裁量労働制とは?2024年法改正のポイントと適用できる職種、メリットやデメリットを解説
更新日: 2026.6.1 公開日: 2025.8.27 jinjer Blog 編集部

裁量労働制が適用できる職種や導入時のメリットとデメリットなど、裁量労働制の導入を検討するにあたって、悩みを抱える人事労務担当の方は多いでしょう。
裁量労働制は専門業務型と企画業務型の2種類があり、特定の業務に対して労働時間をみなし労働時間で計算する制度です。2024年4月には裁量労働制の適用ルールが見直され、対象業務の追加や労働者本人の同意義務化、さらに健康・福祉確保措置の強化などが施行されました。
この記事では、裁量労働制の概要や対象となる職種、改正内容、メリットやデメリットについて解説します。
「みなし労働時間」で運用する裁量労働制ですが、割増賃金の支払いが一切不要になるわけではありません。
特に、労働基準法で定められた法定休日の労働に対しては、企業は35%以上の割増賃金を支払う義務があります 。このルールを見落としてしまうと、意図せず未払い賃金のリスクを抱えることになりかねません。まずは、自社の勤怠管理が法的に問題ないか、基本的なルールから見直しませんか?
◆休日出勤の割増賃金で押さえておくべきポイント
- 裁量労働制でも支払い義務のある「法定休日労働」の定義
- 法定休日と所定休日で異なる割増賃金率の考え方
- 振替休日や代休を取得した場合の賃金計算の注意点
裁量労働制のコンプライアンス体制を強化するために参考になりますので、ぜひこちらから資料をダウンロードしてご活用ください。
1. 裁量労働制とは?

裁量労働制とは、労働者の働いた実時間ではなく、あらかじめ企業と労働者の間で取り決めた一定の時間を労働したものとみなす制度です。
例えば、1日のみなし労働時間を8時間と定めた場合、実際の労働時間に関わらず8時間労働したものと扱われます。業務遂行の手段や配分を個人の裁量にゆだねることで、働き方の柔軟性を高めるのが裁量労働制の特徴です。
1-1. 裁量労働制とほかの労働時間制度との違い
裁量労働制に似た仕組みとして、フレックスタイム制や管理監督者、固定残業代制度などが挙げられることがあります。これらは、制度の目的や労働時間の扱い、残業代の考え方などがそれぞれ異なります。
制度の違いを十分に理解しないまま運用すると、制度の誤適用や残業代の未払いなど、労務管理上のリスクが生じる可能性があります。そのため、人事・労務担当者は各制度の特徴や違いを整理したうえで、自社の業務内容や働き方に適した制度を選択することが重要です。
ここでは、裁量労働制とほかの労働時間制度との主な違いについて解説します。
フレックスタイム制との違い
フレックスタイム制は、一定期間の総労働時間を定めたうえで、労働者が始業・終業時刻を柔軟に決められる制度です。
例えば、1か月の総労働時間を定め、その範囲内で日々の労働時間を調整することができます。これに対して裁量労働制は、実際の労働時間ではなく、あらかじめ定めた「みなし労働時間」を働いたものとみなす制度です。
フレックスタイム制では実際の労働時間をもとに残業時間を計算しますが、裁量労働制では原則としてみなし労働時間を基準に賃金が支払われます。また、フレックスタイム制は幅広い業種や職種で導入できますが、裁量労働制は対象業務が法律で限定されています。制度の目的も異なり、フレックスタイム制は働く時間帯の柔軟性を高めることが目的であるのに対し、裁量労働制は業務の進め方や時間配分を労働者の裁量に委ねる点が特徴です。
管理監督者との違い
管理監督者とは、経営者と一体的な立場で企業の経営や労務管理に関与する管理職を指し、労働基準法第41条により労働時間や休憩、休日の規定が適用されないとされています。
一方、裁量労働制はあくまで労働時間の算定方法に関する制度であり、労働時間の規制自体が適用されなくなるわけではありません。そのため、裁量労働制の対象となる労働者には、休日や深夜労働に関する割増賃金の規定が適用されます。
また、管理監督者として扱うためには、役職名だけで判断されるものではなく、職務内容や権限、待遇などを総合的に考慮する必要があります。実務では、裁量労働制と管理監督者の制度を混同して運用してしまうケースも見られますが、それぞれ制度の趣旨や適用条件が異なるため、正しく区別して理解することが重要です。
固定残業代制度との違い
固定残業代制度は、あらかじめ一定時間分の残業代を賃金に含めて支払う制度です。
例えば、月20時間分の残業代を基本給とは別に支給するなど、一定の残業時間を想定して賃金を設定します。ただし、実際の残業時間が固定残業時間を超えた場合には、その超過分の残業代を追加で支払う必要があります。
一方、裁量労働制は残業代をあらかじめ支払う制度ではなく、労働時間の算定方法を「みなし労働時間」とする制度です。両者は仕組みが大きく異なりますが、実務では混同されることも少なくありません。また、固定残業代制度を導入する場合には、固定残業時間や金額を明確にすることなど、判例や行政通達で示された要件を満たす必要があります。
制度を導入する場合は、このような違いを理解したうえで、適切に運用することが重要です。
2. 裁量労働制の2つのタイプと対象職種

裁量労働制には次の2つのタイプがあります。
- 専門業務型裁量労働制
- 企画業務型裁量労働制
裁量労働制はすべての業務に自由に適用できるわけではなく、法律で認められた一部の業務にのみ導入できます。専門業務型と企画業務型で適用対象となる職種が異なるため、自社の業務が該当するかを確認する必要があります。
【労働時間規制の体系図】

参考:裁量労働制の現行制度の概要 及び経緯等について|厚生労働省
2-1. 専門業務型裁量労働制と対象職種
専門業務型裁量労働制とは、業務の進め方や時間配分を従業員に具体的に指示することが難しいとされる高度な専門知識や技術を要する一部の業務に適用できる制度です。従業員は、業務遂行の手段やスケジュールを自ら判断しながら働けます。
専門業務型裁量労働制を適用できる業務は、厚生労働省令により20種類に限定されています。
【専門業務型裁量労働制を適用できる職種の例】
- 研究職
- システムエンジニア
- 出版記事の記者や編集者
- デザイナー
- コピーライター
- インテリアコーディネーター
- 証券アナリスト
- 公認会計士や弁護士などの専門資格者がおこなう一定の業務
- M&Aアドバイザー
参考:パンフレット「専門業務型裁量労働制について」|厚生労働省
なお、対象となるかどうかは職種名や資格の有無ではなく、実際の業務内容が法令で定められた業務に該当するかどうかによって判断されます。例えば、公認会計士や弁護士などの専門資格を有している場合であっても、担当する業務内容が対象業務に該当しなければ、専門業務型裁量労働制を適用することはできません。
制度の適用にあたっては、業務の内容を具体的に整理したうえで、法令上の対象業務に該当するかを慎重に確認することが重要です。
2-2. 企画業務型裁量労働制と対象職種
企画業務型裁量労働制は、事業運営上の重要事項の企画・立案・調査・分析といった業務に適用される制度です。業務の遂行方法や時間配分について、労働者に広い裁量を認める必要がある業務であることが求められます。
適用には、以下の4要件をすべて満たす必要があります。
- 「事業の運営」に関するものである
- 企画・立案・調査・分析の業務である
- 業務の性質上、遂行の方法を大幅に従業員の裁量にゆだねる必要がある
- 業務遂行の手段や時間配分について従業員に広範な裁量が認められている
さらに重要な要件として、企画業務型裁量労働制は本社・本店など、事業運営上の重要な意思決定がおこなわれる事業場に限定して導入できる制度である点にも注意が必要です。支店や営業所など、事業運営の中枢的機能を担っていない事業場では、原則として適用することはできません。
企画業務型を導入するためには、労使委員会を設置して委員会の全会一致による決議をおこない、労働基準監督署に届け出る手続きが必要になります。導入後も所轄労働基準監督署へ定期報告が必要となるなど、適用のためのハードルが高い点が特徴です。
参考:パンフレット「企画業務型裁量労働制について」|厚生労働省
3. 2024年4月法改正のポイント

2024年4月から裁量労働制のルールが大きく見直されました。専門業務型と企画業務型それぞれに適用要件の変更点があり、さらに両方の制度に共通して労働者の健康管理措置が強化されています。
ここでは、法改正のポイントを解説していきます。
3-1. 専門業務型:対象業務の追加と同意取得の義務化
専門業務型裁量労働制では2024年4月から「M&Aアドバイザーの業務」が新たな対象業務に加わりました。これにより、金融業界でのM&Aの仲介なども裁量労働制の適用範囲に含まれます。
さらに重要な改正点として、従業員本人の同意取得が義務化されました。対象従業員一人ひとりに制度内容を説明し、書面などで同意を得ることが必要となっています。
また、労使協定に必要な項目として「労働者が同意しなかった場合に不利益に扱わないこと」や「同意の撤回手続き」を定める項目も追加されました。
3-2. 企画業務型:労使委員会の運営ルール変更
企画業務型裁量労働制でも、労使委員会の運営や決議に関するルールが強化されています。まず、労使委員会の運営規程に定める事項として、新たに3つのポイントが追加されました。
- 賃金・評価制度の事前説明義務:従業員に適用される賃金や人事評価制度の内容を、労使委員会に事前に説明すること。また、制度変更時には労使委員会への変更内容説明を決議事項とすること
- 適正な運用の確保:制度の趣旨に沿った適正な運用の確保に関する事項(制度の実施状況の把握の頻度や方法など)
- 労使委員会の開催頻度:委員会を6ヵ月以内ごとに1回以上開催すること
加えて、今回の改正で労使委員会の定期報告の頻度が見直されています。具体的な内容としては、決議の有効期間の開始の日から起算して6ヵ月以内に1回、その後1年以内ごとに1回、労働基準監督署へ報告する必要があります。これは改正前の「6ヵ月ごとに1回」よりも報告間隔を緩和する内容です。
3-3. 共通の変更点:健康・福祉確保措置の強化
両方の裁量労働制に共通する大きな改正ポイントが、従業員の健康・福祉を確保するための措置(健康確保措置)の強化です。裁量労働制は労働時間の管理を従業員の裁量に委ねる反面、長時間労働が常態化し健康被害を招くおそれが指摘されてきました。
そのため2024年の改正では、「全従業員に共通で講ずる措置」、「状況に応じ個別に講ずる措置」の中からいずれかの措置を選択して協定し、実施することが求められています。「全従業員に共通で講ずる措置」から少なくとも1つ以上選択し、さらに「状況に応じ個別に講ずる措置」についても必要に応じて実施することが義務づけられています。
<全従業員に共通で講ずる措置>
- 勤務間インターバルの確保
- 深夜業の回数制限
- 労働時間の上限措置(一定の労働時間を超えた場合、裁量労働制の適用解除)
- 年次有給休暇についてまとまった日数を連続して取得することを含めた取得促進
<状況に応じ個別に講ずる措置>
- 一定の労働時間を超える対象労働者への医師の面接指導
- 代償休日・特別休暇の付与
- 健康診断の実施
- 心身の健康問題についての相談窓口設置
- 適切な部署への配置転換
- 産業医などによる助言・指導または従業員への保健指導
4. 裁量労働制では残業代は発生するのか

裁量労働制は、実際の労働時間ではなく、あらかじめ定めた時間働いたものとみなして賃金を支払う制度です。そのため「裁量労働制では残業代は発生しない」と理解されることがあります。
しかし、裁量労働制を導入した場合でも、すべての割増賃金が不要になるわけではありません。労働基準法では、一定の条件に該当する場合には割増賃金の支払いが必要とされています。制度の仕組みを正しく理解していないと、残業代の未払いなどの労務トラブルにつながる可能性もあります。
ここでは、裁量労働制における残業代の基本的な考え方と、割増賃金が発生するケースについて解説します。
4-1. 裁量労働制ではみなし労働時間が適用される
裁量労働制では、実際に働いた時間にかかわらず、あらかじめ定めた時間働いたものとみなす「みなし労働時間」が適用されます。例えば、みなし労働時間を1日8時間と定めている場合、実際の労働時間が7時間でも10時間でも、原則として8時間働いたものとして賃金を計算します。
この仕組みは、業務の進め方や時間配分を労働者の裁量に委ねる制度の性質に基づくものです。そのため、通常の労働時間制度のように、実際の残業時間に応じて残業代を計算する仕組みとは異なります。
ただし、みなし労働時間の設定は自由に決められるわけではなく、業務の内容や実態を踏まえて適切に定める必要があります。また、制度を導入する際には、労使協定や労使委員会の決議など、法律で定められた手続きを満たすことが求められます。
4-2. 深夜労働・休日労働には割増賃金が発生する
裁量労働制を導入している場合でも、深夜労働や休日労働については割増賃金の支払いが必要です。
労働基準法では、午後10時から午前5時までの深夜時間帯に労働させた場合、通常の賃金に25%以上の割増賃金を支払うことが義務付けられています。また、法定休日に労働させた場合には、35%以上の割増賃金を支払う必要があります。
裁量労働制はあくまで労働時間の算定方法に関する制度であり、これらの割増賃金の規定が適用されなくなるわけではありません。そのため、企業は裁量労働制を導入していても、深夜労働や休日労働が発生した場合には適切に割増賃金を支払う必要があります。
制度の趣旨を誤解したまま運用すると、割増賃金の未払いとして労務リスクが生じる可能性があるため注意が必要です。
4-3. みなし労働時間を超える長時間労働への対応
裁量労働制では、みなし労働時間を基準として賃金を計算しますが、実際の労働時間が長時間に及ぶ場合には、企業として適切な対応を取る必要があります。
裁量労働制は労働者に業務の進め方を委ねる制度ですが、企業には従業員の健康を確保する責任があります。そのため、実際の労働時間が過度に長くなっている場合には、業務量の見直しや勤務状況の確認などの措置を講じることが重要です。
また、2024年の法改正では、裁量労働制における健康・福祉確保措置の強化が図られており、労働時間の状況を把握することや、必要に応じて面接指導などをおこなうことが求められています。制度を適切に運用するためには、労働時間の実態を把握し、長時間労働を防止するための管理体制を整備することが重要です。
4-4. 裁量労働制でも労働時間の把握は必要
裁量労働制を導入している場合でも、企業には労働時間の状況を把握する義務があります。
裁量労働制では、実際の労働時間ではなくみなし労働時間を基準として賃金を支払いますが、労働時間の把握が不要になるわけではありません。労働安全衛生法や働き方改革関連法の考え方では、企業は従業員の健康確保の観点から、労働時間の状況を適切に把握することが求められています。
具体的には、タイムカードや勤怠管理システム、パソコンの使用記録などを活用し、客観的な方法で労働時間の状況を確認することが重要です。
労働時間の実態を把握していない場合、長時間労働の把握が遅れ、健康障害のリスクが高まる可能性があります。裁量労働制を適切に運用するためには、労働時間管理と健康管理を両立させる体制を整えることが必要です。
5. 裁量労働制を導入できる企業・できない企業の判断ポイント

裁量労働制は、労働時間ではなく成果や業務遂行を重視する働き方として注目されています。しかし、すべての企業や業務で自由に導入できる制度ではありません。制度の対象となる業務や、労働者にどの程度の裁量を与えることができるかなど、いくつかの条件を満たす必要があります。
また、制度導入後も労働時間の把握や健康確保措置など、企業には適切な労務管理が求められます。これらの要件を満たしていない場合、裁量労働制としての運用が認められない可能性もあります。
ここでは、裁量労働制を導入できる企業かどうかを判断するための主なポイントを解説します。
5-1. 業務内容が対象職種の要件を満たしているか
裁量労働制を導入するためには、対象となる業務が制度の適用要件を満たしている必要があります。
裁量労働制には「専門業務型」と「企画業務型」の2種類があり、それぞれ適用できる業務が限定されています。専門業務型は、研究開発、システムエンジニア、デザイナー、編集者など、高度な専門知識を必要とし、業務の進め方を労働者の判断に委ねる性質がある業務が対象です。
一方、企画業務型は、事業の運営に関する企画・立案・調査・分析など、企業の中枢部門でおこなわれる業務が対象となります。単に専門性があるという理由だけでは裁量労働制を適用できるわけではなく、制度で定められた業務内容に該当するかを確認する必要があります。
対象外の業務に適用した場合、制度の適用自体が無効と判断される可能性があるため、導入前に業務内容を慎重に確認することが重要です。
5-2. 業務遂行方法を労働者の裁量に委ねられるか
裁量労働制は、業務の進め方や時間配分などを労働者の裁量に委ねることを前提とした制度です。そのため、企業が業務の進め方や手順、作業時間を細かく指示している場合には、裁量労働制の趣旨に適合しない可能性があります。
例えば、業務の手順が厳密に定められている業務や、上司の具体的な指示に従って作業を進める必要がある業務では、労働者に十分な裁量があるとはいえません。また、出退勤時間を厳格に指定している場合も、制度の趣旨と整合しない可能性があります。
裁量労働制を適用するためには、労働者が自らの判断で業務の進め方や時間配分を決定できる環境を整えなければなりません。そのため制度導入前には、実際の業務運用が裁量労働制の考え方に適合しているかを確認してください。
5-3. 労働時間管理と健康確保措置を運用できる体制があるか
裁量労働制を導入した場合でも、企業には労働時間の状況を把握し、従業員の健康を確保する義務があります。
裁量労働制では実際の労働時間にかかわらず、あらかじめ定めた時間働いたものとみなしますが、労働時間の把握自体が不要になるわけではありません。長時間労働を防止するためにも、企業は労働時間の状況を適切に把握し、必要に応じて面接指導や業務量の調整などの措置を講じる必要があります。
特に近年は、働き方改革の流れを受けて、労働者の健康確保措置の重要性が強調されています。裁量労働制を導入する際には、労働時間の把握方法や健康管理の体制をあらかじめ整備し、労働時間管理と健康確保措置を運用できる体制を整えておきましょう。
6. 裁量労働制のメリット

裁量労働制には、企業側・従業員側それぞれにメリットが、企業側のメリットは以下のようなものが挙げられます。
- 人件費の予測が容易になる
- 労務管理の負担が減る
- 優秀な人材が定着しやすくなる
- 生産性の向上が見込める
ここでは、これらのメリットを詳しく解説します。
6-1. 人件費の予測が容易になる
裁量労働制を導入すると、人件費の予測がしやすくなるというメリットがあります。
従来の労働時間制では、残業が増えると人件費も増大し、その月ごとの変動を予測するのが難しい面がありました。
一方、裁量労働制では労働時間に関係なく一定の時間分の給与を支払うため、原則として追加の残業代が発生せず、人件費の見通しを立てやすくなります。
ただし、深夜労働(22時〜翌5時)の割増賃金や法定休日・所定休日に労働した場合の人件費などは別途発生するため、注意が必要です。
6-2. 労務管理の負担が減る
裁量労働制では従業員の始業・終業時刻を細かく管理する必要がないため、企業の労務管理負担が軽減されるメリットも得られます。また、勤怠打刻の確認や残業申請の処理といった日々の管理業務が減ることで、人事・労務部門の業務効率が向上するでしょう。
ただし、企業には労働安全衛生法に基づき、労働者の労働時間の状況を客観的な方法で把握する義務があります。そのため、勤怠管理そのものが不要になるわけではなく、長時間労働の防止や健康確保の観点から、基本的な労働状況のモニタリングは引き続き、適切におこないましょう。
6-3. 優秀な人材が定着しやすくなる
裁量労働制は、業務の進め方や時間配分を自らの裁量で調整できるため、柔軟な働き方を求める人材にとって魅力的な制度となる場合があります。とくに、高度な専門性を有する人材や、自律的に業務を遂行できる人材にとっては、時間的な制約が少ない環境が働きやすさの向上につながることがあります。
そのため、裁量労働制の導入は、成果を重視した働き方を支援する制度として評価されることがあり、採用活動や人材の定着において一定の効果が期待されます。働き方の選択肢を広げることは、従業員の満足度向上や離職率の低下につながる可能性があるため、人材戦略の一環として制度を活用する企業も増えています。
企業が裁量労働制を導入することで「成果で評価する柔軟な職場」というアピールになり、他社との差別化や採用力アップにも寄与するでしょう。
6-4. 生産性の向上が見込める
裁量労働制は成果主義への転換を促し、従業員一人ひとりの生産性向上につながる可能性があります。労働時間ではなくアウトプットで評価する仕組みによって、従業員は自ら工夫して業務効率を高め、より短時間で成果を出そうとする動機づけが働くためです。
また、業務の進行方法を個々の裁量に委ねることで、専門性や経験を活かした効率的な業務遂行が期待できます。結果として、短時間で一定の成果を上げる働き方が可能となり、組織全体の業務効率の向上につながる可能性があります。
ただし、生産性向上を実現するためには、業務内容や評価制度が裁量労働制に適しているかを事前に検討し、適切な運用体制を整えることが前提です。
関連記事:裁量労働制とは?労働時間管理における3つのポイントを徹底解説
7. 裁量労働制のデメリット

一方で、裁量労働制には注意すべきデメリットも存在します。
- 裁量労働制のデメリット
- 意図せぬ長時間労働が発生する可能性がある
- コミュニケーションが取りづらくなることがある
- 導入までに手間がかかる
- 導入後もフォローが必要
- 同意を得られない・撤回される可能性がある
ここでは、デメリットとなる制度運用上で発生し得るリスクや課題を解説します。
7-1. 意図せぬ長時間労働が発生する可能性がある
裁量労働制では従業員自身に業務時間の裁量を委ねるため、知らないうちに長時間労働に陥ってしまうケースが少なくありません。成果を上げようとするあまり「もっと働かなければ」と心理的プレッシャーを感じ、結果として労働時間が伸びてしまうケースもあります。
また、残業代を出さなくてよいことから、企業の不適切な運用によって裁量労働制の適用下で過労死や健康被害が問題視されてきた経緯があります。
裁量労働制だからといって実労働時間を把握しないのではなく、勤怠管理システムなどで従業員の働き過ぎをモニタリングし、必要に応じて是正するフォローが欠かせません。
関連記事:裁量労働制とは?労働時間管理における3つのポイントを徹底解説
7-2. コミュニケーションが取りづらくなることがある
従業員が各自の裁量で働くため、出勤・退勤時刻がバラバラになることでチームメンバー同士の打ち合わせの調整が難しくなるなど、社内コミュニケーションの機会が減少することがあります。
こうしたコミュニケーション不足は、放置すると組織の一体感低下や新人社員の孤立などにつながるおそれがあります。対策として、事前にスケジュールを示し合わせて定例の打ち合わせを設けたり、情報共有ツールを活用するなど、意識的にコミュニケーションの場を確保することが重要です。
7-3. 導入までに手間がかかる
裁量労働制を導入するには、通常の労働時間制度よりも煩雑な手続きが求められます。とくに企画業務型であれば労使委員会の設置・運営と全会一致決議が義務づけられており、これらの準備・手続きに時間と労力がかかるでしょう。
さらに協定や決議で細かい事項を定め、それを所轄の労働基準監督署へ書面で届け出ることが必要です。
制度の適用業務の特定や、協定条項の検討には専門知識も多数求められます。社内での制度設計に加え、必要に応じて社労士など外部専門家への相談が発生することもあるでしょう。
これらの背景から、裁量労働制導入の手間は将来的な効果を見据えた「初期投資」として捉え、法令遵守の姿勢で取り組むとよいでしょう。
7-4. 導入後もフォローが必要
裁量労働制は一度導入すれば終わりではなく、導入後の適切なフォローと運用管理が欠かせません。労働時間の自己管理を労働者に任せる制度である以上、企業側は長時間労働の兆候や健康状態を継続的にチェックし、必要な対策を講じる責任があります。
前述した健康・福祉確保措置についても、対象労働者全員に対して適切に実施することが義務づけられています。勤務間インターバルの運用や、健康診断の実施状況などを定期的に見直す必要があるでしょう。
7-5. 同意を得られない・撤回される可能性がある
2024年の法改正によって専門業務型でも個別同意が必須となったことで、従業員から同意を得られないケースや、同意が撤回されるケースに備える必要が出てきました。
従業員の中には裁量労働制に消極的な人もおり、「残業代が支給されなくなるなら通常の労働時間制のほうがよい」と感じて同意しない場合があるでしょう。また、いったん同意した人でも、制度上は後から撤回する権利も認められています。業務状況によっては、従業員が途中で制度適用をやめたいと申し出てくることも考えられます。
同意しない従業員には無理に裁量労働制を適用せず、代替策として固定残業代制度やフレックスタイム制を適用するといった選択肢も検討しなければなりません。また、同意を撤回した従業員については、通常の労働時間管理下で働かせる処遇を用意しておく必要があるでしょう。
8. 裁量労働制を正しく活用して従業員満足度を高めよう

裁量労働制は、うまく運用すれば企業・従業員ともに生産性向上と柔軟な働き方の実現につながる制度です。一方で、制度の趣旨に反した不適切な運用をすれば長時間労働や健康障害のリスクを高めるおそれもあります。
そのため、導入に際しては法的要件を満たすことはもちろん、導入後も運用や従業員の健康管理に十分配慮し適切な処遇を保障することで、裁量労働制のメリットを最大限に活かすことができるでしょう。
制度を正しく活用して従業員のワークライフバランスと満足度を高め、ひいては組織全体の成長につなげていきましょう。
関連記事:裁量労働制の従業員の打刻管理で注意すべき2つのこと
「みなし労働時間」で運用する裁量労働制ですが、割増賃金の支払いが一切不要になるわけではありません。
特に、労働基準法で定められた法定休日の労働に対しては、企業は35%以上の割増賃金を支払う義務があります 。このルールを見落としてしまうと、意図せず未払い賃金のリスクを抱えることになりかねません。まずは、自社の勤怠管理が法的に問題ないか、基本的なルールから見直しませんか?
◆休日出勤の割増賃金で押さえておくべきポイント
- 裁量労働制でも支払い義務のある「法定休日労働」の定義
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裁量労働制のコンプライアンス体制を強化するために参考になりますので、ぜひこちらから資料をダウンロードしてご活用ください。
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