男女雇用機会均等法とは?いつから施行?内容や罰則をわかりやすく解説
更新日: 2025.8.19 公開日: 2024.10.11 jinjer Blog 編集部

「男女雇用機会均等法」は、職場における性別による差別をなくし、すべての従業員が平等に働ける環境を整えるために制定された法律です。
違反した場合、訴訟リスクや企業イメージの悪化につながるおそれがあるため、企業は適切な対策を講じる必要があります。
本記事では、男女雇用機会均等法の概要や禁止事項について解説します。違反した際のリスクや、企業が実施すべき具体的な対策も紹介するので、ぜひ参考にしてください。
目次
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1. 男女雇用機会均等法とは

男女雇用機会均等法とは、職場における性差をなくし、男女平等の待遇をおこなうことを定めた法律です。
男女雇用機会均等法では、以下のようなステージでの男女差別を禁止しています。
- 募集・採用
- 配置:昇進・降格
- 教育訓練・福利厚生
- 退職・解雇
また、女性の結婚や妊娠、出産を理由とする不当な扱いも違反とされています。
企業は、職場でのセクシャルハラスメント防止を徹底し、適切な雇用管理をおこなう責任があります。
参考:Ⅲ 働く女性に関する対策の概況(平成15年1月~12月)|厚生労働省
1-1. 男女雇用機会均等法の目的
男女雇用機会均等法の目的は、以下の2点です。
- 雇用分野における男女の均等な機会および待遇の確保を図ること。
- 妊娠中や出産後の女性労働者の健康確保措置等を推進すること。
また、女性が差別を受けず、家庭と仕事を両立できる職場環境を整えることも目的の一つと言えます。
(目的)
第一条 この法律は、法の下の平等を保障する日本国憲法の理念にのつとり雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保を図るとともに、女性労働者の就業に関して妊娠中及び出産後の健康の確保を図る等の措置を推進することを目的とする。(基本的理念)
第二条 この法律においては、労働者が性別により差別されることなく、また、女性労働者にあつては母性を尊重されつつ、充実した職業生活を営むことができるようにすることをその基本的理念とする。
1-2. 男女共同参画社会基本法との違い
男女雇用機会均等法と同じく性別による差別をなくし、均等な機会や待遇の創出を目指した法律に「男女共同参画社会基本法」があります。
男女共同参画社会基本法とは、男女が平等に社会活動へ参加できるようにするため、国や地方自治体、国民がなすべきことを定めた法律で、1999年に施行されました。
男女雇用機会均等法が「雇用」のみに焦点を当てているのに対し、男女共同参画社会基本法は「社会活動」とさらに広い枠組みにおける性差の廃止を目指している点に大きな違いがあります。
2. 男女雇用機会均等法はいつから施行された?制定された背景

男女雇用機会均等法は1985年に制定され、1986年に施行されました。男女雇用機会均等法が定められた背景には、国際的な社会の流れが大きく関係しています。
1960年代の高度経済成長期以降、日本国内の女性労働者数は増加を続け、平均勤続年数も伸びていました。
しかし、男女の賃金体系の差をはじめ、「女性のみ研修に参加させない」「女性にだけお茶汲みをさせる」など、性別による差別が多くの企業で見られたのです。これには、「男は仕事、女は家庭」といった、性別に基いた固定概念が日本社会に深く根付いていたことが影響しています。
その一方で、世界的に男女平等を求める声が高まっており、1975年に国際連合が「国際婦人年」を宣言し、女性差別撤廃への国際的な取り組みが活性化しました。
1979年には女性差別撤廃条約が採択され、日本は1980年に署名し、1985年にこの条約を批准しました。それに伴い、雇用における男女の機会均等を確保するため、法整備をおこなう必要がありました。
そこで成立したのが男女雇用機会均等法です。施行以降、企業はこの法律を遵守し、男女平等な職場環境を実現することを求められています。
参考:Ⅲ 働く女性に関する対策の概況(平成15年1月~12月)|厚生労働省
2-1. 男女雇用機会均等法の改正の歴史
男女雇用機会均等法は1986年に施行されて以来、その時々の社会情勢や性別役割分担意識の変化に応じて改正を重ねてきました。この法令は、労働市場における男女の平等を目指すものであり、性別に基づく差別を排除するための基盤として機能しています。
1999年には、募集や採用、配置、昇進に関する女性の扱いについて、「努力義務」が「差別禁止規定」となりました。同時に、セクシャルハラスメント防止措置が事業主に義務化されたり、是正勧告に従わない企業名が公表される制度が設けられたりするなど、企業に対する強制力が強まりました。
2007年の改正では、女性だけではなく男女双方に対する差別禁止が明確化され、間接差別の禁止も導入されました。
2017年には妊娠や出産を理由とする不利益取り扱いを防ぐための措置を企業に義務化され、2020年にはセクシャルハラスメント対策がさらに強化されました。
このように、男女雇用機会均等法は、職場における性別役割分担意識の変化と共に改正されてきた経緯があります。
3. 男女雇用機会均等法の内容

男女雇用機会均等法で制定されている内容は多岐に渡りますが、ここでは特に企業が抑えておくべきポイントを7つご紹介します。
- 性別を理由とする差別の禁止
- 間接差別の禁止
- 婚姻・妊娠・出産などを理由とする不利益な取扱いの禁止
- ハラスメントの禁止と対策
- 母性健康管理措置
- 男女雇用機会均等推進者の選任
- 深夜業に従事する女性労働者への措置
3-1. 性別を理由とする差別の禁止
男女雇用機会均等法では、以下の雇用管理の各ステージにおいて、性別を理由に差別することを禁止しています。
| ステージ | 禁止事項の具体例 |
| 募集・採用 | ・募集や採用の対象を男女どちらかに限定すること
・男女で異なる採用試験を実施すること ・男性の選考終了後に女性を選考すること |
| 配置 | ・時間外労働や深夜シフトの多い職務を男性のみとすること
・女性にだけ会議の庶務やお茶くみ、掃除当番をさせること ・受付業務を女性のみ担当させること |
| 昇進・降格 | ・女性に昇進の機会を与えないこと
・昇進の合格基準を男女で違う内容にすること ・結婚や妊娠、出産を理由に降格させること |
| 教育訓練 | ・研修の対象を男性のみにすること
・教育訓練の期間を男女で分けること ・一定の年齢に達している女性を教育訓練の対象から除外すること |
| 福利厚生 | ・男性のみ社宅を貸与すること
・女性にのみ配偶者の所得証明を求めること ・婚姻を理由として女性のみを社宅貸与の対象から除外すること |
| 職種や雇用形態の変更 | ・一般職から総合職への変更を女性のみ認めないこと
・女性のみを専門職から事務職への変更の対象とすること ・パートタイムから正社員登用の際に男性を優先すること |
| 退職勧奨 | ・女性にのみ早期退職制度の利用を促すこと
・退職勧奨の年齢を男女で差を設けること ・子どものいる女性にのみ退職を勧めること |
| 定年・解雇 | ・男女別で厚生年金の支給開始年齢に応じた定年を定めること
・一定の年齢の女性のみを解雇対象とすること ・同じ解雇基準を満たしていても女性を優先して解雇の対象とすること |
| 労働契約 | ・既婚の女性のみ労働契約の更新をしないこと
・男性が平均的な営業成績で労働契約を更新されるのに対し、女性は特別な営業成績がない限り更新しないこと |
ただし、特定の職務や業務において性別が業務の遂行に不可欠な場合には、性別に基づく区別が認められることがあります。
3-2. 間接差別の禁止
男女雇用機会均等法では、直接的な性差別だけでなく、間接差別も禁止されています。間接差別とは、性別に関係のない基準や条件が設定されているものの、実質的に特定の性別が不利な扱いを受ける状況を指します。
間接差別となる事例
厚生労働省が定めている間接差別の禁止事項は以下のとおりです。
- 身長・体重・体力を基準とした募集や採用
- 転居に伴う転勤に応じることを条件とする昇進や昇格
- 転勤の経験があることを条件とする昇進
厚生労働省が定めている禁止事項は上記に限りますが、裁判ではほかの要件でも間接差別として認められることがあります。そのため、企業は雇用管理において、性別に基づく不平等を生んでいないかどうか慎重に見直すことが重要です。
女性労働者についての措置に関する特例(第8条)について
男女雇用機会均等法は、男女関係なく、性別を理由とする不合理な差別を禁止しています。
ただし、女性の社会進出が遅れている現実を考慮し、職場において男女間格差を解消する目的で女性労働者に対しておこなう特別措置は法違反とならないとしています。
参考:⑷ 女性労働者についての措置に関する特例(第8条)|厚生労働省
3-3. 婚姻・妊娠・出産などを理由とする不利益な取扱いの禁止
男女雇用機会均等法では、女性の婚姻・妊娠・出産などを理由とする不利益な取り扱いをすることを禁止しています。厚生労働省が定めている禁止事項は以下のとおりです。
- 婚姻・妊娠・出産を理由に退職させるルールを設定してはならない
- 婚姻を理由に解雇してはならない
- 妊娠・出産・産休(労働基準法に基づく休業)を理由に解雇したり、給与を下げたりするなど不利益な扱いをしてはならない
また、妊娠中の女性や産後1年以内の女性に対する解雇は、原則として無効です。ただし、解雇の理由が「妊娠や出産とは関係がない」と証明できる場合は、例外的に解雇が認められることがあります。
3-4. セクシャルハラスメント防止のための措置の義務化
従業員の尊厳を傷つけ、労働環境を悪化させるセクシャルハラスメントは、異性・同性を問わず働く人の尊厳を傷つけて職場環境を害する行為です。
男女雇用機会均等法第11条は、事業主に対しセクハラを防止し、発生時に適切に対応するための措置を講じることを義務付けています。企業は方針の周知、相談窓口設置、再発防止策などを整備し、健全な職場づくりに努めなければなりません。
3-5. 母性健康管理措置
男女雇用機会均等法では、妊娠中または出産後の女性従業員の健康管理に関しても、企業に措置の実施を義務付けています。具体的には、母子保健法に基づく妊産婦健診や出産後1年以内に必要とされる健診を受診するための時間を確保しなければいけません。
また、健康診断の結果を踏まえて医師からの指導があった際は、時短勤務や時差出勤、作業の制限など指導内容を踏まえた措置を講ずる必要もあります。
3-6. 男女雇用機会均等推進者の選任
男女雇用機会均等推進者の役割は、ハラスメントの防止や母性健康管理措置、女性従業員が活躍しやすい職場環境の創出など、男女雇用機会均等法に基づき性差を失くすための取り組み全般を指します。
男女雇用機会均等法では、男女雇用機会均等推進者の選任を努力義務として企業に課しています。男女雇用機会均等推進者を選任または変更した際には、選任届・変更届を各都道府県にある労働局雇用環境・均等部(室)に届け出なければなりません。
3-7. 深夜業に従事する女性労働者への措置
女性も男性と同様に深夜業に従事させることができますが、企業は通勤時や業務遂行時における安全確保に努めるよう、男女雇用機会均等法で定めています。たとえば、送迎バスの運行や公共交通機関が利用できる時間内での通勤設定、女性一人での勤務を避けるなどの対策があげらます。
また、女性従業員を新たに深夜業に従事させる際には、子育てや介護など家庭の事情への配慮も必要です。育児・介護休業法や女性の就業環境指針などでも、女性を深夜業に従事させる際の決まりが細かく定められているため、合わせてチェックしておきましょう。
4. 男女雇用機会均等法違反のリスク

男女雇用機会均等法違反のリスクは以下のとおりです。
- 従業員のモチベーション低下や離職
- 企業イメージの悪化
- 訴訟リスク
4-1. 従業員のモチベーションの低下や退職
法令違反やセクシャルハラスメントが横行する職場では、従業員のモチベーションが低下し、退職率の増加を招くリスクがあります。優秀な人材が流出すると、企業の成長に深刻な影響を与え、業績の悪化や人材不足などの問題を引き起こすおそれがあるでしょう。
さらに、不当な扱いや差別が続くと従業員のストレスや不安が増大し、メンタルヘルスの問題が発生することも考えられます。従業員の健康と働きやすさを確保するためにも、法令の遵守やハラスメント対策の徹底が不可欠です。
4-2. 企業イメージの悪化
男女雇用機会均等法に違反すると、企業イメージが悪化するおそれがあります。法令違反をすると、厚生労働省によって企業名が公表されることがあるためです。
とくに、セクシャルハラスメントやマタニティハラスメントが問題視された場合、企業の社会的信用は大きく損なわれます。取引先や顧客からの信頼を失い、ビジネスチャンスの喪失や取引の中断が生じる可能性が高まるでしょう。
また、企業イメージの回復に長時間を要することも考えられます。なお、厚生労働大臣に虚偽の報告をした場合は、20万円以下の過料に処される可能性があるため、正確な情報の報告と法令遵守が重要です。
4-3. 訴訟リスク
従業員が訴訟を起こし、企業に対して損害賠償を求める場合があります。企業は、賠償金の支払いを命じられるだけではなく、訴訟費用や対応に多くの時間を費やすことになるでしょう。
さらに、男女不平等や差別問題など悪化した職場環境を放置していると、集団訴訟に発展する可能性も考えられます。集団訴訟になれば、法的リスクがさらに拡大することになり、企業にとって重大な問題となるでしょう。
5. 男女雇用機会均等法にもとづき企業がおこなうべき対策

男女雇用機会均等法に基づき、企業がおこなうべき対策は以下のとおりです。
- ハラスメント対策
- 妊娠や出産に関する環境の整備
5-1. ハラスメント防止措置
各企業は、ハラスメント防止のための対策を講じなければなりません。厚生労働省は、雇用上必要なハラスメント対策の措置を講じることを、各企業に義務づけています。
具体的に以下のような対策をおこなえます。
| 対策 | 具体例 |
| セクシャルハラスメントに関する方針の明確化 | ・セクシャルハラスメントの定義や具体例を従業員に周知
・加害者への厳正な対処について就業規則や社内規定に明記 |
| セクシャルハラスメントに対する従業員への教育 | ・ハラスメント研修の実施
・コンプライアンス研修の実施 |
| 被害者からの相談に適切に対応するための体制の整備 | ・相談窓口の設置
・相談窓口と人事部の担当者が連携できる体制の構築 |
| セクシャルハラスメントが発生した場合の迅速かつ適切な対応 | ・被害者への配慮をしつつ、事実関係を迅速に調査
・必要に応じて中立な第三者機関を利用 |
セクシャルハラスメントだけではなく、パワーハラスメントやマタニティハラスメントなどの対策も同時におこなうことが重要です。
5-1-1. セクシャルハラスメント(セクハラ)とは
セクシャルハラスメント(セクハラ)とは、職場内での性的な言動が、以下のいずれかに当てはまる行為を指します。
| 名称 | 内容 | 例 |
| 対価型セクハラ | 労働者の労働条件に不利益をもたらす | 性的言動を拒否したことにより降格、解雇、減給などをされる |
| 環境型セクハラ | 労働者の就業環境を悪化させる | 意に反する身体的接触や性的な発言 |
5-1-1. マタニティハラスメント(マタハラ)とは
マタニティハラスメント(マタハラ)とは、妊娠や出産、育児に関する事柄を理由に、女性労働者が職場で嫌がらせを受けることを指します。
具体的には、妊娠・出産の報告や産前産後休業・育児休業の取得を希望した際に、同僚や上司からの不当な言動によって就業環境が悪化するケースなどです。
5-2. 妊娠や出産に関する環境の整備
妊娠や出産に関する環境の整備は、妊婦を含む従業員の働きやすさを確保し、企業としての責任を果たすために重要です。具体的には、以下のような対策をおこなえます。
- 制度の利用ができることを、妊娠・出産した本人を含め、周りの従業員に周知・啓発する
- 本人の体調に応じて適切な業務を遂行していくことを周知する
- 周りの従業員に業務の偏りが発生することを防ぐため、適切な業務分担をする
適切な対策を講じることで、職場全体の理解とサポートが得られ、妊娠や出産に関するトラブルを未然に防げます。
参考:事業主が職場における妊娠、出産などに関する言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置などについての指針|厚生労働省
6. 男女雇用機会均等法を正しく理解し働きやすい職場づくりを実現しよう

男女雇用機会均等法は、性別による差別をなくし、すべての従業員が平等に働ける環境を整えるために制定された法律です。職場のセクシュアルハラスメントや妊娠・出産等に関するハラスメントについては、事業主が防止措置を講じる義務が条文と指針で定められています。
法律の趣旨を正しく理解し、積極的に取り組むことは、企業の持続的な発展につながります。男女雇用機会均等法に対する理解を深め、従業員が働きやすい職場環境を実現しましょう。
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