による立入調査・臨検
上記の結果、会社でサービス残業がおこなわれていると労働基準監督署が認めた場合には、是正勧告があります。
是正勧告を受けた会社は、何らかの対処を講じてサービス残業を撲滅しなければなりません。是正勧告後に改善が見られない場合にのみ、刑事罰が科されます。
4. 自主的なサービス残業撲滅に向けた会社側の3つの対策
自主的なサービス残業撲滅に向けた会社側の対策は、以下の3つです。
- 従業員の正確な労働時間の把握
- 現状の問題点の把握
- 従業員への周知徹底や教育
それぞれの対策について詳しく見ていきましょう。
4-1. 従業員の正確な労働時間の把握
自主的なサービス残業撲滅に向けた会社側の一つは、従業員の正確な労働時間の把握です。
従業員の労働時間を正確に把握することで、サービス残業の実態を把握し、改善につなげやすくなります。
なお、サービス残業が発生しやすいケースは以下です。
事例 | 注意点 |
在宅勤務の場合 | 実際の勤務時間より過少申告される可能性がある |
自宅へ仕事を持ち帰る場合 | 自宅での労働時間を勤務時間として申告しない可能性がある |
労働時間外の時間で打合せする場合 | 始業前や終業後の時間に打合せを下場合、勤務時間として申告しない可能性がある |
上記の可能性を踏まえ、労働時間を正確に記録できる仕組みを整えましょう。例えば、勤怠管理システムの導入などです。
また労働時間に該当しないと判断しがちな、次のような時間の取り扱いにも注意しましょう。
業務の準備などのためにあてる、始業前や終業後の時間 | 使用者によって場所が指定され、義務付けられている場合など |
作業間の待機時間 | 仮眠室において待機や呼出対応が義務付けられている仮眠時間
(仮眠時間に実作業がほぼない場合を除く) |
上記の時間は、労働時間に該当すると判断される場合があります。
労働時間に含むべきかどうか判断に迷う場合には、弁護士などの専門家への相談を検討しましょう。
4-2. 現状の問題点の把握
現状の問題点の把握も、自主的なサービス残業撲滅に向けた会社側の対策に挙げられます。
現状の問題点を把握して解決策を検討・実行することで、自主的なサービス残業を生み出す根本問題を解決できる可能性が高いためです。
具体的には、以下のような事柄をチェックします。
- 会社や上司が残業することをあたりまえと考えていないか
- 社風や上司により従業員が残業を断りにくくないか
- 勤怠管理や就業管理が適正に実施されているか
- 残業しなければこなせない業務量ではないか
- 経営者層や管理者層がサービス残業についての正確な知識を備えているか
また次の事柄についても、問題がないか確認しましょう。
- 仕事の進め方
- 上司のマネジメント方法
- 残業申請と承認の流れ
- 残業申請のルールや運用
問題が見つかった場合には、自主的なサービス残業撲滅に向けて内容を見直します。
4-3. 従業員への周知徹底や教育
自主的なサービス残業撲滅に向けた会社側の対策には、従業員への周知徹底や教育もあります。
従業員に対して独自の判断で自主的にサービス残業してはならないことを示すためです。また残業を指示する管理者層に対しても教育を実施しましょう。
周知や教育の際に、残業をおこなう具体的な条件や内容を書面化して示す方法もあります。
例えば、残業の条件として閉店時間に店内に接客を必要とする客がいる場合、接客を終えて閉店作業を完了するまで残業することを示すなどです。
従業員への周知や教育を徹底することで、会社が自主的なサービス残業を黙認したと労働監督署に判断される可能性も下げられるでしょう。
5. 自主的なサービス残業への懲戒処分について就業規則で定める
自主的なサービス残業への懲戒処分については、就業規則で定めます。会社が自主的なサービス残業を禁止しているにもかかわらず、従業員が従わない場合に備えるためです。
懲戒処分とは、会社のルールに違反した従業員に対して科される処分のことを指します。自主的なサービス残業に関する懲戒処分の内容には明確な法的基準がないため、会社が独自の判断で決定しましょう。
労働監督署の是正勧告のように、従業員へすぐに懲戒処分を科さずに、数回指導をおこなう方法も一つです。
また懲戒処分について就業規則に記載する前に、内容に問題がないか弁護士などに相談することをおすすめします。
6. 自主的なサービス残業撲滅に向けて対策を講じよう
自主的なサービス残業は、従業員の意思でおこなった場合でも労働基準法違反の可能性があります。また、会社に対して残業代の支払義務が生じる可能性が高いです。
従業員の申告などで会社に労働監督署の調査が入り、自主的なサービス残業があると判断された場合には会社や経営者に刑罰が科される可能性があります。
自主的なサービス残業を撲滅するために就業員への周知や教育に力を入れ、勤怠管理などさまざまな点をチェックして問題があれば見直しが必要です。
さらに勤怠管理システムを導入するなどして、従業員の正確な労働時間の把握に努めます。懲戒処分を設ける場合には、就業規則に記載しましょう。
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