契約不適合責任とは?制限期間や免責、瑕疵担保責任との違いについて徹底解説
更新日: 2023.1.11
公開日: 2022.9.15
MEGURO
2020年の民法改正で定められた契約不適合責任は、契約内容に適合しない商品を引き渡した際に問われる責任を指します。
今回は、契約不適合責任の概要について解説する他、瑕疵担保との違い、また、契約不適合責任の制限期間や免責について紹介します。
目次
「契約書に契約不履行だったときの対応が記載されていない」
「担当者が自社に不利な契約書を持ってくるのはなぜ?」
「契約書に載っていない合意内容があった」
契約書には、取引内容はもちろんのこと、取引不履行だった場合や協議事項が発生した場合の対応についても記載しておく必要があります。
もし契約書に抜け漏れがあったとしても、締結された内容を一方的に破棄することは難しいでしょう。
ですが中には、契約書に載っていない合意内容があることが締結後に発覚することもあるかもしれません。
契約書のトラブルを防ぐためには、法務担当者が確認するだけでなく、担当する従業員が契約書に記載しなければならない項目を理解することが必要です。
本資料では、契約の基礎知識から、契約書に記載される主な項目などをまとめています。
また契約に関して従業員から上がってくる質問集や、リーガルチェックを円滑にすすめるためのチェックシートも付いているので、従業員の勉強用資料としてもご利用いただけます。ぜひご活用ください。
1. 契約不適合責任とは?瑕疵担保責任との違い
契約不適合責任とは、あらかじめ目的物に対して取り決めた種類や品質、数量に関して、契約内容に適合しない引き渡しをおこなった場合につき、売主側で負担する責任を指します。
かつての民法では瑕疵担保責任とされていた契約不適合責任は、2020年4月施行の改正後民法で定められた制度となっており、債務不履行責任の一つとされています。
瑕疵担保責任と契約不適合責人ではどのような点が変化したのか確認していきましょう。
1-1. 旧民法での瑕疵(かし)担保責任とは
瑕疵とは法律用語の一つで、当事者が想定している商品の品質・性能・状態が不完全である状態のことです。旧民法の瑕疵担保責任とは下記の要件で定められていました。
【瑕疵担保責任】
・法的性質:法定責任
・適用対象:隠れた瑕疵
・適用範囲:契約締結時までに発生した瑕疵
・買主が請求できる権利:契約解除・損害賠償請求
・損害賠償の範囲:信頼利益
・期間制限:瑕疵を知ってから1年以内に契約解除または損害賠償請求
瑕疵担保責任は、契約の目的物に隠れた瑕疵があった場合に、買主に契約解除や損害賠償請求が認められているものでした。
それに対して、契約不適合はこのような点が変化しています。
【契約不適合責任】
・法的性質:債務不履行責任
・適用対象:契約内容に適合していない場合
・適用範囲:契約履行時までに発生した契約不適合部分
・買主が請求できる権利:契約解除・損害賠償請求・追完請求・代金減額請求
・損害賠償の範囲:信頼利益・履行利益
・期間制限:契約不適合を知ってから1年以内に売主に通知
契約不適合は買主が請求できる権利に追完請求と代金減額請求が加わりました。
また、適用できる対象が、「隠れた」瑕疵であったことから、故意ではなく過失もない状態に限って法定責任が認められていました。しかし、契約不適合責任では、契約に適合しない内容の全てに対象となる範囲が拡大したため、買主の善意無過失は議論から除外されることになりました。
2. 契約不適合責任によって買主に認められている権利
契約不適合責任によって買主は下記の4つの権利が認められることになりました。
2-1. 損賠賠償請求権
契約不適合によって買主が損害を被った場合には損害賠償請求をおこなうことができます。
ただし、契約不適合が売主の責めに帰すべき理由(契約不適合の理由が売主側の過失)によって生じていない場合には損害賠償の訴えが認められないこともあり、契約不適合があれば必ず主張できるものではありません。
2-2. 契約解除権
契約解除権を行使すれば、不適合な契約を強制的に解除することができます。契約解除が認められるかどうかは契約内容の不適合度合の大小によって判断され、不適合とされる内容が軽微である場合には、契約解除は認められず、その他救済措置のみに適用がとどまる場合もあります。
そもそも商品の受け渡しが不可能である場合や契約不適合の状態では契約の本来の目的を達成できないことが明らかな場合には民法543条によって無催告解除をおこなうことがみとめられています。
2-3. 履行の追完請求権
追完請求権は改正民法で新たに認められた請求内容です。契約が不適合である場合に買主が売主に対して商品の補修や代替物や不足分の納品などをおこない、当初の契約内容を追行することを請求できます。
ただし、不適合が買主の責に帰すると判断される場合にはこの請求は認められません。
2-4. 代金の減額請求
代金の減額の請求も改正民法で買主に認められた権利で、買主が追完の催促をおこなっても期日内に一定の対応がない場合には当初想定していた支払い代金を減額するように請求することができます。また、そもそもの追完が期待できない場合、売主が買主の請求を拒絶している場合には、それらが発覚した時点で減額請求をおこなうことが可能です。
3. 契約不適合責任の制限期間
契約不適合責任の制限期間は、以下のとおりとなっています。
3-1. 目的物の種類・品質の契約不適合
目的物の種類や品質について、買主が契約不適合を知った場合には、不適合を知った段階から1年以内に売主に通知する必要があります。
基本的に不適合の通知は、1年以内におこなう必要がありますが、請求については、通常の消滅時効の到来前におこなうようにしましょう。
3-2. 目的物の数量・権利の契約不適合
目的物の数量や権利の契約不適合が発覚した場合には、見た目にも明らかであることがわかるため、請求の時期によって不利益になることはありません。
そのため、通常の時効消滅通りの扱いとなります。
なお、通常の消滅時効とは、「権利の行使が可能となったことを知った時点から5年」「権利の行使が可能となったときから10年」となっています。
3-3. 買主が業者の場合
買主が業者となる場合は、個人が買主である場合と異なります。
業者間の売買では、買主は目的物を受領した後は、ただちに検査をおこなう必要があります。検査中に目的物の契約不適合を見つけた場合は、売主に対して即、通知しなければなりません。
もし通知されなかった場合には、契約不適合責任の追及(履行の追完請求や損害賠償請求・損害賠償請求など)をすることはできませんので、注意しましょう。
4. 契約不適合責任における免責
契約不適合責任では、売買後の保証責任を免除できる「免責」が可能となっています。この「免責」の特約を付けることにより、売主側は損害賠償の責任を回避できるのです。
免責が有効とされるには、改正民法の規定に従った特約の記載をしなければなりません。
契約不適合責任の免責については、以下3つの点に注意する必要があるため、ここで確認しておきましょう。
◇契約不適合責任の免責における注意点3つ
・契約不適合責任の免責は買主が不利な契約である
・免責の特約は売主および買主双方の同意があった場合に有効となる
・免責の条件は売主により異なる
以下、具体的にこれら3つの注意点について紹介します。
4-1. 契約不適合責任の免責は買主が不利な契約である
基本的に、契約不適合責任の免責は、買主側に不利な契約であることを認識しておかなければなりません。
売買契約では、売主側が契約不適合責任として、一定期間の保証責任を負う必要がありますが、免責の特約により、免責事項については契約不適合責任の免除が可能となります。
このため、免責事項が多くなればなるほど、売主側に有利な契約となっていきます。
なお、免責事項が多い目的物は、買主にとって多くのリスクをはらむため、注意が必要です。
購入後に見つかった目的物の契約不適合が免責事項に当たる場合は、保証や損害賠償の対象外となるためです。
4-2. 免責の特約は売主および買主双方の同意があった場合に有効となる
免責の特約は、売主及び買主双方の同意があった場合にはじめて有効となります。
買主側からみて不利な免責内容であったとしても、契約に同意をしていれば有効の扱いとなります。免責事項について、すでに契約書に記載があった場合は保証の対象外となるため注意しましょう。
原則、契約不適合責任は、任意規定(法律による一定の定めの他に異なる合意・定めをした場合は、この合意・定めが優先されるということ)であるため、免責契約についても、お互いが同意していれば有効の扱いとなります。
基本的に、契約後は、免責事項を無効にすることはできませんので、双方で免責事項に記載されている内容に問題がないか十分に確認した上で、契約に同意することをおすすめします。
4-3. 免責の条件は売主により異なる
免責条件は、売主が「個人」「宅建業者」「宅建業者以外の法人」のいずれにあてはまるかによって大きく異なります。
宅建業者や法人では、民法以外に適用しなければならない法律があるため、そちらに則り、個人が不利にならない契約とする必要があります。
それぞれの免責条件は、以下のとおりです。
4-3-1. 売主が個人
売主が個人に当たるときは、民法のみが適用されるため、任意で免責の特約を決定することができます。そのため、原則として免責の条件はありません。
一度契約したものについては、免責特約が無効となるケースを除いて無効にはできませんので、注意しましょう。
4-3-2. 売主が宅建業者
売主が宅建業者、買主が個人になる場合は、宅建業法第40条にのっとり売却後2年を超えるまで免責とはできません。
そのため、買主が宅建業者から購入した物件については、2年間の保証があると覚えておくとよいでしょう。
なお、この2年間の保証については、物件引き渡し後2年以内に欠陥の通知を受けたものについてのみが対象となります。
4-3-3. 売主が宅建業者以外の法人
売主が宅建業者以外の法人にあたる場合、消費者契約法第8条と第10条の適用により、引き渡し直後からの免責は不可となっています。
引き渡し直後から免責不可となる期間については、契約書に記載された内容に従いますが、1年程度とみておくとよいでしょう。
上述のとおり、契約不適合責任は民法改正で変更があった内容です。瑕疵担保責任とは異なり、意図しない「隠れた」過失も責任を問われるようになりました。以前よりも取引先の責を追及しやすくなった、と言えるでしょう。
ただし、そのためには期間内に申し立てる必要があります。契約書が見つからない、契約の中身を把握していない、などということがあれば、自社で不利益を被ることになるため、注意が必要です。
これらを避けるためには、以下の2点に注意する必要があります。
- 契約書を適切に管理する
- 担当者も契約内容を理解する
中には、契約書を担当者個人が管理している、または会社管理の決まりだが守らない人がいる場合、知らずのうちに紛失しているおそれがあります。法務部門で一括管理できるよう、管理方法を見直すことが大切です。
また、契約書を適切に管理していても、契約内容が正しく履行されたかまで法務部門で管理することは難しいでしょう。そのため、担当者が確認・報告する必要があります。
ですが、契約不適合責任やそもそもの契約内容を理解していなければ、上申することもできません。従業員自身が法知識を身につけるとともに、契約書の控えを保管しておくなど、契約内容をいつでも見返せるようにしておく必要があります。
当サイトで無料配布している「【従業員周知用】ビジネスにおける契約マニュアル」では、契約が成立する条件や契約書を確認しなければならない理由について詳しく解説しています。従業員が契約書の内容を理解して、適切に管理することを促すための一冊になっているので、興味のある方はぜひこちらからダウンロードしてご覧ください。
5. 万が一のトラブルに備え契約不適合責任の内容を確認しておこう
契約不適合責任は、あらかじめ目的物に対して取り決めた契約内容に適合しない場合に、売主側で負担する責任です。
従来の瑕疵担保責任から契約不適合責任に名称が変更になったことで、一部内容も見直され、契約書の内容が重要となっています。
万が一のトラブルに備え、日頃から契約不適合責任の内容について確認するとともに、契約書の内容についても、いま一度チェックしておくとよいでしょう。
「契約書に契約不履行だったときの対応が記載されていない」
「担当者が自社に不利な契約書を持ってくるのはなぜ?」
「契約書に載っていない合意内容があった」
契約書には、取引内容はもちろんのこと、取引不履行だった場合や協議事項が発生した場合の対応についても記載しておく必要があります。
もし契約書に抜け漏れがあったとしても、締結された内容を一方的に破棄することは難しいでしょう。
ですが中には、契約書に載っていない合意内容があることが締結後に発覚することもあるかもしれません。
契約書のトラブルを防ぐためには、法務担当者が確認するだけでなく、担当する従業員が契約書に記載しなければならない項目を理解することが必要です。
本資料では、契約の基礎知識から、契約書に記載される主な項目などをまとめています。
また契約に関して従業員から上がってくる質問集や、リーガルチェックを円滑にすすめるためのチェックシートも付いているので、従業員の勉強用資料としてもご利用いただけます。ぜひご活用ください。
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