年俸制でも退職金の支給は必須?メリット・デメリットや導入時のポイントを解説
更新日: 2025.7.18 公開日: 2025.7.18 jinjer Blog 編集部
「年俸制なら退職金は不要?」
「退職金制度を設けないと、採用や定着に不利になる?」
上記のような疑問をお持ちではないでしょうか。
成果主義や職務給の導入が進むなか、年俸制を採用する企業が増加しています。年俸制は、労働時間に関係なく、成果や業績に応じて賃金額を決定する賃金制度です。
一方で、年俸制における退職金制度の位置づけは誤解されやすく、制度の導入・運用にあたっては正しい理解をしておかなければなりません。
本記事では、年俸制における退職金の支給義務の有無や、退職金制度を導入するメリット・デメリット、制度設計上のポイントについて詳しく解説します。人事制度の見直しを検討している企業は、ぜひ参考にしてください。
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1. 年俸制における退職金の支給は義務ではない


年俸制における退職金の支給は義務ではありません。
労働基準法では、退職金の支給について明確な規定はなく、あくまでも企業の就業規則や退職金規定に基づく任意の制度となっています。
とはいえ、一定の条件を満たす場合には、退職金の支払い義務が発生するため注意が必要です。
- 就業規則に退職金規定がある
- 雇用契約書や労働条件通知書に退職金の支給を明記している
年俸制を導入している企業でも、社内規定や過去の運用実績によっては、支払いを巡ってトラブルに発展するリスクもあるため、あらかじめ確認しておきましょう。
法的義務がない一方で、実際には多くの企業が退職金制度を運用しているのが現状です。厚生労働省の調査によると、民間企業92.3%、中小企業は71.5%が退職金制度を設けています。
年俸制を採用している企業においても、退職金制度は、人材確保や企業ブランド維持・向上の面で重要といえるでしょう。
2. 年俸制で退職金制度を導入するメリット


年俸制で退職金制度を導入するメリットは、以下のとおりです。
- 離職防止につながる
- 優秀な人材を確保しやすい
- コスト削減につながる
2-1. 離職防止につながる
退職金制度の導入は、従業員の離職防止につながる効果が期待できます。
多くの企業では、勤続年数に応じて支給額が増額する仕組みを採用しており、従業員にとっては、「長く働くこと」に明確なインセンティブが生まれます。
さらに、役職や評価に応じて退職金の金額が変動する制度設計を採用すれば、従業員のモチベーションやキャリア意欲の向上にもつながるでしょう。
また、退職金は「企業への貢献に対する感謝や評価」の意味合いを含むケースも多く、従業員の帰属意識やロイヤリティを高める役割も果たします。
2-2. 優秀な人材を確保しやすい
退職金制度があることで、優秀な人材を確保しやすくなります。求職者に対して「労働条件が良好で、長期的に安心して働ける職場環境」であることをアピールできるためです。
特に、給与や福利厚生の内容が応募先を選定する際の判断材料となることが多いため、採用における優位性を確保しやすくなります。
結果として、以下のような効果が期待できるでしょう。
- 求人への応募者の増加
- 応募者の質の向上(意欲・スキルの高い人材の獲得)
優秀な人材が定着することで、企業の人材基盤が強化され、中長期的な経営の安定にも寄与します。
2-3. コスト削減につながる
退職金制度の導入は、設計次第で企業にとってコスト削減や節税効果をもたらすことがあります。
例えば、企業年金制度や中小企業退職金共済制度を活用する場合、企業が負担する掛金は損金として処理可能です。経費として計上できるため、法人税を節約できます。
また、退職金は社会保険料の算定対象外となるため、法定福利費の負担を抑えられます。その分、トータルの人件費削減にもつながるでしょう。
さらに、退職金は「退職所得控除」や「2分の1課税」を適用できるため、従業員の税負担が軽くなります。結果として手取りが増えるため、給与を直接引き上げるよりも、従業員満足度の向上につながることもあるでしょう。
3. 年俸制で退職金制度を導入しないデメリット


年俸制で退職金制度を導入しないデメリットは、以下のとおりです。
- 退職時にトラブルに発展する可能性がある
- 離職率が上昇するリスクがある
3-1. 退職時にトラブルに発展する可能性がある
退職金制度を設けていない場合、従業員の退職時にトラブルが発生するリスクがあります。
特に、業績悪化や組織再編などを理由にやむを得ず退職を促す場面において、退職金の有無が従業員の受け止め方に大きく影響します。
退職金があれば、金銭的補償として従業員の生活再建を支援でき、不満や対立を和らげやすくなるでしょう。一方で、退職金制度が存在しないと、従業員の不満が顕在化し、トラブルにつながる可能性があります。
とくに注意すべきは、退職金制度の「廃止」や「縮小」を伴うケースです。これまでの慣行との整合性が問われ、従業員に十分な説明がないまま進めると、労使間の対立や法的トラブルへ発展する可能性も否定できません。
退職金制度は、従業員の信頼関係を維持するためのひとつの手段でもあります。導入しない場合は、代替となる補填制度や運用上のリスク回避策を併せて検討することが重要です。
3-2. 離職率が上昇するリスクがある
退職金制度を導入しない場合、従業員の離職率が上昇するリスクがあります。将来に対する不安や待遇面での不満が早期離職や転職の引き金となるためです。
年俸制は、成果主義に基づいた報酬体系であるため、短期的なインセンティブには優れている一方で、報酬の安定性や将来に向けた蓄積性に欠けがちです。
そのため、長期的なキャリアを築きたいと考える従業員にとっては「長く働くメリットが感じられない」などの不満が生じやすくなるでしょう。
企業の持続的成長には、優秀な人材の確保と定着が不可欠です。従業員が安心して働けるよう、退職金など長期的視点を含んだ制度設計が重要です。
4. 年俸制における退職金制度設計のポイント


年俸制における退職金制度設計のポイントは、以下のとおりです。
- 退職金制度を導入する目的を明確にする
- 自社に合った制度を選択する
- 運用体制を整え従業員に周知する
4-1. 退職金制度を導入する目的を明確にする
まず、退職金制度を導入する目的を明確にすることが重要です。
以下のように、経営戦略や人材マネジメントとの整合性を持たせた目的を定めましょう。
- 従業員が定年まで安心して働ける環境を整備したい
- 中長期的に優秀な人材を確保・定着させたい
- 従業員のライフプランを支援する制度を設けたい
「だれのために・何の目的で・どのような運用を目指すのか」を明確にし、経営層・人事・従業員間で共通認識を持つことが重要です。
4-2. 自社に合った制度を選択する
退職金制度を設計する際は、企業の財務状況や従業員の年齢構成などに応じて、自社に適した制度を選ぶことが重要です。
退職金制度には、主に以下のようなタイプがあります。
| 制度 | 概要 | 特徴 |
| 一時金制度 | 退職時にまとめて支給 | ・運用が簡単でわかりやすい
・企業の一時的な資金負担が大きい |
| 年金制度 | 定年後に分割して支給 | ・資金負担の平準化が可能
・管理や運用に手間がかかる |
| 確定拠出型年金 | 拠出金を従業員が運用 | ・企業の財政リスクを軽減可能
・従業員の理解と協力が必要 |
制度導入にあたっては、将来的なキャッシュフローや持続可能性を見据えた中長期的な視点で検討することが大切です。企業の成長戦略や人材戦略と整合性の取れた設計が求められます。
4-3. 運用体制を整え従業員に周知する
退職金制度を設計し円滑に運用するためには、就業規則や退職金規定を整備し、従業員に周知することが重要です。
規程には、以下のような要件を明記しましょう。
- 支給対象者
- 算定方法
- 支給時期
- 受給権の発生要件
さらに、自己都合退職と会社都合退職の違いや、懲戒解雇時の取り扱いなど、トラブルの原因になりやすい項目も明確に規定しましょう。
また、従業員説明会などを開催し、制度の趣旨や仕組みを丁寧に説明することが大切です。
とくに確定拠出型年金(DC)のように、従業員が自ら資産運用を担う制度の場合は、投資教育の提供も求められます。将来の資金計画を支援するため、動画や老後資金シミュレーションなど、理解を助けるツールを活用するとより効果的です。
企業がサポート体制を整えることで、制度への信頼性が高まり、従業員満足度の向上にもつながります。
5. 年俸制でも退職金制度の整備を検討しよう


年俸制を採用している企業でも、退職金制度の整備は従業員との信頼構築や人材定着において重要な施策となります。
退職金制度の導入により、離職防止や優秀な人材の確保、コスト削減などの効果が期待できます。
一方で、制度が存在しない場合は、従業員の不満や企業イメージの低下などのリスクも考慮しなければなりません。
年俸制の短期成果主義に偏りすぎないよう、長期的な報酬設計として、退職金制度を見直しましょう。



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