年俸制の社会保険料の計算方法を解説!ボーナスや残業代の扱いは?
更新日: 2025.7.19 公開日: 2025.7.19 jinjer Blog 編集部
「年俸制の社会保険料をどのように計算したらよいのかわからない」
「年俸制と月給制の社会保険料の違いを知りたい」
年俸制を採用している会社の場合、上記のような疑問が出てくることがあるでしょう。年俸制と月給制で社会保険料の仕組みに大きな違いはありませんが、計算の基準となる標準報酬月額や各種手当の扱いを正しく理解することが重要です。
本記事では、年俸制の社会保険料の計算方法を詳しく解説します。年俸制における社会保険料のメリットやデメリットも解説するので、年俸制の給与や社会保険料の仕組みを理解する参考にしてください。
「自社の給与計算の方法に不安がある」「労働時間の集計や残業代の計算があっているか確認したい」「社会保険や所得税・住民税などの計算方法があっているか心配」など、給与計算に関して不安な方もいらっしゃるのではないでしょうか。
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1. 年俸制の社会保険料の計算方法


年俸制における社会保険料は、以下の流れで計算します。
- 年俸の総額を12で割り、1ヵ月あたりの報酬額を求める
- 求めた1ヵ月あたりの報酬額が該当する「標準報酬月額」を探す
- 該当する標準報酬月額に健康保険料率、厚生年金保険料率をそれぞれかけて社会保険料を算出する
標準報酬月額とは、社会保険料を計算する際の基準となる月収です。例えば1ヵ月あたりの報酬額が29万円以上31万円未満なら、東京都の場合、標準報酬月額は30万円に該当します。
健康保険料率は都道府県ごとに異なりますが、概ね10%前後となっています。厚生年金保険料率は全国一律18.3%に固定されています。
したがって、仮に標準報酬月額を30万円、健康保険料率を10%、厚生年金保険料率を18.3%とした場合、社会保険料の計算式は以下のとおりです。
30万円×10%+30万円×18.3%=84,900円
ただし上記は本人負担分と会社負担分の合計のため、会社と折半すると本人負担分は半額の42,450円となります。
各地域の標準報酬月額は以下のページから確認可能です。
参考:令和7年度保険料額表(令和7年3月分から) |全国健康保険協会
健康保険料率は以下を参考にしてください。
2. 年俸制と月給制の社会保険料の違い


給与の支給方法にかかわらず社会保険料の仕組みは同じであるため、年俸制と月給制の年間社会保険料には大きな違いはありません。異なるのは、標準報酬月額に月ごとの変動があるかどうかという点です。
年俸制では手当も含めた1年分の給与を12ヵ月分に均等に割って支給することが一般的なため、毎月の月給は基本的に変わりません。そのため、標準報酬月額も毎月同じであり、社会保険料の計算結果も毎月同じです。
一方、月給制では毎月の残業時間や休日出勤などにより月給が変化します。月給の変化により標準報酬月額も変化する場合があるため、毎月正しい月給額を算出することが重要です。
月給と標準報酬月額の算出方法を正しく理解していなければ、社会保険料の計算ミスが起きるリスクが高くなります。
3. 年俸制における社会保険料に関するメリット


年俸制における社会保険料に関するメリットは以下のとおりです。
- 月給が一定のため社会保険料を計算しやすい
- 均等割にすると社会保険料が安くなることがある
3-1. 月給が一定のため社会保険料を計算しやすい
年俸制の社会保険料に関するメリットは、月ごとの支給額が一定のため、標準報酬月額も一定で社会保険料を計算しやすい点です。
月給制の場合、残業手当やインセンティブなどによって月額報酬が増減するため、標準報酬月額に変動があるか注意する必要があります。
標準報酬月額が月ごとに変動する場合、その都度確認して社会保険料を計算する必要があります。手間や時間がかかるため、給与計算を担当する人事部や経理部などに負担がかかります。
一方、年俸制の場合毎月の標準報酬月額が同じであるため、毎月計算しなおす必要がなく、社会保険料の管理が簡単です。
3-2. 均等割にすると社会保険料が安くなることがある
年俸制の社会保険料は、均等割にすると社会保険料が安くなることがある点もメリットです。
賞与がある場合、年俸制の給与は均等割とボーナス払いの2種類の支給方法があります。
均等割は賞与も含めた年俸を12等分して、毎月同じ金額を支払う方法です。ボーナス払いは年俸を14分割または16分割した金額を毎月払い、残りを賞与として支払います。
社会保険料は賞与からも別途控除されるため、月給制やボーナス払いの場合、賞与分も社会保険料の控除が必要です。
一方、均等割の場合は賞与部分が別途発生しないため、賞与の金額次第では同じ年収でも社会保険料を安く抑えられることがあります。
社会保険料が少なくなるため、会社と従業員の双方にメリットがありますが、従業員にとっては将来の厚生年金額などが少なくなる点にも注意が必要です。
均等割かボーナス払いを選べる場合は、従業員がそれぞれのメリット・デメリットを理解して選択できるよう事前によく説明しましょう。
4. 年俸制における社会保険料に関するデメリット


年俸制における社会保険料に関するデメリットには、労働内容と将来の年金額や手当が釣り合わない可能性がある点があげられます。
年俸制は原則年度の途中での変動がありません。そのため、非常に忙しい月が続いた場合でも基本的に月給や社会保険料は一定です。
社会保険料や標準報酬月額は将来受け取る年金額や傷病手当金、失業手当などに影響します。したがって、労働内容に対して標準報酬月額や社会保険料が少ないと、給料への不満に加えて将来年金や手当などを過少に感じる可能性があるでしょう。
従業員が不満や将来への不安を感じないよう、適切な評価基準や従業員との話し合いに合わせて年俸を決めることが大切です。
5. 年俸制を採用する際の社会保険料の注意点


年俸制を採用する際の社会保険料の注意点は以下のとおりです。
- 標準報酬月額に含まれる手当を把握する
- ボーナス払いで支払う場合は標準賞与額を把握する
5-1. 標準報酬月額に含まれる手当を把握する
年俸制を採用する際の社会保険料の注意点として、標準報酬月額に含まれる手当を把握する点があげられます。
標準報酬月額に含まれる主な手当は以下のとおりです。
- 残業手当
- 固定残業代
- 通勤手当
- 勤務地手当
- 資格手当
- 役職手当
- 住宅手当
- 扶養手当
- 配偶者手当
- 家族手当
- 休業手当
また、現物で支給される通勤定期券や食券なども標準報酬月額の対象です。
一方、弁償的に支払う交際費や出張旅費などは標準報酬月額に含まれません。
標準報酬月額に含まれる手当を正しく把握していないと、社会保険料の計算ミスにつながります。社内独自の手当があり、標準報酬月額に含めればよいのか不安な場合は社労士など専門家に相談するとよいでしょう。
5-2. ボーナス払いで支払う場合は標準賞与額を把握する
年俸制でボーナス払いを採用する場合、標準賞与額を把握しておきましょう。
賞与は標準報酬月額ではなく、標準賞与額を社会保険料の計算基準にします。支給額の1,000円未満を切り捨てた金額が標準賞与額です。
賞与の社会保険料は、標準賞与額×各保険料率で求められます。
なお、標準賞与額には上限があり、厚生年金の場合は1ヵ月150万円、健康保険の場合は年度累計573万円です。上限より多い分は社会保険料の対象外になります。
賞与がある月は標準報酬月額ではなく、標準賞与額を用いて社会保険料を計算するよう注意しましょう。
6. 年俸制の社会保険料や手当の扱いを正しく理解しよう


年俸制の社会保険料は、年俸を12で割って月額報酬を算出し、該当する標準報酬月額に基づいて計算します。計算方法は月給制と大きく変わりませんが、正しい標準報酬月額にもとづいて計算することが大切です。
標準報酬月額や健康保険料率は各地域によって異なるため、事業所の所在地に合わせて確認してください。
なお、標準報酬月額には資格手当や通勤手当など各種手当も含まれます。標準報酬月額に含まれる手当がわからない場合は、社労士など専門家に相談して社会保険料を正確に計算できるようにしましょう。



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