タレントマネジメントは従業員の能力やスキルに着目したマネジメント方法です。タレントマネジメントによって従業員の能力やスキルに応じた人材配置が可能なため、組織の力を高めることが期待できます。一方で、実施にあたってはさまざまな課題が発生します。

この記事ではタレントマネジメントのメリットやフェーズごとによくある課題や解決方法を解説します。

1. タレントマネジメントとは

タレントマネジメントとは従業員の能力やスキルなどに基づいて採用や人員配置、評価、教育をするマネジメント手法です。従業員ごとの能力やスキルに着目するため、個々の能力を最大限に活かすことが可能です。

1-1. タレントマネジメントが必要な理由

タレントマネジメントが企業に必要な理由は労働人口減少に対応するためです。厚生労働省の発表によれば、日本の生産年齢人口（15歳～64歳）は年々減少傾向にあり、1995年には8,717万人だったのが、2030年には6,957万人まで減少することが予想されています。

このような働き手が減少していくなかで企業が事業を続けるためには、限られた人材を有効活用することが重要です。そのため、従業員の能力やスキルに基づいたマネジメントが可能なタレントマネジメントが必要とされています。

また、タレントマネジメントは多様な働き方にも対応可能です。タレントマネジメントであれば正社員だけでなく契約社員やフリーランスなど、能力やスキルだけでなく雇用形態に適したマネジメントにつなげられます。

参考：経済社会情勢の変化｜厚生労働省

2. タレントマネジメントのメリット

働き手の減少が予想されるこれからの日本の企業に求められるタレントマネジメントは、実施することで次のようなメリットにつながります。

2-1. 人材のデータ管理を効率化できる

タレントマネジメントはシステムを活用しておこなわれます。システムを活用することで人材のデータを一元管理可能です。紙やExcelなどで管理している場合、複数の書類やファイルにわたって従業員のデータが記載されているケースがあります。そのため、人材データの管理コストが発生してしまっていました。

しかし、システムを用いたタレントマネジメントであれば人材データを一元で管理可能です。そのため、人材データの管理を効率化できます。

2-2. 情報の共有がスムーズになる

タレントマネジメントはシステムを用い一元管理するため、従業員データの情報共有がスムーズに行えます。紙やExcelの場合、情報共有に時間がかかってしまうだけでなく、情報の共有漏れも発生する可能性も考えられます。一方、タレントマネジメントはシステムを用いることで情報を一元管理できるため、簡単に全社に共有可能です。

3. タレントマネジメント導入前の課題

タレントマネジメントの導入前としてよくあるのは以下の2つです。

• 人事戦略の課題が定まっていない
• 運用にかかる人的負担が大きい

3-1. 人事戦略の課題が定まっていない

タレントマネジメントを実施するには、自社における人事戦略の課題を定めておく必要があります。人事戦略の課題が定まっていない状態では、タレントマネジメントのメリットや効果が得られません。

そのため、タレントマネジメントを実施するにあたって、自社の人事戦略を明確にして課題を洗い出すようにしましょう。

3-2. 運用にかかる人的負担が大きい

人事の業務領域は教育や採用、評価など幅広く、人事担当者の業務負担が多くなってしまいます。そのため、タレントマネジメントのように人材管理や人事についての施策を検討する余裕がないかもしれません。

タレントマネジメントの運用をするうえでは、人事担当者の負担が大きくならないように、システムの導入なども検討しましょう。

4. タレントマネジメント導入時の課題

タレントマネジメント導入時の課題として、以下が挙げられます。

• 業務フローが設計できていない
• データが不足していて分析できない

4-1. 業務フローが設計できていない

タレントマネジメントを実践するには、従業員の情報が欠かせません。タレントマネジメントに必要な従業員の情報は、常に変化しています。例えば従業員の基礎情報は人事担当者が、従業員の評価についての情報は上司が入力するといったように、無駄のない業務フローが設計できていないと、タレントマネジメントの定着につながりません。

4-2. データが不足していて分析できない

上述のとおり、従業員の情報がなければタレントマネジメントが実践できません。そのため、社内の従業員のデータがどこにあるかわからない、従業員のスキルやキャリアがわからないといった場合は、タレントマネジメントを実践できません。

5.タレントマネジメント定着までの課題

タレントマネジメントは導入したら完了ではありません。導入後に定着するまでも次のような課題が発生する可能性があります。

• 人材データの管理を怠る
• 手段が目的化している
• PDCAを回せていない

5-1. 人材データの管理を怠る

タレントマネジメントにはさまざまな人材データが蓄積されています。このデータを有効活用するためには人材のデータを常に最新にしている必要があります。人材データの管理を怠ってしまうと、過去のデータがそのままになってしまい、適材適所の人材配置ができないかもしれません。

5-2. 手段が目的化している

タレントマネジメントはデータを蓄積することが目的ではありません。蓄積したデータを分析して育成や採用、配置に活かすことが目的です。そのため、データの蓄積が目的となってしまうとタレントマネジメントの成果が得られず定着しづらい可能性があります。

5-3. PDCAを回せていない

タレントマネジメントに蓄積されたデータを分析・活用し、継続してPDCAを回すことが大切です。タレントマネジメントによる効果を高めるのであれば、継続してPDCAを回していきましょう。

6. タレントマネジメントの課題解決方法

タレントマネジメントの課題解決方法として、以下が挙げられます。

• 従業員のデータの管理を徹底する
• タレントマネジメントにおける目的を常に意識しておく
• PDCAを回して目的により近づける

特に従業員のデータはタレントマネジメントの肝ともいえる情報なので、適切に管理するようにしましょう。

6-1. 従業員のデータの管理を徹底する

タレントマネジメントにおける課題を解決するためには、従業員のデータ管理を徹底しましょう。タレントマネジメントでは従業員のデータは、欠かせない要素です。従業員のデータを常に最新のものにしておくことに加えて、詳細な情報を収集しておくことが大切です。例えば自社に入社してからの実績などをまとめておけば、自社に適した人材の採用にも役立てられます。

6-2. タレントマネジメントにおける目的を常に意識しておく

タレントマネジメントは従業員の情報を管理して、さまざまな施策を講じることが目的ではありません。人材育成をはじめとして、人事における課題を解決することが目的です。人材の育成や組織力の強化で成果を挙げるには、時間を要してしまいます。そのため、ついつい当初の目的を忘れてしまいがちですが、常に目的を意識しておくようにしましょう。

6-3. PDCAを回して目的により近づける

タレントマネジメントでの目的を達成するには、PDCAを回すことが大切です。タレントマネジメントを実行しても成果がすぐに出るとは限りません。そのため、成果につながらなかった場合は問題点を洗い直して、再度計画を立案から実行に移しましょう。PDCAを回し続けることでタレントマネジメントでの目的達成や人事に活かせます。

7. タレントマネジメントの課題を解決するときのポイント

タレントマネジメントの課題を解決するときのポイントとして、タレントマネジメントシステムの導入が挙げられます。

タレントマネジメントシステムとは、タレントマネジメントの実行に適した次のような機能が備わったシステムです。

• 人材データの一元管理機能
• 人材データの分析機能
• 従業員の目標や評価管理機能
• 人材育成・人材配置機能

タレントマネジメントの実行に適した機能を活用することで、業務を効率化できるため、担当者の負担も軽減できます。また、タレントマネジメントシステムを導入することで、次のような課題が解決可能です。

• 人材不足
• 能力やスキルに応じた人材配置
• 人材育成
• 人材データ管理

7-1. 人材不足

タレントマネジメントシステムに蓄積された従業員のデータを活用することで、人材不足という課題を解決できます。例えば従業員データに基づいた従業員を、人材が不足している部署に配置できます。

また、タレントマネジメントシステムのデータをもとに、人材が不足している部署が求める従業員像を明確にすれば、採用活動にも活かせるでしょう。

7-2. 能力やスキルに応じた人材配置

タレントマネジメントシステムでは従業員のデータを検索、抽出可能です。そのため、従業員の能力やスキルをすぐに把握できるため、スピーディに能力やスキルに応じた適切な人材配置がおこなえます。

能力やスキルに応じた適切な人材配置は、企業だけでなく従業員にもメリットをもたらします。能力やスキルに応じた人材配置を施すことで、従業員のモチベーションや自社への信頼も高まります。

7-3. 人材育成

タレントマネジメントシステムは、人材育成にも活用可能です。タレントマネジメントシステムで、優れた成果を出す従業員の行動特性（コンピテンシー）を分析することができるためです。分析結果を活用することで、自社が求める従業員像へと育てられます。

7-4. 人材データ管理

タレントマネジメントでは、従業員のデータを収集し管理することが大切です。タレントマネジメントシステムであれば、従業員のデータ収集がシステム上で完了します。そのため、従業員に記入用紙を配り回収するといった手間を省けるでしょう。同様に、従業員の情報に更新があった場合でもシステム上で完了します。

タレントマネジメントシステムの導入で、タレントマネジメントに取り組む担当者の負担を大幅に軽減可能です。

8. タレントマネジメントシステムの失敗例

タレントマネジメントシステムを導入することで、人材データの一元管理や人材データの分析が可能になります。しかし、システムを導入してもタレントマネジメントに失敗してしまう事例もあります。

8-1. 従業員の理解が得られていなかった

タレントマネジメントシステムには従業員の能力やスキルなどを蓄積していきます。しかし、従業員の理解が得られていなかったがために、能力やスキルなど従業員の情報が十分に集められないケースがあります。十分なデータが集められないと、タレントマネジメントの失敗につながりかねません。

8-2. システム導入だけで成果が出ると認識していた

先述のようにタレントマネジメントの目的は、蓄積された情報を分析して、育成や教育などに活かすことです。システムはあくまで手段でしかありません。そのため、タレントマネジメントシステムを導入したら成果がでるという認識でいては、タレントマネジメントの失敗につながってしまいます。

8-3. 既存の人事制度と連携できなかった

タレントマネジメントシステムと自社の既存の人事制度とが連携できないことも失敗の事例として挙げられます。タレントマネジメントが既存の人事制度にどのようなメリットをもたらすかをしっかりと把握したうえで、システム導入を進めていきましょう。

9. タレントマネジメントシステムを活用してタレントマネジメントを進めよう

タレントマネジメントの課題は、人事戦略の課題が定まっていないといった実施前の課題もあれば、業務フローが設計できていないといった実施時の課題も挙げられます。

タレントマネジメントの課題を解決するには、従業員データの管理の徹底やPDCAを回すことを意識しましょう。また、タレントマネジメントシステムの導入もおすすめです。タレントマネジメントシステムであれば、効率的にタレントマネジメントを進めていけます。