企業にとって資金繰りは非常に重要な業務のひとつです。資金繰りがうまくいかなければ、会社の業績は悪化し、最悪の場合倒産してしまう恐れもあります。

本記事では、資金繰りが悪化する要因や改善するポイントについてわかりやすく解説します。

1. 資金繰りとは？

資金繰りとは、どれだけの資金が出入りしているのかを適切にチェックし、不足がないよう調整することです。

資金繰りというと、会社にお金が足りないから資金調達をしていると考えがちですが、そうではありません。会社が今後成長していくためには、資金繰りがどうしても必要です。

現在の借入金を返済しながら、新たなプロジェクトや業務を行っていくために資金繰りは欠かせません。

1-1. そもそも資金とは？

資金繰りでは、資金を管理するため、資金に何が含まれるかを知っておくことが必要です。

資金と聞くと、利益のことがすぐに思い浮かぶでしょう。しかし、資金には利益以外にもさまざまなものが含まれます。資金とは、会社が支払いに使える金銭すべてのことです。
現金や普通預金、当座預金、定期預金などの預金はもちろん、無担保の約束手形であるコマーシャルペーパー、公社債投資信託も含まれます。

一方、不動産はすぐに現金化できないので資金には含まれません。

1-2. 黒字でも資金繰りは悪化する

資金繰りは、会社の業績が順調で黒字であっても必要なケースがあります。

実は、黒字でも資金繰りが悪化し会社が倒産することがあるのです。いわゆる「黒字倒産」です。これは、企業間の取引が掛取引であることが関係しています。

掛取引とは、商品の引き渡しと同時に支払いを行うのではなく、商品の引き渡しから一定の期間を空けて支払いを行うことです。たとえば、100万円分の商品を購入した企業が、商品引き渡しの2ヶ月後に支払いを行うケースなどがあります。商品を売った企業からすると、100万円の入金があるのは2ヶ月後なので、今月と来月の支払いのための資金を調達しなければなりません。もし、今月や来月に支払うべき債務を支払えなければ倒産してしまうでしょう。

商品やサービスの売上が好調でも、資金繰りが悪化すると倒産の恐れがあるのです。

2. 資金繰りが悪化する要因

資金繰りが悪化すると会社に大きな影響が及びます。

では資金繰りが悪化する要因について見ていきましょう。

2-1. 赤字経営

資金繰りが悪化する要因のひとつは赤字経営です。
とくに、慢性的に赤字経営が続いている場合には、資金繰りが悪化する恐れがあります。
たとえば、毎年1,000万円前後の赤字が続いていれば、その分資金も減っていると考えられます。

会社が使える資金が減り、会社の業績が伸びずに利益も出ていないのであれば倒産の危険性は高まるでしょう。

2-2. 売上の急激な拡大・縮小

売上が安定せず、急激に拡大したり縮小したりする場合も、資金繰りが悪化する恐れがあります。

売上の急激な縮小では、利益が減り自由に使える資金が減少します。とくに、売上が急に落ち込むと、毎月の固定費の支払いが行えずに業績が悪化することが珍しくありません。

一方、売上の急激な増加も要注意です。売上が急激に伸び、商品をたくさん製造するためには多くの費用がかかります。

商品を納品した後、支払いまでの期間がかなりある企業の場合、支払いが滞り倒産してしまうことがあるのです。

2-3. 借入額が多い

資金調達のために多くの融資を受けている場合も、資金繰りが悪化するかもしれません。
複数の金融機関から融資を受けており、毎月の返済額が大きすぎると、会社にとって大きな負担となります。

毎月の返済額についてしっかり管理するとともに、返済額の変更や返済期間の延長を検討すべきでしょう。

2-4. 過剰在庫を抱えている

会社の在庫が多すぎる場合も、資金繰りに影響を及ぼします。

在庫は、利益を上げる機会を逸しないために必要なものです。しかし、過剰在庫を抱えると、在庫を管理するコストがかかります。在庫を保管しておく場所や人員にコストがかかることに加え、在庫の価値が下がってしまう恐れもあるでしょう。

定期的な棚卸しを行い、在庫を適切に管理することが重要です。

2-5. 資金繰りの管理ができていない

資金繰りが悪化する別の要因は、そもそも資金繰りの管理ができていないことです。会社の収支は常に変化しており、資金繰りが悪化する兆候が表れることがあります。

資金繰りの管理ができておらず、お金の流れを把握していないと、資金繰り悪化の兆候に気付かずさらに状況悪くなってしまうかもしれません。資金繰り表を作成し、現在の状況や将来の予測を立て、しっかりと管理することが重要です。

3. 資金繰りを改善するポイント

資金繰りを改善するための方法はいくつかあります。少し意識を変えるだけでも資金繰りが大幅に改善することがあるので試してみましょう。

では資金繰りを改善する方法を3つ見ていきましょう。

3-1. 資金繰り表を作成する

資金繰りを改善するために行える最初のステップは、資金繰り表を作成することです。資金繰り表とは、毎月どのタイミングで資金が入っているのか、資金が出ていくのかを把握する書類です。

資金繰り表を作成することで、資金が足りなくなりそうなタイミングがあるか、資金が足りなくなる要因は何かを確認できます。

ただし、資金繰り表の作成には注意点があります。もし、慢性的に赤字経営が続き、資金繰りが悪化しているのであれば、それは資金繰りの問題ではなくビジネス自体がうまくいっていないことを意味しています。そのケースでは、ビジネス自体の方向性を変える必要があるかもしれません。

3-2. 売掛金の早期回収を目指す

資金繰りを改善する別の方法は、売掛金の早期回収を目指すことです。

売掛金の回収が遅くなると、それだけ資金繰りが厳しくなります。毎月の支払いに余裕をもって間に合う回収が必要です。

もし、一時的に売掛金の回収が間に合わないのであれば、ファクタリングを利用して資金を調達するのも一つの方法です。

3-3. 資金調達を行う

資金繰りを改善するためには、資金調達を行わなければなりません。資金調達が行えれば、慢性的な資金繰りの悪化から脱却できる可能性があります。

資金調達の方法はさまざまで、金融機関からの融資、補助金や助成金の活用、新規株式の発行などが考えられます。

また、近年では、不特定多数の人から資金を集めるクラウドファンディングを活用する企業も増えてきました。金融機関からの融資は低金利で安全な資金調達方法ですが、審査がやや厳しいのがデメリットです。補助金や助成金は返済不要であるものの、後払いになるためすぐに資金が欲しい場合には適していません。クラウドファンディングは審査なしに資金が調達できます。ただし、多くの人の賛同を得られなければ希望額に届かないでしょう。

それぞれメリット・デメリットがあるため、自社に合った方法を探すことが重要です。

4. 資金繰りの悪化を避けて安定した運営を

資金繰りが悪化する要因は赤字経営や過剰在庫、資金繰りの管理不足などが考えられます。

それぞれ改善策があるので、資金繰りに悩んでいる経営者の方は一つずつ実行してみるとよいでしょう。資金繰りを順調に進め、安定した会社運営をしたいものです。