法人税の計算方法を確認!計算後の仕訳方法や納付書の書き方も紹介
更新日: 2024.7.1
公開日: 2022.8.2
jinjer Blog 編集部
企業が収益を上げたときにはいくつかの税金の支払いが必要となります。中でも法人税は税負担が大きいため、適用条件や計算方法を詳しく把握しておきたいものです。
企業の資本金や課税所得の金額によっては、法人税の税負担が軽減されることもあります。この記事では、法人税の計算方法について詳しく解説していきます。
また、法人税の支払いの際に必要となる仕訳方法や、納付書の書き方についても確認していきましょう。
目次
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「会計の基礎知識である勘定科目や仕訳がそもそもわからない」
「毎回ネットや本で調べていると時間がかかって困る」
などなど会計の理解を深める際に前提の基礎知識となる勘定科目や仕訳がよくわからない方もいらっしゃるでしょう。
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1. そもそも課税対象となる法人の種類とは
法人税の課税対象は、事業で利益を得ている法人に限られます。基本的には、普通法人と協同組合が主な課税対象です。
〈普通法人〉
株式会社、有限会社、医療法人、相互会社、合資会社、労働組合、日本銀行など
〈協同組合〉
生活協同組合、農業協同組合、漁業協同組合、労働者協同組合、信用金庫など
ただし、普通法人の中でも中小企業にあたる企業と協同組合等には軽減税率が適用されます。
利益を得ることを目的としていない法人には法人税が課税されないのが一般的です。例えば地方公共団体や国立大学法人、日本道路公団などの公共法人は法人税の対象外となります。
また、社団法人や財団法人、学校法人などの公益法人等、実行委員会やPTAといった人格のない社団にも、法人税が課税されることはありません。
ただし、形式的には公益法人であった場合でも、収益事業で利益を上げたときには法人税が課税されます。
関連記事:法人税とは?特徴や対象となる法人、種類や計算方法を紹介
2. 法人税の計算方法とは?
法人税とは、法人が事業で所得を得た際に課税される国税です。各事業年度に得た課税所得に対して、規定の法人税率をかけることで法人税の額を計算できます。
法人税の計算式は「課税所得×税率=法人税」です。
2-1. 「利益」ではなく「所得」を確認する
よくある誤認に「法人税は企業の利益に対して課される」というものがあります。利益と所得は似ているようで異なるものです。
利益は会計上の儲けのことで「収益ー費用」で算出します。一方で所得とは、税法上の儲けのことで、「益金ー損金」で算出されます。会計上と税務上では収益とみなす項目と費用とみなす項目が異なるため利益と所得は区別して考えなければいけません。
法人税は「所得」に対して課されるものであるので留意しておきましょう。
3. 法人税計算の方法を詳しくチェックしよう
企業に課税される法人税は複雑な仕組みになっています。特に大きな特徴は、固定税率が適用されることです。基本的には、所得が増えるほど法人税の額も増していきます。
法人の資本金によっては軽減税率が適用になるケースもあるので、自社の正しい課税額をうまく把握できないこともあるかもしれません。
まずは、法人税の計算ステップをチェックしていきましょう。法人税の計算は3つのステップに分けることができます。
①課税所得を算出する
②法人税率を確認する
③納税額を算出する
それぞれの段階ごとに詳しく解説していきます。
3-1. 法人税の対象となる課税所得を算出する
まずは法人税の課税所得を算出します。
課税所得は「益金ー損金」で算出することができます。益金として参入できるのは債券や株式投資の譲渡益、サービス提供の収益などです。益金の加算調整では、役員報酬や寄付金など損金不算入となる項目に注意しましょう。
損金に算入するのは販売費や一般管理費、商品の原価などです。減算調整の際には、益金不算入となる税金の還付金、保有資産の評価益などを加味する必要があります。
収入または支出ごとに、益金算入や益金不算入、損金算入や損金不算入を判断していきましょう。
3-2. 企業の法人税率を把握する
続いて、企業の法人税率を確認します。法人税率は比例税率(固定税率)が適用されるため、企業の財政状況や事業内容、どれだけ利益を上げたかによって異なります。
平成31年4月1日以降に事業を開始した事業者に対する主な税率区分は下記の通りです。
事業者区分 | 年間課税所得が800万円以下の部分 | 年間課税所得が800万円超の部分 |
普通法人 | 15% | 23.20% |
上記以外の普通法人 | 23.20% | |
協同組合 | 15% | 19% |
普通法人場合、資本金が1億円を超えていれば法人税の税率は23.2%となります。ただし、中小企業には法人税の軽減措置が適用となります。軽減措置の適用例は、資本金が1億円以下の場合や、資本や出資を有していない場合、資本金が5億円以上の法人との支配関係がないことなどです。
所得金額が年800万円を超える部分に対して法人税率23.2%、それ以外の部分に対して15%で計算します。なお、適用除外事業者については法人税率が19%となっています。
普通法人以外の法人は法人税の税率がやや低くなります。例えば協同組合等や医療法人では、所得金額が年800万円を超える部分で19%、それ以下の部分で15%となっています。ただし、協同組合等や医療法人が連結親法人の場合には税率が異なります。
どの税率が適用となるか判断できないときには、国税庁のサイトで調べたり、税務署に問い合わせたりするとよいでしょう。
3-3. 規定の税率をかけて法人税額を算出する
先に算出した課税所得に対して法人税率をかけ合わせれば、法人税の税額を算出できます。具体的な計算例を用いて計算方法を確認していきましょう。
例えば資本金が5,000万円の普通法人で益金が3,000万円、損金が1,000万円あったとします。この場合には益金から損金を差し引いた課税所得が
3,000万円ー1,000万円=2,000万円となります。課税所得2,000万円のうち800万円の部分までの法人税率、800万円を超える残りの1,200万円の法人税率は次のとおり異なります。
課税所得の範囲 | 法人税率 | 法人税額 |
800万円まで | 15% | 120万円 |
800万円を超える残り1,200万円 | 23.2% | 278.4万円 |
そのため、法人税額が次の算出可能です。
- 120万円+278.4万円=398.4万円
3-4. 法人税計算時の端数処理とは
法人税の計算の際に発生した端数処理については、法人税法119条で下記のように規制されています。
国税の確定金額を算出する過程におけるその算出額に、1円未満の端数があるときは、その端数金額を切り捨てるものとする
上記のとおり法人税の計算時に端数は発生した際は1円未満であれば切り捨て可能です。
4. 法人税計算後の仕訳方法とは
法人税を計算したあとには取引の仕訳を反映する必要があります。
企業によって仕訳を反映させるタイミングは異なります。決算のタイミングで決算の損益に反映させるケースだけでなく、法人税の支払いタイミングで反映させるケースも考えられます。
決算時に仕分けをするのであれば、法人税、住民税及び事業税という勘定科目を使って仕訳をします。この勘定科目を法人税等とすることもあります。
確定申告で法人税の額が明らかになったときには、借方に法人税等の科目を記載します。貸方には未払法人税等という勘定科目を用いるとよいでしょう。
法人税を支払ったあとで反映させるのであれば、借方に法人税等、貸方に現金預金などの勘定科目を使って仕訳をすれば問題ありません。摘要欄には、前期確定法人税等など内容がわかるような記載をしておきましょう。
法人税を中間申告するケースでは勘定科目も変わります。中間申告とは、事業年度が6ヶ月を超える際に、事業年度開始から6ヵ月が経過したのち2ヵ月以内に1年の半分の法人税を納税するための申告です。
中間納税で法人税を納めたときには、借方に仮払法人税等という勘定科目を使って処理しましょう。その際、摘要欄には当期中間法人税等などの文言で状況を記載しておきます。
中間納税をしたあとには、確定申告で精算をおこないます。このときには、借方には法人税、住民税及び事業税の勘定科目を使い、貸方には仮払法人税等と未払法人税等に分けて処理をおこないます。
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関連記事:法人税の勘定科目とは?ケースごとの仕訳ルールや注意点を解説
5. 法人税計算後に提出する納付書の書き方とは
法人税を納付するときには、納付書とよばれる書類を提出します。。法人税納付の際には、手間のかかる申告書の作成に注力しがちですが、納付書も忘れずに用意しましょう。法人税の納付期限は申告期限と同様に事業年度の終了日(期末)から2ヵ月以内です。
ただし、法人税には中間申告といって納付額の半分を前払いする制度があります。中間申告は前年の納税額が20万円以上である企業が対象です。事業年度の開始日から6ヵ月が経過した日(期首)から2ヵ月以内に前期の納税額に応じて納付します。
法人税をいつ払うのかは、自社の事業年度によって異なるため、把握しておきましょう。
法人税の納付書は、法人税申告前に税務署から郵送されてきます。書類がない場合には税務署で入手できます。
法人税納付書は複写の構造になっており、既に事業者名が記載されています。本税や重加算税、加算税、利子税、延滞税、合計額などを記入する金額欄は空欄となっています。この部分には必要となる金額を記載しましょう。期限内に提出や納税ができれば、加算税や利子税、延滞税などはかかりません。
納付書の整理番号の欄には、確定申告書などに記載されている整理番号を転記します。また、申告区分の欄には、中間申告なのか確定申告なのかを記載します。
関連記事:法人税申告書とは?提出に必要な明細書や作成方法、提出方法を紹介
6. 法人税計算で注意すべきポイント
法人税計算においては次のような点に注意しましょう。
- 納付書を漏れなく記載する
- 中間申告と納税ルールを覚えておく
6-1. 納付書を漏れなく記載する
法人税計算においては納付書の取り扱いにも注意しましょう。納付書には事業者名や本税、重加算税、加算税、利子税などを記載します。納付書は、法人税を申告する期限までに税務署から送付されます。しかし、e-Taxによるダイレクト納付利用届出書を提出しているのであれば納付書は送付されません。
6-2. 中間申告と納税ルールを覚えておく
法人税は中間申告が必要になるケースがあります。法人税の中間申告が必要になるのは、前事業年度の法人税額が20万円を超えたケースです。中間申告の対象となる企業に対しては税務署から中間申告書が送付されます。法人税の中間申告には期限が設けられていて、事業年度開始の日以降、6ヵ月を経過した日から2ヵ月以内です。
法人税の計算にあたっては中間申告以外にも覚えておくべきルールがあります。例えば法人税が発生しない赤字決算であっても法人税の申告は必要です。
7. 法人税の納付・申告は余裕あるスケジュールで進めていく
法人税は基本的には、課税所得に所定の税率をかけることで求められます。ただし、法人税の税率は法人の種類や条件によって大きく変わります。
税務署や国税庁のホームページを確認すれば、自社にどの法人税率が適用されるかを把握できます。具体的な税率を把握し具体的な税額を計算しておけば、効果的な税金対策につなげることができるかもしれません。
法人税の納付や申告には複雑な手順が必要となります。余裕のあるスケジュールで手続きを進めていくよう意識しましょう。
86個の勘定科目と仕訳例をまとめて解説
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