時差出勤とは?フレックスタイム制との違いやメリット・デメリット、注意点を解説
更新日: 2025.5.30
公開日: 2024.11.18
jinjer Blog編集部
「時差出勤とは?」
「時差出勤とフレックスタイム制の違いは?」
「時差出勤を導入するメリットやデメリットを知りたい」
時差出勤について、上記のような疑問や悩みをもつ人事労務の担当者もいるのではないでしょうか。
時差出勤とは、勤務時間帯を前後にずらして働く勤務方法です。時差出勤を利用すると、通勤ラッシュのストレスを緩和できます。また、仕事とプライベートの両立が実現しやすくなるため、従業員の満足度も高まるでしょう。
本記事では、時差出勤の概要やフレックスタイム制との違いについて解説します。また、時差出勤を導入するメリット・デメリットや導入する際の注意点についても解説するので、ぜひ参考にしてください。
目次
フレックスタイム制の導入には、労使協定の締結や就業規則の変更・届出など、行うべき手続きが存在します。
また、フレックスタイム制を導入した後に、「出勤・退勤時間が従業員によって異なるので、勤怠管理が煩雑になった」「残業時間の計算方法と清算期間の関係がよく分からない」といったお悩みをお持ちの方もいらっしゃるのではないでしょうか。
そのような方に向け、当サイトでは「フレックスタイム制度を実現するための制度解説BOOK」をご用意しました。
資料ではフレックスタイム制導入の流れや手続の他に、残業の数え方や効率的な勤怠管理の方法も解説しておりますので、適切にフレックスタイム制を運用したいという方は、ぜひこちらからダウンロードしてご覧ください。
1. 時差出勤とは
時差出勤とは、定められた勤務時間帯を前後にずらして働く出勤方法です。休憩を含む9時間勤務の場合、8時出社だと17時退社、10時出社だと19時退社になります。
時差出勤は、出社する時間を変更するだけで、勤務時間には影響をあたえません。違法性もなく、労働時間そのものは変わらないため、ペースを乱すことなく仕事を進められるでしょう。
時差出勤を利用することで、通勤ラッシュのストレスを緩和することが可能です。また、朝や夜の時間を確保しやすくなるため、子育て中の人や家族の介護が必要な人が働きやすくなります。
2. 時差出勤とフレックスタイム制の違い
時差出勤と混同しやすい制度がフレックスタイム制です。
時差出勤は企業や事業所全体、もしくは一部の部署・チームについて、通常の始業・終業時間をずらして勤務する制度です。一方、フレックスタイム制は、あらかじめ設定された1ヵ月単位の総労働時間を満たせば、労働者自身がその期間内の勤務開始時間・終了時間を自由に決められる制度です。労働者は生活リズムや業務状況に合わせて柔軟に勤務時間をコントロールできるため、ワーク・ライフ・バランスを保ちやすくなります。
しかし、フレックスタイム制は従業員同士の連携が取りづらくなる、勤怠管理が煩雑になるなどのデメリットもあります。
3. 時差出勤の3つのメリット
時差出勤のメリットは以下の3つです。
- 従業員のストレスが緩和される
- 従業員の働きやすさが向上する
- 企業のイメージがアップする
それぞれ詳しく解説しましょう。
3-1. 従業員のストレスが緩和される
時差出勤を利用すると、従業員のストレスを緩和できます。朝の通勤と夕方の帰宅ラッシュを避けられるためです。
満員電車に乗ると、身体的な疲労だけではなく、心身的にも大きなストレスが発生します。疲労やストレスが日々蓄積すると、仕事のモチベーション低下にもつながりかねません。
従業員のストレスを緩和し、業務の効率がアップすれば、企業にとっても大きなメリットとなるでしょう。
3-2. 従業員のワークライフバランスが向上する
時差出勤の利用により、従業員の働きやすさが向上します。出勤や退社の時間を変更できることで、仕事とプライベートの両立が実現するためです。
働き盛りの世代には、子育て中の人や家族を介護している人が多く存在します。出勤と退社の時間が固定されていると、仕事以外のことに費やす時間がなかなか確保できません。結果的に、退職や休職を選択する従業員が増えてしまいます。
人材の流出は企業にとっても大きな損失になるため、従業員の働きやすさを向上させることは非常に重要です。
3-3. 企業のイメージがアップする
時差出勤に取り組むことで、企業のイメージアップにつながります。子どもの送迎をしてから出勤できるなど、従業員の生活スタイルに寄り添っているアピールができるためです。
人材獲得が激化している中、企業のイメージアップは採用活動において大きなメリットとなります。
4. 時差出勤の4つのデメリット
時差出勤のデメリットは以下の4つです。
- コミュニケーションが取りにくくなる
- 管理者の負担が大きくなる
- 全業種・全社員が使えるとは限らない
- 手続きが煩雑だと利用者が増えない
それぞれ詳しく解説しましょう。
4-1. コミュニケーションが取りにくくなる
時差出勤を利用することで、従業員同士のコミュニケーションが取りにくくなる可能性があります。勤務時間帯が異なると、実際に顔をあわせる時間が少なくなるためです。
朝礼やミーティングを実施できないことにより情報の伝達がスムーズにいかず、業務に支障が生じる可能性があります。
時差勤務を導入する際は、従業員ができるだけ揃う勤務時間帯を設定し、時間内でコミュニケ―ションを活発に取るようにしましょう。
従業員のスケジュールを全員が確認できるツールを活用することも効果的です。
4-2. 労務管理が煩雑になる
時差出勤の利用が増えると、管理者の負担が大きくなります。従業員の勤怠管理に必要な工程が増加するためです。
管理者に負担が偏らないよう、時差出勤に対応した勤怠管理システム等を導入するなどの工夫が必要になります。
4-3. 全業種・全社員が使えるとは限らない
時差出勤は柔軟な働き方を実現できる制度であるものの、全ての業種や全社員が対象になるわけではありません。
例えば、飲食業や小売業、サービス業のように営業時間や客対応が中心となる業種では、お店の開店・閉店時間やピークタイムに合わせて人員を確保する必要があります。そのため、各社員が自身の希望で出勤・退勤時間を決めることは現実的に難しく、時差出勤の導入は困難です。
また、オフィス業務であっても、電話や来客対応の当番業務がある職種、金融機関での窓口業務のように決まった時間帯に繁忙となる業務の場合も自由な出勤時間設定が難しいため、フレックス制が向かない場合があります。
4-4. 手続きが煩雑だと利用者が増えない
時差出勤を利用する際のデメリットのひとつが、ルールや手続きの煩雑さです。例えば、「前日までに申請して上司の許可を得る」「利用理由を細かく申告する」といったように、利用条件を就業規則で厳しく設定してしまうと、従業員が手続きを面倒に感じてしまい、結果として制度が形骸化しかねません。
5. 時差出勤を導入するための準備
時差出勤を導入するためには以下のような準備が必要です。
- 対象者と適用事由を設定する
- 始業・終業時間と適用回数を決める
- 就業規則を変更する
- 従業員に周知を図る
5-1. 対象者と適用事由を設定する
時差出勤を導入する際、事前に対象者と適用事由を設定しておく必要があります。時差出勤を導入しても、対象者と適用事由がはっきりしていなければ、スムーズに活用されないためです。
時差出勤の対象者は、妊娠中や育児中の人、家族の介護が必要な人などが多い傾向にありました。近年では、ワークライフバランスの向上を目的とし、対象となる範囲が広くなりつつあります。
適用事由に関しても保育園の送迎や子どもの学校行事に限らず、自己啓発なども認めると従業員のモチベーションも上がるでしょう。
5-2. 始業・終業時間と適用回数を決める
時差出勤を導入するにあたり、始業・終業時間と時差出勤の適用回数を決めておきましょう。従業員からヒアリングをおこない、ニーズを把握しておくことが重要です。
始業・終業時間に関しては、多くの枠を設けることで従業員のワークライフバランス向上につながります。時差出勤の適用回数もできるだけ多くすると、従業員の満足度は高まるでしょう。
5-3. 【規定例を紹介】就業規則を変更する
時差出勤を導入する場合、就業規則を変更しなければいけません。次のような例を参考に就業規則を変更しましょう。
第○条
① 労働者(※対象範囲は会社が定める)は、「時差出勤申請書」を提出することで、就業規則に定める始業と終業の時刻について、1時間(※始業・終業時刻は別に定める)の範囲に限り、始業および終業の時刻を繰り上げもしくは繰り下げる措置が認められる。ただし、業務上の都合等により、会社が時差出勤制度の申出を許可しない場合がある。 |
5-4. 従業員に周知を図る
時差出勤を導入する前に、従業員に周知を図る必要があります。従業員の理解を深めることで、時差出勤を円滑に導入するためです。
社内で説明会などを実施し、以下の点を説明します。
- 時差出勤の導入理由や目的
- 時差出勤の申請方法
- 時差出勤の利用ルール(対象者や適用事由など)
時差出勤に関する疑問や不安など従業員の意見を聞き、必要があればルールなどの見直しも検討しましょう。
6. 時差出勤を導入する際の注意点
時差出勤を導入する際、以下の点に注意しましょう。
- 勤務時間に応じて割増賃金が生じる
- 労働時間の管理が複雑になる
- 一斉休憩の適用除外手続きが必要
6-1. 勤務時間に応じて割増賃金が生じる
時差出勤を導入する際、勤務時間に応じて割増賃金が生じることに注意しましょう。
労働基準法によると、従業員が深夜に労働した場合、割増賃金を支払う必要があります。深夜とは、22時~翌日5時までの間です。
始業時間が13時を過ぎると割増賃金が生じる可能性が高くなるため、始業時間を遅く設定することはできるだけ避けましょう。
参考:法定労働時間と割増賃金について教えてください。|厚生労働省
6-2. 労働時間の管理が複雑になる
時差出勤を導入することで、労働時間の管理が複雑になります。従業員によって始業時間が異なると、一人ひとり労働時間を確認する必要があるためです。
正確に勤怠管理ができるツールを導入することも検討してみましょう。
管理者は、早朝出勤や深夜退社など生活リズムの崩れが原因で従業員が体調不良にならないよう、配慮することも求められます。
6-3. 一斉休憩の適用除外手続きが必要
労働基準法では、1日の労働時間が6時間を超える場合は45分以上、8時間を超える場合は1時間以上の休憩を全員一斉に付与することが原則とされています。
しかし、時差出勤を導入すると、従業員ごとに始業・終業時間が異なるため、全員が同じ時間に一斉に休憩を取ることが難しくなります。こうした場合は、「一斉休憩の適用除外」に関する労使協定を締結する必要があります。
手続きは労働基準監督署への届け出は不要ですが、社内で正式に労使協定を結び、文書として残しておくことが求められます。必要なひな形は各地の労働局では「一斉休憩適用除外に関する労使協定書」のひな形が用意されているため、活用しましょう。
7. 時差出勤申出書と時差出勤取扱通知書の様式
時差出勤を導入する際は次のような書類の準備が必要です。
- 時差出勤申出書:従業員が時差出勤を申し出る際に提出する書類
- 時差出勤取扱通知書:従業員から時差出勤の申し出があり、会社が取り扱いを従業員に通知する書類
これらの書類の様式は厚生労働省のホームぺージからダウンロード可能です。必要事項を漏らさないためにも、厚生労働省が発表している様式の活用を検討しましょう。
8. 時差出勤を活用して働きやすい環境を整えよう
時差出勤とは、決められた勤務時間帯を前後にずらして働く制度で、通勤ラッシュの回避や生活スタイルに合わせた働き方が可能になります。勤務時間自体は変わらず、ペースを乱すことなく業務を進められるのが特徴です。さらに、従業員のストレス軽減や働きやすさ向上、企業イメージの向上といったメリットも期待できます。一方、勤務時間が異なることでコミュニケーション不足や情報伝達の遅れが発生するリスクや、勤怠管理の複雑化といった課題もあります。
導入する際は、対象者や適用事由を明確にし、始業・終業時間のルールを設定したうえで、就業規則を整備し全従業員に周知徹底することが重要です。時差出勤を正しく運用し、従業員が安心して働ける職場環境を整えましょう。
フレックスタイム制の導入には、労使協定の締結や就業規則の変更・届出など、行うべき手続きが存在します。
また、フレックスタイム制を導入した後に、「出勤・退勤時間が従業員によって異なるので、勤怠管理が煩雑になった」「残業時間の計算方法と清算期間の関係がよく分からない」といったお悩みをお持ちの方もいらっしゃるのではないでしょうか。
そのような方に向け、当サイトでは「フレックスタイム制度を実現するための制度解説BOOK」をご用意しました。
資料ではフレックスタイム制導入の流れや手続の他に、残業の数え方や効率的な勤怠管理の方法も解説しておりますので、適切にフレックスタイム制を運用したいという方は、ぜひこちらからダウンロードしてご覧ください。
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