契約書偽造をするとどうなる?罰則や偽造防止方法を詳しく解説
更新日: 2024.5.8
公開日: 2023.3.18
jinjer Blog 編集部
企業が取り引きを行なう際に取り交わされるのが契約書です。
本来であれば契約書は正しく管理して適切に取り扱われることが望ましいですが、稀に契約書が契約者ではない第三者によって偽造されてしまうケースがあります。
本記事では、契約書偽造に対して設けられた罰則や偽造防止方法を解説します。
1. 契約書偽造に該当する行為
契約書偽造を把握するうえでは、偽造だけでなく変造についても把握しておきましょう。
契約書偽造とは、契約書を作成する権限がないにもかかわらず、他人の印章や署名を用いて契約書を作成することを指します。
また、他人の印章や署名を偽造して契約書を作成することも当てはまります。
一方、契約書の変造は他人名義の印章や署名が記された契約書の一部分を、権限のない人が変更することを指します。
1-1. 契約書は私文書にあたる
契約書をはじめとした文書は公文書と私文書に分かれます。
どちらも偽造、変造した場合の罰則が設けられています。
公文書と私文書の代表的な文書は次のとおりです。
文書の種類 | 具体例 |
公文書 | ● 住民票 ● 戸籍謄本 ● 所得証明書 ● パスポート ● 運転免許証 など |
私文書 | ● 領収書 ● 源泉徴収票 ● 契約書 ● 履歴書 など |
上記のとおり、契約書は私文書に当てはまります。
2. 契約書偽造に対する罰則
契約書偽造についての罰則は次のように設けられています。[注1]
罪名 | 該当条文 | 罰則 |
有印私文書偽造罪 | 刑法第159条1項 | 3ヵ月以上5年以下の懲役 |
有印私文書変造罪 | 刑法第159条2項 | 3ヵ月以上5年以下の懲役 |
無印私文書偽造罪 | 刑法第159条3項 | 1年以下の懲役または10万円以下の罰金 |
無印私文書変造罪 | 刑法第159条3項 | 1年以下の懲役または10万円以下の罰金 |
偽造、変造ともに、文書作成者の印章・署名がある有印、文書作成者の印章・署名がない無印とで、罰則の重さが異なります。
これは印章、署名のない私文書そのものの信用性と保護の必要性が低いことに由来していると考えられています。
[注1]「刑法」|e-GoV法令検索
2-1. 偽造した文書を行使した場合の罰則
契約書をはじめとした私文書を偽造、変造することは罰則の対象ですが、偽造、変造した文書を行使することも罰則の対象です。
偽造、変造した文書を行使した場合、偽造私文書等行使罪に問われます。
偽造私文書等行使罪は刑法第161条で以下のとおり定められています。[注1]
その文書若しくは図画を偽造し、若しくは変造し、虚偽の記載をした者と同一の刑に処する
引用:刑法|e-GoV法令検索
上記のとおり、偽造、変造した文書を行使すると偽造私文書等行使罪として、有印私文書偽造罪、有印私文書変造罪と同様の3ヵ月以上5年以下の懲役が科せられます。
[注1]「刑法」|e-GoV法令検索
2-1. 公文書の偽造・変造の罰則は私文書よりも重たい
文書の偽造、変造は契約書をはじめとした私文書と公文書で比較すると、公文書のほうが罰則が厳しく設けられています。
公文書の偽造・変造についての罰則は次のとおりです。[注1]
罪名 | 該当条文 | 罰則 |
有印公文書偽造罪 | 刑法第155条1項 | 1年以上10年以下の懲役 |
有印公文書変造罪 | 刑法第155条2項 | 1年以上10年以下の懲役 |
無印公文書偽造罪 | 刑法第155条3項 | 3年以下の懲役または20万円以下の罰金 |
無印公文書変造罪 | 刑法第155条3項 | 3年以下の懲役または20万円以下の罰金 |
このように公的な文書である公文書のほうが、罰則の規定が厳しく定められています。
[注1]「刑法」|e-GoV法令検索
3. 契約書偽造を防止する方法
契約書偽造や変造を防止するためには、契約書の厳重な保管や改ざんの防止機能が備わった契約書を使用するといった方法が挙げられます。
これらの方法に加えて電子契約書を導入することも、契約書偽造や変造に効果が期待できます。
3-1. 契約書を厳重に保管する
多くの従業員が出入りする場所に契約書を保管していると、偽造や変造のリスクが高まってしまう可能性があります。
そのため、契約書は鍵付きのボックスや鍵付きの専用の部屋などで厳重に保管することが大切です。
その際、契約書を保管しているボックスや部屋の鍵は、限られた従業員だけが持つようにしましょう。
ただし、急に過去の契約内容の確認が必要になったときなど、該当の契約書を探し出すのに時間がかかってしまうかもしれません。
3-2. 印影をコピーしづらい印鑑を使用する
契約書に押印する印鑑の印影をコピーしづらくするのも、契約書偽造の防止につながります。
たとえば、手彫りの印鑑は印影がコピーしづらいという特徴があります。
さらに、印影がコピーしづらい印鑑を厳重に保管することも契約書偽造の防止効果が期待できるでしょう。
3-3. 改ざん防止の契約書を使用する
契約書のなかには改ざんを防止する機能がついたものもあります。
改ざん防止機能はさまざまで、契約書に製造ロットが記載されている、コピー機で複写すると「コピー」の文字が書面に浮かび上がるものなどがあります。
このような改ざん防止契約書を使用することで、契約書偽造の防止につながるでしょう。
3-4. 電子契約書を活用する
紙の契約書は偽造、変造されやすいのに対して、電子契約書は偽造、変造の防止が期待できます。
電子契約書は一般的に電子署名とタイムスタンプの機能が備わっています。
電子署名機能があることで、誰が何に署名(合意)したかが記録されます。
一方、タイムスタンプ機能によって、いつ何に署名(合意)したかを記録可能です。
電子契約書に記録される電子署名とタイムスタンプによって契約書偽造を防げます。
契約書が偽造や変造されてしまった場合、取引先からの信頼を失ってしまうかもしれません。
そのため、偽造、変造のリスクがない電子契約書を導入することで取引先からの信頼向上も期待できます。
4. 電子契約書なら偽造防止以外にもメリットがある
電子契約書は契約書偽造や変造を防止する以外にも以下のようなメリットがあります。
- 業務効率化
- コスト削減
- BCP対策
従来の紙の契約書は印刷、製本、郵送といった工程が必要でした。
取引先も押印後に返送しなければなりません。
また、郵送してから返送されるまで時間が1週間ほどかかることもあり、スピーディな取り交わしがしづらい状況でした。
一方、電子契約書であれば印刷、製本、郵送といったこれまでにかかっていた工程を省けます。
加えて、取引先の進捗が把握できるため、契約書に気付かずに放置されてしまうといったことが避けられます。
業務の効率化はコスト削減にもつながります。
印刷、郵送にかかっていたコストの削減が可能です。
さらに契約書の保管に使用していたスペースも削減できるため、省スペース化につながります。
電子契約書の導入はBCP対策としても機能します。
BCP対策とは自然災害をはじめとした緊急事態でも事業を継続するための対策です。
紙の契約書の場合、緊急事態の発生で契約書の紛失などが考えられますが、電子契約書であれば社外にデータが保存されるため、自社が被害にあった場合であっても契約書の紛失などの心配がありません。
5. 万が一に備えて契約書偽造を防ぐ体制を整えておこう
契約書は私文書にあたり、偽造や変造をされてしまう可能性があります。
契約書偽造、変造は最大3ヵ月もしくは5年以下の懲役が設けられていますが、自社でも万が一に備えて、契約書偽造、変造対策を講じておくことが大切です。
契約書偽造、変造対策として効果が期待できるのが、電子契約書の導入です。
電子契約書であれば偽造、変造の防止以外にも業務効率化、コスト削減といったメリットにもつながります。
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