360度評価で失敗する原因や成功させるポイントを徹底解説
更新日: 2023.9.1
公開日: 2023.3.2
OHSUGI
人事評価制度は、生産性や従業員のモチベーションの向上に繋がる重要な要素のひとつです。立場を問わずさまざまな視点から評価を行う360度評価は、従来の人事評価とは異なったメリットがあり、昨今注目を集めています。
しかし、失敗のリスクもあるため、十分に熟知していなければいけません。本記事では、360度評価で失敗する原因についてや、成功させるポイントを徹底解説します。
1. 360度評価で失敗する原因
360度評価は、立場を問わずさまざまな人物から特定の従業員に対して評価を行う制度です。一部の人事評価担当者が評価を行う従来の制度とは異なる手法であり、それゆえに失敗する原因もいくつか想定されます。1つずつ詳しく見ていきましょう。
1-1. 実施にあたって目的の説明が十分に行われていない
360度評価では、評価を行う当事者が非常に多くなるのが特徴です。そのため、それぞれが実施する目的を正しく理解していないと失敗に至ってしまいます。これは、目的に基づいた評価、およびフィードバックが360度評価を行ううえで非常に重要であるためです。
たとえば、従業員のスキルアップを目的としたケースを想定してみましょう。この場合、理想的なフィードバックとしては、業務を行ううえで見えてきた現状の能力に対する弱点の克服案を見つけることがもっとも重要です。「早退が多い」「メールのレスポンスが遅い」など、このような指摘はまったく的を得ていません。
1-2. 業績評価や人事考課にまで取り入れてしまう
360度評価によってさまざまな視点から評価やデータが得られるからといって、それらを業績評価や人事考課にまで取り入れてしまうのは望ましくありません。
これらに360度評価を取り入れると、他人に対して良い評価をすることで、「自分の評価も上がるだろう」「あいつは嫌いなやつだから評価を下げてやろう」などといった実態に則さないフィードバックが起こる可能性があります。
1-3. 内容が複雑で行うのが負担になる
360度評価は、従来の人事評価とは異なり、上司や同僚、部下など、ほとんどの従業員が評価制度の担当者になります。通常の業務をこなしながら評価も行わないといけません。評価をするにあたって設問を多く設けすぎると、作業そのものが煩わしく感じられてしまい、流れ作業的に取り組んでしまう従業員が出てきてしまうことが考えられます。
そうなれば当然、目的に基づいた理想的な結果は得られないでしょう。かといって設問が少なすぎてもいけません。煩わしくない程度で、真剣に取り組めて、それなりに結果も得られるような設問を設けましょう。
1-4. その後のフォローが十分でない
評価制度は、ただ評価を下してフィードバックをするだけで終わりではありません。その内容を踏まえて、次にどういったアクションを取るのかが極めて重要です。
360度評価でフィードバックの後には、振り返り面談を必ず行いましょう。また、受けた評価をPCDAサイクルで管理することも大切です。
2. 360度評価で失敗するとどうなる?
360度評価の失敗は、ただ「実施した制度が失敗しただけ」では済まない事態に発展する恐れがあります。どういった結果が想定できるのか、2つのパターンを見ていきましょう。
2-1. 従業員の深刻なモチベーション低下の原因に
実施にあたって十分な説明がされていなかったために、目的に基づかない的外れな評価がされてしまうケースがあります。ほかにも、自分本意で主観的な判断のみで評価されてしまうケースもあるでしょう。
こういった事情のもとで下された評価は、適切なものとは言いにくいです。しかし、事情がわからない従業員は、その評価をそのまま受け取ってしまうかもしれません。その結果、深刻なモチベーション低下を引き起こす恐れがあります。
あまりにも酷ければ、単にモチベーションが低下するだけでなく、休職や退職に至る可能性も出てくるでしょう。
2-2. 忖度のためにコミュニケーション不全に至る
360度評価は、立場を問わずさまざまな人物からフィードバックを受けつつ、自らも行うのがポイントです。成功させるための鍵として、従業員たちが自分の立場を置いて客観的な評価を下せることが必要となります。
しかし、なかには高い評価を得たいがために、余計なことはしないようにしようという思考に陥りやすくなる罠があります。「人に悪い評価をしたために自分も同様に評価を下げられるのではないか」「部下に嫌われたくないから悪い評価はつけないようにしよう」といった思惑が働いてしまうと、その評価制度は適切なものとは言えなくなるでしょう。
それが原因で忖度が当たり前になり、そのためにコミュニケーションが減ってフィードバックが得られなくなってしまうこともあるでしょう。
3. 360度評価を成功させるポイント
360度評価が失敗する原因やそれによって起こりうる事態を踏まえたところで、成功させるポイントについても見ていきましょう。
3-1. 目的とガイドラインを明確にして周知する
ほとんどの従業員が評価を下す当事者として関わる評価制度だからこそ、フィードバックを有意義なものとするために目的やガイドラインを取り決めておきましょう。また、その周知も重要です。
目的としては、業務に対して取り組む際の姿勢改善であったり、シンプルに従業員のスキル向上であったりするでしょう。また、実施するうえで、評価方法や期間、注意点といったガイドラインを定めることも大切です。
目的やガイドラインが固まったら、携わる全員がしっかりと理解してくれるように説明の場を設けましょう。
3-2. スケジュールを細かく決めておく
360度評価は少数で行うものではなく、それぞれでフィードバックを行い、その後の振り返り面談まで行います。携わる人が多いほど、一連の流れがスムーズに行えるようスケジュールを細かく決めておくことが大切です。
実際に行う際の工程のモデルとして、以下を参考にしてください。
- 制度について詳しく説明する場を設ける
- 評価を集計する
- 個人でフィードバックを行う
- 振り返り面談を行う(さらに個々人の改善点のためにPCDAサイクルを考える)
3-3. 十分な結果が得られる設問作りを考える
360度評価を導入すると、ほとんどの従業員は通常の業務に加えて人事評価の作業も行う必要が出てきます。作業量が多くなるとその分負担に感じられてしまうかもしれません。かといって極端に少なければ、そもそも行う意味がなくなってしまうでしょう。十分な結果が得られる設問作りが重要です。
最適な量の目安としては、1人あたり15分程度で書き終わる程度で作るようにしましょう。また、選択形式の設問については30問ほどが最適です。フリーコメントは時間がかかるため、あっても1〜2問程度がおすすめです。
4. 失敗の原因を押さえて360度評価を成功に導きましょう
360度評価の実施によって、これまでの評価制度では得られなかった効果が期待できる一方で、失敗によるリスクはどうしても生じてしまいます。失敗すると、社内のコミュニケーション不全やモチベーションの低下といった、取り返しのつかない事態に至ってしまうかもしれません。
失敗の原因をあらかじめ押さえておき、成功に導けるようにしましょう。
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