BCP対策におけるクラウド活用法|人事部門のデータ管理の重要性を解説
公開日: 2025.8.4 jinjer Blog 編集部

自然災害や感染症の流行など、企業の事業継続を脅かす事態への備えとして、「BCP対策」は今や不可欠な経営課題です。そして、その実効性を高める技術として「クラウドサービス」の活用が注目されています。
しかし、人事労務のご担当者様の中には、「BCP対策でクラウドが重要だとは聞くが、具体的に人事の業務にどう関係するのか?」と、具体的なイメージが湧かない方もいらっしゃるかもしれません。
本記事では、特に人事労務部門が担うべきBCP対策において、なぜクラウドの活用が有効なのか、その具体的なメリットと、サービスを選定する上での注意点について解説していきます。
目次
その人事データ、ただ入力するだけで終わっていませんか?
勤怠、給与、評価…それぞれのシステムに散在する従業員データを一つに集約し、「戦略人事」に活用する企業が増えています。
「これからの人事は、経営戦略と人材マネジメントを連携させることが重要だ」「従業員の力を100%以上引き出すには、データを活用した適切な人員配置や育成が必要だ」そう言われても、具体的に何から始めれば良いか分からない担当者様は多いでしょう。
そのような方に向けて、当サイトでは「人事管理システム導入完全ガイド」という資料を配布しています。
◆この資料でわかること
- 人事管理システムを活用した業務効率化の方法
- 人事データにはどのような活用価値があり、活用することで会社が得られるメリットは何か
- 正しい人事データを効率的に管理するためにはどんな機能が必要なのか
人事業務の電子化を検討している方は、ぜひこちらから資料をダウンロードしてご活用ください。
1. なぜ人事部門のBCP対策にクラウドが有効なのか


従来、多くの企業ではサーバーを自社内に設置する「オンプレミス」型でシステムを運用してきました。しかし、BCPの観点では、この形態に潜む脆弱性が指摘されています。
1-1. 人事データ滅失・毀損リスクの低減
オンプレミス環境や、紙媒体での書類保管の最大の弱点は、本社や事業所が地震・水害などの物理的な被害を受けた場合、サーバーやキャビネットそのものが機能しなくなり、重要な人事データが失われる、あるいはアクセス不能になるリスクがあることです。
対してクラウドサービスでは、データは地理的に離れた堅牢なデータセンターで管理・バックアップされています。これにより、自社が被災しても、従業員の連絡先や雇用契約情報といった、事業継続に不可欠な人事データが守られます。
1-2. 場所を問わない労務管理の実現
緊急時には、オフィスへの出社が困難になる事態も想定されます。オンプレミス環境では、社外から基幹システムにアクセスできず、労務管理が完全に停止してしまう可能性があります。
クラウド型のシステムであれば、権限を持つ担当者がインターネット環境さえ確保できれば、自宅や避難先からでも必要なシステムにアクセスし、後述する給与支払などの重要業務を継続することが可能になります。
2. 人事労務におけるBCPクラウド活用の具体的なメリット


人事部門がBCP対策としてクラウドを活用することには、具体的にどのようなメリットがあるのでしょうか。
2-1. 迅速な安否確認とコミュニケーション
緊急時、人事部門の最優先ミッションは全従業員の安否確認です。
クラウド上の人事データベースに、常に最新の従業員連絡先や家族の連絡先が保管されていれば、担当者は場所を問わず即座に情報へアクセスし、安否確認の初動を迅速におこなうことができます。
2-2. 給与支払など重要業務の継続
従業員の生活を守る上で、給与の支払いを滞らせることは絶対に避けなければなりません。
クラウド型の勤怠管理・給与計算システムを導入していれば、従業員はスマートフォンで打刻ができ、管理者はリモートで勤務実績を確定し、給与計算・振込手続きを進めることができます。これは、事業継続における従業員からの信頼を維持する上で極めて重要です。
2-3. 法令遵守(コンプライアンス)の維持
緊急時であっても、休業手当の支払い(※)や労働時間の管理といった、労働基準法上の義務が免除されるわけではありません。
※注:天災事変そのものが原因で事業場の施設・設備が直接的な被害を受け、事業の全部または一部が不可能となった場合など、不可抗力と認められるケースでは休業手当の支払い義務は発生しません。しかし、企業の自主的な経営判断による休業や自宅待機命令などの場合は、支払い義務が生じる可能性があります。
クラウドを通じて正確な勤怠データを把握し、適切な労務管理を継続できる体制は、有事の際のコンプライアンス違反リスクを低減させます。
3. 人事部門がクラウドサービスを選ぶ際の注意点


クラウドサービスはBCP対策に有効ですが、その導入にあたってはいくつか注意すべき点があります。
3-1. セキュリティとデータ保管場所の確認
従業員の個人情報という機微な情報を取り扱う以上、サービスのセキュリティレベルは最重要の選定基準となります。
ISMS(情報セキュリティマネジメントシステム)などの第三者認証を取得しているか、データは国内のデータセンターで安全に保管されているか、といった点に加え、頻繁に行われる労働関連法規や個人情報保護法の改正に、迅速かつ確実に対応してくれるベンダーかどうかも必ず確認すべき項目です。
3-2. 複数のクラウドツール利用による「情報サイロ化」のリスク
ここが、BCP対策におけるクラウド活用の、最も見落とされがちな落とし穴かもしれません。
例えば、「安否確認はA社のクラウドツール」「勤怠管理はB社のクラウドシステム」「書類保管はC社のオンラインストレージ」…というように、目的ごとにバラバラのクラウドサービスを導入している状態を想像してみてください。
平時であれば問題なくとも、緊急時には「どのシステムのIDとパスワードが必要だっけ?」「Aシステムの従業員リストとBシステムのリスト、どちらが最新だ?」といった混乱が生じ、迅速な対応の大きな障壁となり得ます。これを「情報のサイロ化」と呼びます。
4. BCP対策で真価を発揮する「ワンデータベース」という考え方


情報のサイロ化を防ぎ、BCP対策の効果を最大化するアプローチとして、「ワンデータベース」の考え方が重要になります。
4-1. 「ワンデータベース」の考え方とは?
これは、従業員の基本情報から勤怠、給与、評価、書類といったあらゆる人事情報を、一つの統合されたデータベースで管理するという思想です。この体制が、緊急事態下で以下のような真価を発揮します。
- 情報の完全な一元化:
必要な情報がすべて一箇所に集約されているため、迷うことなく、常に最新・正確なデータにアクセスできます。
- シームレスな業務連携:
安否確認から勤怠管理、給与支払まで、一気通貫で業務を遂行でき、システム間のデータ連携ミスなども発生しません。
- 運用の簡素化:
管理すべきシステムが一つであるため、緊急時の運用ルールもシンプルになり、担当者の負担を軽減します。
4-2. 人事情報の「ワンデータベース」を実現するシステムの選び方
人事情報をワンデータベースで運用するということは、つまり人事管理、勤怠、給与、経費、書類管理といった複数のサービスをすべて同じシステムで完結できることが必要です。人事労務担当者が行うこれら全ての業務が、一つのデータベース上で連携していることが理想です。
BCP対策の観点から見ると、これは以下のような大きなメリットを意味します。
登録された従業員情報をマスターデータとして、緊急時にはその連絡先を用いて安否確認を行い、そのまま勤怠・給与についてはリモートでの労務管理・給与支払業務を遂行できるでしょう。さらには、人事情報として保管された雇用契約書の内容確認もすばやくおこなうことが可能です。これら全てが、一つのプラットフォーム上で、矛盾のないデータを用いてシームレスに実行できるのがポイントです。
これは、単なる業務効率化ツールとしてだけでなく、企業の事業継続性を支える「人事のインフラ」と言えるでしょう。
5. 『ワンデータベース』を核とした人事BCP体制で未来の危機に備える


人事部門におけるBCP対策では、いかにして「人」に関する情報を守り、緊急時に活用できるかが成功の鍵を握ります。クラウドサービスの活用は、そのための極めて有効な手段です。
しかし、単に複数のクラウドツールを導入するだけでは、かえって情報のサイロ化を招き、有事の際の混乱を助長しかねません。これからのBCP対策では、いかにして人事情報を「ワンデータベース」に統合し、いつでもどこでも、安全かつ正確に活用できる体制を平時から構築しておくかという視点が、ますます重要になるでしょう。
本記事が、貴社の人事BCP体制の強化に向けた一助となれば幸いです。



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