賃金台帳に必要な記載事項とは?それぞれの意味を詳しく解説
更新日: 2023.3.8
公開日: 2021.11.12
YOSHIDA
賃金台帳は、法律によって作成が義務付けられている書類のひとつです。従業員を雇用している企業は、必要な項目がすべて記載された賃金台帳を作成し、しっかりと管理しなければなりません。
この記事では、賃金台帳に記載すべき事項やその意味、賃金台帳を作成する際の注意点などについて詳しく解説します。違反すると罰則が科せられる可能性もあるため、しっかりとチェックしておきましょう。
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1.賃金台帳に必要な記載事項とは?
賃金台帳には以下10項目を記載しなければならないことが、労働基準法施行規則(第54条)によって定められています。[注1]
- 氏名
- 性別
- 賃金計算期間
- 労働日数
- 労働時間数
- 休日労働時間数
- 早出労働時間数
- 深夜労働時間数
- 基本給・手当の種類とその額
- 控除項目とその額
各記載事項について詳しく解説するので、しっかりと確認しておきましょう。
1-1.氏名
従業員の氏名を記載します。対象となるのは、日雇いスタッフなども含めたすべての従業員です。記載漏れがないよう注意しましょう。
1-2.性別
氏名と一緒に性別も記載します。賃金台帳の書式についての絶対的なルールはありませんが、最上部などにわかりやすく記載するのが一般的です。
1-3.賃金計算期間
賃金計算期間とは、給与計算の対象となる期間を意味します。たとえば、毎月25日締めとしている場合は「3月26日〜4月25日」などと記載します。月末締めの場合は「4月1日〜4月30日」などと記載しましょう。
賃金計算期間は、会社の状況に合わせて自由に決めて問題ありません。ただし、毎月同じタイミングで給与を支払う、毎月1回は給与を支払う、といったルールはあるため注意しましょう。
1-4.労働日数
労働日数の項目には、賃金計算期間のうち、出勤した日数を記載します。休日出勤も含めて実際に出勤した日数を記入しましょう。労働基準法(第35条)により、従業員に対して最低でも毎週1回の休日、または4週間で4回の休日を与えなければならないと規定されています。[注2]
賃金台帳の作成を通して、過剰な労働が発生していないかチェックすることも重要です。
[注2]e-Gov|労働基準法 第35条
1-5.労働時間数
労働日数だけではなく、労働時間数についても記載しなければなりません。労働時間数の項目には、時間外労働や休日労働の時間も含めた数値を記載します。労働基準監督官が重点的にチェックする項目のひとつであるため、間違いのないように記入しましょう。
また労働基準法(第32条)によると、原則として1日に8時間、1週間に40時間を超えて従業員を働かせることはできません。[注3]
労働時間が基準をオーバーしている場合は、働き方や人員配置を見直すことも必要です。
[注3]e-Gov|労働基準法 第32条
1-6.休日労働時間数・早出労働時間数・深夜労働時間数
労働時間数のうち、休日・早出・深夜労働に該当する数値を記入します。これらの項目は労働時間数と同様、適正な労務管理が行われているか、労働基準監督官によって重点的にチェックされます。従業員ごとの時間外労働時間をしっかりと把握し、必要に応じて業務改善を図ることが大切です。
従業員に対して休日労働や時間外労働を命じるためには、36協定を締結して労働基準監督署へ届け出なければなりません。さらに時間数に応じて割増賃金を支払う必要もあるため、間違いのないように記載しましょう。
1-7.基本給・手当の種類とその額
基本給の項目には、各種手当を含まない金額を記載します。支払った給与の総額ではないため注意しましょう。時間外割増賃金についても記入します。住宅手当、通勤手当、家族手当などについては、種類とそれぞれの金額を記入しましょう。
基本給が最低賃金を下回っていると、労働基準監督官から指摘を受けてしまいます。当然ですが、基本給を設定するときは、最低賃金の額を確認しておかなければなりません。そのほか、賞与や臨時の給与などがある場合はそれぞれ記載し、合計額も記入します。
1-8.控除項目とその額
控除の項目には、給与から控除されるものを記載しましょう。一般的には、所得税、住民税、健康保険料、厚生年金保険料、雇用保険料などが該当します。会社独自のルールで控除している費用がある場合は、忘れずに記載しましょう。すべての項目を記載したら、基本給や手当の合計から控除額を引いて、実際の給与額を記載します。
2.賃金台帳の記載事項に関する3つの注意点
賃金台帳を管理するうえでは、給与明細などで代用しない、市販の賃金台帳は基準を満たしていない可能性がある、賃金台帳は給与を支払うたびに記入する、といった点に注意しましょう。それぞれのポイントについて順番に解説します。
2-1. 一般的な給与明細では代用できない
賃金台帳は、一般的な給与明細では代用できません。給与明細には、賃金台帳に記載すべき項目が網羅されていないケースが多いからです。基準を満たしていない場合や、賃金台帳をそもそも作成していない場合は、罰則の対象となり、30万円以下の罰金が科せられる可能性もあるため注意が必要です。賃金台帳の書式はとくに決められていませんが、給与明細などで代用することは避け、専用の書類として作成しましょう。
2-2. 市販の賃金台帳は基準を満たしていない可能性がある
市販の賃金台帳を利用する際にも注意しましょう。市販品は、記載すべき項目が抜けているなど、基準を満たしていない可能性があります。もちろん基準を満たしている市販品もありますが、使う前に記載すべき項目が網羅されているかチェックしておくことが大切です。
賃金台帳の基本的な様式は、厚生労働省のホームページからダウンロードできるため、そのまま利用するか、参考にしながらExcelなどで作成するとミスを避けられるでしょう。[注4]
[注4]厚生労働省|賃金台帳
2-3. 給与を支払うたびに記入する必要がある
賃金台帳は、給与を支払うたびにその内容を記載し、更新していかなければなりません。毎月1回は給与を支払う必要があるため、基本的には賃金台帳も毎月更新していく必要があります。勤怠管理システムやタイムカードなどの情報を確認しながら正確な情報を記載していきましょう。
3.賃金台帳の記載事項を把握して労務管理を進めよう
今回は、賃金台帳に記載すべき項目や、記載事項に関する注意点を紹介しました。賃金台帳は、法律によって作成が義務付けられている重要な書類です。違反すると罰則が科せられる可能性もあるため、注意しなければなりません。労働日数、労働時間数、時間外労働時間数など、記載すべき事項をしっかりと把握して、正しく運用していきましょう。
賃金台帳は、従業員の労働状況を把握して、働き方を改善することにも役立ちます。賃金台帳の数値をもとに休日出勤や時間外労働を把握し、必要に応じて仕事配分や人材配置を変更することも重要です。
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