積立有給休暇とは?メリットや導入時のポイントを解説 - ジンジャー(jinjer)|人事データを中心にすべてを1つに

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積立有給休暇とは?メリットや導入時のポイントを解説

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積立有給休暇とは、期限内に取得できず失効してしまった年次有給休暇を積み立てることができる制度です。積立有給休暇は、継続されている「働き方改革」にならい、従業員の多様な働き方を後押しするため、企業が独自に導入・運用する休暇制度です。

この制度には法的な規定がないため、条件や内容は企業が自由に決められます。ただし、どんなに良い制度でも、従業員にとっての利便性や使いやすさを重視しなければ意味がありません。休暇制度は、従業員が使うことでエンゲージメントやモチベーションの向上に役立ちます。

本記事では、積立有給休暇の概要や導入前に検討するべきこと、導入の流れなどを詳しく解説していきます。

自社の勤怠管理は法改正に対応できているか不安な方へ

働き方改革が始まり、法改正によって労働時間の客観的な管理や年次有給休暇の管理など、勤怠管理により正確さが求められることとなりました。

しかし、働き方改革とひとことで言っても「何から進めていけばいいのかわからない…」「そもそも、法改正にきちんと対応できているか心配…」とお悩みの人事担当者様も多いのではないでしょうか。

そのような方に向け、働き方改革の内容とその対応方法をまとめた資料を無料で配布しておりますので、法律にあった勤怠管理ができているか確認したい方は、以下のボタンから「中小企業必見!働き方改革に対応した勤怠管理対策」のダウンロードページをご覧ください。

1. 積立有給休暇とは

女性

積立有給休暇とは、期限切れとなった年次有給休暇を消滅させるのではなく、積み立てておく制度のことで、下記のような呼び方もあります。

  • 失効年休積立休暇
  • 失効年次有給休暇積立制度
  • 積立休暇

積立有給休暇は、病気やけがで長期療養が必要な際や、介護や子育てのために休暇が必要な際に利用できる制度です。

これは法律で定められた公的な制度ではなく、企業が独自に実施する制度となるため、企業によって制度の有無や積み立てられる日数、利用条件などが異なります。福利厚生に該当するので、自社の魅力の1つとして導入したり、優秀な人材の囲い込みをするために導入したりする企業が増えています。

1-1. 積立有給休暇と有給休暇の違い

積立有給休暇と通常の有給休暇の違いは、法的な制度であるかどうかです。有給休暇は労働基準法第39条で付与が義務付けられており、付与日数や有効期限、賃金の計算方法も定められています。

一方、積立有給休暇は法律で定められておらず、企業が任意で導入する制度であり、付与するかしないかは企業の自由です。

付与条件や運用方法も企業が独自のルールを設定できるため、制度の内容は企業により大きく異なることがあります。例えば、子どもの看病や学校行事のための利用のみ認める、積立は1年間のみ有効などです。

参考:労働基準法 | e-Gov 法令検索

2. 積立有給休暇の導入状況について

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積立有給休暇は任意制度なので、「導入しているかしていないか」については企業差がありますが、人事院による「平成28年民間企業の勤務条件制度等調査結果の概要」では、下記のような導入状況となっています。

企業規模 導入している 導入していない 検討中 不明
500人以上 54.6% 44.0% 1.0% 0.5%
100~500人未満 31.0% 67.3% 1.0% 0.7%
50~100人未満 19.2% 74.7% 1.3% 4.8%

参考:正社員の積立年休制度の有無別企業数割合(母集団:全企業)

この表を見るとわかるように、企業規模が大きいほど導入している会社が多く、小さい企業はあまり導入していません。導入状況が多いと感じるか少ないと感じるかは企業によって分かれると思いますが、売り手市場となっている現代では、導入する価値がある制度といえるでしょう。

3. 積立有給休暇の2つのメリット

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積立有給休暇を導入すると、従業員には「失効してしまった有給休暇を取得できる」というメリットがあります。しかし、企業側にとっては、まとまった休暇を取得されてしまうと業務に支障が出るなどの不安があるかもしれません。

ですが積立有給休暇の導入には、下記のようなメリットがあります。

  1. 離職の予防につながる
  2. 優秀な人材の獲得につながる

ここでは、それぞれメリットについて詳しく解説します。

3-1. 離職の予防につながる

積立有給休暇には、離職の予防につながるメリットがあります

有給休暇に加えて積立有給休暇も導入することで、従業員が介護や子どもの世話、体調不良などで欠勤する際の経済的な不安を緩和することが可能です。

少子高齢化により、従業員が家族の介護をする可能性は年々高まっています。介護の場合、介護休暇や介護休業がありますが、介護の段階によってはそれだけでまかなえないこともあるでしょう。

また、子どもがいる従業員は、生計を支えている人も多いので、子どもの世話や体調不良による欠勤で減給することに抵抗があるかもしれません。

しかし積立有給休暇があれば長期的な休暇も取得しやすくなるため、家庭やプライベートとの両立の困難を理由とした離職の予防が期待できます。

3-2. 優秀な人材の獲得につながる

積立有給休暇には、優秀な人材の獲得につながるメリットもあります

求職者は、業務内容や給与のほかに福利厚生もチェックしており、福利厚生が充実している企業ほど求職者にとっては大きな魅力となっています。逆に、いくら給与が水準以上であっても、法的な制度しかなく福利厚生が充実していない企業は従業員軽視と感じてしまう人が少なくありません。

積立有給休暇は福利厚生に含まれ、とくにワークライフバランスを重視する求職者へのアピールとなります。

そのため、より多くの求職者の興味を引くことで、優秀な人材とのマッチングの可能性の向上が可能です。

4. 積立有給休暇の2つのデメリット

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積立有給休暇は、離職防止や優秀な人材の確保などのメリットがありますが、一方で下記のようなデメリットがあります。

  1. 休暇の管理が複雑になる
  2. 特定の従業員に負担がかかるおそれがある

ここでは、それぞれのデメリットについて詳しく解説します。

4-1. 休暇の管理が複雑になる

積立有給休暇には、休暇の管理が複雑になるデメリットがあります

この制度がなければ、期限が切れた有給休暇は消滅するだけです。しかし、積立有給休暇を導入すると、消滅するはずだった有給休暇を積立有給休暇に変更して、新たに積み立てていく過程が必要となります。

有給休暇と積立有給休暇の日数を別で管理し、それぞれの最新の利用状況を把握しなければいけません。社内システム上で自動的に管理できるかどうか、マニュアルで管理する場合はどのように管理するかなどの確認も発生します。

休暇の取得状況や残日数がわかりにくくなる可能性があるため、どのように管理すべきか考慮してから導入しましょう。

4-2. 特定の従業員に負担がかかるおそれがある

積立有給休暇を導入した結果、特定の従業員に負担がかかる可能性があるというのもデメリットです

例えば、積立有給休暇が10日以上だった場合、法定の有給休暇と組み合わせると、1ヵ月など長期間の連続休暇の取得が可能になります。従業員がしっかり休暇を取るというのは良いことですが、その代わり長期間不在となる従業員の業務を他の従業員に振り分けなければなりません。

業務量にもよりますが、振り分けた結果、特定の従業員が業務量過多になるリスクがあります。

このようなケースは不満の元になるので、特定の従業員への負担が増えないよう、業務の分散や効率化により社内環境を整えてから積立有給休暇を導入しましょう。

5. 積立有給休暇を導入する前に検討すべきこと

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積立有給休暇を導入する前に、下記の点を検討しましょう。

  1. 対象従業員
  2. 取得単位・連続取得可能日数
  3. 有効期限
  4. 積立日数の上限
  5. 利用事由の制限
  6. 出勤率算定への影響

ここでは、これらの項目について解説します。

5-1. 対象従業員

積立有給休暇の利用対象者は、必ず検討しましょう

例えば、準社員も含めたすべての従業員を対象とするのか、正社員のなかでも5年目以上などの条件をつけるのかなどをしっかり決めておくことが重要です。

有給休暇というのは従業員ごとに日数が異なりますし、取得する日数も違います。そのため、安易に「すべての従業員」を対象にしてしまうと、業務負担が大きくなってしまいます。

ただし、対象者は企業が自由に設定してよいものの、対象外とする従業員が不公平に思わないよう注意しなければなりません。積立有給休暇を導入する目的を明確にし、対象者を限定する理由をしっかり説明しましょう。

5-2. 取得単位・連続取得可能日数

積立有給休暇の取得単位や連続取得可能日数も、事前に決めておきましょう

取得単位というのは、半日や時間単位での取得を許可するのか、全日のみの取得とするのかなどの単位です。半日や時間単位でも取得できるようにしておけば、「子どもが急に熱を出したから早退したい」「ケアワーカーとの打ち合わせがあるので半日休みたい」などの要望に対応できます。

また、連続使用可能日数を設定しておくと調整が必要な業務量を限定でき、分担がしやすくなるメリットがあります。ただし、療養や介護などによりどうしてもまとまった休暇が必要な際は、制限を設けず連続取得できるなど、従業員の事情に応じた柔軟性も考慮するとよいでしょう。

5-3. 有効期限

積立有給休暇であっても、有効期限の有無を決めておきましょう

もちろん、業務や休暇管理などに問題がなければ、無期限でも構いません。ただし、無期限とすると有給休暇が過剰にたまる可能性があります。

極端な例ですが、100日溜まっていたら、約3ヵ月の休暇を申請してくる可能性があります。連続取得日数を決めていても、数日空けて再度有給を取得されてしまうと、業務の振り分けも難しくなり、他の従業員負担も大きくなるかもしれません。

このような事態を防ぐためにも、無期限にする場合は積立日数の上限を設けることがおすすめです。

5-4. 積立日数の上限

積立日数に関しては、上限を決めましょう。積立日数を無制限にしてしまうと、「何かあった時のために」と従業員があえて有給を取得しなくなる可能性があるので注意が必要です。

決めるのは、年間積立日数と総積立日数それぞれの設定がおすすめです。

年間積立日数の上限とは、年間で何日分の積立有給休暇をためてよいかに該当します。年間の上限を決めると、計画的な消化の促進が期待できます。

総積立日数の上限を設定しておけば、積立有給休暇が一定までたまったらそれ以上は追加されなくなります。入院する場合を想定して、40日から60日程度を上限とするとよいでしょう。

5-5. 利用事由の制限

利用事由の制限をするかどうかも、事前に検討しておくことが求められます

法定の有給休暇は事由に関係なく、休暇を取得させなければなりません。しかし、積立有給休暇は福利厚生として導入するものなので、利用事由の制限が可能です。

利用事由は企業によりさまざまですが、下記に制限するケースがよく見られます。

  • 病気やけがによる療養
  • 入院
  • 介護
  • 育児
  • 自己啓発のための研修やセミナー
  • ボランティア活動

もちろん、利用事由の制限を設けないケースもあります。ただし、積立日数が多い従業員がいる場合、利用事由を設けておかないと仕事に支障がでる可能性もあるので、従業員のニーズに合わせて内容を調整するとよいでしょう。

5-6. 出勤率算定への影響

積立有給休暇の取得日を、出勤率算定に含めるかどうかを検討しましょう

出勤率は次年度の有給休暇付与や賞与、退職金に関係します。そのため、積立有給休暇を出勤率算定に含めた場合、退職時まで休暇を取得しない従業員がでてくる可能性があります。

また、出勤率算定に影響するとなると、休暇を積極的に取得しない従業員が増えるかもしれません。そうなると、従業員の満足感やモチベーションアップのために導入する積立有給休暇のメリットがなくなってしまいます。

法定の有給休暇は出勤率算定に含まれますが、積立有給休暇の場合は含めなくても構いません。対象従業員や利用事由の制限などをふまえて検討するとよいでしょう。

6. 積立有給休暇を導入する際のポイント

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積立有給休暇を導入する際は、下記のポイントに留意しましょう。

  1. 現場に合わせたルール化
  2. 制度の積極的な周知

ここでは、これらのポイントについて解説します。

6-1. 現場に合わせたルール化

積立有給休暇は、現場の状況や意見を反映してルール化をおこないましょう

現場をよく考慮して導入しなければ、積立有給休暇を導入しても取得しづらくなる可能性があります。例えば、業務の振り分けが難しい部署に、全日単位しか取得できないというルールを設定してしまうと、結果的に休暇が取れず制度自体が定着しません。

また、有給休暇を積極的に取得するような環境が整っていないと、積立有給休暇によって法定の年次有給休暇の取得が停滞する恐れもあります。

現場の従業員はどのような場合にどのような使い方ができる休暇を求めているのか、しっかりヒアリングしましょう。

6-2. 制度の積極的な周知

積立有給休暇の導入前後は、積極的に取得方法や活用例を周知しましょう。この制度は法的な義務がなく、現時点では100~500人以上の従業員を抱える大手企業が8割程度導入しているだけの状況なので、中小企業で働く人にはあまりなじみがありません。

そのため、導入したことの積極的な周知はもちろん、取得方法や活用例もしっかり周知しておく必要があります。

周知方法は、メールや掲示板での通達が一般的ですが、制度の理解を促進するために説明会を開くというのもおすすめです。

まずは、管理職に向けて詳しい説明をおこない、その後各部署内で取得が進むようマネジメントしてもらいましょう。

7. 積立有給休暇の導入の流れ

はてな

積立有給休暇の導入は、3つのステップでおこないます。

  1. 運用ルールを作成する
  2. 就業規則に記載する規定の作成
  3. 全従業員に周知する

運用ルールは、導入目的を明確にして、事業内容や組織に合わせ「利用条件」や「申請期限」、「休暇の付与方法」などを具体的に決めましょう。積立有給休暇を導入する場合は、就業規則への記載が必要です。記載方法は就業規則内に追記する形でもいいのですが、わかりやすさを重視する場合は別途「積立有給休暇制度規定」を作成するとよいでしょう。

就業規則への記載が完了したら、最後は全従業員に周知をすることで運用可能になります。

8. 退職時の積立有給休暇の扱い

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退職時に積立有給休暇を消化できるかどうかは、企業で判断することができます。

法定の有給休暇は従業員の権利となっているため、原則として、退職に合わせて消化することが認められています。そもそも、有給休暇を申請している従業員に対し、退職を理由に取得させないというのは違法となるので注意しましょう。

しかし、積立有給休暇は企業独自の制度なので、「引き継ぎへの影響」や「繁忙期」などを考慮して、退職時は消化ではなく買取のみとする、ということが可能です。

ただし、退職時の扱いをどのようにするかに関係なく、「積立有給休暇の条件」に関してはきちんとルール化して就業規則に明記しましょう。

9. 積立有給休暇を導入して多様な働き方を促進しよう

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積立有給休暇は期限切れの法定の有給休暇を積み立てて利用できる制度です。運用方法は企業の判断で自由に決められるので、社内のニーズや状況に合わせて対象従業員や日数の上限、利用事由の制限などを決定しましょう。

積立有給休暇は任意の制度だからこそ、企業独自のカラーを打ち出すことができるので、福利厚生面での他社との差別化にもつなげることも可能です。

有給休暇や積立有給休暇のように、従業員が自由に取得できる制度というのは企業への満足度を高めてくれます。満足度が高くなると、業務の効率化などのメリットも得られるでしょう。

休暇制度を充実させることで多様な働き方を促進し、優秀な人材の獲得や流出の防止に役立ててください。

自社の勤怠管理は法改正に対応できているか不安な方へ

働き方改革が始まり、法改正によって労働時間の客観的な管理や年次有給休暇の管理など、勤怠管理により正確さが求められることとなりました。

しかし、働き方改革とひとことで言っても「何から進めていけばいいのかわからない…」「そもそも、法改正にきちんと対応できているか心配…」とお悩みの人事担当者様も多いのではないでしょうか。

そのような方に向け、働き方改革の内容とその対応方法をまとめた資料を無料で配布しておりますので、法律にあった勤怠管理ができているか確認したい方は、以下のボタンから「中小企業必見!働き方改革に対応した勤怠管理対策」のダウンロードページをご覧ください。

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