ESGと人的資本経営の関係性とは?注目される背景
公開日: 2024.4.3 OHSUGI
人的資本経営において、ESGは重要な鍵を握っています。ESGは、企業経営や投資の判断基準として注目を集めている考え方の一つです。
メディアでも大々的に取り上げられているため、耳にする機会が増えたのではないでしょうか。人的資本開示の義務化とともに、ますます注目度は高まっています。
一方で、「ESGと人的資本経営の関係性がわからない」「ESGとSDGsの違いを知りたい」など、疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか。
ESGと人的資本経営は、密接な関係性にあります。ESGへの取り組みを検討している方は、正しい知識を身につけておくことが大切です。
本記事では、ESGと人的資本経営の関係性やESGとSDGsとの違いについて解説します。ESGで人的資本経営に関心がもたれている背景や導入するメリットも紹介するため、ぜひ最後までお読みください。
目次
人事評価制度は、健全な組織体制を作り上げるうえで必要不可欠なものです。
制度を適切に運用することで、従業員のモチベーションや生産性が向上するため、最終的には企業全体の成長にもつながります。
しかし、「しっかりとした人事評価制度を作りたいが、やり方が分からない…」という方もいらっしゃるでしょう。そのような企業のご担当者にご覧いただきたいのが、「人事評価の手引き」です。
本資料では、制度の種類や導入手順、注意点まで詳しくご紹介しています。
組織マネジメントに課題感をお持ちの方は、ぜひこちらから資料をダウンロードしてご確認ください。
1. ESGと人的資本経営の関係性
ESGと人的資本経営は、相互を補完し、企業の持続可能な発展を促進する関係性にあるといえるでしょう。両者に取り組むことで、企業は社会的評価や経済的成果の両面から利益を得られます。
ESGとは、「Environoment(環境)・Social(社会)・Governance(企業統治)」の頭文字を取ったものです。企業の成長や社会的責任を果たすうえで、ESGの3つの観点は欠かせません。
ESGの具体的な取り組みは以下の通りです。
Environoment
環境課題への取り組み |
Social
社会課題への取り組み |
Governance
企業統治への取り組み |
・気候変動問題への対策
・温室効果ガス排出量の削減 ・再生エネルギーの使用 ・リサイクル ・生物多様性の尊重 |
・公正かつ適正な労働条件の遵守
・ダイバーシティ(社員の多様性)の促進 ・安全衛生の確保 ・ハラスメント防止 ・人権の保護 |
・法令の遵守
・情報開示 ・取締役会の構成の適正化 ・コンプライアンスの遵守 |
一方、人的資本経営とは従業員個人が持っている能力やスキルを、「資本」「企業価値を生み出す鍵」と捉える考え方です。つまり、人材を「投資」の対象として捉えます。
人材価値を最大限に引き出し、中長期的な企業価値の向上につなげる経営のあり方です。企業が人的資本に投資することは、ESGの社会課題への取り組みに関連しています。
ESGと人的資本経営は、企業が社会的責任を果たすうえで不可欠な要素で、相互に深い関係性があります。
2. ESGとSDGsの違い
ESGと混同しがちな用語にSDGsがあります。ESGとSDGsの違いは以下の通りです。
ESG | SDGs | |
意味 | Environment:環境
Social:社会 Governance:統治 |
持続可能な開発目標
(17のゴールと169のターゲットで構成) |
目的 | 世界規模の環境問題や社会問題の解決 | 2030年までに「持続的でよりよい世界」の実現 |
対象 | 「企業」や「投資家」 | 「国」や「自治体」など対象の範囲が広い |
両者は近い関係にありますが、ESGは「コンセプト」や「活動」を指し、SDGsは「目標」を指します。
ESGは、SDGsの実現に向けたプロセスの一つと考えるとわかりやすいでしょう。ESGに着目しながら事業活動をすれば、結果としてSDGsで掲げられている目標を達成できると考えられています。
3. ESGで人的資本経営に関心が持たれている背景
ESGで人的資本経営が着目されている背景は、大きく分けて2つあります。
- 企業の社会的責任が注目されている
- ESGが投資の判断基準となっている
3-1. 企業の社会的責任が注目されている
企業の社会的責任(CSR)に注目が集まっていることが、人的資本経営が注目されている理由の一つです。CSRとは、企業がビジネスを展開するうえで持つべき多面的な責任の総称を指します。
ESGの面で「持続可能性(サスティナビリティ)」について懸念されるようになりました。持続可能性が懸念されるようになった背景には、以下の理由が考えられます。
- 企業の労働環境を見直す動きが勢いを増した
- 企業の活動によって起きている環境問題が深刻化している
- 世間で企業の信頼性を揺るがす不祥事が続いた
企業が自社の成長のみを重視した経営を続けていると、社会との共存はできません。短絡的に利益を得られたとしても、持続的な成長は見込めないでしょう。
そのため、企業は社会的責任を果たすことが要求されています。例えば、従業員の多様性を認め、ジェンダー平等や有期雇用にも配慮した雇用をすることで企業は社会的責任を果たせるでしょう。
ESGを踏まえた経営をおこなうことで、持続可能な社会を実現することが期待されています。
3-2. ESGが投資の判断基準となっている
ESGが投資の判断基準になっていることがもう一つの背景です。ESGの概念が普及し、海外の投資家を中心に、無形資産が注目されるようになりました。
無形資産とは、文字通り目に見えない資産のことで人的資産や知的資産などが含まれます。例えば、個々の知識やスキル・人脈・ソフトウェア・M&Aの営業権などです。
有形資産投資が伸び悩んでいるのに対し、無形資産投資は年々増加傾向にあります。
また、米国では2020年8月に、日本では2021年6月に「人的資本の情報開示」が義務化されました。義務化により、企業が人的投資経営に対応するニーズが高まったことも考えられます。
4. ESGのために企業が人的資本経営を導入する3つのメリット
ESGのために企業が人的資本を導入する3つのメリットは以下の通りです。
- 従業員のモチベーション向上につながる
- 投資家に注目されやすくなる
- 新たなビジネスチャンスに気づくきっかけになる
- 人材確保につながる
4-1. 従業員のモチベーション向上につながる
人的資本の導入により、従業員の満足度が高まり、仕事に対するモチベーションの向上が期待できます。
社員の待遇を見直したり残業時間を削減したりするなど、仕事の負荷も職場環境を構成する要素の一つです。
また、人的資本経営の導入で個人の能力を可視化できることから、従業員一人ひとりの知識やスキルレベルを把握しやすくなります。適材適所で業務を振り分けられ、本来のパフォーマンスを発揮できる場を提供できるでしょう。
社員がより意欲的に業務に取り組むための土台として、肉体面だけではなく精神面の健康や幸福を感じられることが重要ともいわれています。
従業員に配慮した職場の環境づくりを目指しましょう。
4-2. 投資家に注目されやすくなる
人的資本を導入することで、投資家に注目されやすくなります。投資家が事業活動の利益だけではなく、社会貢献性を投資先に求める傾向が強まっているためです。
時代背景には、企業の市場価値として重視すべきポイントが、有形資産から無形資産へと変遷していることがあるでしょう。
人的資本経営を取り入れている企業は、社会的地位も高いと評価され、投資家の目に留まりやすくなります。実績につながると投資家からの評価も高まるため、資金調達においても有利になる可能性があるでしょう。
4-3. 新たなビジネスチャンスに気づくきっかけになる
人的資本経営に取り組むことで、新たなビジネスチャンスに気づくきっかけを得られます。社員が意欲的に働ける環境であれば、イノベーションや新たなビジネスモデルが生まれやすくなるでしょう。
特に、持続可能性を意識した商品やサービスは、需要が高く注目されやすい傾向にあります。
企業の特性を活かした商品やサービスを探る必要はありますが、新たなビジネスチャンスにつながる可能性は十分に考えられるでしょう。
4-4. 人材確保につながる
人的資本経営による人材育成は、社会的信頼を得るきっかけとなりやすく、人材の確保につながります。
従業員に配慮した職場の環境づくりや企業利益の拡大が、企業イメージ向上の一役を担うからです。
世間から「この会社で働いてみたい」と思われれば、優秀な人材確保も可能になります。
5. ESGへの理解を深め人的資本経営を推進しよう
ESGは、企業の成長や社会的責任を果たすうえで非常に重要な要素です。人的資本経営を推進し、従業員を育てることは企業の成長や利益につながります。
ESGを踏まえて人的資本経営に取り組むことで、相互作用を期待できるでしょう。
人的資本の開示が義務化され、近い将来、無形資産投資が有形資産投資を上回る日が到来するかもしれません。ESGへの理解を深め、人的資本経営を積極的に取り入れてみてください。
人事評価制度は、健全な組織体制を作り上げるうえで必要不可欠なものです。
制度を適切に運用することで、従業員のモチベーションや生産性が向上するため、最終的には企業全体の成長にもつながります。
しかし、「しっかりとした人事評価制度を作りたいが、やり方が分からない…」という方もいらっしゃるでしょう。そのような企業のご担当者にご覧いただきたいのが、「人事評価の手引き」です。
本資料では、制度の種類や導入手順、注意点まで詳しくご紹介しています。
組織マネジメントに課題感をお持ちの方は、ぜひこちらから資料をダウンロードしてご確認ください。
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