タレントマネジメントを導入する目的とは?導入ステップも解説
更新日: 2024.7.11
公開日: 2022.6.15
OHSUGI
タレントマネジメントは、組織のいろいろな課題を解決するのに役立つ手段ですが、タレントマネジメントを導入する目的は組織により異なります。
実際に、タレントマネジメントを導入するにあたってはいくつかのステップを踏む必要がありますし、導入すればそれで終わりというわけではなく、適宜効果の測定をおこなわなければなりません。
本記事では、タレントマネジメント導入の目的やタレントマネジメントを導入するまでのステップ、導入後の注意点などについて解説します。
目次
人事評価制度は、健全な組織体制を作り上げるうえで必要不可欠なものです。
制度を適切に運用することで、従業員のモチベーションや生産性が向上するため、最終的には企業全体の成長にもつながります。
しかし、「しっかりとした人事評価制度を作りたいが、やり方が分からない…」という方もいらっしゃるでしょう。そのような企業のご担当者にご覧いただきたいのが、「人事評価の手引き」です。
本資料では、制度の種類や導入手順、注意点まで詳しくご紹介しています。
組織マネジメントに課題感をお持ちの方は、ぜひこちらから資料をダウンロードしてご確認ください。
1. タレントマネジメントとは?
タレントマネジメントとは、従業員スキルや経験、キャリアプランなどを一元化し、組織内で管理するマネジメント手法の1つです。
この手法を、採用プロセスや人材配置、人材育成、評価など活用することで、感情や思い込みが入らない人事戦略が可能になります。どのようなシーンでも、従業員が持つ能力やスキルを最大限に発揮できる人事をおこなうことで、生産性の向上や組織の成長はもちろん、従業員のエンゲージ向上などの効果も期待できます。
2. タレントマネジメントを導入する目的とは
タレントマネジメントを導入する主な目的としては、以下のようなことが挙げられます。
- 適材適所の人員配置
- 人材の育成・採用
- 社員のモチベーション維持・管理
- 実績に応じた適正な評価
- リーダーや経営者候補の発掘・育成
ただし、運用方法によって得られる効果は異なります。
例えば、「実績に応じた適正な評価」を目的として導入しても、評価制度の項目を設定していなければ適正な評価はできません。つまり、目的に応じた項目設定もしくはシステムを導入することが、目的を達成するポイントになるということを覚えておきましょう。
2-1. タレントマネジメント導入の目的は組織によって異なる
タレントマネジメントは、会社や組織を成長させていくために便利なシステムです。
ただ、タレントマネジメントはあくまでも手段である以上、導入する背景には何かしらの目的が必ずあるはずであり、その目的は組織によって異なります。
例えば、「社員のモチベーション維持・管理」を課題としている組織があったとして、それを解決するためにタレントマネジメントを導入するかどうかも、組織によるのです。
タレントマネジメントを導入するに至ったプロセスや背景は組織によって異なるため、実践する際の注意点も異なることには、十分注意しておかなければなりません。
3. タレントマネジメントが導入が必要とされる理由
今までの日本は、終身雇用制や年功序列制だったため、人材の流動性はほとんどありませんでした。そのため、人材を活かすということより、社員が会社の仕組みや指示に合わせるということが重視されており、「タレントマネジメント」という概念がまったくなかったのです。
しかし、働き方改革などにより人材の流動性が高くなっている現代では、タレントマネジメントが必要とされています。
ここでは、タレントマネジメントが必要とされる具体的な理由について解説していきます。
3-1. 労働環境の変化
派遣社員や短時間勤務、リモートワークなど、今や労働環境は大きく変化しており、それに伴い労働人口の減少や流動化が起こり、離職率が上がっている会社も少なくありません。また、採用自体も難しくなっています。
そのため、企業は今いる人材のスキルや経験、能力を最大限に活用した人材配置をおこなわなければなりません。
タレントマネジメントは、従業員のポートフォリオに基づき、適材適所の人材配置をおこなえるので、従業員のエンゲージメントを向上させることで離職を防ぎ、人材確保につながるという点から必要性を感じている企業が多いようです。
3-2. 従業員の意識の変化
今までは、「従業員は組織の歯車となって働く」という意識が強い傾向にありましたが、現在は「自分の時間を充実させる」「好きなことを仕事にする」など従業員の意識に変化が起こっています。
企業はこの変化に合わせ、ワークライフバランスの実現をサポートすることが求められるようになっています。
タレントマネジメントは従業員の目標やキャリアに合わせた適切な人材育成をおこなえるので、従業員の生活を守りながら、生産性の向上を目指せることから必要とされているのです。
3-3. 人材不足の慢性化
少子高齢化にともない、多くの企業で人材不足の慢性化が問題になっています。
人材不足を解消するには、採用を充実させなければなりませんが、ここで重要となるのが応募者へのアピールです。応募者は、給与や待遇、業務内容だけでなくやりがいや評価、会社の雰囲気なども重視します。そのため、給与や業務内容以外でのアピールポイントが必要になるのです。
タレントマネジメントでは、適材適所の人材配置はもちろん評価制度も客観的におこなえるので、公正な評価ができることから従業員の満足度を高められるといわれています。
つまり、面倒な施策をおこなわなくても、風通しのよい職場環境などをアピールできるという点から、タレントマネジメントが必要となっているのです。
4. タレントマネジメント導入ステップと運用方法
タレントマネジメントは、実践しようと思ってすぐに実践できるようなものではありません。
タレントマネジメントの実践にあたっては、以下で挙げるようないくつかのステップを踏む必要があります。
- 導入目的の明確化
- 導入体制を整備する
- 評価体制の構築
- 人材データのを収集・して分析する
- マネジメント施策のを計画して実行する
- モニタリング
ここでは、それぞれのステップについて解説します。
4-1. 導入目的の明確化
導入にあたっては、目的を明確化することが必須です。
タレントマネジメントの要は、人事戦略と経営戦略がリンクしているということです。
極端な例ですが、経営側が人件費削減という戦略を立てているのに、人事が30人採用する戦略を立てていたら方向性がばらばらでマネジメントが機能しません。
企業活動では、1つの目的を達成するために経営戦略と人事戦略を立てます。その目的が明確になってこそ、タレントマネジメントを活かせるので、「導入してから活用法を考える」のではなく目的を明確にしてから導入しましょう。
4-2. 導入体制を整備する
タレントマネジメントはその性質上、全社横断的な内容になることが多く、人事部や限られた部門の人だけが携わることは稀です。
そのため、まずはタレントマネジメント導入に関する同意を得て(できればトップダウンが望ましい)、関係者や関係部門の果たす役割や立ち位置を明確にする必要があります。
複数の部門で連携して進めていくことになるため、部門間での協力体制や連絡体制を今まで以上に強固にする必要がありますし、現段階でそのような体制がないのであれば、まずはその構築から始めましょう。
関わる人がみな主体的に取り組まなければ、タレントマネジメントは導入段階で頓挫してしまいかねません。
4-3. 評価体制の構築
導入体制の整備が完了したら、次は評価体制の構築をおこないましょう。
評価体制の構築はモニタリングの後におこなう企業もありますが、公平性を従業員にアピールするためには導入段階で構築しておくのが望ましいです。
マネジメント施策を実践する中で、適切な評価をおこない人事や待遇に反映させる体制が構築されていれば、従業員のモチベーションも上がりますし、タレントマネジメントへの理解も深まります。
4-4. 人材データを収集して分析する
タレントマネジメントの実践には、人材データが欠かせません。
タレントマネジメントを導入する目的によって収集しなければならないデータも異なるため、先ほど触れたように「何のために」タレントマネジメントをおこなうかは非常に重要です。
それぞれの部や課から人材情報を収集することになりますが、各部・課で人材情報のフォーマットが異なることも多いため、この段階で人材情報を一元的に管理できるようなフォーマットを作成しておくのが賢明です。
集まった情報を分析することで、自社の求める人材が社内にどの程度いるのか、どういったポジションの人材が不足しているのかなどがわかります。
4-5. マネジメント施策を計画して実行する
データ分析によって明らかになった自社の人材情報、および理想と現実のギャップをもとにして、マネジメント施策を計画します。
このときの施策は「社内の人材の育成」と「新規人材の獲得」の2つが中心になりますが、組織が抱える問題にどの程度早急に対応する必要があるかによって、どちらのオペレーションが優先されるかは異なります。
また、新規人材を採用・投入した場合の現場への影響や社内風土なども、オペレーション選択に影響を与える要素として考えられます。
いずれにせよPDCAサイクルを回すために、立てられた計画はなるべく早く実行することを心がけましょう。
4-6. モニタリング
マネジメント施策を実行したら、必ずモニタリングをおこないましょう。
モニタリングをしないと、施策の効果や変化を把握できないので、適切なタイミングでおこなうことが重要です。その結果によっては、施策や育成の見直しをしたり、ステップをさかのぼったりしてマネジメントの軌道修正をおこなってください。
また、モニタリングや振り返りをするだけはなく、評価もセットでおこなうことも忘れないようにしましょう。
目的を達成するためには、マネジメントを実施するだけでなく、結果をもとに必要があればスピーディーな異動や変更をおこなうことがポイントです。
5. タレントマネジメント導入による効果
タレントマネジメントを導入すると、以下のような効果が期待できます。
- 人材育成
- 適切な人材配置
- 公平な人事評価の実現
- エンゲージメントの向上
ここでは、これらの効果について解説していきます。
5-1. 人材育成
タレントマネジメントは、従業員の能力やスキル、経験など網羅的な情報を一元管理するツールです。項目にもよりますが、基本的な人材情報はすべて入っているので、これを活用して、的確な人材育成プログラムを策定ですることが可能になります。
セミナーや研修などをあらかじめ契約している会社でおこなう企業も多いですが、今は従業員と企業のニーズをマッチングさせて、それに適した育成をおこなうという方法が増えています。
ニーズがあっていなければ効率的な人材育成はできませんが、タレントマネジメントを活用すれば従業員のニーズを把握できるので、適切かつ中長期的な人材育成がしやすくなります。
5-2. 適切な人材配置
タレントマネジメントでは、従業員のあらゆる情報を一元管理するため、従業員が得意もしくは求める業務や部署への人材配置がおこなえます。
自分が持つ能力やキャリアプランとかけ離れた業務に就くと、従業員のモチベーションは低下し離職のリスクが高まります。しかし、適切な人材配置をおこなえば、たとえスキルや経験が不足していたとしても自発的に学んだり、積極的にチャレンジしたりするなどの効果も得られます。
指示ではなく、従業員自らスキルアップを実践することで、生産性の向上も期待できるでしょう。
5-3. 公平な人事評価の実現
タレントマネジメントには、人事評価制度も組み込むことができるので、客観的で公平な人事評価を実現できます。
評価を管理者に任せてしまうと、どうしても個人的な感情が入ったり、可視化できない貢献度を見落としたりするため、公平な評価にならず従業員に不満や不信感を与えてしまいます。
タレントマネジメントに評価項目を入れれば、人の感情は入らず、可視化された目標の達成率などで判断できるので、評価の公平性が保たれるのです。公平な評価というのは、よくても悪くても納得しやすいので、不満や不信感がなくなります。
高評価であれば従業員のモチベーションも上がりますし、低評価でも「次はがんばろう」というモチベーションを引き出せるので、結果的に最高のパフォーマンスが得られるという効果も期待できるでしょう。
5-4. エンゲージメントの向上
タレントマネジメントには、従業員のエンゲージメントを向上させる効果も期待できます。
エンゲージメントは、会社に対する従業員の思い入れや愛着心のことを指します。つまり、エンゲージメントが向上するということは、会社への愛着心が向上することなので離職率の低下や生産性の向上が見込めるのです。
タレントマネジメントを活用すれば、従業員が能力を発揮しやすい配置ができます。やりがいのある環境に身を置くことは、従業員の満足度を高めることになるので、エンゲージメント向上にもつながるのです。
6. タレントマネジメント導入で人事戦略を効率化しよう
タレントマネジメントの導入を決定するプロセスや背景は組織により異なるので、タレントマネジメントによって解決したい課題も組織により異なります。
実際にタレントマネジメントを導入するためには、部門の垣根を越えて導入体制を整備し、人材データを収集・分析し、マネジメント施策を計画して運用する必要があります。
人材にまつわる多くの施策と同様に、タレントマネジメントもその導入効果が目に見えにくいので、定期的に効果測定と振り返りをおこない、適宜計画の修正をして人事戦略を効率化していきましょう。
人事評価制度は、健全な組織体制を作り上げるうえで必要不可欠なものです。
制度を適切に運用することで、従業員のモチベーションや生産性が向上するため、最終的には企業全体の成長にもつながります。
しかし、「しっかりとした人事評価制度を作りたいが、やり方が分からない…」という方もいらっしゃるでしょう。そのような企業のご担当者にご覧いただきたいのが、「人事評価の手引き」です。
本資料では、制度の種類や導入手順、注意点まで詳しくご紹介しています。
組織マネジメントに課題感をお持ちの方は、ぜひこちらから資料をダウンロードしてご確認ください。
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