労働安全衛生法における高所作業とは?高所作業の種類や安全対策を解説
更新日: 2026.8.31 公開日: 2025.3.14 jinjer Blog 編集部

高所作業は墜落・転落のリスクが高いため、労働安全衛生法に基づいた厳格な安全基準が定められています。適切な安全対策を講じなければ、労働災害につながる可能性もあるでしょう。
本記事では、労働安全衛生法における高所作業の定義や必要な安全対策を詳しく解説します。高所作業の安全管理を徹底したい方は、ぜひご一読ください。
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1. 労働安全衛生法による高所作業の墜落防止措置の定義とは


労働安全衛生法および労働安全衛生規則に基づき、原則として、高さが2メートル以上の箇所で墜落によって労働者に危険が生じるおそれがある場合、足場を組み立てるなどの方法により作業床を設ける必要があります。こうした高さ2メートル以上の箇所でおこなう作業は、一般に「高所作業」とよばれています。
ただし、作業の性質上、作業床を設けることが困難な場合もあるでしょう。そのような場合には、防網を設置したり、墜落制止用器具を使用させたりするなど、作業の状況に応じた墜落防止措置を講じる必要があります。
参考:労働安全衛生法第21条第2項|e-Gov法令検索
参考:労働安全衛生規則第518条|e-Gov法令検索
参考:安全帯が「墜落制止用器具」に変わります!~ 安全・安心な作業のため、適切な器具への買い換えをお願いします ~|厚生労働省
参考:労働安全衛生法令における墜落防止措置と安全帯の使用に係る主な規定|厚生労働省
1-1. 高所作業で墜落防止措置を講じない場合のリスク
高所作業において墜落防止措置を講じない場合、労働者が墜落・転落し、死亡や重傷といった重大な労働災害につながるおそれがあります。
また、労働基準監督署による監督指導の結果、是正勧告を受けるほか、危険が差し迫っている場合には使用停止等命令が発せられることもあるでしょう。
さらに、法令違反の内容によっては罰則の対象となる可能性もあります。例えば、高所作業において必要な墜落防止措置を怠った場合、労働安全衛生法第21条違反となり、同法第119条に基づき、6ヵ月以下の拘禁刑または50万円以下の罰金が科されるおそれがあります。
加えて、労働災害が発生した場合には、被災者への損害賠償責任が生じる可能性があるほか、企業イメージの低下や採用活動への影響など、経営面にも深刻な影響を及ぼすリスクもあるでしょう。
そのため、法令で定められた安全対策を確実に実施するとともに、定期的に作業環境や設備の点検をおこない、墜落・転落災害の防止に継続的に取り組むことが重要です。
参考:労働安全衛生法第21条、第119条|e-Gov法令検索
関連記事:労働安全衛生法に違反した場合の罰則と違反事例、企業の果たすべき対策を解説
1-2. 【2026年4月施行等】労働安全衛生法改正のポイント
2025年5月14日に改正労働安全衛生法が公布され、多様な人材が安全かつ安心して働き続けられる職場環境の整備に向けた取り組みが段階的に施行されています。
例えば、個人事業者等(一人親方やフリーランスなど)に対する安全衛生対策の拡充が進められ、元方事業者が講じるべき安全措置の対象範囲が拡大されています。
これにより、高所作業を伴う現場では、雇用関係の有無にかかわらず、現場全体で墜落防止対策を徹底することがこれまで以上に重要になります。
また、2028年4月1日から、労働者数50人未満の事業場にもストレスチェックが義務化されることが決まりました。
最新の法改正の内容を正しく理解し、自社の業務内容に応じた安全衛生管理体制を整備しましょう。
参考:労働安全衛生法・作業環境測定法等改正の主なポイントについて~令和8(2026)年度から本格的に施行されます~|厚生労働省
2. 高所作業の種類


高所作業は地上や作業床から2メートル以上の高さでおこなう作業全般を指します。高所作業に該当する作業としては次のようなものがあります。
- 足場を使った建設工事や解体工事
- 天井内の点検業務
- 高層ビルの窓清掃
- 屋外設備の保守点検
なお、これらはあくまでも一例であり、高所作業に該当する作業はほかにも多くあります。
また、作業高さが2メートル未満であっても、墜落や転落の危険がある場所では高所作業に準じた安全対策を講じることが大切です。
2-1. 足場を使った建設工事や解体工事
足場を使った建設工事や解体工事は、高所作業の一つです。足場には単管足場・枠組足場(ビティ足場)・くさび緊結式足場(ヒゲ足場)・移動式足場(ローリングタワー)などの種類がありますが、いずれも条件を満たした場合は高所作業に該当します。
足場の種類や構造は作業の安全性と効率に大きく影響します。現場条件に合わない足場は転落などの事故リスクを高めるので、必ず安全性を最優先に適切なものを選定することが重要です。
2-2. 天井内の点検業務
天井内の点検業務とは、電気工事や配管工事、保守・点検など、天井の点検口から内部に入っておこなう作業を指します。
点検口が高い位置に設置されている場合や、天井裏で墜落のおそれがある場所で作業をおこなう場合には、高所作業に該当します。
点検口への昇降時には脚立や足場を使用することも多く、不安定な姿勢での作業や天井材の踏み抜きによる転落事故にも注意が必要です。
2-3. 高層ビルの窓清掃
高層ビルの窓清掃は、作業用のゴンドラやロープを使用しておこなわれる高所作業です。
ビルの外壁に設置された窓を清掃するためには、地上から手の届かない高さでの作業が必要になります。
そのため、作業員は専用のゴンドラやロープを使って高所で作業をおこない、安全対策を徹底しなければなりません。
2-4. 屋外設備の保守点検
風力発電設備や電波塔、太陽光パネルなどの屋外設備の保守点検は、高所作業に分類されます。
高い場所に設置されているため、定期的な点検やメンテナンスをおこなう際には、高所での作業が必要です。
屋外設備の保守点検は、設備の正常な運用を維持するために欠かせません。安全対策を徹底しながら、適切な方法で点検をおこないましょう。
3. 高所作業で発生しやすい事故


高所作業で発生しやすい事故は主に次の3つです。
- 作業員の転落
- 道具や資材の落下
- 足場の不適正な操作・利用による事故
事故が起きる原因や対策などをそれぞれ見ていきましょう。
3-1. 作業員の転落
高所作業における事故の一つが作業員の転落です。
高所での作業は、足元の不安定さやバランスの崩れによって転落のリスクが高まります。特に、脚立や足場の上で不適切な行動を取ると、事故の危険性が上がるでしょう。また、転落事故は作業員本人だけでなく、下で作業している人にまで影響を及ぼす可能性があります。
脚立の上で無理な姿勢をとったり、別の脚立に飛び移ろうとしたりした場合、バランスを崩して転落するリスクが高くなります。作業員の転落事故を防ぐためには、墜落制止用器具やヘルメットの着用を徹底し、安定した作業環境を整えることが大切です。
3-2. 道具や資材の落下
高所作業は、道具や資材の落下も事故を引き起こすため気を付けなければなりません。
作業中に手を滑らせたり、不安定な場所に道具を置いたりすると、資材や工具が落下する可能性が高くなります。高所から落ちるものは軽量なものでも勢いがついて凶器と化し、下にいる作業員や通行人に大きな被害を与えるおそれがあります。
事故を防ぐためには、道具や資材を置きっぱなしにすることがないように腰袋への収納を徹底し、加えて落下防止用のワイヤーを取り付けるなどの対策が必要です。
3-3. 足場の不適正な操作・利用による事故
足場や高所作業車の不適切な操作は、転倒や衝突事故を引き起こす可能性があります。
高所作業車や移動式足場は、安全に作業をおこなうための必須道具ですが、適切に操作しないと事故を発生させるリスクを高めるものです。例えば、移動式足場のキャスターを固定しないままで作業を始めると、作業中に足場が動き転倒や落下の危険が生じます。
足場や高所作業車を使用する際には、必ず事前に操作手順を確認し、適切な方法で使用しましょう。
4. 高所作業の安全対策


高所作業の安全対策として、装備の適切な使用や足場の設置に加えて、高所作業の危険性に対する教育の実施などが挙げられます。積極的に取り組み、無事故を達成できるようにしましょう。
4-1. 墜落制止用器具の使用
高所作業の際に作業員を守るためには、墜落制止用器具の着用が重要です。ベルトやロープ、フックで従業員の体を固定することで、足を滑らせた場合やバランスを崩した場合の落下を防ぎやすくなります。
なお、墜落制止用器具はフルハーネス型の使用が原則です。ただし、フルハーネス型を使用すると墜落時に地面に到達するおそれがある場合には、高さ6.75メートル以下の箇所に限り、一本つりの胴ベルト型を使用できます。
4-2. 足場の設置
高所作業をおこなうためには、足場の適切な設置が不可欠です。足場の設置は、種類を慎重に選び、法令に従った手順で組み立てましょう。
高所作業では、足場が作業員の安全を確保する基本的な手段です。建物の外壁や屋根・天井などで作業をおこなう場合、足場を使用することにより、安定した作業環境を確保でき転落や事故を防止できます。
適切な足場の設置に加え、足場の安全点検も必ず実施しなければなりません。手すりや交さ筋かいが取り外されていたり、脱落していたりするケースもあり、それらが重大な事故につながるケースがあるからです。
4-3. 高所作業車の使用
高所作業車は広範囲の作業や屋内作業には不向きですが、電波塔や電柱などの高所にある屋外設備の保守点検業務を安全に実施できます。
高所作業車には二段手すりや幅木などの転落防止措置がされており、安全装置や墜落制止用器具の取り付け設備などもあります。適切に使用すれば墜落や怪我などのリスクを大幅に下げることが可能です。
また、墜落制止用器具を正しく利用し、車両を安全に運用できれば従業員の安全を何重にも守れるようになります。
作業床の高さが10m以上の高所作業車の運転には講習が必要になるため、該当する場合は事前に受講する人を選出しておきましょう。
4-4. ヘルメットの着用
高所作業をおこなう際、ヘルメットの着用は必須です。
高所作業において、最も多く発生する事故の一つが転落による頭部の損傷です。厚生労働省の統計によると、はしごや足場からの墜落・転落死亡災害では、頭部への損傷が約73%というデータがあります。
万が一の転落が発生した場合でも、適切なヘルメットを着用することで頭部への損傷を最小限に抑えられるでしょう。
参考:はしごや脚立からの墜落・転落災害をなくしましょう!|厚生労働省
4-5. 高所作業に関連する安全講習の受講
装備や足場によって従業員の安全を守ろうとしても、従業員本人の安全意識が低ければ事故のリスクを下げられません。安全への意識を高め、正しい知識を得るために次のような安全講習の受講も検討しましょう。
フルハーネス特別教育
フルハーネス特別教育は、名称通りフルハーネスを正しく使用するための講習です。フルハーネスの重要性や安全性を理解し、正しく装着することで墜落事故のリスクを下げることが目的です。
労働安全衛生規則では、高さ2メートル以上で作業床の設置が困難な場所において、フルハーネス型の墜落制止用器具を使用する労働者への特別教育が事業者に義務付けられています。
フルハーネス特別教育はさまざまな団体が各地で実施しており、申し込み方法や実施時期が異なります。申し込む際は事業場の近くや、対象者が受講しやすい機関を選ぶとよいでしょう。
参考:「フルハーネス型安全帯使用作業特別教育」について|建設労働災害防止協会
ロープ高所作業特別教育
厚生労働省は、ロープ高所作業に該当する作業をおこなう際にロープ高所作業特別教育の実施を義務付けています。
ロープ高所作業には、ビル外壁のクリーニングや法面の吹き付け作業などで作業床を確保することが難しく、上から吊り下げたロープで体を保持しながらおこなう作業が該当します。
こうした作業ではロープのほどけや切断による墜落事故が発生しやすいため、ロープ高所作業特別教育が義務づけられました。該当する作業をおこなう際は従業員の安全を守るため、受講するようにしましょう。
参考:ロープ高所作業特別教育|一般社団法人 労働技能講習協会
高所作業車運転特別教育
高所作業車運転特別教育は、高所作業車を安全に運転する知識を得るための教育です。作業床の高さが10m未満の高所作業車を操作する場合は受講が義務付けられています。作業床の高さが10m以上上昇する高所作業車の操作には、技能講習も必要になります。
高所作業車は機体本体の操作だけでなく、路面や天候、周囲の状況にも注意し、作業中の人の安全にも配慮しなければなりません。高所作業特別教育を受けることで義務を果たし、安全に運用できるようにしましょう。
参考:高所作業車運転特別教育|一般社団法人 労働技能講習協会
高所作業車運転技能講習
作業床の高さが10m以上になる高所作業車を運転する際は、高所作業車運転技能講習を修了させなければならないと定められています。この講習を受けることですべての高所作業車の運転が可能になります。
作業する高さが10m以上になる場合、墜落事故が発生した場合の被害は重大なものになります。そのような事故が発生しないように、作業員の安全への意識と運転技能を確保することが求められています。
参考:高所作業車運転技能講習|一般社団法人 労働技能講習協会
5. 高所作業の安全確保のために企業が講じるべき対策


高所作業における安全を確保するため、企業には適切な墜落防止対策や安全管理が求められます。主な対策として、次の項目が挙げられます。
- 規格に適合した墜落制止用器具を使用する
- 定期的な点検を実施する
- 対象となる従業員に特別教育を受講させる
それぞれの内容について詳しく解説します。
5-1. 規格に対応した墜落制止用器具を使う
現在使用している墜落制止用器具が現行の規格に適合しているかを確認し、適合していない場合は、現行規格に適合した製品へ交換することが重要です。
また、旧規格のハーネス型安全帯と新規格のランヤードなど、規格や製品の適合性を確認せずに異なる製品を組み合わせて使用すると、墜落時に本来の性能を発揮できないおそれがあるので注意しましょう。
5-2. 定期的な点検を実施する
高所作業の安全性を確保するため、日常点検に加えて、半年を超えない間隔で定期点検をおこなうことが重要です。特に、1年以上使用しているランヤードのロープ類は、短い間隔で目視点検をおこないましょう。
なお、交換時期は製品や使用状況によって異なります。取扱説明書やメーカーの指示に従い、適切な時期に交換することが大切です。
参考:墜落制止用器具の安全な使用に関するガイドラインの策定について|厚生労働省
5-3. 従業員が特別教育を確実に受講できる体制を整備する
事業者は危険または有害な業務に労働者を従事させる場合、労働安全衛生法に基づき特別教育を実施し、労働災害の防止に努めなければなりません。
そのため、対象となる従業員が適切に教育を受講できるよう、次のような体制を整備することが重要です。
- 受講時間の確保
- 費用負担の適切な整備
- 受講対象者および受講履歴の管理
また、教育の実施だけでは十分とはいえません。従業員が教育内容や作業手順を正しく理解し、安全ルールを確実に遵守しているかを継続的に管理する仕組みの構築も必要です。
具体的には次のような取り組みが挙げられます。
- 作業前の安全ミーティングの実施
- 定期的な理解度チェックの実施
- 現場巡視による安全行動の確認
- 教育記録や資格・修了証の適切な管理
これらの取り組みを通じて教育の実効性を高めることで、労働災害の防止につながります。
参考:労働安全衛生法 第六章 労働者の就業に当たっての措置|安全衛生情報センター
6. 高所作業の条件を把握して労働安全衛生法に従った労働環境を作ろう


労働安全衛生法および労働安全衛生規則では、高所作業における墜落防止措置について定めています。具体的には、2メートル以上の箇所で墜落のおそれがある場合の作業床の設置や、墜落制止用器具の使用などです。
適切な安全対策を講じることで、作業員の安全を確保するとともに、労働災害の防止や企業の信頼性向上にもつながります。企業は法令を遵守し、作業員が安全に作業できる環境を整備することが重要です。



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