出張手当とは?メリット・デメリットや相場を解説
更新日: 2024.10.7
公開日: 2023.5.11
jinjer Blog 編集部
一般的な企業では、従業員を出張させる場合、金銭的負担の補助や慰労を目的として一定の額を支給します。この支給される費用が出張手当で、社員が出張したことに伴って発生する費用を補填する手当を意味します。
出張手当は、出張する従業員をねぎらう意味もありますが、会社にとっても「経費に計上できる」というメリットがあります。そのため、節税対策として導入を検討している企業もあるのではないでしょうか。しかし、「出張手当をどのように支給すればいいのか」と悩む担当者もいるでしょう。
今回は、出張手当の考え方やメリット・デメリット、世間の相場や制度の導入方法について解説するので、出張手当について詳しく知りたい方はぜひ最後までお読みください。
目次
「出張費の規定の作り方に悩んでいる」
「旅費交通費に関する基本的な知識をつけたい」
「仮払の運用方法がわからない」などなど出張費に関して不安や疑問を感じたことはないでしょうか。
交通費出張費は会社が大きくなるにつれて、件数が増えていくものですが、それに伴って日当や各種手当など複雑な要件や規定を定める必要があります。そこで当サイトでは出張費に関する基本知識から出張費の規程の作り方をまとめた資料をご用意しております。
旅費精算規定を作る際の手順から、よくある疑問まで網羅的に解説しておりますので、実際に社内規定やルールを作成する際に参考にしていただけます。資料は無料ですのでこちらから資料をダウンロードしてご覧ください。
1. 出張手当とは?出張経費との違いも解説
ここでは、出張手当がどのような趣旨で支給されているのかを解説します。また、似たような名称の「出張経費」についても解説していくので、違いを覚えておきましょう。
1-1. 出張手当
出張手当とは、従業員が通常の勤務地から離れた場所に出張する際に支給される手当のことです。出張手当は法律的に定められた賃金ではなく、企業ごとの独自の制度にもとづいて運用されています。
出張のときには、通常の勤務地であれば発生しない費用が生じる可能性が高いです。例えば、出張先の環境によっては弁当ではなく外食することになるでしょう。同じように手荷物を減らすため、水筒を持たずに飲料水を購入する場合も、普段とは異なる出費になります。
また、宿泊を伴う出張の場合には、朝や夜の食事代も追加される他、場合によっては洗濯やクリーニング費用が発生することもあります。
出張手当は、出張しなければ従業員が負担しなかった費用に対して、従業員の負担をカバーする目的で支給されるのです。その他、出張時の肉体的・精神的な疲労を慰労する目的もあります。
1-2. 出張経費
出張経費とは、出張することで発生する「旅費・交通費」と「日当」の支払いを指します。長時間の移動を伴う出張では、交通費や宿泊費などの追加費用がかかります。例えば、電車や新幹線、飛行機などの公共交通機関の料金や、地域のビジネスホテルの宿泊代などがこれに該当します。
どこまでを出張経費とするか、ということに関しては法律で決められていないため、各企業のルールによって決まっています。ただし、すべての支出を経費にして良いということではなく、業務と関係ないもしくは不当に高額な支出は経費として認められません。また、出張経費に関しては「出張旅費規程」を作成する必要があります。
多くの会社では、出張手当とは別に交通費や宿泊費用を「出張経費」として支給しています。領収証を元に実費精算するのか、相場を元に固定金額で支給するのかは、会社によって異なります。
2. 出張手当の税金について
出張手当というのは、経費ではなく「給与の一部」として従業員に支給されます。従業員からすると、所得が増えるといううれしさがあるかもしれませんが、税金に関して気になる方もいるかもしれません。
また、人件費を担当する方は、会社としてどのように税処理をすればいいのかわからないこともあるでしょう。
ここでは、出張手当の税金について解説します。
2-1. 出張手当の非課税の上限
出張手当は、経理上の扱いでは「旅費交通費」に分類されます。そのため、毎月支払われる給与と異なるので、所得税の課税対象にはなりません。また、「給与」ではないため、社会保険料が上がることもなく、住民税の計算にも含まれることもありません。
非課税の上限は基本的に決められていませんが、下記のような規程があります。
(非課税とされる旅費の範囲)
9-3 法第9条第1項第4号の規定により非課税とされる金品は、同号に規定する旅行をした者に対して使用者等からその旅行に必要な運賃、宿泊料、移転料等の支出に充てるものとして支給される金品のうち、その旅行の目的、目的地、行路若しくは期間の長短、宿泊の要否、旅行者の職務内容及び地位等からみて、その旅行に通常必要とされる費用の支出に充てられると認められる範囲内の金品をいうのであるが、当該範囲内の金品に該当するかどうかの判定に当たっては、次に掲げる事項を勘案するものとする。(平23課個2-33、課法9-9、課審4-46改正)(1) その支給額が、その支給をする使用者等の役員及び使用人の全てを通じて適正なバランスが保たれている基準によって計算されたものであるかどうか。
(2) その支給額が、その支給をする使用者等と同業種、同規模の他の使用者等が一般的に支給している金額に照らして相当と認められるものであるかどうか。
ただし、非課税になるのはあくまでも「出張業務に関わる支出」に対するものだけです。例えば、出張の帰りに個人的な旅行をして、そこに日当がつく場合は「給与所得」と認定されるので注意しましょう。
2-2. 出張手当に消費税はつく?
国内の出張のように、「通常必要となる費用」の消費税に関しては税法上で「課税仕入」となっています。
出張手当は「通常必要となる費用」に分類されるため、消費税がつくことになります。つまり、消費税の計算時には、出張手当にかかった消費税の分だけ安くできるということです。
ただし、課税仕入れに該当するのは、「出張で通常必要どなる金額の範囲である」となっている点には注意が必要です。手当に対して明確な上限が決められているわけではありませんが、あまりにも高額な手当は「通常必要となる」と判断されないことがあります。
出張手当の額は地位や役職によって異なるため、場合によっては高額な手当となるケースもあるかもしれません。しかし、不当に高額だと判断された場合は、税法上の処理も変ってくるので注意しましょう。
3. 出張手当の3つのメリット
会社が従業員に対して出張手当を支給することで得られるメリットは、以下の3つが挙げられます。
- 法人税・所得税や社会保険料が軽減される
- 従業員の手取り額が多くなる
- 従業員のモチベーションが高まる
ここでは、これらのメリットについて解説します。
3-1. 法人税・所得税や社会保険料が軽減される
出張手当は経費として計上できるため、法人税を減らせます。また、国内出張に対する出張手当であれば、仕入れ税額控除の扱いとなり消費税を減らす効果もあります。
従業員の給与額に算入しないため、社会保険料の算定にも含まれません。結果的に、同じ金額を給与で支給するよりも社会保険料の金額が低く抑えられ、会社負担分の社会保険料も軽減されます。
3-2. 従業員の手取り額が多くなる
出張手当のメリットとして、従業員の手取り額が多くなることが挙げられます。出張手当は給与所得ではなく立替経費として支給され、所得税や住民税、社会保険料の対象外となるためです。
たとえ特定の時期に出張が多く入り、出張手当が多く支給された場合でも、従業員にとって税金や社会保険上の不利益は発生しません。
3-3. 従業員のモチベーションが高まる
出張手当は、従業員のモチベーションが高まるメリットがあります。多くの会社では、出張手当を固定された金額で支給しており、従業員は手当を自由に使うことができます。
一般的に、食事代などを安く抑えても余った手当を会社に返す必要はありません。従業員にとっては臨時収入のようなものです。
出張時の金銭的負担をカバーできる適切な額の出張手当があれば、「出張の度にお金を使う」不満を回避できます。そのため、従業員のモチベーションを高めることが期待できるのです。
4. 出張手当の3つのデメリット
出張手当は、メリットがある反面、下記のようなデメリットもあります。
- 会社の支出が増える
- 適正な出張旅費規定の整備が必要
- 高額な場合には税務調査で指摘されるおそれがある
ここでは、会社にとってどのようなデメリットが懸念されるのかについて説明します。
4-1. 会社の支出が増える
出張手当の主なデメリットは単純に会社の支出が増えることです。法律上は支給しなくてもよい手当を出張のたびに支給するため、会社の支出が増加します。
ただし、従業員にとっても出張により金銭的な負担が増えることは事実です。出張手当は従業員の金銭的負担の軽減措置であるため、「余計な支出」と捉えることは早計でしょう。
適正な出張手当を支給するほうが従業員満足度を高め、結果的に会社の利益につながります。
4-2. 適正な出張旅費規定の整備が必要
会社で出張手当を支給するためには「出張旅費規定」を整備する必要があります。整備にあたり手間や時間がかかる点ではデメリットといえるでしょう。
出張旅費規定では、「出張」の定義や支給する手当の具体的な金額、社内の申請手続きなどを明確に定めなければなりません。従業員にとっても、出張手当はどのような基準でいくら支給されるのか、社内に明確な規定がなければ不信感を抱きます。
また、税務調査などがおこなわれた際に、出張手当を経費として計上する根拠もなくなってしまいます。手間はかかりますが、出張旅費規程は重要性が高いため必ず整備しましょう。
4-3. 税務調査の対象になるおそれがある
出張手当は給与所得ではなく立替経費として計上できますが、適正な金額で支給されていることが前提です。
法律等で具体的な金額は定められていないものの、あまりにも高額な手当が支給されている場合は注意が必要です。出張に伴う金銭的な負担をカバーする本来の目的を超えている、とみなされる可能性があります。
税務調査などがおこなわれた際に「出張手当を悪用して不当に税額を少なくしている」と脱税の疑いをかけられかねません。
出張手当の趣旨を理解して、客観的に適正な金額で支給するようにしましょう。次章で出張手当の相場も紹介していますので、参考にしてみてください。
5. 出張手当の相場
出張手当の金額は、会社の規模や給与水準などによって異なりますが、おおよその目安は下記のとおりです。
– | 国内出張(日帰り) | 国内出張(宿泊) | 海外出張 |
一般社員 | 2,094円 | 2,355円 | 北米地域:4,913円
中国地域:4,514円 |
部長クラス | 2,666円 | 2,900円 | 北米地域:5,593円
中国地域:5,185円 |
– | 国内出張(日帰り) | 国内出張(宿泊) | 海外出張 |
一般社員 | 2,094円 | 2,355円 | 北米地域:4,913円 中国地域:4,514円 |
部長クラス | 2,666円 | 2,900円 | 北米地域:5,593円 中国地域:5,185円 |
出典:2019年度 国内・海外出張旅費に関する調査|産労総合研究所
なお、多くの会社では、従業員の地位や役職ごとに異なる出張手当を定めています。
交通費や宿泊費を除いて、食事代などの一般的な生活レベルの費用と出張に対する慰労という観点では、妥当な金額といえるでしょう。
6. 出張手当制度の導入方法
最後に、出張手当制度を社内に導入する際の参考手順を説明します。なお、顧問契約の社労士がいる場合には、社労士に相談するのも有効です。
主なフローは、以下のようになります。
- 出張旅費規程を作成する
- 規定や申請方法を社内に周知する
- 運用を開始する
ここでは、それぞれのフローを詳しく解説していきます。
6-1. 出張旅費規程を作成する
まずは出張手当の金額や出張の定義(会社からの距離など)を「出張旅費規程」で定めなければなりません。
規定した出張手当は、従業員が出張するたびに支給する必要があるため、過不足が無いように相場情報を参考にしながら検討を進めます。金額は人事部や経理部など限定的な部署だけで考えるのではなく、実際に支給する部署の長とも相談しながら検討するとスムーズです。
また、社内における申請方法や開始時期もあわせて検討します。出張手当を支給する際に、誤って課税対象の給与項目を使うことのないよう、給与計算担当者との調整も済ませておくと安心です。
6-2. 規定や申請方法を社内に周知する
出張旅費規程を整備したあとは、開始時期や申請方法を含めて社内全体に周知することも必要です。
これまで出張手当を支給していなかった場合には、あらためて出張手当の趣旨と金額の根拠も説明すると、従業員からの理解を得やすくなります。
出張手当は、出張する従業員本人や所属部署、人事部、経理部など複数の担当者が関わってきます。認識誤りが無いよう正確に周知しましょう。
6-3. 運用を開始する
出張手当に関して社内への周知を済ませたあとは、あらかじめ決定しておいた日付で運用を開始します。
社内で、出張手当が浸透するまでの間は、申請誤りや漏れが無いように必要に応じて各部署の長にも協力を仰ぎましょう。
実際に運用を開始してみると予測していなかったトラブルが発生することもあります。運用するうえで生じた課題については、関係者で共有して適切な改善をしながら、社内で定着するように取り組みましょう。
7. 出張手当はルールを決めて的確に運用しよう
出張手当は、法的に導入が義務付けられている手当ではないため、企業側にとっては不要と思う方もいるかもしれません。しかし、出張手当は損金として参入することが可能なので、企業にとっては節税対策となります。また、国内出張の手当は消費税の課税対象となるため、国内出張が多い会社であればさらなる節税対策が可能です。
従業員にとっても、出張による持ち出し分を支給してもらえれば満足度が高まりますし、会社に対する信頼にもつながるので仕事へのモチベーションアップになります。
「出張旅費規定を定めなければならない」という手間はありますが、的確に運用すれば会社へのメリットが見込めるので、まだ導入されていない場合は検討してみることをおすすめします。
「出張費の規定の作り方に悩んでいる」
「旅費交通費に関する基本的な知識をつけたい」
「仮払の運用方法がわからない」などなど出張費に関して不安や疑問を感じたことはないでしょうか。
交通費出張費は会社が大きくなるにつれて、件数が増えていくものですが、それに伴って日当や各種手当など複雑な要件や規定を定める必要があります。そこで当サイトでは出張費に関する基本知識から出張費の規程の作り方をまとめた資料をご用意しております。
旅費精算規定を作る際の手順から、よくある疑問まで網羅的に解説しておりますので、実際に社内規定やルールを作成する際に参考にしていただけます。資料は無料ですのでこちらから資料をダウンロードしてご覧ください。
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