手待ち時間とは?定義・休憩時間との違い・労働時間該当性を解説 - ジンジャー(jinjer)|クラウド型人事労務システム

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手待ち時間とは?定義・休憩時間との違い・労働時間該当性を解説

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手待ち時間とは、従業員が業務に従事していなくても、使用者の指揮命令下にあり、業務再開に備えて待っている時間を指す言葉です。

例えば、飲食店の接客担当の場合、お客様がまったくいない状態では仕事がないので、スマートフォンをいじったり従業員同士でおしゃべりをしたりすることがあります。このような状態は、来店客があればすぐに接客を始められるので「手待ち時間」となります。

企業は、手待ち時間と休憩時間の違いを理解し、労働環境の適正化や法的トラブルを回避するために、手持ち時間に関する知識を深めましょう。

本記事では、手持ち時間の定義や休憩時間との違い、労働時間該当性がわかる判例などを解説します。

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1. 手待ち時間とは?定義を解説

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手待ち時間とは、従業員が業務をおこなっていなくても、使用者の指示があればすぐに業務に取りかかれるよう待機している時間を指します。

見た目的には、仕事をしていることになりませんが、従業員は完全に業務から解放されていません。何をしていても、使用者の指揮命令下にあるので、手待ち時間は労働時間となり、賃金が支払われることが一般的です。

手待ち時間の判断ポイントは、「使用者の指導・管理下」にあるということです。「従業員が自由に過ごしている」と思われる状況でも、従業員がすぐに業務に取りかかれる状態にある場合は、手待ち時間とみなされるので「働いている状態」となります。

2. 手待ち時間と休憩時間の違い

女性

手待ち時間と休憩時間の違いは、「従業員が業務に対してどのような状態にあるか」、また「賃金の発生の有無」にあります。具体的な違いは、以下のとおりです。

手待ち時間 休憩時間
定義 業務の再開を待っている時間 業務から解放され自由に過ごせる時間
業務状態 作業指示があればすぐに再開可能な待機状態 待機の必要がないため自由に過ごせる状態
指示への対応 指示があれば応じる必要がある 指示があっても応じる必要はない
労働時間 労働時間に含まれる 労働時間に含まれない
賃金の支払い 賃金が支払われることが一般的 賃金は支払われない

なお、休憩時間に関しては、労働基準法によって下記のように規定されています。

  • 労働時間が6時間を超える場合:休憩45分
  • 労働時間が8時間を超える場合:休憩1時間

例えば、15分の手待ち時間の後に休憩時間があった場合、30分しか休憩をさせなかった場合は労働基準法に違反となるので、企業は労働基準法の規定を守り、休憩時間の管理を徹底する必要があります。

参考:労働基準法 | e-Gov 法令検索

3. 手待ち時間の労働時間該当性がわかる判例

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以下は、手待ち時間の労働該当性がわかる、船舶などの製造や修理を業としている某造船所の判例です。

項目 内容
事件名 三菱重工業造船所賃金カット(労働時間の概念)
争点 始業前の準備作業(更衣・工具装着・消耗品受け渡し・散水など)が労働時間に該当するかどうか
従業員の主張 ・始業前の準備行為は、会社の指示にもとづくものであり労働時間に該当する

・割増賃金は支払われるべき

三菱重工業造船所の主張 ・準備行為は労働時間に該当しない

・賃金支払いの対象外

裁判所の判断 準備行為は使用者の指揮命令下にあり、労働時間に該当する

参考:三菱重工業造船所賃金カット|労働事件 裁判例集

上記の判例を通じて、「従業員が使用者の指揮命令下にある時間」を指す基準が明確になりました。さらに、労働時間は単に就業規則や労働契約に明記された内容だけではなく、実際の勤務形態や業務内容にもとづいて合理的に判断されるべきであると補足されています。

4. 手待ち時間の具体例

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「手待ち時間」が発生するのは、主に下記のような職業です。

  • タクシードライバーの待機時間
  • サービス業の店番
  • 配送業者の待機時間
  • 医療従事者の待機時間
  • 仮眠時間

ここでは、これらの職業の具体的な手待ち時間について解説します。

4-1. タクシードライバーの待機時間

タクシードライバーというのは、「乗客を目的地まで送る」というのが主な仕事になるため、それ以外の時間は待機時間となります。

待機中のタクシードライバーは、お客様が乗ってきたらすぐに目的地まで送らなければならない、つまりいつでも「走行する業務」をおこなえる状態です。そのため、待機時間は手待ち時間とみなされます。

タクシードライバーの待機時間とは、主に下記のような時間です。

  • 駅やタクシー乗り場などでお客様を待っている時間
  • お客様を乗車させていない空車走行中

上記の時間は、タクシー会社や配車サービスの指揮命令下で業務をおこなっているとみなされるため、労働時間として扱われます

ただし、労働契約や業務形態、さらには労働基準法の解釈によっては異なる場合があるため、適切な契約や管理体制を整えることが重要です。

4-2. サービス業の店番

飲食店や小売業などのサービス業における店番も、手待ち時間としてみなされます。

お客様がいない状況では、従業員同士がおしゃべりをしたり、業務に関係のない動作をしていたりすることがあるかもしれません。しかし、従業員は、顧客対応をしていない間でも業務に備えて待機している状態です。

いつでも顧客対応できる状態でいるということは、使用者の指揮命令下にあると判断されるため、手待ち時間として労働時間に含まれ、賃金を支払う対象となります。

当然ですが、待機中におこなう商品管理や店内の整理、清掃などの作業も業務の一環とみなされるため、労働時間に含まれます。

4-3. 配送業者の待機時間

配送業者の待機時間も、手待ち時間に該当します。

具体的には、以下のような場合が待機時間としてみなされます。

  • 荷待ち・荷役作業(荷積み・荷卸し等)にかかる時間
  • 到着時間が不明で会社から待機を指示された場合

荷役作業は労働時間に含まれると思っている方も多いかもしれませんが、国土交通省などのガイドラインでは下記のような記載があります。

荷主事業者は、発荷主事業としての出荷、着荷主事業者としての入荷に関わる荷待ち時間及び荷役作業等(荷積み・荷卸し・付帯業務)にかかる時間を把握する

引用:物流の適正化・生産性向上に向けた荷主事業者、物流事業者の取組に関するガイドライン|経済産業省/農林水産省/国土交通省

国土交通省では、上記の時間を待機時間と位置づけていますが、その代わり2時間以内とすることもルール化しています。反対に到着時間が明確であり、待機中に従業員が自由に過ごせる場合は、休憩時間に該当することもあります

4-4. 医療従事者の待機時間

医療従事者の待機時間も、手待ち時間とみなされるため「労働時間」扱いになります。

厚生労働省が発行している「医療従事者の宿日直許可基準等について」では、下記のような状況は「労働時間である」と明記されています。

○労働時間とは、使用者の指揮命令下に置かれている時間のことをいい、使用者の明示又は黙示の指示により労働
者が業務に従事する時間は労働時間に当たる。そのため、次のアからウのような時間は、労働時間として扱わなければ
ならない。

ア 使用者の指示により、就業を命じられた業務に必要な準備行為(着用を義務付けられた所定の服装への着替え
等)や業務終了後の業務に関連した後始末(清掃等)を事業場内において行った時間

イ 使用者の指示があった場合には即時に業務に従事することを求められており、労働から離れることが保障されて
いない状態で待機等している時間(いわゆる「手待時間」)

ウ 参加することが業務上義務づけられている研修・教育訓練の受講や、使用者の指示により業務に必要な学習等
を行っていた時間

○ただし、これら以外の時間についても、使用者の指揮命令下に置かれていると評価される時間については労働時間
として取り扱うこと

引用:医療従事者の宿日直許可基準等について|大阪労働局労働基準部監督課

原則として、緊急時の対応を求める場合や、業務の一環として待機している場合などは労働時間として認識されることが一般的となっています。つまり、医療従事者の場合、明確な休憩時間以外は何もしていないように見えるとしても「手待ち時間」となるのです。

4-5. 仮眠時間

夜間業務や長時間業務の合間に発生する仮眠時間は、「休憩時間」として扱う企業もあるかもしれませんが、業種などによっては手持ち時間となります。

仮眠時間が「手待ち時間」になるのは、以下のようなケースが挙げられます。

  • 仮眠中であっても、電話の収容や緊急対応が求められる場合
  • 決められた仮眠場所で睡眠をとらなければいけない場合(外出は原則禁止)

手待ち時間かどうかを判断する基準は、「指揮命令下にあるか否か」です。そのため、仮眠をしていても、起床して業務をおこなわなければならないのであれば、仮眠時間は手待ち時間といえるのです。

ただし、従業員が完全に業務から離れ、仮眠を取れる状態であれば休憩時間として扱えます。

5. 手待ち時間とみなされないケース

男性

手待ち時間とみなされないケースは以下のとおりです。

  • 通勤・移動時間
  • 自宅待機
  • 持ち帰り残業・自主残業

ここでは、待機時間と同じようなケースであっても手待ち時間にはならない状態について解説していきます。

5-1. 通勤・移動時間

通勤・移動時間は、従業員の自由な時間も含まれるため、通常は手待ち時間とみなされません。ただし、移動中に仕事を指示するのであれば、賃金を支払う必要があります。

少しわかりづらいですが、出張を例として考えるとわかりやすいでしょう。

移動中の指示 手待ち時間の判断
移動中は自由に過ごしてよい 労働時間ではないため手待ち時間に該当しない
移動中も仕事を指示する 労働時間のため手待ち時間に該当する

宿泊先での過ごし方についても同様で、指揮命令下にあるかどうかで労働時間の該当性が判断されます。

5-2. 自宅待機

自宅待機というのは、場所に拘束されるものの、待機中は自由に時間を使うことができるため基本的には手待ち時間に該当しません。自宅待機の場合、具体的な業務指示をしなければ、ゲームをしたり本を読んだりするなど従業員の私的な時間となるからです。

例え、電話対応が必要な業務だとしても、ずっと電話を握りしめて待機するということはないのが一般的なので、原則拘束の程度が低い状態は労働時間とはなりません。

ただし、自宅待機中でも制服の着用が義務付けられている、使用者の指揮命令・管理下にある、外出禁止など、拘束が厳しく従業員の自由度が低い場合は手待ち時間とみなされることがあります。

5-3. 持ち帰り残業・自主残業

持ち帰り残業や自主残業は、従業員自身が判断しておこなうものであり、業務の指示や義務ではないため、手待ち時間にならないのが一般的です。

ただし、持ち帰り残業や自主残業が常態化しており、それを上司が黙認をしている場合は、労働基準法における「労働時間」に該当する可能性があります。常態化しているということは業務過多の状態なので、これを放置していると、労働トラブルに発展するリスクがあるため注意が必要です。

持ち帰り残業や自主残業が本当に必要かどうかは、業務の進捗や期限に依存します。もし調整が可能であれば、本質的には不必要なものとみなされます。

6. 手待ち時間に関する企業側の注意点

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手待ち時間というのは、休憩時間と明確に分けなければいけません。そのため、企業は以下の点に注意しましょう。

  • 法定労働時間を超過すると時間外労働時間に該当する
  • 休憩時間と手待ち時間を明確にする必要がある

ここでは、これらの注意点について解説していきます。

6-1. 法定労働時間を超過すると時間外労働に該当する

手待ち時間によって法定労働時間を超過すると、時間外労働に該当します。時間外労働に対しては、割増賃金(残業代)が発生します。そのため、法定労働時間を超えた場合、企業は適正な残業代を従業員に支払わなければなりません。

日本の労働基準法では、1日8時間、1週間40時間が法定労働時間と定められています。つまり、1日8時間の法定労働時間分働いた従業員に1時間の手待ち時間があった場合は、時間外労働が1時間発生したということです。

法定労働時間を超える残業代は、割増率25%で計算をし、時間分の支払いをしなければなりません。支払わないと「残業代未払い」となるので、企業は法令を遵守し、従業員の手待ち時間を正確に把握する必要があります。

参考:労働基準法 | e-Gov 法令検索

6-2. 手待ち時間と休憩時間を明確にする必要がある

手持ち時間と休憩時間を明確に区別し、従業員に説明しておく必要があります。

両者の区別が不明瞭な場合、企業は労働基準法に違反するリスクを抱えることになってしまうためです。

休憩時間が手待ち時間と扱われた場合、労働基準法にもとづく労働時間の扱いが変わります。例えば、業務の都合で従業員を待機させる場合は手待ち時間とみなされるため、十分に注意しましょう。

また、休憩時間を与えない場合は労働基準法違反とみなされ、労働基準監督署からの指導や勧告、場合によっては罰則が適用されることがあります。

企業は、社内ルールを策定し、天地時間と休憩時間の管理に関する具体的なガイドラインを設けることが求められます。労働環境を把握し、状況に応じた改善策を講じることでトラブルを未然に回避できるでしょう。

7. 手待ち時間を理解し適切な企業運営を心がけよう

会議

手待ち時間は、従業員が業務をおこなっていない状態でありながら、使用者の指示を待つ時間のことです。「指示を待つ」というのは生産性がないため、企業側からすると「休憩時間を与えているようなもの」という感覚になりがちです。

しかし、「手待ち時間と判断するかどうか」は従業員の権利や賃金に直接影響を与えるため、定義や法律的な位置づけを明確に理解しておかなければなりません。

企業は、手待ち時間と休憩時間の明確な方針を策定し、従業員に周知することが重要です。適切な企業運営を心がけることで、健全な労働環境を維持し、労使関係の信頼性を高められるでしょう。

【今更聞けない】人事データはなぜ管理すべき?
従業員データの活用で会社が得られるメリットとは

人事担当者の中でも業務を効率化することに興味はあっても、実際にどのように進めるべきなのか、どんなメリットがあるのかピンと来ない方もいらっしゃるのではないでしょうか。

「データの管理を効率化・ペーパーレス化にしたいと考えているが、何からはじめたら良いかわからない」
「人事データを蓄積しておくことで、実際会社にとってどんな活用価値があるのかわかっていない」
「人事業務を電子化したいが、どんな機能を備えておくべきなのか具体的な点がわからない」

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