中小企業がBCP(事業継続計画)対策を策定する手順とポイント
更新日: 2024.5.8
公開日: 2022.9.15
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さまざまなリスクが想定される昨今、企業におけるBCP対策(事業継続計画)は、その重要性を増す傾向にあります。
今回は、中小企業におけるBCP対策の重要性について解説するほか、BCP対策を策定するときのポイントや策定時の手順について解説していきます。
関連記事:BCP対策の重要性や策定のコツを徹底解説 | jinjerBlog
目次
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1. そもそもBCP対策とは?防災計画との違いなど
BCPとは、「Business Continuity Plan」を略した言葉で、事業継続計画のことを意味します。災害が発生した際に、被害を最小限に抑え、事業を継続させる可能性を高めるためにもBCP対策はとても重要です。
BCP対策は防災計画と混同される場合がしばしばありますが、防災計画とBCP対策は目的や想定する範囲が異なります。
それぞれの違いは下記の通りです。
BCP対策 |
防災 |
|
目的 |
安全確保および事業の継続や早期復旧 |
従業員の身体,生命の安全確保 |
想定するべき事象 |
事業や業務の継続に支障をきたすあらゆる状況 |
拠点地域の自然災害 |
評価基準 |
・経営資源の被害を最小限に留めること |
・死者数 |
このように、BCP対策では事業に関わるあらゆる災害を想定してマニュアルを作成する必要があります。あらゆる災害は大きく分けると3種類に分類できます。
①自然災害
地震、落雷、洪水、台風、干ばつ、土砂崩れ…など
②外的要因による災害
サイバー攻撃、取引先の倒産、疫病の流行…など
③内的要因による災害
情報漏洩、従業員の不祥事、リコール、設備の火災、倒産…など
2. 中小企業におけるBCP対策の重要性とメリット
BCP対策は、災害やテロ、未知のウイルスの流行など、あらゆる緊急事態に備えるため、企業の規模にかかわらず重要な問題です。
中小企業のBCP対策が進んでいるとはあまりいえない現状があります。しかし、本来は、大企業と比較して、企業の体力とも言えるキャッシュが少ない中小企業こそ、綿密なBCP対策が必要です。
中小企業のBCP対策が重要である理由には下記の4つが挙げられます。
◇中小企業におけるBCP対策の重要性
・緊急事態発生時の事業継続
・企業の社会的信頼性向上
・従業員の安全確保
・緊急事態発生時のビジネスの機会損失抑制
2-1. 緊急事態発生時の事業継続
緊急事態が発生した際には、いかに事業活動への影響を抑え、いかに早急に復旧をおこなうかが重要になります。BCPを策定していることにより、従業員がスムーズに混乱することなく行動できるため、緊急事態発生時も事業を継続できる可能性が高まります。
例えば、災害に備えて複数のデータセンターに分散してデータを管理をおこなっておくことで、ある地点のデータセンターが被害を受けた場合でもスムーズにデータを取り出すことができますし、複数箇所に支店を持つ企業であれば、比較的被害の少ない支店・支社から事業を再開することも可能です。
誰がどのように行動するかをあらかじめ計画しておくことで、緊急時であっても慌てることなく、事業の継続や復旧ができるようになります。
2-2. 企業の社会的信頼性向上
BCP対策を行っているということは、社会的信頼性の向上にもつながります。
具体的には、BCP対策を実施している企業は、緊急事態発生時でも事業を継続できるため、自社の被害を最小限に食い止められるといった点から、取引先にも安心感を持たれやすい傾向にあります。
いざ災害が発生した場合、BCP対策が適切におこなわれており、迅速な対応を実施できれば、平常状態に復旧した後の信用も向上します。
また、取引先からだけでなく、消費者からの信頼も得やすいといえるでしょう。
2-3. 従業員の安全確保
BCP対策をおこなっておくことで、従業員の安全も確保することができます。非常事態の行動規範が定められていれば、従業員もパニックになったり、情報に惑わされることなく冷静に適切な行動をおこなえるでしょう。
検討しておくべき内容としては、非常時の従業員への連絡手段や連絡のつかない従業員に対してとるべき行動などの計画が挙げられます。
従業員は企業の大切な経営資源の一つです。従業員の安全は事業の早期復旧や継続に大きな影響があります。
2-4. 緊急事態発生時のビジネスの機会損失抑制
BCPを策定している企業は、緊急事態においても、どのような手順で事業を再開するか、また、復旧や作業を再開する際の手順をどのようにするかという計画が明確にされています。そのため、あらかじめ決められた計画に沿って行動するだけで、ビジネスの機会損失をより少なく抑えることができるのです。
しかし、BCPが策定されていない企業では、緊急事態発生時には事業再開の手順や復旧時の事業再開についても対応しきれず、ビジネスにおける機会損失が発生することも否定できません。
また、このときの損失が引き金となり、事業縮小や倒産といった事態を招く危険性もあります。
3. 中小企業のBCP対策を策定する手順
中小企業でBCP対策を策定する際には、以下の手順で行っていきましょう。
◇中小企業でBCP対策を策定する手順
・BCPの対象となるリスクをピックアップする
・BCP策定の方針を明確化する
・BCP対策の内容をマニュアル化全社内で共有する
・BCP対策の運用を見直し改善する
・BCPの運用体制を確立する
以下、これらの手順について具体的に確認していきます。
3-1. BCPの対象となるリスクをピックアップする
BCPの対象となりうる自然災害や事故など、さまざまなリスクをピックアップしましょう。
その際、これらの緊急事態がおよぼす影響を考慮し、損害の大きさや重大さを比較して優先順位をつけておくことで、災害発生時の行動の優先順位も判断することができます。優先度を決定する際は、企業の経営方針などにも立ち返ってみましょう。対応の優先順位を定める行動規範になり、対応順序を検討するのに役立ちます。
被害を受ける可能性がある要素としては、下記のようなものがあります。事業内容や事業形態によっても想定される項目は異なります。
・ライフライン
・道路
・情報通信
・鉄道
・人
・物
・金
・情報
3-2. BCP策定の方針を明確化する
BCP対策を策定するにあたって、自社の計画方針を明確化します。このことにより、緊急事態発生時でも、優先度の高い事業継続に注力し、ビジネスの機会損失を最小限にとどめることができます。
優先度の高い事業としては、「利益率の高い事業」や「事業失敗により取引先に大きな損害を出す事業」「企業の信頼性に関わる事業」などが挙げられます。
経営に与える影響が大きい事業から復旧することで、経営難や倒産などのリスクを減らすことに繋がります。
3-3. BCP対策の内容をマニュアル化し、全社内で共有する
策定したBCP対策をマニュアル化しておくことで、緊急事態発生時でも従業員がスムーズな対応をとることが可能となります。
どのような状況にあっても、確認すればすぐに行動できる段階にまで詳細に記載されたマニュアルを用意しておくと、万が一のときにも慌てることなく対応できるでしょう。BCP対策が策定されたら、実際に事業継続を行うために必要な内容を全社内で共有しておかなければなりません。
年度のはじめに勉強会やセミナーを開催するなど、非常事態の対応を従業員の誰しもが把握してる状態を作り出し、形骸化しないように注意しましょう。また、その際には、BCP対策の必要性について、全社員で理解を深めておくことも重要となります。
3-4. BCP対策の運用を見直し改善する
策定したBCP対策は定期的に見直しをおこないましょう。外部環境や社内の設備の変化に伴って想定している対応が不十分になったり、不要になったりする場合もあります。
また、策定しているマニュアルに不足がないかを確認するために、訓練を実施することも有効です。想定外のリスクに気付くことができたり、スムーズな対応が難しい計画などが見つかるかもしれません。
課題が発見できたら改善施策を策定し、更新したものを改めて社内で共有しましょう。
従業員を巻き込んだ訓練をおこなえば、従業員の理解を深める効果も期待できます。
3-5. BCPの運用体制を確立する
策定されたBCP対策は、運用体制の確立まで行っておく必要があります。
その際には、状況を取りまとめる担当者やデータ復旧・安否確認を行う担当者等をあらかじめ明確化しておくとよいでしょう。
4. 中小企業のBCP対策を策定するときのポイント
中小企業におけるBCPの策定は、緊急事態発生時の事業継続を考えるにあたって重要なテーマであることはおわかりいただけたでしょう。
では、中小企業がBCP対策を策定するときには、どのような点にポイントを置けばよいのでしょうか。
ここでは、中小企業のBCP対策を策定するときのポイントを3つ取り上げ、紹介します。
◇中小企業のBCP対策を策定するときのポイント3つ
・BCP対策における全社内の意識統一
・復旧の優先順位決定
・復旧目標時間の決定
以下、これら3つのポイントについて、具体的に確認していきましょう。
4-1. BCP対策における全社内の意識統一
BCP対策を策定した際には、BCPに対する全社内での意識統一が重要です。
緊急事態発生時にスムーズに活用できるよう、計画やマニュアルを策定するだけでなく、全社員に対し、日頃から意識付けをしておきましょう。
4-2. 復旧の優先順位決定
BCP対策を策定する際には、万が一、事業が停止した場合の影響範囲を明確にし、復旧時の優先順位決定を行うようにしましょう。
この優先順位の決定は、今後の企業活動に大きな影響を及ぼすポイントともなりますので、よりきちんとした形で行うことが大切です。
4-3. 復旧目標時間の決定
復旧の優先順位を決定したら、事業再開までに必要な復旧目標時間を定めておきましょう。
その際には、業務停止により失われる信頼性から計画を立て、目標時間を決めておくとよいでしょう。
5.中小企業のBCP対策には補助金や助成金が支給される場合もある
BCP対策を目的としたシステムや設備の導入にはコストがかかるため、難しいと考えている中小企業も少なくありません。
しかし、中小企業のBCP対策に対して、自治体が補助金や助成金の支給制度を設けているケースもあります。不足している費用を補える可能性があるため検討してみると良いでしょう。
例えば、東京都であれば申請をおこない、認定を受けた中小企業に対して、上限1500万円の補助金を支給する制度を設けています。
利用できる制度がないか確認してみましょう。
参考:令和4年度 BCP実践促進助成金 申請案内|公益財団法人東京都中小企業復興公社
6. 中小企業にとっても緊急事態時の事業継続にBCP対策は重要
現状では大企業で多く策定されている傾向のあるBCP対策ですが、緊急事態発生時を考えると中小企業にとっても重要な対策といえます。
さまざまな危機に備えた事業継続を行うため、また、企業の機会損失を防ぐためにも、ぜひBCP対策を策定し、自社の事業資産や社会的信頼を守る体制づくりをしてみてはいかがでしょうか。
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