能力評価とは?評価項目やメリット・デメリットを徹底解説
更新日: 2024.11.20
公開日: 2023.3.10
OHSUGI
人事評価制度には、数値化できる成果を評価する「業績評価」と資格や能力、スキルを評価する「能力評価」、勤務態度やルールの遵守などを評価する「情意評価」の3つがあります。この中で、実際の業務に直結するのが能力評価です。
企業が実施する能力評価は、従業員が保有する能力を基準とし、一人ひとりを評価します。評価結果は、人材の育成や配置時の参考にしたり、従業員のモチベーション維持に貢献したりできるので、とても重要な制度といえるでしょう。
本記事では、能力評価と他の評価についての違いや導入する際の項目、メリット・デメリットをまとめているので、企業にとってプラスになる能力評価を取り入れたいとお考えの際は、ぜひご活用ください。
目次
人事評価は、従業員のモチベーションや生産性に直結するため、正しく制度化され運用されていることが欠かせません。労働人口の減少が問題視される昨今では、優秀な人材を採用し定着させること、従業員エンゲージメントを高めることが、企業の成長に繋がるためです。
しかしながら「工数がかかる割には、人事評価をうまく制度化できていない」「制度自体はあるけれど、評価結果を活かせていない」」という方もいらっしゃるのではないでしょうか。
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1. 能力評価とは?
能力評価は、適切な人材配置をおこなったり、従業員のやる気をアップしたりするために欠かせない評価です。しかし、まだ導入していない場合、どのような性質を持つものなのかわからないという担当者の方もいるかもしれません。
ここでは、能力評価について、また混同されやすいその他の人事評価との違いも解説します。
1-1. 人事評価制度にある3要素の1つ
能力評価は、業務を遂行するための技術や能力などをもとに従業員を評価する、業績評価や情意評価に並ぶ人事評価制度のひとつです。
与えられた任務や業務に対して、どれくらい能力を発揮して効率的に遂行したかが評価の基準となります。評価対象はスキルや知識などですが、業務や職種によって項目が異なります。この項目を適切に設定することで、公平かつ客観的に従業員の能力を判断できるのが能力評価です。
従業員の処遇を決めたり、人材育成に役立てたり、企業によって使い方はさまざまですが、いずれも従業員に対してのさまざまなアクションの根拠として取り扱われます。
ただし、能力だけでは新入社員や異動人事がおこなわれた従業員を評価できないので、業績評価と情意評価を加味して総合的に評価するための判断材料として使われるのが一般的です。
1-2. その他の人事評価との違い
能力評価によく似た人事評価には、業務評価・情意評価・行動評価があります。
それぞれの特徴を知っておきましょう。
行動評価は人事評価制度の要素には含まれていませんが、混同されやすいのであわせて解説します。
能力評価 | 従業員が保有する能力やスキル、そしてそれをいかに効果的に発揮しているかを評価するものです。 |
業務評価 | 一定期間中に出した、会社の利益につながる成果に対する評価です。能力や過程はこの評価に含まれません。 |
情意評価 | 職務に対する態度や勤怠を重視して評価します。仕事に対する姿勢に加えて、考え方や人格も評価に含まれます。 |
行動評価 (コンピテンシー評価) |
成果を出している人のスキルや行動特性を分析し、その他の従業員を評価する方法です。行動した結果を評価するため、能力よりも成果に対する評価が中心です。 |
2. 能力評価における評価項目
能力評価の項目は業種や企業によって異なり、一般的には自社に必要な項目を調整して完成させます。こちらでは採用されることが多い、基本的な項目を紹介します。
項目 | 評価内容 |
企画力 | さまざまな業務や計画において、現状の課題を見抜き、アイデアを出して解決策を講じる能力です。発想した内容をビジネスに活かす能力も含まれます。 |
交渉力 | 交渉相手と自社の利害を調節し、お互いに納得できる着地点を目指し、話し合う能力です。自分の意見を伝えるとともに、相手の思惑や希望を理解する能力も求められます。 |
実行力 | 目的や目標を達成するために必要な計画を作り、それを確実に行動に移す能力です。単純な行動力ではなく、成果を出すための綿密な計画をもとに行動する力を指します。 |
判断力 | 発生したトラブルや突発的な業務を正しく認識し、適切な対処・対応をする能力です。迅速な判断ができることに加え、正確性も求められます。 |
理解力 | 会社の方針や上司からの指示、与えられた業務の内容などを正しく理解する能力です。判断力と似ている部分がありますが、理解力は物事の本質や細部まで読み解く力が求められます。 |
人間関係力 | 職場での人間関係を円滑にこなし、考え方や立場の違いによる軋轢を生まないように自分の考えを伝える能力です。部署やチーム内でモラルやルールを守りながら仕事ができているかなどを評価されます。 |
知識力 | 幅広い知識を有し、目的や業務の遂行に活かす能力です。 担当業務や職種に限定せず、時事問題や政治、雑学なども含めた幅広い知識量が評価されます。 |
3. 能力評価を導入するメリット
能力評価を導入することで得られるメリットは、人事に関連するものが多いです。主な3つのメリットを紹介します。
3-1. 業務適性がわかる
能力評価をおこなうことで、従業員個人が持つスキルや能力をより細かく確認できるようになります。
部署やチーム単位の特性や能力で評価していた場合、そのグループの中に業務内容が適さない人がいても気づきにくい状態です。単にスキルや能力が今の部署に向いていない、というだけで、その従業員はずっと低い評価を付けられたままになってしまうこともあるでしょう。しかし、能力評価を導入すれば、従業員一人ひとりの能力がわかるので、業務に適さない人を把握できます。
能力評価によって、どういった仕事が向いているのか、どの部署であれば能力を発揮できるのかを把握すればスムーズな人事異動が可能です。今まで評価が低かった従業員であっても、業務適性による人事異動をおこなえば、適材適所で効率的に業務を遂行できるようになります。
3-2. 人材の育成がしやすくなる
能力評価の内容を従業員が知れば、どんな能力やスキルが重視されているのかを知ることになります。
その結果、より成果を出して評価を高めるにはどうすればよいか明確にわかり、意欲的な従業員は自らスキルアップを始めるでしょう。
そしてその行動が評価されればモチベーションが上がり、さらなるスキルアップにつながるというプラスの連鎖が発生しやすくなります。
従業員のやる気がない、積極性がないというのは、「何を求められているかがわからない」という理由があります。目的や目標がはっきりすれば、どんなことを学べばいいのか身につければいいのかがわかりやすいので、仕事に対する意欲も湧いてくるでしょう。
3-3. 評価の納得度が高まる
社内での処遇が、明確な指針によって決められていることがわかれば、従業員は待遇に納得感を持ちやすくなります。
営業部や運営部などであれば、契約件数や売上など評価ができる明確な数値がありますが、それ以外の部署では直接売上や業績に関わらない業務が多いため、どのように待遇が決められているのか不透明です。最初はよくても、長年働いている従業員の場合、自分の処遇に疑問を抱いたり、他の従業員の昇進や昇給に不満を持ったりすることがあります。
しかし、評価項目が明確であれば、自分や他の従業員への評価に不満を持つことも少なくなります。さらに、能力と評価が連動していることを知った従業員は、業務に取り組む姿勢を見直すことでしょう。
より高い評価を得てよい待遇を受けたいという気持ちが生まれることで、モチベーションのアップに期待が持てます。
4. 能力評価を導入するデメリット
能力評価は人材育成や人的資源の最適化において、多くのメリットがある制度です。しかし、評価する人や評価方法によってはマイナス要素になる恐れがあります。
発生しやすい2つのデメリットを知り、注意しましょう。
4-1. 評価に公平性がないと不満が出やすい
能力評価で評価をおこなうのは人間です。
そのため、評価をする人によっては感情や先入観に影響され、公平な評価ができないことがあります。
とくに年功序列の意識がまだまだ根強い日本では、年齢に評価が左右される可能性が高いです。
納得感が低い評価が増えてしまうと、従業員は不信感を持ってモチベーションの低下を招きます。
評価基準や評価項目を明確化するとともに、評価をする人の育成や注意喚起も実施して評価の公平性を維持しなくてはいけません。
4-2. 業績評価よりも曖昧になりやすい
能力評価では、従業員が保有する能力を軸に評価します。
そのため、スキルはあるが実行力がない人や、経験は豊富だが業務態度が悪い人などが高評価を受けることも少なくありません。
業績評価のように、数字や明確な実績によって評価するものではないため、曖昧さが発生するのは仕方のない部分もあります。
しかし、能力評価だけで従業員を判断するのではなく、業績や行動評価なども併用して最終的な評価を下すことで、このデメリットは回避可能です。
5. 能力評価を適切に運用するポイント
能力評価は、適切に運用することが求められます。適切な運用ができていないと、従業員の納得感が得られず、逆に不満を招く原因にもなります。従業員が不満を持ってしまうと、能力評価による業績アップや業務の効率化などのメリットが得られません。
ここでは、適切に運輸するポイントを紹介するので、導入後の参考にしてください。
5-1. 評価者の感情で評価をしない
能力評価に限らず、評価をする時に評価者の感情を入れないことはとても重要です。
人間は、人に対して自分なりの感情を持っているため、気に入っている部下には点を甘くしてしまったり、交流がない部下だと点を厳しくしてしまったりすることがあります。個人的な感情で評価点を付けると、当然ですが正確な評価になりません。
正しく運用するには、評価と感情をしっかり切り離すことが求められます。そのため、評価者を決める際には好き嫌いで人を判断しない、事務的な人間を選ぶのがポイントになります。また、評価者には研修会などを実施して、自己判断で評価をしないこと、評価が従業員に与える影響などを理解してもらいましょう。
5-2. 能力評価シートの書き方
能力評価シートには、評価の結果だけでなく、評価者からのコメントもしっかり記載する必要があります。ただ結果を告知するだけでは、どのようなプロセスでこの結果になったのか、何が良くて何が悪いのかを伝えることができません。
原因を自分で考えさせたい、という評価者もいるかもしれませんが、被評価者のモチベーションを高めるためには的確なコメントを書くことが求められます。
この際に重要なのが、改善策やアドバイスを書くだけでなく、例え低い評価であっても「良かった点」を記入することです。成果を出せなかった、達成できなかったというのは本人もわかっているので、そこだけにフォーカスしたシートではやる気がでません。
「ここは達成できなかったけど、こういった点を努力していたので、次につながる可能性がある」というような内容にすることで、低い評価でも「次はがんばろう」という気持ちになってもらえます。
5-3. 評価に客観性を持たせる
能力評価の公平性を保つためには、評価に客観性を持たせる必要があります。
客観性を持たせるには、評価者の訓練や教育も重要ですが、評価項目や評価基準をより具体的に決めておくことも重要です。判定基準があいまいだと、人によって解釈が異なってしまうため客観的な視点での評価ができなくなるかもしれません。
また、具体的に決めたとしても、会社の経営状況や従業員の成長度合いは変化をするので、シーンに応じて内容を変更させることも必要になってきます。ずっと同じ内容では、能力やスキル、仕事環境とのズレが出てしまい、公平な評価になりません。
人事評価制度では、常に客観性を意識する必要があるので、客観的な評価がしやすい360度評価の導入も検討してみるとよいでしょう。
6. 能力評価は他の評価との併用で公平におこなう
能力評価は、従業員が持つ能力やスキルを評価するものです。
評価項目は自由に設定できるため、導入する際は自社の業務や職種に合わせ、必要な情報に入れ替えて採用しましょう。
ただし、能力評価だけでは、業務においてその能力を活しているか、能力を活かせる配置になっているかの判断が難しく、場合に評価がかたよってしまうリスクがあります。例えば、従業員の持つ能力と業務が合っていない場合、低評価をつけてしまうかもしれません。間違った評価は、従業員のやる気の低下や離職を引き起こす可能性があります。
正確かつ適切に評価するには、能力評価に加えて行動評価や業績評価も取り入れたほうが確実です。
人事評価は、従業員の幸福度や満足感に直結するので、公平で納得感のある評価をおこない、従業員のモチベーションを高めましょう。
人事評価は、従業員のモチベーションや生産性に直結するため、正しく制度化され運用されていることが欠かせません。労働人口の減少が問題視される昨今では、優秀な人材を採用し定着させること、従業員エンゲージメントを高めることが、企業の成長に繋がるためです。
しかしながら「工数がかかる割には、人事評価をうまく制度化できていない」「制度自体はあるけれど、評価結果を活かせていない」」という方もいらっしゃるのではないでしょうか。
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