健康診断は会社の義務!健診種類と対象者、診断項目や費用負担など基本を解説 - ジンジャー(jinjer)|クラウド型人事労務システム

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健康診断は会社の義務!健診種類と対象者、診断項目や費用負担など基本を解説

患者の足を検査する医師

「健康診断は会社の義務?」

「健康診断を実施する際に会社がすべきことは?」

上記の疑問をお持ちではありませんか。

健康診断は、法律で定められた会社の義務です。従業員に適切な健康診断を実施することについて、会社には責任があります。会社がやるべきことを把握し、円滑な健康診断の実施をはかりましょう。

本記事では、会社の健康診断の法的背景や注意点を詳しく解説します。会社が果たすべき役割や健康診断の受診を拒否する従業員の対処法も紹介するので、ぜひ参考にしてみてください。

深夜残業をしたら健康診断は必要?

深夜労働では健康診断が必要と知っていても、「どれくらいで必要になるの?」「深夜労働がメインではなく、残業が深夜帯に及んでしまった場合も必要?」など、具体的な基準を把握できていないという方もいらっしゃるのではないでしょうか。

そのような方に向け、当サイトでは深夜労働・深夜残業で健康診断が必要になる基準や、受けさせるべき健康診断の項目について、本記事の内容をまとめた資料を無料で配布しております。

また月80時間を超える時間外・休日労働を行い、さらに疲労の強い従業員から申し出があった場合も、過重労働者として医師による面接指導も必要も必要になります。

深夜労働に対する健康診断や、過重労働に関する面接指導の扱いに不安のある方は、こちらからダウンロードしてご確認ください。

1. 健康診断は会社の義務

家のソファで年配女性を診察する医師

健康診断の実施は、会社の義務です。労働安全衛生法第66条には、雇用者が従業員に対して医師による健康診断をおこなうことが明記されています。

企業が健康診断を実施しない場合は罰則が適用されるため、適切な時期に全従業員を対象とした健康診断を実施することが大切です。

なお、健康診断の実施のほかに、以下の実施も義務付けられているため、合わせて押さえておきましょう。

  • 健康診断の結果の記録
  • 労働者への健康診断の結果の通知
  • 健康診断の結果についての医師等からの意見聴取
  • 健康診断の結果に基づく保健指導の実施
  • 労働者の健康のために必要な措置
  • 健康診断結果の所轄労働基準監督署長への報告

参考:労働安全衛生法|e-Gov法令検索

1-1. 健康診断を実施しないとどうなる?

健康診断を実施しない場合、労働安全衛生法違反となり、罰則が科される可能性があります。この場合、労働安全衛生法第120条の罰則が適用となり、50万円以下の罰金を支払わなくてはいけません。

また、労働契約法第5条では、従業員が生命や身体等を安全に確保しつつ労働できるように必要な配慮を講じる安全配慮義務を企業に課しています。健康診断を受診させないことで、万が一業務上で疾患が生じた際は、安全配慮義務の不履行とされ、従業員から損害賠償を請求される恐れもあります。

従業員が健康診断の受診を拒否した場合も、企業側がこれらの罰則や損害賠償の責任を負わなくてはいけません。そのため、従業員にきちんと説明して、健康診断を受診させることが重要です。

参考:労働安全衛生法|e-Gov法令検索

参考:労働契約法|e-Gov法令検索

2. 【会社の義務】健康診断の種類

スマホを見ながらチェック項目にチェックする様子

会社で実施すべき健康診断の主な種類は、以下の2つです。

  • 一般健康診断
  • 特殊健康診断

2-1. 一般健康診断

一般健康診断とは、業種や職種を問わずすべての企業に義務づけられている健康診断のことを指します。従業員の健康状態を把握し、職場環境での健康リスクを早期に発見することが目的です。

一般健康診断には、以下のような種類があります。

雇入れ時健康診断 新たに雇用された従業員が対象で、入社時に実施される
定期健康診断 常時使用される従業員に対して、1年以内ごとに1回実施される
特定業務従事者の健康診断 労働安全衛生規則第13条第1項第2号に掲げる業務に常時従事する労働者を対象に実施される
海外派遣労働者の健康診断 海外に6ヵ月以上派遣される従業員を対象に実施される
給食従業員の検便 給食業務に従事する労働者を対象に実施される

雇入れ時の健康診断と定期健康診断は、すべての企業で共通して実施が必要です。法律で定められた頻度と内容を正確に把握し、適切なタイミングで実施しましょう。

2-2. 特殊健康診断

特殊健康診断とは、法律で定められている有害な業務を担当する労働者を対象に実施される健康診断のことです。一般健康診断とは異なり、特定のリスクを伴う業務環境や作業内容に関連した健康障害を予防することを目的としています。

特殊健康診断には、以下のような種類があります。

じん肺健康診断 じん肺則別表に掲げる粉じん作業従事者などに対して実施される
高気圧業務健康診断 高圧室内業務または潜水業務に従事する従業員を対象として実施される
電離放射線健康診断 エックス線やその他の電離放射線にさらされる業務に従事する従業員を対象に実施される
除染等電離放射線健康診断 除染等業務の従事者に対して実施される
鉛健康診断 鉛等を取扱う業務従事者に対して実施される
四アルキル鉛健康診断 四アルキル鉛の製造、混入、取扱いの業務をおこなう従業員に対して実施される
有機溶剤等健康診断 屋内作業場等(第3種有機溶剤は、タンク等の内部に限る)における有機溶剤業務をおこなう従業員を対象に実施される
特定化学物質健康診断 ・ 安衛法施行令第22条第1項第3号の業務に従事する従業員(石綿等を取り扱い、または試験研究のため製造する業務を除く)
・安衛法施行令第22条第2項に掲げる物を過去に製造し、または取り扱っていたことのある従業員で現に使用しているもの(石綿等を除く)
石綿健康診断 . 石綿等の取り扱い、または試験研究のための製造に伴い石綿の粉じんを発散する場所における業務に従事する従業員
・ 過去に石綿等を製造、または取り扱いに伴い石綿の粉じんを発散する場所における業務に従事させたことのある従業員で現に使用しているもの
歯科医師による健康診断 安衛法施行令第22条第3項に掲げる業務に従事する従業員に対して実施される

特殊健康診断は、実施頻度や項目が法令で厳密に定められています。雇入れ時や配置替え時に必ず実施し、その後も一定間隔で継続的に実施する点が特徴です。

検査項目や実施頻度は対象となる業務によって異なるため、適切に実施するために事前に確認しておきましょう。

3. 健康診断の対象者

カルテを書く医師

健康診断を正しく実施するには、対象者の範囲についても正確に押さえておく必要があります。なお、一般健康診断と特殊健康診断では対象者が異なるため、ここでは一般健康診断の対象者に絞って解説します。

3-1. 会社の役員やアルバイト・パートは対象となる?

労働安全衛生法では、健康診断の対象者は常時使用する労働者と明記されています。主な対象者は以下のとおりです。

  • 正社員
  • 一定条件を満たす契約社員
  • 一定の条件を満たすパートタイム労働者
  • 一部の役員

正社員の場合は、雇用状況や年齢にかかわらず全員が対象となります。

一方で契約社員やパートタイム労働者は、以下のどちらにも当てはまる人が健康診断の対象です。

  • 週の所定労働時間が正社員の4分の3以上
  • 雇用期間が1年以上見込まれる

また、工場長や支店長など、役員でありながら労働者として働く人も対象となります。業務内容によって対象になるかどうかが異なるため、あらかじめ確認が必要です。

参考:労働安全衛生法|e-Gov法令検索

3-2. 従業員の家族は?

従業員の家族に関しては、健康診断を実施する義務はありません。あくまでも、労働安全衛生法で実施が義務付けられているのは、従業員に対してのみです。

そのため、従業員の家族を対象に含めるかどうかは、企業側で自由に決めることができます。企業によっては福利厚生の一環として、従業員の家族に対しても企業負担で健康診断を実施している所もあるようです。

4. 健康診断の検査項目

チェック項目にチェックする医師

健康診断の実施にあたっては、あらかじめ決められた検査項目を満たす必要もあります。一般健康診断と特殊健康診断で、それぞれ実施しなくてならない検査項目が異なるため、次にそれぞれ詳しく解説します。

4-1. 雇入れ時の健康診断・定期健康診断

ここでは、一般健康診断の中でも特に実施頻度が高い、雇入れ時の健康診断と定期健康診断の検査項目について紹介します。なお、雇入れ時の健康診断と定期健康診断の検査項目は共通しており、全部で11項目あります。

  • 既往歴と業務歴の調査
  • 自覚症状及び他覚症状の有無の検査
  • 身長、体重、腹囲、視力及び聴力の検査
  • 胸部エックス線検査(加えて、定期健康診断は喀痰検査も必要)
  • 血圧の測定
  • 貧血検査
  • 肝機能検査
  • 血中脂質検査
  • 血糖検査
  • 尿検査(尿中の糖及び蛋白の有無の検査)
  • 心電図検査

なお、身長や腹囲など一部の検査項目においては、医師が実施の必要がないと認めた場合に限り、定期健康診断で省略することが可能です。

4-2. 特殊健康診断

特殊健康診断に関しては、健診の種類ごとに検査項目がそれぞれ異なります。例えば、有機溶剤を使用する業務に従事している場合は、有機溶剤中毒予防規則の第29条で検査項目が細かく決められており、一部を紹介すると以下の通りです。

  • 業務の経歴の調査
  • 作業条件の簡易な調査
  • 有機溶剤による健康障害の既往歴並びに自覚症状及び他覚症状の既往歴の有無の検査 など

特殊健康診断を実施する際は、あらかじめ都道府県労働局又は労働基準監督署で検査項目を確認しておくのが望ましいでしょう。

参考:有機溶剤中毒予防規則|e-GOV法令検索

5. 健康診断の費用は会社負担?

はてな

健康診断の費用に関しては、労働安全衛生法によって企業側に実施が義務付けられていることから、原則として企業側が負担しなくてはいけません。義務付けられている検査項目の範囲においては、従業員に健診費用を請求することができないため、注意しましょう。

ただし、従業員が希望してオプション検査を追加するような場合は、従業員にオプション検査費用のみを請求することができます。

参考:健康診断の費用は労働者と使用者のどちらが負担するものなのでしょうか?|厚生労働省

5-1 .費用相場

健康診断は保険適用外となるため、自由診療扱いとなります。そのため、費用は医療機関によって異なりますが、1人当たり10,000円~15,000円あたりが相場です。

健康診断の費用は従業員数が多いほど、金額もかなりの額となります。事前に見積もりを取って、総額でいくらかかるのか検査内容と合わせて把握しておくことが必要です。

5-2. 福利厚生費として処理する方法

健康診断の費用は、福利厚生費として経費処理することが可能です。ただし、経費として処理するには、以下の条件を満たす必要があります。

  • 全従業員が健康診断を受診できる制度になっている
  • 企業が医療機関へ直接費用を支払う
  • 健康診断の費用が常識的な金額の範囲に留まっており、健康管理の目的で実施されている

従業員自らが希望する医療機関で健康診断を実施し、費用を立て替えて支払った際は、福利厚生費として処理できないため注意しましょう。

6. 健康診断の実施手順

黒背景でチェック項目にチェックする

健康診断を実施する際に会社側でやるべきことは、以下のとおりです。

  1. 医療機関を選定する
  2. 健康診断の日程や場所を従業員に通知する
  3. 健康診断結果を従業員に通知する
  4. 健康診断個人票を作成して5年間保存する
  5. 定期健康診断結果報告書を所轄労働基準監督署に提出する

それぞれ、順に解説します。健康診断を適切に実施できるよう、会社に何が求められるのかをしっかり理解しておきましょう。

6-1. 医療機関を選定する

健康診断を実施する際は、まず企業が医療機関を選定します。

医療機関は、法定項目をすべて実施できることが必須です。胸部エックス線検査や血液検査など、法令で定められた検査項目が網羅されているか確認しましょう。

受診可能な人数や予約方法も確認すべき項目といえます。従業員数が多い企業では、一度に対応できる人数やスケジュールを柔軟に調整できるかを調べておくことが重要です。

6-2. 健康診断の日程や場所を従業員に通知する

医療機関の選定後は、健康診断の日程と場所を従業員に通知します。

通知する際は、全従業員が確実に受診できるよう配慮することが重要です。メールや掲示板、社内イントラネットなど、さまざまな手段を活用しましょう。

繁忙期などで従業員が多忙な場合は、リマインダーの送付も効果的です。一週間前や前日に再度通知することで忘れ防止につなげられます。

健康診断は法的義務であり、未受診者が出ると企業側に責任が生じるため、受診率向上策をしっかり講じることが大切です。

6-3. 健康診断結果を従業員に通知する

健康診断終了後はすみやかに結果を従業員へ通知しなければなりません。個別封書や専用システムで結果を渡す方法が一般的です。

有所見者(異常所見があった者)には、保健指導や医師の意見聴取などの措置が求められます。産業医や専門医と連携しながら、適切な対応策を講じましょう。

6-4. 健康診断個人票を作成して5年間保存する

企業が従業員の健康診断を実施した際は、結果をもとに「健康診断個人票」を作成して5年間保存しなければなりません。労働安全衛生法に明記されており、企業の法的責任として厳格に求められています

有害物質を扱う業務など特定の条件下で実施される特殊健康診断の場合は、内容によって保存期間が異なるため注意が必要です。適切な期間保存しないと罰則として50万円以下の罰金が科される可能性があるため、事前に確認しておきましょう。

健康診断個人票は、産業医や医療機関が健康診断結果に異常があった従業員に適切な対処を実施する際に重要なデータです。情報の漏洩に注意しながら、適切に保存してください。

参考:労働安全衛生法|e-Gov法令検索

6-5. 定期健康診断結果報告書を所轄労働基準監督署に提出する

定期健康診断結果報告書の提出は、労働安全衛生規則第52条に明記されている重要な義務です。常時50人以上の従業員を雇用する事業者は、報告書を作成して所轄労働基準監督署に提出しなければなりません。

提出方法は、主に以下の2つが挙げられます。

  • 労働基準監督署への直接持参または郵送
  • 電子申請システム(e-Gov)を利用したオンライン提出

報告書の提出期限については「遅滞なく」とされていますが、一般的には健康診断終了後1ヵ月以内が目安です。記入ミスや漏れがあると手続きが滞る可能性があるため、慎重に確認してから提出しましょう。

参考:労働安全衛生法|e-Gov法令検索

7. 健康診断を実施する際の注意点

注意

健康診断を実施する際の注意点は、以下のとおりです。

  • 健康診断の結果を第三者に提供する際は本人の同意を得る
  • 健康診断を受診しない従業員に対策を講じる

7-1. 健康診断の結果を第三者に提供する際は本人の同意を得る

個人情報保護法により、会社が従業員の健康診断の結果を第三者に提供する際は、本人の同意を得ることが必要と定められています。個人情報の不適切な利用や漏洩を防ぎ、労働者のプライバシーを保護する必要があるためです。

同意取得の方法は、健康診断時の案内や掲示などによる黙示的なものでも問題ありません。ただ、誤解やトラブルを防ぐためにも、書面などでできる限り明確に意思確認するよう心がけましょう。

参考:雇用管理に関する個人情報のうち健康情報を取り扱うに当たっての留意事項|厚生労働省

7-2. 健康診断を受診しない従業員に対策を講じる

健康診断を受診していない従業員がいる場合は、放置せず対処する必要があります。

労働安全衛生法では、事業者に対して従業員に健康診断を受けさせる義務が課されているためです。従業員が健康診断を受診していない状況を放置すると、最大50万円以下の罰金を科される可能性があります。

健康診断を受診しない従業員がいる場合は、ヒアリングして理由を聞き出し、適切な対策を講じることが大切です。健康診断が法的義務であることや、重要性について丁寧に説明することも欠かせません。

中には、「会社に健康診断の結果を見られたくない」と考えている従業員もいるかもしれません。会社が健康診断の結果をどう利用するのか、事前に明確にしておくことも必要でしょう。

参考:労働安全衛生法|e-Gov法令検索

8. 健康診断を実施して従業員の健康を守ろう

手を挙げて重ね合わせる

健康診断は、従業員の健康を守るだけでなく、企業が法的義務を果たすためにも欠かせない重要な取り組みです。正社員や一定条件を満たす契約社員・パートタイム労働者を対象に適切な健康診断を実施することが求められています。

未実施や受診率の低下は、法的リスクや従業員の健康被害につながる可能性のある危険事項です。企業は医療機関の選定や受診環境の整備、結果通知の徹底などを通じて確実な対応をおこないましょう。

深夜残業をしたら健康診断は必要?

深夜労働では健康診断が必要と知っていても、「どれくらいで必要になるの?」「深夜労働がメインではなく、残業が深夜帯に及んでしまった場合も必要?」など、具体的な基準を把握できていないという方もいらっしゃるのではないでしょうか。

そのような方に向け、当サイトでは深夜労働・深夜残業で健康診断が必要になる基準や、受けさせるべき健康診断の項目について、本記事の内容をまとめた資料を無料で配布しております。

また月80時間を超える時間外・休日労働を行い、さらに疲労の強い従業員から申し出があった場合も、過重労働者として医師による面接指導も必要も必要になります。

深夜労働に対する健康診断や、過重労働に関する面接指導の扱いに不安のある方は、こちらからダウンロードしてご確認ください。

jinjer Blog 編集部

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