年末調整でマイナスになる主な理由と対処方法を詳しく解説
年末調整でマイナス表記が発生すると、ミスをしたのでは?と驚いてしまいがちです。しかし、年末調整の過不足金をしっかり納税すれば問題なく、損することも基本的にはありません。
本記事では、年末調整でマイナスになる理由と対応を解説していきます。年末調整で過不足金が発生したとしても、慌てずに対処できるようになりましょう。
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1. 年末調整でマイナスになる主な理由3つ
まずは年末調整でマイナスが発生する原因やマイナス表記の意味を知っておきましょう。
1-1. 賞与額が増え源泉徴収された金額が少ない
収入に対して源泉徴収された金額が少ない場合、年末調整でマイナス表記になることがあります。特に多いパターンとしては、会社の業績が良かったときに支給される賞与によって収入が増えた場合です。
突発的に賞与が支給されれば1年の合計収入は上がってしまい、支給時に源泉徴収される金額では不足している場合があります。給与には反映されているものの、貰った本人は意外にも支給額等を忘れていることが多いです。
上記のように、「源泉徴収された金額が少ない」という理由でマイナス表記になることは珍しくありません。
このように、マイナス表記になることは十分あり得ることですが、計算が間違っている可能性を考えて不安になるのは当然です。当サイトでは、年末調整の計算方法や集計をラクにする方法を解説した資料を無料で配布しています。年末調整業務に不安のある方は、こちらから「年末調整ガイドブック」をダウンロードして、業務にお役立てください。
1-2. 保険料や各種掛け金などの支払いが前年より少ない
年末調整でマイナス表記になる2つ目の理由として、社会保険などの支払いが前年より少ないことがあげられます。社会保険料の控除額は、支払金額がそのまま控除できるのが一般的です。
しかし、前年に支払っていた国民健康保険料などを余分に収めており、今年は就職をして新しく社会保険料に加入した場合、前年の社会保険料の支払額が今年の支払額を上回っている可能性があります。
そのような場合に社会保険料の控除額が減少してしまい、年末調整でマイナス表記になることがあります。
▼社会保険料控除について知りたい方はこちら
年末調整の社会保険料控除とは?対象となる保険の種類まとめ
1-3. 扶養家族の人数が減少した
扶養家族の人数が減少することにより、過不足金が発生することもあります。よくあるケースは、配偶者控除としていた妻や子供がアルバイトやパートを始めて年収が103万円を超えてしまったというパターンです。
このような共働きの家庭は収入によって扶養家族の人数が変わることもあり、それに伴い控除額が減少してしまいます。控除額の減少が結果として、年末調整のマイナス表記につながってしまうのです。
ほかにも、子供が独立して扶養家族から外れてしまったというケースもあるため注意しましょう。
2. 年末調整でのマイナス表記は問題なのか?
年末調整でマイナス表記になって焦ってしまう方も多いはずです。
しかし、前述したように理由があって発生しているマイナス表記も多いため、必ずしも問題になるわけではありません。まずは落ち着いてマイナスになっている原因を見つけましょう。
2-1. 過不足金を納付すれば問題ない
原因が明確にある場合は、年末調整の過不足金をしっかり納税すれば問題ありません。マイナス表記を発見した年に過不足金の支払いを完了させましょう。
また、「年末調整でマイナス表記が出て損をした」と考える方もいるかもしれませんが、年末調整の過不足金は「本来払うべき税金」であるため、納税者が損をすることはありません。そのため、年末調整の過不足金は損得を考えずに早めに納税しましょう。
勘違いやなんらかの理由がある場合でも、支払うべき所得税を未納のままにすると大きな問題に発展することがあります。年末調整のマイナス表記そのものに問題はありませんが、放置するのは問題です。必ず適切な対処をするようにしましょう。
過不足金の計算方法
年末調整で発生する「過不足金」は、毎月の給与から差し引かれた源泉徴収税額の合計と、年末調整で算出した年調年税額との間に生じる差額です。
この差額は「過不足税額」と呼ばれ、過納額(支払いすぎた金額)と不足額(足りない金額)の2種類があります。過納額がある場合には、それを還付し、不足額がある場合には従業員の給与から天引きされます。計算方法は、年調年税額を求めた後に、毎月の徴収税額の合計を確認し、両者を比較することで行います。これにより、正確な過不足額を特定し、適切な対応が可能となります。
3. 年末調整でマイナス表記になった際の対処法2つ
年末調整でマイナス表記が発生した場合で、計算や入力ミスでない場合は以下の2つの方法で基本的には対処ができます。
3-1. 12月の給料(給与)から徴収される
年末調整でマイナス表記になった際の対処法として一般的なのは、12月の給料から徴収してマイナス分を補う方法です。
年末調整の結果を知らされたうえで自動的に精算されるため、納税者である従業員が自主的に不足分を納めたり、申告したりする必要はありません。ただし、本来支給される12月分の給料から徴収されることから、結果として12月の給料が減額となるため、従業員には説明しておいた方がよいでしょう。
12月はお金を使う時期であるため、「いつもより給料が少なくて支払いができない」という事態になりかねません。知らせる場合はできるだけ早い段階のほうが従業員側も困らないでしょう。
3-2. 不足額徴収繰延承認申請書を提出する
年末調整でマイナス表記になったときの対処法2つ目は、「不足額徴収繰延承認申請書」の提出です。
不足額徴収繰延承認申請書を納税者が給与の支払い者を通して税務署に提出することで、徴収される期間を伸ばすことができます。翌年の1月と2月に、追加で納めるべき金額の1/2ずつを納税すればよいため、納税者の負担を減らすことが可能です。
ただし、不足額徴収繰延承認申請書を提出して承認されるには、税引き後の給与額が70%未満になる必要があることをはじめいくつかの条件が定められています。
利用するハードルがやや高いため、希望する従業員がいた場合は申請が通るかどうか確認するようにしましょう。
4. 年末調整で対処できない項目
年末調整におけるマイナス表記の対処法がわかったところで、年末調整で処理できない項目についても知っておきましょう。
意外と勘違いしている方も多いため注意が必要です。
4-1. ふるさと納税の控除(寄付金控除)
ふるさと納税の控除は年末調整では処理できません。なぜなら年末調整で控除を受けるためには、証明書を会社に提出する必要があるためです。年末調整の計算は11月末から12月中旬にかけておこなわれます。
しかし、ふるさと納税は年末ギリギリまでおこなえることから、12月31日を過ぎないと1年間の総額を算出できません。つまり、ふるさと納税の総額を確定させた証明書は年末調整をおこなう期間までに発行できないのです。
以上のことから、ふるさと納税の控除は年末調整では処理できません。
従業員がふるさと納税をしている場合は、対象の自治体に「ワンストップ特例制度」を申請する必要があります。または、従業員自身で確定申告をして申告する必要があります。
4-2. 医療費控除
医療費控除の処理も年末調整ではおこなえません。主な理由はふるさと納税と同じで、12月31日を過ぎなければ1年間の医療費の総額を算出できないためです。
このことから、医療費控除を受けるためには自身で確定申告をするほか、医療費控除の特例「セルフメディケーション税制」を利用する必要があります。
なお、通常の医療費控除とセルフメディケーション税制は併用できません。
4-3. 初年度の住宅ローンの控除
初年度の住宅ローンの控除も年末調整では処理できないため注意が必要です。初年度の住宅ローンの控除に限っては、自身で確定申告をしなければなりません。
また、その際は自身で税務署に行き、住宅ローン控除を受けられるか承認してもらう必要があります。初年度の住宅ローンの控除は手続きが複雑であるため、税理士などに相談しながら進めることをおすすめします。なお、2年目からは年末調整として処理できるため手続きの手間が減少します。
4-3. 雑損控除
雑損控除は、災害や犯罪(盗難や横領など)によって、資産が損害を受けた際に受けられる所得控除のひとつです。この雑損控除も年末調整では処理できず、確定申告をする際に忘れずに処理しなくてはなりません。
損害額が特定の基準を超えた時に控除が適用されるため、事前に損害の証明書類をしっかりと揃えておくことが重要です。また、雑損控除を利用するためには、損失の内容や金額を詳細に記載した申告書を提出する必要があります。そのため、万が一の事態に備え、損害が発生した場合の記録を確実に保管しておくと良いでしょう。これにより、適切に損害を申告し、必要な控除を受けることができます。
5. 年末調整でマイナス表記になっても焦らずに正しく対応すれば問題ない
年末調整でマイナス表記が発生することは珍しいことではなく、必ずしもミスが原因ではありません。
マイナス表記が発生した場合でも、不足している分を納税することで対応がすぐにできます。また、年末調整の過不足金は「本来払うべき税金」であるため、納税者が損することもありません。もし年末調整でマイナス表記になった場合は、本記事で解説した2つの対処法を参考にし、焦らず落ちついて対応しましょう。
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