賃金総額とは?含まれるもの・含まれないものや計算方法を解説
更新日: 2025.3.11 公開日: 2024.2.13 jinjer Blog 編集部

「賃金総額とは?」
「賃金総額に含まれるもの・含まれないものとは?」
このようにお困りではありませんか。
賃金総額とは労働者への1年間の支払いを合算したもので、平均賃金の算出に必要です。
本記事では賃金総額の概要や含まれるもの・含まれないものを解説します。賃金総額と手取りの違いや賃金総額の見込額の計算方法を知りたい方もぜひご覧ください。
目次
労務担当者の実務の中で、給与計算は出勤簿を基に正確な計算が求められる一方で、Excelからの手入力や別システムからのデータ共有の際、毎月のミスや抜け漏れが発生しやすい業務です。
さらに、昇格や人事異動に伴う給与体系の変更や、給与計算に関連する法令改正があった場合、更新すべき情報も多く、管理方法とメンテナンスにお困りの方もいらっしゃるのではないでしょうか。
そんな担当者の方には、人事労務から勤怠管理までが一つになったシステムの導入がおすすめです。
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1. 賃金総額とは?労働保険における意味


まずは労働保険における賃金総額とはどのような賃金を指すのか、名前だけではわかりにくい詳細を確認しておきましょう。
1-1. 労働の対象として支払うものの総額
労働保険における賃金総額は、企業が労働者に対して支払うすべての賃金をさすものです。たとえば、給与や各種手当などの毎月支給するものや、通勤手当や住宅手当、休業手当などの各種手当が該当します。また、3ヶ月以内毎に支給されるボーナスも対象です。
前払いした退職金などの特殊なケースも対象になりますが、安易に「従業員に払うすべてのお金」だと考えるのは間違いです。臨時に支払われた賃金や夏と冬の2回に分けたボーナスなどは賃金総額に入りません。
賃金総額に含まれるものと含まれないものは、後ほどより詳しく解説していきます。
1-2. 賃金総額の重要性
賃金総額は労働保険において非常に重要な金額です。
休業手当や解雇予告手当、年次有給休暇の1日当たりの支給額など、さまざまな手当や支給額を決定するもとになるのが「平均賃金」です。この平均賃金を算定するために必要な金額が賃金総額です。
そのため賃金総額が間違っているとあらゆる手当や賃金が誤って算出されてしまいます。計算ミスがないことはもちろんですが、含まれるものと含まれないものを正しく理解して算定することが大切です。
1-3. 賃金総額と手取りの違い
賃金総額は従業員に支給する賃金の総額であることから、手取りと混同されてしまうことがあります。
賃金総額と手取りの主な違いは、税金・社会保険料の控除の有無や算出期間です。
| 賃金総額 | 手取り | |
| 控除の有無 | 無 | 有 |
| 算出期間 | 毎年4月1日~翌年3月31日まで | 1月1日~12月31日まで |
賃金総額は、税金や社会保険料などを控除する前の支払総額のことです。また手取りと異なり、賃金総額には法律の定めによって含まれない支払いがあります。
賃金総額=手取りだと勘違いして計算すると大きなずれが発生してしまうため、この違いは十分に理解しておきましょう。
2. 賃金総額に含まれるものと含まれないもの


賃金総額を計算するうえで「何が含まれて何が含まれないのか」は非常に重要な部分です。それぞれしっかりと確認しておきましょう。
2-1. 賃金総額に含まれるもの
以下は賃金総額に含まれる主要なものです。
ボーナスは支払う間隔によって含まれる場合と含まれない場合があるため、取り扱いに注意しましょう。
| 賃金総額に含まれるもの | 概要 |
| 基本賃金 | 時間給・賃金・日給・月給など |
| 賞与(3ヶ月を超えない間隔で支払われる場合) | 3ヶ月以内毎に支払われるボーナス |
| 通勤手当 | 課税分・非課税分とともに含まれる |
| 定期券 回数券 |
労働者が通勤するための現物給与支給分 |
| 超過勤務手当 深夜手当など |
労働者の通常勤務時間外労働への手当 |
| 扶養手当 子供手当 家族手当 |
労働者本人以外に関する手当 |
| 技能手当 教育手当 |
労働者それぞれの能力や資格などに対する手当 |
| 特殊作業手当 | 危険・有害など、特殊な作業環境で勤務する労働者への手当 |
| 調整手当 | 新卒の労働者に対する初任給調整手当など |
| 地域手当 | 都市手当や地方手当、寒冷手当や単身赴任手当など |
| 住宅手当 | 労働者の家賃補助の手当 |
| 奨励手当 | 皆勤手当や精勤手当など |
| 生活補給金 物価手当 |
労働者の家計補助の手当 |
| 休業手当 | 労働基準法第26条に基づく、会社都合により労働者を休業させた場合に支払う手当 |
| 宿直手当 日直手当 |
労働者の宿日直勤務や宿日直勤務への手当 |
| 雇用保険料 社会保険料など |
労働者負担分を事業主が負担する場合 |
| 昇給差額 | 労働者の離職後に支払われた場合で、在職中の支払確定分を含む |
| 前払い退職金 | 原則、支給基準や支給額が明らかな場合は含む |
| その他 | 不況対策による賃金控除分が、労使協定によってさかのぼり支払われる場合の給与 |
上記以外に、年次有給休暇中や公民権行使のための休業中に支払われる賃金についても賃金総額に含みます。また事業主が顧客からチップなどを受け取り、全労働者らにチップを均等に配分した場合なども賃金総額に含めましょう。
2-2. 賃金総額に含まれないもの
賃金総額に含まれないものは以下の通りです。
| 賃金総額に含まれないもの | 概要 |
| 結婚祝金 年功慰労金 勤続報奨金 死亡弔慰金 災害見舞金 退職金 |
労働協約や就業規則などの内容不問 |
| 賞与(3ヶ月を超える間隔で支払われる場合) | 夏と冬のボーナスのように、3ヶ月以上の間隔をあけて支払われるボーナス |
| 出張旅費 宿泊費 |
労働者が会社に代わり、立て替えていると考えられるもの |
| 工具手当 寝具手当 |
労働者が自己負担にて用意した用具に対する手当 |
| 休業補償費 | 労働基準法第76条の定めによる、労働者の療養中平均賃金の6割を超える差額分を含めて賃金としない |
| 傷病手当金 | 健康保険法第45条に基づくもの |
| 解雇予告手当 | 労働基準法第20条に基づき、労働者を解雇する際に解雇日より30日以前の予告なしで解雇する場合の手当 |
| 事業主負担の特殊奨励金など | 勤労者財産形成促進法に基づき、財形貯蓄制度などを利用する労働者を援助するための特殊奨励金など |
| 生命保険の掛け金 | 従業員を被保険者として会社が保険会社と契約し、全保険料を会社が負担している場合 |
| 持家奨励金 | 労働者が持家取得のために受ける融資について、事業主が利子補給金などを支払う場合 |
| 住宅(福利厚生施設)の貸与の利益 | 住宅貸与されない全労働者への住宅均衡手当の支給がある場合、賃金となる場合もある |
上記に加えて見舞金や結婚手当など、突発的な理由により臨時に支払われた賃金も資金総額に含みません。また法令や労働協約の定めにない現物給与など、通貨以外のもので支払われた一定の範囲に属しない賃金についても同様です。
参考:労働保険対象賃金の範囲|厚生労働省
参考:労働基準法|e-Gov法令検索
参考:健康保険法|e-Gov法令検索
参考:労働基準法第十二条4|e-Gov法令検索
3. 賃金総額の見込額の計算方法


労働保険料算定において賃金総額の見込額は、「全労働者1ヵ月あたりの賃金総額×月数+賞与などの臨時給与額」にて算出します。確定額については1年度間の実績額です。
労働保険料は、「全労働者の年度内の賃金総額×労災保険率」にて算出します。労働保険の申告・納付(年度更新)は6月1日から7月10日までですが、4月1日から翌年3月31日までの年度内の賃金総額が確定するタイミングは年度末です。
そのため、まず賃金総額見込額によって計算した概算保険料により申告・納付します。続いて、翌年度の年度更新の際に確定保険料を計算して過不足分を清算する仕組みです。一元適用事業に該当する場合は、労働保険料の申告・納付は雇用保険料と合わせておこないます。また、年度更新の手続きは事業所単位でおこなうことも覚えておきましょう。
関連記事:労働保険の年度更新とは?手続き方法・電子申請についても解説
4. 保険関係成立届にも賃金総額見込額の記入が必要


保険関係成立届の保険料算定基礎額の見込額欄にも、賃金総額の見込額を記入します。労働者を1人でも雇用する場合は、雇用形態の種類に関係なく、管轄の労働基準監督署に保険関係成立届を提出しなければなりません。会社を設立した場合だけでなく、新たな支店や営業所を開設する場合にも提出します。
保険関係成立届の提出により、労働保険の適用事業所となります。提出期限は、保険対象となる労働者を雇用した日(保険関係成立日)の翌日から10日以内です。
提出しないまま放置した後に発覚した場合には、さかのぼって労働保険料を徴収されるだけでなく追徴金を徴収されます。
また、万一労働者が労働災害にみまわれた場合は、労災保険給付の全費用を事業主が負担する可能性もいなめません。
5. 賃金総額の理解を深めて正しく経理処理しよう


保険関係成立届への記入や年度更新の際には、算出した賃金総額の見込額を用います。賃金総額の理解を深めて、労働保険の手続きを円滑に進めましょう。



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