企業結合の3つの種類や企業結合ガイドライン、会計基準をわかりやすく解説
更新日: 2024.1.15
公開日: 2022.12.13
jinjer Blog 編集部
経営が思わしくない企業であれば、他社との合併を検討することは珍しくありません。
企業がほかの企業を買収したり、合併したりするケースが多くあり、種類によって会計処理も異なります。
当記事では、とくに企業結合をした場合にどのような会計基準を用いるのか詳しく解説します。
86個の勘定科目と仕訳例をまとめて解説
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1. 企業結合とは?わかりやすく解説
企業結合とは、文字どおり企業同士を1つに統合することを指します。
もしくは、ある企業の事業とほかの企業の事業が1つの報告単位に統合されることも含まれます。
企業結合にはいろいろな種類があるので、どのようなパターンがあるのか知っておくと良いでしょう。
1-1. 吸収合併
企業結合としてわかりやすいのは吸収合併です。
吸収合併とは、2つかそれ以上の会社が1つの会社になる取り引きを指します。
1-2. 新設合併
企業結合の別の形が新設合併です。
新設合併では、複数の会社が企業結合しますが、いったんすべての企業の法人格を消滅させます。
そのうえで新たに設立した会社に権利義務を継承させる方法です。
ただし、多くの場合1つの会社の法人格を残す吸収合併がおこなわれ、新設合併がおこなわれるケースは少なくなっています。
1-3. 吸収分割
吸収分割は、会社自体は合併しないものの、特定の事業を分割して別会社に継承する手法です。
吸収分割には、自社の事業を譲り渡す会社が対価として金銭や株式を受け取る分社型吸収分割と、株主が報酬を受け取る分割型吸収分割とがあります。
1-4. 新設分割
吸収分割と似ていますが、新設分割という企業結合の方法もあります。
新設分割とは、新たに設立する会社に事業の一部を譲渡する方法です。
吸収分割の場合、対価は金銭や株式などの種類がありましたが、新設分割の場合には基本的に株式で支払うという特徴があります。
1-5. 株式交換・株式移転
あまり聞きなじみのない方法ですが、株式交換や株式移転も企業結合のひとつです。
株式交換とは、特定の会社を親会社とするため、ほかの会社が親会社に株式を取得させる方法です。
これで、株式を持つ親会社と、その傘下の子会社が誕生することになります。
一方、株式移転は新たに設立される会社を親会社とするため、ほかの会社の株式をすべて取得させる方法です。
1-6. 事業譲渡
吸収分割によく似ていますが、事業譲渡も企業結合のひとつの方法です。
事業譲渡は会社の一部もしくは全部の事業をほかの会社に売却することを指します。
一部の事業を譲渡する点では吸収分割に似ていますが、吸収分割の場合事業の継承に関して相手方への個別承諾を取得する必要がないという特徴があります。
2. 企業結合ガイドラインとは
独占禁止法により、他の会社の株式を取得、または保有することにより事業支配力が過度に集中することとなる会社の設立・転化が禁止されています。
公正取引委員会のガイドラインでは、つぎの5つの方針が示されています。
- 企業結合審査に関する独占禁止法の運用指針
- 企業結合審査の手続に関する対応方針
- 事業支配力が過度に集中することとなる会社の考え方
- 独占禁止法第11条の規定による銀行又は保険会社の議決権保有等の認可についての考え方
- 債務の株式化に係る独占禁止法第11条の規定による認可についての考え方
企業結合をおこなう前に確認するようにしておきましょう。
3. 企業結合の3つの種類
企業結合といっても、大きく分けて3つの種類があります。
企業結合の種類とは、取得、共同支配企業の形成、共同支配下の取り引きです。
それぞれの特徴について見ていきましょう。
3-1. 取得
取得とは、ある企業がほかの企業や事業の支配権を獲得することを指します。
取得以外にも、共同支配企業の形成と共通支配下の取り引きがありますが、この2つに該当しない企業結合は取得と見なされます。
取得になるケースはさまざまですが、通常当事者となっている企業のどちらかが取得企業となるでしょう。
どちらが取得企業になるかは支配力基準という基準を用いて判断されます。
支配力基準で取得企業が明確にならない場合には、ほかの基準を用いて判断しますが、通常対価を支払って事業を買い取った側が取得企業になります。
2つの企業が企業結合する取得の場合、どちらか一方の独立は失われるでしょう。
3-1-1. 逆取得とは
逆取得とは、企業結合により消滅した会社に、存続した会社が支配されることを言います。
通常では、消滅する会社の支配権を存続する会社が持ちます。ですが、企業結合の際に株式を譲渡した場合、実質的な支配権は消滅会社が持つ可能性があります。そのほかにも、企業結合することで、消滅した会社の株主が保有する株式の割合が変わることで実質的に支配されることもあるでしょう。
3-2. 共同支配企業の形成
共同支配企業の形成は、複数の企業が合同で支配する企業と考えられます。
複数の独立した企業が共同支配企業を作り業務をおこなっていくスタイルです。
共同支配企業の形成を選択した場合、企業結合の前後で支配する側の会社が複数あり、かつ独立している必要があります。
3-3. 共通支配下の取り引き
共通支配下の取り引きは、当事者となる企業が企業結合の前後で同じ株主に支配されている取り引きのことです。
たとえば、A社の支配下にB社とC社があり、B社とC社が企業結合するケースが考えられるでしょう。
B社とC社の企業結合の結果、C社が消滅しB社だけになるとしても、A社が親会社であることは変わりません。
このような子会社同士の合併はもちろん、親会社と子会社の合併も共通支配下の取り引きになると考えられます。
4. 企業結合の会計基準
企業結合の際には多額の現金や株式の動きがあるため、注意して会計処理をおこなわなければなりません。
そのため、経理担当者は企業結合の会計基準に通じている必要があります。
では、企業結合における会計基準を見ていきましょう。
4-1. 取得の会計基準
企業結合の種類が取得の場合、支配する側の企業がパーチェス法を用いた会計処理をおこなわなければなりません。
パーチェス法とは、支配を獲得した側の企業が買収する企業や事業を時価で取り入れる方法です。
取得のように支配を獲得することは新規投資と見なされるため、時価での会計処理が必要となります。
ただし、会社の純資産以外にもブランド力やノウハウなど目に見えない資産があるため、時価を算出するのは困難です。
買収された企業の時価への対価が大きすぎた場合には「のれん」、逆に対価が少なく買収できた場合には「負ののれん」として会計処理します。
4-2. 共同支配企業の形成の会計基準
共同支配企業の形成の場合、会計基準は支配する側の企業と支配される側の企業の2つでおこなわなければなりません。
支配される側の企業は、株式を発行するとともに、事業を売却する対価を受け取ります。
したがって支配される側の企業の仕訳は、借方に「会社もしくは事業 帳簿価額」、貸方に「資本金もしくは資本準備金(株式) 帳簿価額」となります。
一方で、支配する側の仕訳は、借方に「受け取った株式 帳簿価額」、貸方に「会社もしくは事業 帳簿価額」と記載します。
共同支配企業の形成では、会社や事業の対価として株式が発行される点を覚えておきましょう。
4-3. 共通支配下の取り引き
共通支配下の取り引きでは、譲渡される会社や事業を適切な帳簿価額で会計処理することが必要です。
また、共同支配企業の形成とは異なり、対価が現金など株式ではない方法で支払われることもあります。
受け入れる側の企業の仕訳は、借方に「会社または事業 帳簿価額」、貸方に「現金や株式 対価の金額」となるでしょう。
ただし、連結財務諸表では、共通支配下の取り引きは連結グループというまとまりで会計処理しなければならないので、企業結合がおこなわれても変更はありません。
企業結合にはさまざまな手法があるため、すべてに共通する処理はありません。
不明な点がある場合には、M&&Aに詳しい税理士に尋ねてみると良いでしょう。
5. 企業結合には3種類あり会計基準が異なっている
企業結合は、2つ以上の企業が1つにまとまることです。
吸収合併や事業譲渡などもその一例で、さまざまな形でおこなわれます。
企業結合の種類は取得、共同支配企業の形成、共通支配下の取り引きという3つがあり、それぞれに会計基準が異なります。
M&&Aを考えている企業は、その後の会計処理についても考慮しつつ慎重に物事を進めていく必要があるのです。
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