労働時間の短縮による課題とその対策をわかりやすく解説
更新日: 2024.10.31
公開日: 2021.9.7
OHSUGI
この記事では、労働時間の短縮によって生じる課題とその解決策について紹介します。労働時間の短縮を検討している企業は、導入してから後悔しないようにあらかじめチェックしておきましょう。
関連記事:労働時間とは?法律上の定義や上限、必要な休憩時間数についても解説
勤怠管理システムの導入で法改正に対応しよう
近年、人手不足などの背景から、バックオフィス業務の効率化が多くの企業から注目されています。
タイムカードの集計は、集計時にExcelに入力する工数がかかりますし、有給休暇の管理は、従業員ごとに管理することが煩雑で、残有給日数を算出するのにも一苦労です。
どうにか工数を削減したいけど、どうしたらいいかわからないとお悩みの方は、勤怠管理システムの導入を検討してみましょう。
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・リアルタイムで労働時間を自動で集計できるため、月末の集計工数が削減される
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など、人事担当者様の工数削減につながります。
「導入を検討するといっても、何から始めたらいいかわからない」という人事担当者様のために、勤怠管理システムを導入するために必要なことを21ページでまとめたガイドブックを用意しました。
人事の働き方改革を成功させるため、ぜひ「勤怠管理システム導入完全ガイド」をご参考ください。
1. 労働時間短縮の概要
労働時間の短縮によって生じる課題を理解するためには、そもそも労働時間の短縮がどのような取り組みなのかについて把握することが大切です。まずは、労働時間短縮の概要について見ていきましょう。
1-1. 労働時間の短縮とは
労働時間の短縮とは、所定労働時間を短くする取り組みのことです。所定労働時間とは、労働基準法で定められた1日8時間、週40時間を上限とする法定労働時間を踏まえ、企業が独自に定めている労働時間のことです。例えば8時から17時までが勤務時間で休憩時間が1時間だった場合、所定労働時間は8時間ということになります。
労働時間の短縮では、この所定労働時間を「17時から16時半まで短縮する」といった取り組みをするほかに、以下のような方法でも勤務時間を減らしていきます。
- ノー残業デーの導入
- 有給休暇取得の促進
- 消灯時刻の設定
- フレックスタイム制の導入
所定労働時間だけではなく、休暇取得の促進や残業の削減などを通して全体的な勤務時間を減らすことが、労働時間の短縮に含まれます。
1-2. 労働時間の短縮の必要性
OECD(経済協力開発機構)がおこなった調査*によれば、日本人の2020年における平均年間労働時間は1,598時間でした。それに比べドイツは1,332時間、デンマークは1,346時間、イギリスは1,367時間と、欧米諸国は日本よりも230時間以上、日数にして10日近くも労働時間が少ないということがわかっています*。
ただし、この数字に日本人がよくおこなう「サービス残業」は含まれていません。そのため、実際の労働時間はさらに高水準になっていることが予想されます。
長時間労働は労働者の心身に影響を与え、脳や心臓の疾患、精神障害を引き起こしてしまいます。少子高齢化により労働力が不足する今後の日本では、さらに人手不足や長時間労働が深刻になっていくでしょう。したがって、働き方改革の一環として労働時間の短縮を進め、労働者の健康を守る必要性が高まっているのです。
2. 労働時間を短縮するメリット
労働時間を短縮するメリットは、以下のとおりです。
- 労働者のワークライフバランスが実現する
- 労働者の定着率が上がる
- 企業のイメージアップにつながる
労働時間が減れば、従業員はそれだけ自分のために時間を割けるようになります。育児や介護が必要な社員はもちろん、スキルアップのために勉強をしたい社員にとっても喜ばしいことであるため、職場への定着率が上がるでしょう。
さらに、「社員のことを大切にする企業だ」という社会的イメージを持ってもらえ、企業価値の向上や求人応募の増加効果が得られます。このように、労働時間の短縮は非常に恩恵の多い取り組みなのです。
3. 労働時間を短縮するデメリット
労働時間を短縮するデメリットは、以下の2つが挙げられます。
- 労働者の給与が減少する可能性がある
- 納期までに仕事が完了しないリスクがある
労働時間を短縮すると、今まで支給していた残業代が減少することになるため、従業員の給与が減少する可能性があります。「残業代が減る=人件費が下がる」ということなので、企業にとってはデメリットにならないかもしれません。しかし、従業員からすると「労働時間を短くされた」などの不満がつのり、労働意欲が低下したりするリスクがあるため、給与の減少は間接的に企業にもデメリットとなり得ます。
また、単に労働時間を減らしてしまうと、納期までに仕事が完了しないというリスクもあります。例えば、今まで1週間で終わっていた業務でも、労働時間が短くなることで2週間かかってしまうかもしれません。そのため、労働時間の短縮に取り組む場合は、労働環境をしっかり見極めましょう。
4. 労働時間短縮に関する助成金について
従業員の数が十分に足りていれば、労働時間短縮への取り組みもスムーズにできるでしょう。しかし、足りていない場合は、業務をシステム化したりアウトソーシングしたりする必要が出てくるかもしれません。
他にも、正確な労務管理をおこなうための勤怠管理システムの導入など、さまざまなコストがかかる可能性があります。
労働時間短縮のためのコストが経営を圧迫する可能性がある場合は、「働き方改革支援助成金」の活用を検討してみましょう。「働き方改革支援助成金」というのは、就業規則・労使協定等の変更や人材確保など働き方改革に取り組む中小企業に対し、費用の一部を助成する制度です。この制度を利用すれば、成果目標を達成することで助成金を受給できます。
年度によってコースや申請要件などが異なりますが、2023年は「労働時間短縮・年休促進支援コース」の助成金が実施されており、交付申請期限は2023年11月30日までとなっています。ただし、予算額には上限額があり、交付申請期限よりも前に締め切られる可能性があるので注意しましょう。
また、翌年度以降は実施されない可能性もあるので、早めの検討をおすすめします。
参考:働き方改革推進支援助成金(労働時間短縮・年休促進支援コース)|厚生労働省
5. 労働時間の短縮による人事における課題点
労働時間の短縮には多くのメリットがありますが、人事にとっては課題点があることも事実です。とくに人事関連の課題が非常に多いため、導入時は注意が必要です。
ここでは、労働時間の短縮による人事関連の課題点を4つ見ていきましょう。
5-1. ジタハラが発生する恐れがある
ジタハラとは、時短労働を強要するハラスメントです。ジタハラは、労働時間を短くすることが目的になってしまい、従業員の抱えている業務を把握せずに結果だけを求めてしまう上司がいる部署によくある課題です。
たとえ労働時間を短縮しても、業務量が変わらなければ従業員の負担は増加してしまいます。このことを理解せず、とにかく早く帰らせようとするジタハラは、労働時間を短縮する企業における大きな課題となってしまうのです。
5-2. サービス残業が増えてしまう
ジタハラは、サービス残業の増加につながってしまうという課題もはらんでいます。上司が早く帰らせようとする一方で、仕事が終わらなくて悩んでしまう従業員は必ず出てくるでしょう。このとき、「タイムカードを切って仕事をすれば残業したことが知られない」と考えてしまう人は、決して少なくありません。
このように、せっかく労働時間を短縮しても「目で見ることができる労働時間」が減るだけで、逆にサービス残業が増えて労働環境が悪化してしまう労務面のリスクもあるのです。
5-3. 自宅で仕事をこなす従業員が増えてしまう
自宅で仕事をこなそうとする従業員が増えやすい点も、労働時間を短縮するときに気をつけたい課題です。ジタハラによって社内で仕事をさせてもらえない場合、「自宅で仕事をしよう」と資料やデータを持ち帰ってしまう従業員は、必ず出てきてしまいます。
自宅で仕事をする場合、結果的に長時間労働になりやすい点はもちろん、セキュリティ面でのリスクがあることも忘れてはいけません。もともと自宅で働くことを前提にしたテレワークとは異なり、セキュリティ管理がおこなわれない仕事の持ち帰りは、機密情報の漏洩リスクをグッと高めてしまいます。
5-4. ジタハラやサービス残業によるメンタルヘルスへの悪影響
労働時間の短縮は、結果的に従業員のメンタルヘルスに悪影響を与えてしまうリスクがあります。ジタハラによる上司からの圧力、サービス残業や自宅への仕事の持ち帰りによる「見えない残業」が積み重なれば、精神的なバランスを崩してしまう従業員は増えてしまうでしょう。
企業は「労働時間の短縮」を目的にするのではなく、「ワークライフバランスを実現するために労働時間を減らす取り組みをしている」ということを忘れてはいけません。
6. 労働時間の短縮による課題の解決方法
労働時間の短縮における上記の課題を解決するためには、3つの対処法が有効です。最後に、労働時間の短縮による課題の解決方法を具体的に見ていきましょう。
6-1. 従業員の業務量を把握して調整する
労働時間の短縮でもっとも重要なのは、従業員の業務量を把握することです。業務の内容を可視化しないまま労働時間だけを減らしても、当然のことながら従業員の負担は減らせません。
まずは一人ひとりの業務量を可視化し、特定の社員に負担が偏らないように業務を調整しましょう。チームや部署内で業務量を調整することで、労働時間を減らしても業務が圧迫されなくなれば、最大の課題である「労務管理の問題点」がクリアできます。
6-2. 業務のシステム化やアウトソース化を検討する
労務管理の課題解決には、業務のシステム化やアウトソース化も有効です。どうしても社内で業務をこなせないという場合は、ITシステムの導入で自動化したりアウトソーシング会社を活用したりして、自社の負担を減らしましょう。コストはかかりますが人件費や残業代が削減されるため、長い目で見ると企業にとってメリットの多い選択となります。
6-3. 従業員の意識を変える
労働時間を短縮するときは、従業員の意識を変えることも重要です。日本にはまだまだ「たくさん働く人=仕事ができる人」という意識が残っており、労働時間を減らすことを良しとしない風潮があります。この認識のままでは働き方改革を実現できないため、「時間内にテキパキと仕事を終わらせるほうが優秀」であるということを理解して貰う必要があります。
この意識改革ができなければ、いくら会社が労働時間の短縮を要請しても、働き方改革を実現することはできません。人事においても、労働時間の多さだけで従業員の能力を判断しない評価体制を整えることが肝心です。
7. 課題の解決法を押さえて適切な労働時間の短縮を!
働き方改革の一環として注目されている労働時間の短縮ですが、導入するときは人事における労務管理の課題が生じやすい点に注意しましょう。サービス残業や自宅での残業が増えて従業員のメンタルヘルスに悪影響を与えてしまうリスクもあるため、企業は慎重に導入を検討することが大切です。
こういった人事面での課題を解決するためには、業務量の把握やシステム化・アウトソース化で従業員の負担を減らす対策が有効です。さらに従業員の意識改革とともに、労働時間で人事査定をおこなわない評価体制を整えることも忘れてはいけません。人事におけるリスクをうまく回避しながら、従業員のワークライフバランスを実現させられる労働時間の短縮を実施しましょう。
関連記事:残業削減対策の具体的な方法・対策と期待できる効果について解説
勤怠管理システムの導入で法改正に対応しよう
近年、人手不足などの背景から、バックオフィス業務の効率化が多くの企業から注目されています。
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「導入を検討するといっても、何から始めたらいいかわからない」という人事担当者様のために、勤怠管理システムを導入するために必要なことを21ページでまとめたガイドブックを用意しました。
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