なぜ人的資本経営が注目されているのか?注目されている背景をわかりやすく解説! | jinjerBlog

なぜ人的資本経営が注目されているのか?注目されている背景をわかりやすく解説!

最近よく耳にする「人的資本経営」。なんとなく意味はわかるけど、細かい内容はご存知ない方も多いのではないでしょうか。

人的資本経営に関しては、「なぜ注目されているのか?」「なぜ欧米では人的資本の情報開示が義務化されたのか?」など、いくつか知っておいたほうがいいポイントがあります。

本記事では、人的資本経営に関して、わかりやすくまとめましたので、ぜひご確認ください。

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1. これだけは知っておきたい!人的資本経営トピック!

本章では、なぜ人的資本経営が上場企業の経営者を中心に、今話題になっているかを説明します。

1-1.人的資本経営の意味

経済産業省を定義している人的資本経営の定義をご紹介します。

人的資本経営とは、人材を資本として捉え、人材の価値を最大限引き出すことで、中長期的な企業価値向上につなげる経営のあり方です。[参照1]

人的資本経営の理解を深めるために、人的資本と人的資源の違いを明確に理解することが役立ちます。

人的資本は、人を投資の対象として捉え、企業価値を向上させるためにどう資本(人)を使うかを考えます。人的資源は、人を消費の対象として捉え、投資ではなくコストとして考えます。

このように、人材を資本と捉えるか、費用と捉えるかで企業の人材との向き合い方や投資の仕方が異なってきますので、人的資本経営の第一歩として、人材に対する捉え方を変えていく必要があります。

[参照1]人的資本経営 ~人材の価値を最大限に引き出す~|経済産業省

1-2. なぜ人的資本経営が今日本で注目されているのか?

人的資本経営が注目されている背景には、企業価値が決まる因子の変化にあります。

米国S&P500という米国の上場企業の株価指標では、有形資産が占める割合が年々少なっています。1990年代後半には、無形資産が占める割合が有形資産を超えています。[参照2]

また、この流れに拍車をかけたのが、リーマンショックです。リーマンショックをきっかけに、財務諸表のみで企業価値を判断することが危険視され、より無形資産への注目度が上がりました。

このような背景があり、人的資本を含む無形資産が企業価値の源泉として見られるようになりました。

では、なぜ今このタイミングで、人的資本に注目が集まっているのでしょうか?これには、欧州・欧米の動きが関係しています。

欧州では2014年に、欧米では2020年に人的資本の情報開示が義務付けられました。この流れを踏まえて、日本でも人的資本の情報開示を求める声が大きくなっています。

では、実際に人的資本に関わる指標は、どのようなものを整理すればいいのでしょうか?情報開示の項目については、ISO30414が注目されています。

[参照2]持続的成長に向けた長期投資(ESG・無形資産投資) 研究会報告書|伊藤レポート2.0

2. ISO30414について

人的資本に関する指標で代表的なものが、国際標準化機構(ISO)が定めたガイドライン「ISO30414」です。

ISO30414では、11の項目と49の指標が存在します。ここでは項目と指標の種類をご紹介します。

2-1. 11の項目と49の指標

・コンプライアンス及び倫理
 L ①苦情の件数及び種類
 L ②懲戒処分の件数及び種類
 L ③コンプライアンス及び倫理研修を修了した従業員の割合
 L ④外部に付託された紛争
 L ⑤これらから生じる外部の監査結果及び処置の件数、種類、情報源

・コスト
 L ⑥すべての労働コスト
 L ⑦外部の労働力にかかるコスト
 L ⑧平均給与及び報酬の割合
 L ⑨総雇用コスト
 L ⑩従業員一人当たりのコスト
 L ⑪採用コスト
 L ⑫離職コスト

・多様性
 L ⑬多様性(年齢、性別、障害、その他の多様性に関する指標)
 L ⑭経営陣の多様性

・リーダーシップ
 L ⑮リーダーシップの信頼
 L ⑯管理の範囲
 L ⑰リーダーシップの育成

・組織文化
 L ⑱エンゲージメント/従業員満足度/コミットメント
 L ⑲定着率

・組織の健全性、安全性及びウェルビーイング
 L ⑳労働災害によるロスタイム
 L ㉑労働災害の件数
 L ㉒仕事中の死亡者数
 L ㉓研修に参加した従業員の割合

・生産性
 L ㉔EBIT/収益/売上高/従業員当たりの利益
 L ㉕人的資本ROI

・採用、異動、離職
 L ㉖ポジションごとの候補者数
 L ㉗従業員数一人当たりの質
 L ㉘平均の期間
 L ㉙従業員の能力評価及び将来の可能性(タレントプール)
 L ㉚内部人材で充足できたポジションの割合
 L ㉛重要な事業のポジションにおける内部充足の割合
 L ㉜重要な事業の求人ポジションの割合
 L ㉝求人ポジション全体に対する重要な事業の求人ポジションの割合
 L ㉞内部の異動率
 L ㉟従業員の交代要員に関する力
 L ㊱離職率
 L ㊲希望退職率
 L ㊳重要な希望退職の割合
 L ㊴退職/離職の理由/理由ごとの退職・離職者

・スキル及び能力
 L ㊵人材開発及び研修にかかるすべてのコスト
 L ㊶学習及び成長
 L ㊷従業員のコンピテンシー率

・サクセッションプラン
 L ㊸サクセッションの有効率
 L ㊹サクセッションのカバレッジ
 L ㊺サクセッションの準備率

・労働力の利用可能性
 L ㊻従業員数
 L ㊼フルタイム換算人数
 L ㊽臨時的な労働力
 L ㊾欠勤

3. 伊藤レポートで注目されている3P・5Fモデル

世界でも注目されている人的資本経営。そのような中、日本では「伊藤レポート」が注目されています。

伊藤レポートとは、一橋大学の伊藤邦雄さんを座長に、日本を代表するCHRO(最高人事・人材責任者)、機関投資家、人材コンサルタント、アカデミア、政府関係者が一同に会し、人的資本について議論した内容をまとめたレポートです。

伊藤レポートには、人的資本経営を進める上で、3つの視点(Perspectives)、5つの共通要素(Common Factors)で人材戦略を整理できると記載があります。本章では、3P・5Fモデルについて、伊藤レポートに記載されている内容をご紹介します。

3-1. 3つの視点(Perspectives)

3つの視点とは、下記の3つになります。

・経営戦略に沿った人材戦略の策定・実行
・人材戦略のKPIの設定と可視化
・企業理念に沿った文化の定義と定着

特に「経営戦略との連動」「KPIの設定と可視化」については、人的資本経営を進める上で重要視されています。

人的資本経営というからには、人的資本をもとに、企業価値を中長期的に向上させていかなければいけません。それには、会社の経営戦略に沿って、人材戦略(採用・育成・配置など)を策定・実行しなければいけません。

また、それらが計画通りに進捗しているかどうか確認するために、KPIを設定し、それを適時確認できるよう、HRテクノロジーなどを活用して、常に可視化しておく必要があります。

可視化は、社内でKPIを確認するだけではなく、各ステークホルダーとの対話でも重要な役割を持ちます。

「経営戦略との連動」「KPIの設定と可視化」は、人的資本経営の土台ですので、まずはここから着手することになります。

3-2. 5つの共通要素(Common Factors)

5つの要素とは、下記の5つになります。

・動的な人材ポートフォリオ
・知・経験のダイバーシティ&インクルージョン
・リスキル・学び直し
・従業員エンゲージメント
・時間や場所にとらわれない働き方

各項目について簡単にまとめましたので、ぜひご確認ください。

3-2-1. 要素①:動的な人材ポートフォリオ

経営戦略を実現するためには、必要な人材を質・量の両面で、獲得していかなければいけません。そのためには、まず必要な人材を定義することから始まります。その定義に沿って、採用をするのか、育成をするのか計画を立てていきます。

取り組み事例|中外製薬株式会社

中外製薬株式会社では、激変する事業環境の中、ステークホルダーからの期待に応え、価値創造を果たしていくために、人財要件を再設定し、適所適財を推進するポジションマネジメントを2020年4月から実施。

それぞれのポジションに求められる職務や成果責任、人財要件が定義されたポジションプロファイルや任用・解任の基準、プロセスも従業員に公開し、それぞれのポジションの職務価値をもとに処遇を決定することで、自律的なキャリア開発や上位役割へのチャレンジを促進。

3-2-2. 要素②:知・経験のダイバーシティ&インクルージョン

中長期的な企業価値向上のためには、非連続的なイノベーションを生み出すことが重要です。その原動力となるのは、多様な個人の掛け合わせです。そのため、多様な経験、感性、価値観、専門性を取り込んでいく必要があります。

取り組み事例|小林製薬株式会社

小林製薬株式会社では、新市場創造という自社のビジネスモデルを踏まえた目指すべき KPI として、全売上高に占める直近1年に新製品の割合(直近1年に発売した商品の割合10%、直近4年に発売した商品の割合25%)、新製品の市場への定着(1年間に4品、市場に定着)を設定。

また、これらのKPIを実現する取組として、長年、従業員の誰もがアイデアを出すことができるアイデア提案制度等の新製品のアイデアを生み出す仕組みを実施。

3-2-3. 要素③:リスキル・学び直し

事業環境の急速な変化、個人の価値観の多様化に対応するためにも、個人のリスキル・スキルシフトの促進、専門性の向上が必要となります。

特に、今後、将来のタスクの内容や仕事の在り方の変化が見込まれる中、自らの専門性や強みの転用可能性を高めていくためにも、ITリテラシーやスキルの向上は必須です。同時に、ITやAIでは代替されない人間らしさや、付加価値の創出につながる創造性やデザインなどのスキルもより一層重要となります。

取り組み事例|ソニー株式会社

ソニー株式会社では、ベテラン・シニア世代の新たなスキル獲得や学びなおしをサポートするために、50歳以上の社員が新たなスキル獲得のために自己投資をした際に上限10万円までの費用を補助する制度を実施。

3-2-4. 要素④:従業員エンゲージメント

経営戦略の実現するために必要な人材が、自身の能力・スキルを発揮してもらうためにも、やりがいや働きがいがある環境をつくる必要があります。

そのために、企業と個人が対等な関係を築き、組織目標の達成と多様な個人の成長のベクトルを一致させていくことが重要になってきます。

取り組み事例|株式会社サイバーエージェント

株式会社サイバーエージェントでは、2013年から全社員に対して毎月3問程度のアンケートを実施。先月の自身の成果やパフォーマンス、ミッションステートメントの実践の程度等の主観情報を、晴れ・曇り・雨といった天気で聞くことで定量化して把握。

また、これを運用する仕組みとして、アンケート開始と同時期から、全社員のアンケート結果を確認し、気になる社員には連絡をしたり、役員に改善や異動を提案したりするチームを創設。

3-2-5.要素⑤:時間や場所にとらわれない働き方

いつでも、どこでも、安心して働くことができる環境を整えることが、事業継続の観点からも必要です。

一方で、同じ時間や空間で働いていない多様な個人を束ねていくためには、これまで以上に、マネージャー層のリーダーシップ、マネジメントスキルが、不可欠な要素になります。

それに合わせて、単に在宅勤務やリモートワークを制度上可能とするだけではなく、リモートワークでも業務が完結できるよう業務プロセスの見直しや、コミュニケーションの在り方への対応が求められています。

取り組み事例|富士通株式会社

富士通株式会社では、約8万人の国内グループ従業員の勤務形態について、テレワーク勤務を基本とするとともに、コアタイムのないフレックス勤務の国内グループ全従業員への適用拡大、月額5,000円の在宅勤務の環境整備費用補助の支給、テレワークと出張で従来業務に対応できる単身赴任者の自宅勤務への切り替え等を実施。

4. 人的資本経営において、何から着手するべきなのか?

いきなりすべて着手するのは難しいかと思います。では、何から着手するべきなのでしょうか?

最初のステップとして着手するべきなのは、下記の2点です。

・経営戦略と人事戦略を連動させること
・モニタリングする指標を決め、データを収集・蓄積・可視化すること

今後、jinjer HR Tech総研では、人的資本経営に関する具体的な事例をご紹介していきます。