年休の計画的付与とは?時季指定との違いをわかりやすく解説 - ジンジャー(jinjer)|人事データを中心にすべてを1つに

年休の計画的付与とは?時季指定との違いをわかりやすく解説 - ジンジャー(jinjer)|人事データを中心にすべてを1つに

年休の計画的付与とは?時季指定との違いをわかりやすく解説 - ジンジャー(jinjer)|人事データを中心にすべてを1つに

年休の計画的付与とは?時季指定との違いをわかりやすく解説

「年休の計画的付与について知りたい」

「年休の計画的付与と時季指定の違いを知りたい」

上記のようにお困りの方も多いでしょう。

年休の計画的付与とは、労使協定の内容に従いつつ会社が年休の付与日を計画的に割り振る制度です。

本記事では年休の計画的付与の概要や付与方式、対象日数や対象者を紹介しています。導入に必要な手続きや、導入の注意点を知りたい方も必見の内容です。

そのほかに年休の計画的付与で残日数が足りないときの対応についても解説しているため、ぜひ参考にしてください。

1. 年休の計画的付与とは

年休の計画的付与とは、締結した労使協定に従い会社が計画的に年次有給休暇(以下「年休」という)の付与日を決める制度です。つまり、従業員は会社に指定された日に年休を取ります。

法による義務ではないため、それぞれの会社が導入するかどうかを自由に決定できる仕組みです。ただし、対象日数に関するルールや導入の際に必要な手続きがあります。

制度が創設された背景の一つは、年休の取得率の低さです。原因は、ほかの従業員への負担増加を懸念して、年休の申請をためらう従業員が多いことでした。

実際に、年休の取得率は昨今の状況でも以下のように政府目標値と実際の数値に開きがある状態です。国が取得率向上に向けた広報活動を展開しています。

政府目標の取得率 70%
実際の取得率(2021年時点) 約58%

参考:10月は「年次有給休暇取得促進期間」です|厚生労働省

当制度での一般的な年休の付与時期は、業務に支障をきたしにくい以下のような日本の大型連休にからむ時期です。

  • 8月のお盆休暇
  • 年末年始休暇

さらに連休を作るために、飛び石連休の営業日に合わせて付与するケースも少なくありません。

年休の計画的付与を導入すると、周囲への負担増加や業務への支障などを気にすることなく従業員が年休を取得できます。結果、年休の取得率の向上が期待できるでしょう。

参考:年次有給休暇の計画的付与制度|厚生労働省

2. 年休の計画的付与と時季指定の違い

年休の計画的付与と時季指定の違いは、以下のとおりです。

年休の計画的付与 年休の時季指定
法による義務
付与日数 年休の付与日数(繰越分は合算)から5日を減じた残日数 年5日
労使協定締結の有無
従業員の取得時期の希望を聞くためのヒアリングの有無

年休の計画的付与は法による義務ではありませんが、労使協定を締結する必要があります。

一方、時期指定は労働基準法による義務がありますが、労使協定を結ぶ必要はありません。また日数は年5日のみですが、計画的付与による消化分も含みます。

加えて、年休の付与日を指定する前に各従業員の希望をヒアリングするなど、各従業員の意向を反映させるための努力義務が必要です。

両制度ともに、方法などの詳細を就業規則へ記載しなければなりません。会社が年休の付与日を決め、従業員が決められた日に年休を取る仕組みも同様です。

参考:年次有給休暇の時季指定義務|厚生労働省

3. 年休の計画的付与の付与方式

年休の計画的付与の付与方式には、以下の3種類あります

方式の種類 概要 向いている会社・事業場
一斉付与 会社や事業場全体を休業し、休業日に合わせて全従業員に年休を与える手法 ・一斉休業しても支障がない会社や事業場

・一斉休業する方が効率の良い会社や事業場

・製造業

交替制付与 従業員を班やグループに分けて、班やグループごとに交替で年休を与えるやりかた ・定休日の増加が難しい会社や事業場

・流通業

・サービス業

個人別付与 年休付与計画表を作成し、各従業員の年休を個別に与える方法 ・それぞれの従業員に対して年休を与えたい企業や事業場

・同日に多くの従業員が休むと業務に支障をきたす会社や事業場

参考:年次有給休暇の計画的付与制度|厚生労働省

個人別付与では、誕生日や結婚記念日を始めとする、それぞれの従業員の記念日に合わせて年休を与える会社も多いです。

4. 年休の計画的付与の対象日数

年休の計画的付与の対象日数は、年休の付与日数から5日を差し引いた日数です。例えば、付与日数が10日の場合の対象日数は5日になります。

5日分を減らす理由は、病気や個人的事情などにより、各従業員が自由に取得できる年休を残しておくためです。

なお前年度からの年休の繰越分がある場合は、繰越分を合算したのち5日を減じましょう。

例えば、前年度からの繰越分が2日・今年度付与された年休が10日の場合の計算式は2+10-5=7です。つまり、計画的付与の対象日数は7日になります。

参考:年次有給休暇の計画的付与制度|厚生労働省

5. 年休の計画的付与の対象者

年休の計画的付与の対象者は、労使協定を結んだ、年休の付与日数が6日以上の従業員です。

次のような条件により6日以上の年休がない従業員は、対象外となります。

  • 入社時期
  • 勤続年数
  • 所定労働日数

また、年休が付与されない従業員も対象外です。

一斉付与を計画している場合、対象外となる従業員の扱い方についても協議しておきましょう。

参考:4. 年次有給休暇の計画的付与について【労働基準法第39条関係】|厚生労働省

6. 年休の計画的付与導入に必要な手続き

年休の計画的付与導入に必要な手続きは、以下のとおりです。

  1. 労使協定の締結
  2. 就業規則への記載

続いて各手続きの詳細を簡単に解説します。

6-1. 労使協定の締結

年休の計画的付与導入に必要な手続きの一つ目は、労使協定の締結です。

労使協定では、雇用主と従業員が年休の計画的付与の内容について相談し、決定した合意内容について書面契約を交わします。

実際に雇用主と労使協定を結ぶ従業員は、以下のとおりです。

  • 従業員の過半数の代表者
  • 労働組合(労働組合がある場合)

労使協定では次のような事柄について相談し、双方が合意する内容を定め契約を交わします。

  • 対象者
  • 対象日数
  • 実施方式
  • 具体的な年休の付与日
  • 付与日を変更する場合の手続き
  • 対象の年休をもたない従業員の扱い

また年休付与計画表に基づく個人別付与を採用する場合には、計画表の作成時期や手続き方法に関する協議も必要です。

6-2. 就業規則への記載

年休の計画的付与導入に必要な手続きの二つ目は、就業規則への記載です。具体的には、以下のような内容を盛り込み、年休の計画的付与導入について就業規則へ記載します。

記載に盛り込む内容 ・労使協定の内容に基づくこと

・対象日数の考え方や範囲

・事前に決めた指定日に年休を付与する場合があること

なお常に10人以上の従業員が働いている事業場が就業規則を変更した場合には、所轄の労働基準監督署への届出が必要です。

7. 年休の計画的付与で残日数が足りないときの対応

年休の計画的付与で残日数が足りないときは、以下のような対応を取りましょう

  • 特別休暇を与える
  • 休業手当を支払う

入社から間もないため年休の付与日数が足りない場合などにも、上記のような対応が望ましいです。

なお労使協定を結んだ時点で、計画付与で与える年休の総日数を従業員へ周知徹底させることをおすすめします。

結果、従業員が計画付与分を除く年休の残日数を把握しやすくなるため、計画付与時点における残日数不足を避けられる可能性が高いです。

8. 年休の計画的付与導入の注意点

年休の計画的付与導入の注意点は、以下のような事柄を理解しておくことです。

  • 労使ともに基本的に付与日の変更はできない
  • 対象外となる従業員の対応についても協議する必要がある
  • 付与日が退職予定日以降になる場合は変更に応じなければならない

また上記の事柄について、労使ともに周知徹底しましょう。

9. 年休の計画的付与について理解を深めよう

年休の計画的付与とは、労使協定に従い年休の付与日を企業が計画立てて割り振る制度です。時季指定とは異なり法的な義務はありませんが、労使協定を結ぶ必要があります。

対象日数は年休の付与日数から5日を差し引いた日数です。付与方式は3種類ありますが、それぞれに向き不向きがあるため、自社や自社の事業場に合う方式を選びましょう。

当制度の年休の付与日に年休の残日数が足りない場合には、特別休暇を与えたり休日手当を支払ったりして対応します。

なお制度を導入する際には、労使協定の締結と就業規則への記載の手続きが必要です。

本記事で紹介した注意点なども参考にしつつ、ぜひ年休の計画的付与に関する理解を深めてください。

OHSUGI

OHSUGI

クラウド型勤怠管理システムジンジャーの営業、人事向けに採用ノウハウを発信するWebメディアの運営を経て、jinjerBlog編集部に参加。営業時代にお客様から伺った勤怠管理のお悩みや身につけた労務知識をもとに、勤怠・人事管理や給与計算業務に役立つ情報を発信しています。

人事・労務管理のピックアップ

新着記事