保険業界で続々導入される電子契約|全面電子化でさらに利便性向上
更新日: 2024.5.8
公開日: 2021.12.19
HORIUCHI
新型コロナウィルス感染症の流行以降、保険業界においても電子契約導入によるペーパーレス化・非対面化のニーズが高まっています。電子契約は諸外国では既に一般化していますが、ハンコ文化が根強い日本では普及の遅れが課題とされてきました。
電子契約の導入により業務効率の改善や顧客利便性の向上といった効果が期待できます。世間のニーズが高まっているタイミングで電子契約の仕組みを普及させることが保険業界の課題と言えるでしょう。
この記事では保険業界における電子契約導入のメリットや、実際の導入事例を紹介します。
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1.電子契約とは
電子契約とは、電子署名を施した電子データ(PDF)をオンライン上で交換し各企業のサーバー等で保存する契約方法を指します。従来の書面による契約と比較し、ペーパーレス化によるコストカット、オンライン化による業務効率化が図れるといった点がメリットです。
また、現在ではペーパーレス化・非対面化ニーズの高まりを受け、電子契約に関する法整備もすすめられています。以前は書類の交換が必須とされていた契約でも電子契約が認められるケースも増えているのです。契約の有効性についても、第三者機関である認定局が発行した電子証明書を用いるケースでは実印相当の効力が認められています。
他にも、電子契約であれば契約内容の一元管理が可能であるため、更新漏れや書類紛失のリスクもありません。「脱ハンコ」によるペーパーレス化は政府の重要施策です。今後数年のうちに日本でも急速に電子契約が普及していくことが予想されます。
2.保険業界で電子契約導入がすすむ理由
続いて保険業界で電子契約導入がすすむ理由を見ていきましょう。現在、保険業界においても電子契約の導入を巡る動きが活発化しています。ユーザーのニーズに応えるため、また複雑化する契約業務を簡潔に済ませるため、保険業界における電子契約の推進は急務です。
2-1.個人向け保険契約で高まるペーパーレス化のニーズ
1つめの理由は個人向け保険契約に関するペーパーレス化・非対面化のニーズの高まりが挙げられます。以前から保険契約をオンライン上で済ませたいという顧客のニーズは高く、一部の保険会社では既に電子契約が導入されていました。
そして2020年以降の新型コロナウィルス流行に伴い非対面化に対するニーズが急増し、各社はその対応に追われています。現在は優先度の高い手続きから徐々にオンライン化がすすめられている段階です。個人向け保険契約に関しては完全オンラインで新規契約ができることがスタンダードになりつつあります。
また、契約更新・内容変更のスピード対応も求められます。個人向けの保険に関しては、やはり電子契約はニーズが高いといえるでしょう。
2-2.代理店契約を中心としたビジネスモデルの効率改善
2つめの理由が保険代理店を中心とした保険業界独特の複雑なビジネスモデルです。保険業界では代理店を介した契約が中心となっており、保険契約全体の約9割を占めます。[注1]
自動車ディーラーや住宅販売会社といった他業種企業も代理店の一種です。多様化する販売チャネルのなかで業務効率を改善するためには電子契約によるオンライン化が求められます。
代理店契約を中心としたビジネスモデルでは各種書類のやり取りも複雑です。損害保険の場合は事案発生後に各関係者から書類を取集しなければならず、時間が掛かります。これらの業務を効率化させるためには契約書類のペーパーレス化、業務のオンライン化は欠かせません。電子契約の仕組みと合わせ、業界共通のシステム開発なども求められています。
[注1]一般社団法人日本損害保険協会:募集形態別元受正味保険料割合表
3.保険業界で効率化できる契約類
電子契約の導入により、保険業界では以下の契約業務の効率化が期待できます。
● 個人向け保険契約
● 企業向け保険契約
● 販売代理店との代理委託契約
以前は法令により電子化が認められていない契約類もありましたが、現在はペーパーレス化に向けた法整備がすすめられています。今後はより多くの契約がオンラインでおこなわれるようになるでしょう。
3-1.個人向け保険契約
先述したように、個人向け保険契約はペーパーレス化、非対面化のニーズが高く、積極的な電子契約の導入がすすめられています。また、個人向け保険商品は契約方法や保険商品の内容が同一であり、電子化しやすいことも特徴です。また契約を電子化することで、現契約の内容や更新履歴等もデータとして管理できるようになります。
3-2.企業向け保険契約
電子契約導入により企業向け保険契約の業務効率も改善可能です。ただし、企業向け保険契約において電子契約のニーズは決して高くありません。これは社内決済等の都合により、紙の契約書のままのほうが好都合と考える企業が一定数あるためです。
企業向け保険契約では相手方の理解を得ることが大切です。電子契約を導入することにより、相手方の決済フローにも変更を求めなければならないことを覚えておきましょう。
3-3.販売代理店との代理委託契約
販売代理店に対する代理委託契約や機密保持契約も電子契約に代替可能です。契約業務のオンライン化により各種手続きの簡素化・高速化が期待できます。また、契約に関わる各種業務をオンライン上で完結させることにより、テレワークを始めとする新しい働き方にもフレキシブルに対応できるようになるでしょう。
4.電子契約導入のメリット
保険業界における電子契約導入のメリットは以下の3つです。
● 印紙代不要で大幅なコストカットが実現
● 電子化により契約スピード向上
● 非対面・押印不要で高まる顧客利便性
自社の業務効率改善、顧客の利便性向上のため、電子契約の導入を積極的に検討しましょう。
4-1.印紙代不要で大幅なコストカットが実現
電子契約導入により契約業務に関わるコストを大幅にカットすることが可能です。紙による契約では、契約書作成のために用紙代や印刷代といったさまざまなコストが発生します。そのなかでも大きな割合を占めるものが印紙税です。
印紙税は契約のために作成した書類に対して課税される税金であり、ペーパーレスの電子契約は印紙税が発生しません。なお、印紙税は契約金額が高額になるほど税額が高く、1件あたりの金額が大きな契約ほどコスト削減効果も大きくなります。
4-2.電子化により契約スピード向上
電子契約の導入で各種手続きがオンライン化されることにより、契約スピードを向上させることが可能です。従来の紙の契約書では記入や押印といった作業に手間が掛かることに加え、場合によっては郵送により書類をやり取りする必要もあります。
しかし、電子契約であれば書類の郵送は必要ありません。契約書手続きに関してもウェブサイトや専門アプリ等を用いて簡単にすすめられるため、契約締結までの時間を大幅に短縮可能です。
4-3.非対面・押印不要で高まる顧客利便性
非対面・押印不要という契約形態は顧客の利便性向上にも繋がります。契約手続きがオンラインで完結すれば、販売代理店に出向くことなく自宅で保険の申し込みが可能です。また、保険証券のような重要書類をデータとして閲覧できるようにすることでどこでも書類が確認できるうえ、書類を紛失してしまう心配もありません。
更に、オンライン契約であれば保険会社や代理店の営業時間外でも申し込みを受け付けることもできます。電子契約を導入することにより、あらゆる顧客のニーズに合わせたフレキシブルなサービスを提供できるようになるでしょう。
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5.保険業界の電子契約導入事例
保険業界における電子契約の導入事例を2つ紹介します。どちらの事例も業務プロセスの改善がテーマです。自社の契約プロセスに課題を感じている場合、業務のより広い範囲で電子契約の導入を検討してみましょう。
5-1.事例① 電子署名で業務プロセス改善(損害保険ジャパン株式会社)
損害保険大手の損害保険ジャパン株式会社(以下損保ジャパン)では、デジタルトランスフォーメーションの世界的な推進や新型コロナウィルス感染症拡大を背景に、従来の対面による書面記入・押印といった契約形態の見直しを検討していました。
損保ジャパンでは、単に従来の署名や押印を電子署名に置き換えるだけではなく、業務プロセス全体の改善を視野に入れて電子契約を導入。先行して販売代理店との業務委託契約の電子化を開始しました。今後は海上保険契約を始めとする書類の郵送が必要な契約、さらにはグループ各社での適用範囲拡大を目指しています。
[引用]損害保険ジャパン株式会社様、ドキュサインの電子署名で業務プロセス改革
5-2.事例② 申込ペーパーレスシステムによる顧客利便性向上(SBI生命)
SBI生命保険株式会社(以下SBI生命)では、自社の保険商品を利用する顧客利便性向上を目指し、2018年に販売代理店向け申込ペーパーレスシステムを導入しました。これにより申し込みから契約締結までの一連の手続きがペーパーレスで完結できるサービスを提供しています。
販売代理店窓口は保険契約における主要なチャネルであり、自社製品の拡販のためには代理店を利用する顧客の利便性向上が重要です。SBI生命が導入したペーパーレスシステムでは、タブレット端末1台で申込内容入力からクレジットカード払いまで対応。紙の契約で頻発していた記入不備もなく、スムーズな手続きを実現しています。
[引用]SBI生命の代理店向け申込ペーパーレスシステムを構築
6.保険業界の電子契約は仕組みの普及が課題
保険業界における電子契約は代理店との業務委託契約や個人向け保険契約を中心に導入がすすめられています。しかしながら、法人向けの保険契約に関しては、相手方の承認フローの都合もあり十分に普及しているとは言えない状態です。
一方、新型コロナウィルス感染症の流行以降、感染対策を前提とした業務プロセスに改善を試みる企業も増えています。電子契約のニーズが高いタイミングで仕組みを普及させることが保険業界全体の課題と言えるでしょう。
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