住民税は産休・育休中でも納付する?払い方や育休明けの手続きも解説
更新日: 2026.6.2 公開日: 2025.6.1 jinjer Blog 編集部

産休・育休中であっても、住民税の納税義務はなくなりません。住民税は前年の所得に対して課税される「後払い」の仕組みであるので、休業中で給与がない期間でも、前年に一定の所得があれば支払いが必要です。
本記事では、産休・育休中の住民税の納付方法や、休業開始時期による「一括徴収」と「普通徴収」の違い、さらに育休明けに企業がおこなうべき特別徴収への切り替え手続きについてわかりやすく解説します。
目次
「自社の給与計算の方法に不安がある」「労働時間の集計や残業代の計算があっているか確認したい」「社会保険や所得税・住民税などの計算方法があっているか心配」など、給与計算に関して不安な方もいらっしゃるのではないでしょうか。
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1. 住民税は産休・育休中も支払う必要がある


産前産後休業(産休)や育児休業(育休)を取得している間も、住民税の支払い義務はなくなりません。住民税は前年の1月1日から12月31日までの所得に対して課税される税金です。
産休や育休を取得する前の年に働いていて一定以上の所得があった場合は、住民税を支払う必要があります。収入がない期間の支出となるため、事前に資金を準備しておくことが大切です。
なお、産休や育休中に給与の支払いがない場合は、所得税の源泉徴収はされません。
1-1. 産休・育休中の給付金は非課税
産休・育休中に支給される次のような給付金は非課税です。
- 出産育児一時金
- 出産手当金
- 育児休業給付金
これらは実際に受け取るお金ではありますが、税務上は「所得」として扱われません。そのため、所得税はかからず、翌年度の住民税にも影響しません。休業によって収入が減っている期間でも、これらの給付によって税負担が増えることはなく、安心して受け取れます。
また、これらの給付金は所得に含まれないので、税制上の扶養判定をおこなう際にも計算に含めません。年末調整や確定申告の際には、誤って所得として申告しないよう従業員にきちんと周知しましょう。
1-2. 産休・育休中は社会保険料支払いの免除を受けられる
産休・育休中も社会保険の加入は継続されますが、社会保険料(健康保険料、厚生年金保険料)は免除されます。なお、給与の支払いがない場合には、雇用保険料の負担も発生しません。
社会保険料の免除を受けるためには、事業主が「産前産後休業取得者申出書」「育児休業等取得者申出書」を日本年金機構または健康保険組合へ提出する必要があります。
これらの手続きにより、従業員負担分および事業主負担分の双方の社会保険料が免除されます。また、免除期間は保険料を納付した期間として取り扱われるので、将来受け取る年金額に影響はありません。
参考:厚生年金保険料等の免除(産前産後休業・育児休業等期間)|日本年金機構
関連記事:産休中の社会保険免除はいつからいつまで?申請方法から具体例まで解説
関連記事:育児休業等取得者申出書の書き方・記入例や提出期限・方法をわかりやすく解説
1-3. 産休・育休中の従業員も年末調整の対象に含まれる
産休・育休中であっても、「扶養控除等申告書」を提出しており、その年の最後に給与の支払いを受ける時点で在籍していれば、原則として年末調整の対象となります。
特に、年の途中で産休や育休に入った場合は、在職中に源泉所得税が多めに徴収されていることが多く、結果として税金を納めすぎている可能性があります。そのため、年末調整を適切におこない、過不足を精算して従業員へ還付することが重要です。
また、年末調整後には、法定調書や給与支払報告書を作成し、翌年1月31日までに税務署および市区町村へ提出する必要があります。給与支払報告書は住民税の算定に用いられる重要な資料なので、記載内容に誤りがあると住民税の計算ミスにつながり、従業員とのトラブルに発展するおそれがあります。正確な作成・提出を心がけましょう。
関連記事:産休中も年末調整は必要?正しい処理方法と控除との関係を解説
2. そもそも住民税とは?


住民税とは、都道府県や市区町村といった地方自治体に納める税金であり、教育・福祉・インフラ整備など、地域の行政サービスを支える重要な財源です。
住民税の大きな特徴は、前年の所得に基づいて課税される「後払い型の税金」である点にあります。そのため、現在の収入が減少していても、前年に所得があれば一定の税負担が発生します。
2-1. 住民税の計算方法
住民税は大きく「均等割」と「所得割」の2つで構成されています。均等割は所得の多少にかかわらず一定額を負担する部分であり、所得割は前年の所得に応じて課税される部分です。
まず、収入から給与所得控除や必要経費を差し引いて各所得の金額を求め、それらを合計します。次に、その所得金額から各種所得控除を差し引いて課税所得を算出します。この課税所得に対して、原則として10%(市町村民税6%・都道府県民税4%)の税率を乗じ、さらに税額控除を差し引くことで所得割額が決まります。
最終的な住民税額は、この所得割額に均等割(4,000円程度)を加え、さらに森林環境税(1,000円)を含めて算出されます。なお、税率や均等割の金額は自治体によって若干異なる場合があります。
なお、令和8年度税制改正により、2027年度の住民税における給与所得控除の最低保障額が74万円へ引き上げられます。東京都23区の単身者の場合、合計所得金額45万円以下であれば、住民税の所得割・均等割とも非課税となります。
そのため、給与収入119万円以下であれば、2027年度の住民税は非課税です。ただし、各種控除や自治体の基準によって課税ラインが前後する点には注意が必要です。
住民税は、所得税のような申告納税方式ではなく、自治体が税額を決定する賦課課税方式が採用されています。そのため、個人が自ら計算する機会は多くありませんが、仕組みを理解しておくことで税額の妥当性を確認しやすくなり、給与や控除の影響も把握しやすくなるでしょう。
参考:令和8年度税制改正の大綱|財務省
参考:個人住民税|東京都
関連記事:住民税とは?種類や計算方法・非課税になるケースを解説
2-2. 住民税の納付方法の種類
住民税の納付方法には、勤務先が従業員の給与から天引きして納付する「特別徴収」と、本人が自ら納付する「普通徴収」の2種類があります。会社員やパート・アルバイトなどの給与所得者については、原則として特別徴収が適用されます。
特別徴収では、毎年5月頃に各自治体から勤務先へ住民税決定通知書が届き、その内容にもとづいて6月から翌年5月までの1年間、毎月の給与から住民税を徴収します。従業員自身が納付手続きをおこなう必要はなく、勤務先が従業員に代わって税額を取りまとめ、翌月10日までに自治体へ納付します。
一方、普通徴収は主に自営業者や個人事業主、退職者、複数の収入源を持つ人など、特別徴収の対象とならない場合に適用されます。この場合、自治体から本人あてに納税通知書および納付書が送付され、それに従って自分で住民税を納める必要があります。納付は通常、年4回に分けておこなわれ、それぞれ納期限が定められています。
関連記事:住民税の特別徴収とは?普通徴収との違いや手続きの流れを解説
2-3. 産休・育休中は特別徴収を継続できなくなる可能性が高い
産休・育休中は給与の支給がない、または大幅に減るケースが多く、住民税の特別徴収が継続できなくなる可能性が高いです。また、住民税は前年の所得に基づいて課税されるため、休業中で収入が減少していても、一定の税負担が続く点に注意が必要です。
このように特別徴収ができなくなった場合には、異動があった月の翌月10日までに「給与所得者異動届出書」を、従業員の1月1日現在の住所地の市区町村へ提出する必要があります。
参考:給与支払報告書や給与所得者異動届出書の提出先について教えてください。|渋谷区
3. 産休・育休中の住民税の納付パターン


産休・育休に入ると給与が減額または支給停止となり、住民税の特別徴収を続けられなくなる場合があり、その際は通常とは異なる方法で納付する必要があります。休業の開始時期によって納付方法が異なるので、あらかじめ確認しておくことが大切です。
3-1. 1月1日~5月31日に休業開始する場合(一括徴収)
従業員が1月1日から5月31日までの間に休業に入る場合、原則として、本人からの申し出の有無にかかわらず、残りの住民税は給与から一括で徴収する必要があります。例えば、2月に産休に入り以降の給与支給がない場合には、2月から5月分の住民税を一括で徴収し納付することとなります。
ただし、一括徴収すべき税額が高額で給与から差し引ききれない場合には、普通徴収へ切り替えることも可能です。なお、一括徴収によって納付する際は、すでに送付されている納付書の金額を訂正して納めるのが一般的です。自治体によって取り扱いが異なる可能性もあるので、事前に確認しておくと安心です。
参考:異動届出書の提出について(従業員が退職・休職した場合)|さいたま市
3-2. 6月1日~12月31日に休業開始する場合(普通徴収へ切替)
従業員が6月1日から12月31日までの間に休業へ入る場合、住民税の徴収方法は特別徴収から普通徴収へ切り替わり、本人が直接納付することになります。ただし、本人の希望があれば、残りの税額を給与から一括で徴収することも可能です。
産休・育休中の住民税の納付書は、特別徴収から普通徴収への切り替え手続き完了後、おおよそ1〜2ヵ月後に本人宛てに送付されます。なお、企業側で一括徴収をおこなった場合、納付書は発行されません。
普通徴収の納付時期は、原則として6月末・8月末・10月末・翌年1月末の年4回ですが、特別徴収から普通徴収へ切り替わる時期によって、納付回数や各回の金額は変動します。
例えば、育児休業により8月分まで特別徴収で納付済みで、9月以降に普通徴収へ切り替わる場合、すでに8月末までの納期限は経過しているため、残りの税額(9月分以降)は、通常10月末および翌年1月末の2回に分けて納付することになります。
参考:個人市民税・県民税・森林環境税の納税通知書に関するよくあるご質問|横浜市
4. 育休明けに企業が実施すべき住民税手続き


従業員が育児休業から復帰した際、企業側には住民税や社会保険に関するいくつかの手続きが必要となります。適切に対応することで、給与計算や税務処理のトラブルを防止できます。
4-1. 従業員の住民税の納付方法を確認する
育休中は給与の支払いがないので、住民税の納付方法が「普通徴収」に切り替わっているケースがあります。復職後は再び給与から天引きする「特別徴収」に戻すのが一般的です。
そのため、まずは従業員の現在の納付方法がどちらになっているかを確認する必要があります。本人に納付書の有無を確認したり、必要に応じて市区町村へ問い合わせたりすると確実です。
4-2. 特別徴収切替届出依頼書を市区町村へ提出する
育休明けの住民税が普通徴収となっている場合に特別徴収へ切り替えるには、「特別徴収切替届出(依頼)書」を提出します。ただし、すでに納期限を過ぎている普通徴収分については、原則として特別徴収へ変更することはできません。
また、年度の途中で従業員が復職した場合、その年度については基本的に普通徴収のままでも差し支えありません。ただし、翌年度の給与支払報告書は、普通徴収が認められるケースを除き、特別徴収として提出する必要があります。
4-3. 社会保険料に関する手続きも必要
従業員の育休明けには住民税の対応だけでなく、社会保険料に関する手続きも忘れずにおこなう必要があります。従業員が予定より早く育児休業を終了した場合は、「育児休業等取得者申出書・終了届」を提出しなければなりません。
さらに、育児休業の終了時には「育児休業等終了時報酬月額変更届」の提出が必要となる場合があります。これは復職後の給与額に基づいて標準報酬月額を見直すための手続きです。特に、時短勤務などで給与が下がる見込みがある場合には、従業員の負担軽減につながるので提出を検討するとよいでしょう。
参考:6-6:育児休業等終了予定日前に育児休業等を終了したとき|日本年金機構
参考:育児休業等終了時報酬月額変更届の提出|日本年金機構
関連記事:育児休業等終了時報酬月額変更届とは?提出方法やデメリットをわかりやすく紹介
関連記事:養育期間の従前標準報酬月額のみなし措置とは?申請期間や必要書類を解説
5. 産休・育休中の住民税に関するよくある質問


ここでは、産休・育休中の住民税に関するよくある質問とその回答を紹介します。
5-1. 産休・育休中の住民税が高すぎると感じやすい理由とは?
産休・育休中に「住民税が高い」と感じる主な理由は、住民税が前年の所得をもとに計算される仕組みにあります。例えば、産休に入る前年までフルタイムで働いていた場合、その収入に基づいて翌年度の住民税が決まります。
しかし、産休・育休中は給与が減ったり、収入が給付金のみになったりするため、実際の収入と税額に大きなギャップが生じるのです。その結果「今は収入が少ないのに税金だけ高い」と感じやすくなります。
5-2. 産休・育休中の住民税の減免制度はある?
産休・育休中における住民税の減免制度の有無は自治体によって異なるので、まずは従業員の居住する自治体へ早めに相談するよう案内することが大切です。状況に応じて、分割納付や納付猶予などの対応が認められることがあります。
なお、産休・育休に入っている場合でも、住民税は前年の所得を基に課税されるため、給与収入がない期間であっても納付義務は継続します。支払いをおこなわずに放置すると延滞金が発生し、最悪の場合は財産の差し押さえに至る可能性もあるので注意が必要です。
5-3. 産休・育休に備えて住民税の負担を軽減する方法はある?
産休・育休に入る前に事前に準備しておくことで、課税所得を減らし、翌年度の住民税負担を軽減できる可能性があります。例えば、ふるさと納税のワンストップ特例制度を利用すれば、寄附金控除はすべて翌年度の住民税から差し引かれます。所得税の還付は発生しませんが、控除総額自体は確定申告をした場合と同等になるよう設計されています。
また、iDeCoを活用した場合は、掛金が「小規模企業共済等掛金控除」の対象となり、全額が所得控除として扱われます。さらに生命保険に加入している場合は、一定の上限の範囲内で生命保険料控除を受けることが可能です。これらの控除は年末調整で反映され、結果として翌年度の住民税にも影響します。
加えて、年間の医療費が高額になった場合には医療費控除の活用も有効です。生計を一にする親族(配偶者や親・子など)の医療費を支払った場合も対象となります。ただし、医療費控除は年末調整では対応できず、確定申告が必要です。また、確定申告をおこなった場合、ワンストップ特例の内容は無効となるので、ふるさと納税分も含めて申告をおこなう必要があります。
参考:個人住民税|東京都
6. 産休・育休中の住民税の取り扱いを従業員に周知しよう


産休・育休中であっても、住民税は前年の所得に基づいて課税されるので、納付義務は継続します。休業中は住民税を給与から天引きする特別徴収が困難になることが多く、時期に応じて一括徴収や普通徴収への切り替えが必要となります。
また、育休明けには特別徴収への復帰手続きや、社会保険料の報酬月額変更届などの対応も欠かせません。企業側はこれらの仕組みや手続きを正確に把握し、従業員が安心して休業・復職できるよう、事前の周知や適切な事務処理を心がけることが大切です。



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