決算期は変更できる?メリット・デメリットや手続きを解説
更新日: 2025.2.14
公開日: 2023.3.18
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目次
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1. 決算期の変更はできる?
決算期とは、企業の事業年度最終月のことを指します。1年間の収益や損益をまとめる重要な月ですが、決算月は法律による定めがないため、いつにするか企業が自由に決められます。
この決算期は、一度決めた後でも変更することが可能です。繁忙期を避けたタイミングにしたい場合や、納税月に合わせたい場合など、変更する理由も企業の都合で問題ありません。
しかし、決算月の変更には定められた手順を踏む必要があり、時間がかかります。変えたいと思ってもすぐに変更できるものではないため、決算期の決定は慎重におこなう必要があります。
また、決算期の変更にはメリットもありますが、同時にデメリットもあります。決算期変更のメリットとデメリットは、この後の項目で詳しく解説します。
2. 決算期変更に必要な3つの手続き
決算期を変更するためには、3つの手続きが必要です。
- 株主総会の開催
- 定款の変更
- 税務署への異動届と議事録の提出
それぞれ解説します。
2-1. 株主総会の開催
決算期を変更するためには、定款を変更しなくてはなりません。そのために必要なのが株主総会です。
定款を変更するには株主総会を開催して特別決議をおこない、以下の条件を満たす必要があります。
- 発行済株式総数の過半数を有する株主が出席する
- 3分の2以上の賛成を得る
この2つを満たすことで定款の変更が可能になるため、決算期を変更したい場合は必ず株主総顔を開催することになります。
決議後には、決算期を変更する内容を記した「株主総会議事録」を作成します。なお、規模が小さい会社の場合は、株主総会を開催せずに議事録の作成のみで完了するケースもあります。
議事録は税務署に届け出をする際に必要になるため、必ず作成しなければなりません。
2-2. 定款の変更
株主総会の特別決議後、定款の事業年度を実際に変更します。
定款への事業年度の記載は任意ですが、一般的には記載されているものです。自社の定款にも記載がある場合は、そちらもあわせて変更しなければいけません。
事業年度は任意項目であるため、公証役場での定款の認証や法務局での登記も不要です。費用はかかりません。
司法書士や行政書士に依頼すれば確実で手間を省いた手続きが可能ですが、コストを極力抑えたい場合は自社内のみで手続きを進めることも可能です。
2-3. 税務署への異動届と議事録の提出
定款の変更までをおこなっても、決算期の変更はまだ完了していません。税務署にも届け出および議事録の提出が必要です。
公的機関への届出は、所轄税務署や都道府県税事務所、市区町村の役所や管轄の税務署に「異動届出書」を提出します。
異動届出書を提出する際は、決算期変更を決議した「株主総会議事録」のコピーを一緒に添付しましょう。
届出書と議事録の提出をもって、決算期の変更手続きは完了です。法務局への登記申請は必要ありません。
その他、主要取引先や銀行などの金融機関にも、決算期変更する旨を連絡する必要があります。
2-4. 届け出の期日に注意!
決算期変更の届出の提出期限は明確に定められていません。しかし、提出時期は「移動等後速やかに」とされているため、遅くとも「変更後」の納税月の末日までに提出するようにしましょう。
株主総会の特別決議は、変更後の決算月の末日までにおこないます。
たとえば決算期を3月から11月に変更したい場合、株主総会の特別決議の期限は11月30日になります。この場合、変更届出の提出期限は2ヶ月後の納税月の末日である1月31日までだと考えておく必要があります。
届け出が遅くなっても罰則はありませんが、早めの提出が求められているため2ヶ月以上遅れることがないようにしましょう。
3. 決算期変更の4つのメリット
決算期を変更すると、主に次の4つのメリットが得られます。
- 節税になる
- 資金繰りを調整できる
- 役員報酬変更のタイミングを早められる
- 決算業務が楽になる
変更を検討するときに重要なポイントです。それぞれのメリットを詳しく見ていきましょう。
3-1. 節税になる
決算期の変更で得られるメリットで大きいものは、節税の効果が期待できる点です。
決算月に多大な利益が出ると税金が大幅に上がるため、節税対策の一環で決算期を変更する企業はたくさんあります。決算期の変更によって、利益が大きい月の計算を翌年に持ち越し、税負担を軽減するわけです。
また、消費税の免税事業者である場合、決算期を変更することで、消費税の免税期間を延長できる可能性があります。
課税対象者となる基準は、1事業年度で売り上げが1,000万円以上であることです。1,000万円を超えた年度を基準として、翌々事業年度から消費税の課税事業者となります。
決算期前に、事業年度を通して1,000万円を超える売り上げの見込みがある場合には、事前に決算期を変更し免税期間を延長できます。
3-2. 資金繰りを調整できる
決算期変更のメリットとして資金繰りを調整できることも重要です。負担が大きくなりやすい法人税は、決算月の2ヶ月後までに納めなければなりません。決算月前の売り上げが低いと、法人税の支払いが大きな負担になってしまうことがあります。これは実際に売掛金を回収できるのは、売り上げのあった月の1〜2ヶ月後が多いためです。
業種や事業規模にもよりますが、決算期は売上が実際に回収できるピーク時のおよそ2ヶ月後が最も資金繰りに適した時期といえます。
期末の現金残高が多ければ、翌年度に向けて資産を購入したり決算賞与を支給したりと、税金対策も可能です。
3-3. 役員報酬変更のタイミングを早められる
決算期の変更によって、役員報酬を変更するタイミングを作り出せます。役員報酬を変更する場合は、決算期末日から3ヶ月以内に株主総会を開催し決議を取らなければいけません。
法人が役員報酬で利益調整するのを防ぐため、原則同じ決算期内で役員報酬を増減させられないと決まっているからです。
すぐに役員報酬を変更したいときには、決算期を早めることで株主総会の時期も早めることが可能になります。これによって役員報酬の変更も早くできるわけです。
3-4. 決算業務を余裕をもっておこなえる
繁忙期と決算期が重なっていた場合、コア業務に加えて決算業務も同時に進行させることになります。これは非常に大きな負担になります。
そのような場合は、決算期を変更することで決算業務に集中する時間を作り出せるため、余裕をもってミスのない対応がしやすくなるでしょう。
決算期に決算書類や申告書を作成する他、決算予測や節税対策をおこなう場合には、経営者や経理、税理士などの打ち合わせが必要です。
中小企業では一人の経理担当者が複数の部門を担当している場合も多く、とくに大変でしょう。
決算期を繁忙期とずらして落ち着いている時期に変更することで、部門間の連携にゆとりが生まれてミスの防止につながります。
4. 決算期変更の3つのデメリット
決算期の変更は、手続きが必要で手間がかかる以外にもデメリットがあります。次の3つに注意が必要です。
- 1年未満での納税対応が発生する
- 前年度との財務データの比較が難しくなる
- 減価償却資産の償却限度額
それぞれ解説します。
4-1. 1年未満での納税対応が発生する
事業年度は1年を超えてはいけないため、決算期を変更する年度は通常より短い12ヶ月未満で決算業務をおこなわなければいけません。
タイミングによっては非常に短い期間で決算処理や申告、納税、届け出などさまざまな業務をしなくてはいけなくなります。これは十分に計画し、関係部署に周知することで対応できる部分ですが、業務負担が増える可能性が高いことを認識しておく必要があります。
さらに、決算業務が早まれば関係している税理士やその他の専門家に対する費用の支払いも早まるため、前年度よりも支出が増える月が発生するでしょう。この点にも留意しておかなければなりません。
4-2. 前年度との財務データの比較が難しくなる
決算期を変更する事業年度は、通常の1年間より短くなるため、前年までの財務データとの比較が難しくなる点もデメリットです。
企業の業績の変化を確認するには、損益計算書を比較するのが効果的です。
しかし決算期変更前後では期間が異なり、単純に損益計算書上の数字を比較しても業績の良し悪しは判断できません。計算期間が短ければ、利益や損失も少なくなって当然だからです。
決算期を変更した年度が6ヶ月間だった場合、前期の損益計算書の数値を1/2倍して比較することは可能ですが、あくまで参考値です。月によって売上に差がある業種の場合は、ほとんど参考にならない数字になってしまいます。
4-3. 税金の計算に調整が必要になる
決算期変更によって事業年度が短くなるため、以下のようなさまざまな税金の調整が必要になります。
① 減価償却資産の償却限度額
減価償却資産の償却限度額は、事業年度は1年間を前提とし計算されています。
決算期を変更すると、変更した年度の月数によって償却限度額の調整が必要です。
② 中小法人等の軽減税率適用
中小法人等において、年間800万円までの所得に対して軽減税率が適用されます。
決算期を変更した事業年度の場合、年間800万円をその事業年度の月数に応じた額に調整する必要があります。
③ 消費税
消費税は、決算期を変更した年度だけでなく次年度以降も注意が必要です。
法人の消費税を決める基準期間は、基本的に前々事業年度ですが、事業年度が1年未満の場合には基準期間とならないためです。
決算期を変更して1年未満の事業年度の基準期間は、変更した事業年度の開始日の2年前の前日から1年を経過する日までの間に開始した各事業年度を合算した期間となります。
例)11期2011年に決算期を3月から9月に変更
期 | 期の始まり | 期の終わり | 基準期間 |
9期 | 2009年4月1日 | 2010年3月31日 | 7期 |
10期 | 2010年4月1日 | 2011年3月31日 | 8期 |
11期 | 2011年4月1日 | 2011年9月30日 | 9期 |
12期 | 2011年10月1日 | 2012年9月30日 | 10期 |
13期 | 2012年10月1日 | 2013年9月30日 | 10期 |
上記の場合、12期の基準期間は前々事業年度の10期です。
一方、13期の場合、前々事業年度の11期が1年未満のため基準期間に該当しません。基準期間は次のように計算します。
13期の開始の日(2012年10月1日)の2年前の日(2009年10月2日)の前日(2009年10月1日)以後、1年を経過する日(2010年9月30日)までの間に開始した各事業年度を合わせた期間。すなわち、2009年10月1日から2010年9月30日までの間に開始した事業年度は10期であるため、13期の基準期間は10期となります。
決算期は必要な手続きさえすればいつでも変更可能です。一方で、財務データの比較に使いにくい、税金の調整が必要などさまざまなデメリットも存在します。
決算期を変更する際は、メリットとデメリットをしっかり精査した上で、慎重に検討しましょう。
5. 決算期はメリットとデメリットを理解して自社に適した時期に変更しよう
決算期は企業が任意に設定でき、変更することも可能です。
そのため自社の繁忙期を避けたり、納税月に合わせたりすることもでき、節税効果を狙った変更がされることも少なくありません。しかし、変更には時間がかかるため、決算月の設定は慎重におこなわなければなりません。
決算月の変更をする際は、社内で十分に検討したうえで計画的に進めましょう。
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