行動評価とは?導入の効果や評価項目の例を詳しく紹介
更新日: 2025.1.31
公開日: 2023.4.6
jinjer Blog 編集部
行動評価とは、従業員が能力を適切に発揮しているかを評価する手法で、コンピテンシー評価とも呼ばれます。日本国内で1990年代から取り入れられるようになった行動評価には、生産性向上やモチベーションアップにつながりやすいというメリットがあります。
本記事では、行動評価の具体的な導入手順や、設定すべき評価項目について解説します。
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人事評価制度は、健全な組織体制を作り上げるうえで必要不可欠なものです。
制度を適切に運用することで、従業員のモチベーションや生産性が向上するため、最終的には企業全体の成長にもつながります。
しかし、「しっかりとした人事評価制度を作りたいが、やり方が分からない…」という方もいらっしゃるでしょう。そのような企業のご担当者にご覧いただきたいのが、「人事評価の手引き」です。
本資料では、制度の種類や導入手順、注意点まで詳しくご紹介しています。
組織マネジメントに課題感をお持ちの方は、ぜひこちらから資料をダウンロードしてご確認ください。
1. 行動評価とは?
行動評価とはどのような評価制度なのでしょうか。従業員個人の業績や能力をシンプルに評価する制度とは少し違った評価制度をまずは理解しましょう。
1-1. 成果の高い従業員の行動を基準とした評価システム
行動評価はアメリカを中心に導入されている評価システムで、近年では日本の企業でも取り入れる例が増加しています。
コンピテンシー評価とも呼ばれる行動評価には、優れた成果を出した人材の行動特性を人材育成に活かすという意味合いがあります。
企業の中で高い成果を出す従業員には行動上の特性があります。行動評価では成果の高い従業員の行動をモデルとし、これを分析してフィードバックする手法を用います。モデルの行動基準をどれだけ達成しているかを評価することで、従業員の成長を促していくのです。
コンピテンシーはしばしば従業員がもともと持つ能力やスキルと混同されることがあります。しかし、行動評価においては、ハイパフォーマンスを発揮する従業員のスキルではなく、あくまで行動や働きぶりに注目します。
1-2. 日本でも導入する企業が増えている
日本では年功序列の評価制度が取り入れられてきましたが、近年では業績評価や行動評価を導入する企業が増えています。
行動評価を採用している企業は、68%ほどにのぼるというデータもあり、これは業績評価(71%)に次いで多い比率です。これは行動評価が人材育成や業績の改善に有用であることが普及し、ほかにも従業員のモチベーション向上や、公平で明快な評価がしやすいというメリットも影響していると考えられます。
しかし、行動評価は業績評価や能力評価と混同され、正しく行動評価がされないケースもあります。事項では行動評価とその他の評価の違いを確認していきましょう。
2. 業績評価や能力評価との違い
行動評価は業績評価や能力評価と混ざってしまったり、基準があいまいになったりしやすいです。違いを理解して行動評価の特徴を生かした評価をしましょう。
2-1. 評価対象や重視するものが違う
行動評価・業績評価・能力評価の評価対象は以下のように異なります。
行動評価 | 成果や結果に結びついた行動を評価する |
業績評価 | 一定期間に設定した目標の達成度で評価する |
能力評価 | 職務を遂行するための能力の高さを評価する |
行動評価において重要視されるのは実際の業績ではなく、業績に結びつく行動です。
業績評価は、売上目標を具体的な数字で設定するなどの手法でおこないます。しかし業績評価には、結果ばかりに注目が集まってしまうというデメリットがあります。
従業員を公正に評価するためには、結果ではなく行動にも着目することが重要です。
従業員の能力やスキルに着目する能力評価と呼ばれる手法を導入する企業も少なくありません。従業員がもともと持っている能力が高いほど評価が高まるのが、能力評価の大きな特徴です。しかし、能力評価のみでは実際の仕事の実績を十分に評価することができません。
十分な能力を持つ従業員の行動を基準として評価できるという点が、行動評価と能力評価の違いです。行動評価を適切に取り入れれば、能力評価が持つ問題点を解消することも可能です。
企業の人事評価では、業績評価や能力評価のよい点を盛り込みつつ、より効果の高い評価制度を運用することが重要です。高い効果を得るためにも、メリットの多い行動評価を積極的に活用したいものです。
2-2. 各評価の良い点を盛り込んだ制度が一般的
各評価制度にはメリットも多いですが、課題も必ずあります。例えば、業績評価や能力評価では結果や数字に頼った評価になりやすく、目標達成に至るプロセスが考慮されにくいです。そのため、縁の下の力持ちのようなポジションにいる従業員が評価されず、不公平感が出てしまうことがあります。
この問題を行動評価によって解消しやすくなるため、一般的には一つの評価基準だけでなく、複数の評価を取り入れてより正確で公平な評価を目指します。業績評価と行動評価を取り入れれば、成果を出した従業員だけでなく、よい結果のために行動した内容も評価されるため、関係した従業員すべての評価を公平にしやすくなるでしょう。
3. 行動評価を導入することによる効果
人事評価に行動評価を導入することで企業の生産性は向上しやすくなります。また、評価基準が明確になり公平な評価がしやすくなるのも行動評価のメリットです。
ここからは、行動評価の導入によって得られる効果を紹介します。
3-1. 従業員の不信感を払拭できる
人事評価の基準が不透明な状態が続くと、従業員は評価に不満や不信感を持つことがあります。自己評価と実際の評価とのギャップに悩み、モチベーションを大きく下げてしまう従業員もいるかもしれません。
行動評価の大きなメリットは、評価内容を明確に提示できるという点にあります。モデルとなる従業員の実際の行動を軸にしているため、評価基準があいまいになったり評価エラーを起こしたりする心配はありません。
行動評価の項目を周知すれば、従業員は課題を具体的にイメージできるようになります。従業員が納得したうえで前向きに働けるという点は、行動評価ならではのよさです。
評価基準に対する不信感が払拭されることで、従業員のモチベーション向上も期待できます。
3-2. 人材育成や生産性向上につながる
行動評価には、どのような働き方をすれば評価されるかという点がわかりやすいというメリットがあります。明確な評価基準が設定されているため、従業員は評価につながる行動を自発的に起こせるようになります。会社が求めるスキルに合わせて勉強をしたり、自分に足りていない能力を見つけて自己研鑽をしたり、より効率的なスキルアップがしやすくなるでしょう。
その結果、努力した分だけ評価されやすくなります。これによって、従業員の従業員のモチベーションがアップしやすくなり、個々の生産性も向上するはずです。チーム内や部署内の連携を図りながら、企業の業績を大きく拡大させていきましょう。
3-3. 企業の方針を従業員に伝えられる
行動評価におけるモデルの行動特性は、企業のビジョンそのものにほかなりません。つまり行動評価とは、企業のミッションや方針を従業員に浸透させる手法ともいえます。
企業理念や企業方針を知っていても、なかなか明確なイメージはできません。それが行動評価のモデルが提示されることで具体的になり、どのような行動が求められているのかはっきりと認識できるようになるのです。
企業が何を目指しているのかを従業員に周知できれば、個々の従業員が迷走するリスクを減らせます。目指すべき具体的なビジョンを統一したうえで一丸となって進めるという点も、行動評価の導入で得られる大きな効果の1つです。
4. 行動評価の項目例や書き方
行動評価には、モデルとなる従業員の具体的な行動に関する項目を設定します。ここからは、行動評価に盛り込みたい項目の例を紹介します。
4-1. 目的達成に向けた行動
行動評価では、目標を達成するための具体的な行動に関する項目を設けるのが一般的です。
目標達成のためにどんなアクションをしたか、どんな施策を講じたのかといった項目を設け、評価をおこないましょう。
また、ミーティングでアイディアを出しているか、自発的な行動を起こしているかといった点も評価ポイントです。
【評価項目の書き方】
- 上司からの指示を待たずに能動的に行動ができているか
- 会議やミーティングの際に積極的にアイデアや意見をだしているか
- 自ら考えて必要な行動や業務をおこなおうとしているか
4-2. サポート力や人的サービス
他の従業員をサポートする力や、顧客に対する対応を評価する項目です。
他社が何を求めているかを察知したり考えたりし、それに対応する行動ができているかどうかという点は、評価がしにくい部分です。
しかし、重要な能力であるため、行動評価の項目にしっかりと盛り込んで評価することが大切です。
【評価項目の書き方】
- チームメンバーと共に課題解決に取り組んだり、新しいアイデアをだしたりできているか
- 顧客が求める対応やサービスを察知して先回りした対応ができているか
- 目標達成に向けて周囲を支援し、円滑に取り組めるように行動したか
4-3. 発言や行動の影響力
ほかの従業員に対する影響力も重要な評価ポイントです。
チーム内で評価される提案ができているか、魅力あるプレゼンができるか、十分なコミュニケーションを取れているかといった点を評価しましょう。
【評価項目の書き方】
- 同僚や上司と友好的な関係を築くために行動を起こしているか
- チームメンバーの意識を変えたり、評価されたりする提案をしているか
- 斬新な考え方や多角的な視点で周囲にプラスとなる影響を与えたか
4-4. マネジメントコンピテンシー
マネジメントコンピテンシーは、チームをマネジメントして目標達成に貢献できたかを評価するものです。
マネジメント能力ではなく、マネジメント能力による成果を評価する点が能力評価との違いです。混同しないように評価項目を慎重に決めましょう。
【評価項目の書き方】
- 感情的にならずに部下や上司とコミュニケーションをとれているか
- 合理的かつ論理的な思考でトラブルに対応できているか
- 目標達成に向けてチームの状態を把握し、必要な対応をとれたか
5. 行動評価の導入手順
行動評価を導入する際には、氷塊準の設定や評価者の選定、そして従業員への周知など成功させるために重要なプロセスがあります。一般的な流れを理解し、スムーズな導入を目指しましょう。
5-1. 行動基準の設定
行動評価ではモデルが必要になるため、企業が求める行動評価基準を設定することが最初のステップです。
行動評価の基準は「共通基準」と「個別基準」に分けることが大切です。
- 共通基準…会社全体で認識を統一しておきたい項目。従業員全員に当てはまる基準
- 個別基準…部署や職種によって異なる基準
共通基準で会社が求める人物像を設定し、個別基準で部署や職種別に求められる行動基準を設定する形です。これによってより分かりやすいモデルができ、業務による差異を埋めることができるでしょう。
また、行動基準を設定する際はわかりやすさが重要です。具体的な表現を意識し、イメージしやすい行動基準を作るようにしてください。
5-2. 評価者の選定と育成
行動基準が決まったら、評価者を選定します。行動評価では、評価基準を軸にして従業員ひとりひとりを評価していくことになります。
適正な評価基準ができていても、評価者が未熟であったり、正しい理解ができていなかったりすると行動評価が無意味なものになってしまうでしょう。それどころか評価に公平性がないと感じられれば、モチベーションの低下や会社に対する不信感など、よくない結果を招く恐れもあります。
評価者の選定とともに、研修をおこなったりマニュアルを作成したりするなどして、評価者の育成もおこなわなければなりません。
5-3. 従業員への説明と周知
新しい評価制度を導入する場合は、必ず従業員への説明と周知をしましょう。導入する理由や評価基準、行動評価のメリットなどを提示して理解を求めます。
従業員は自分に不利になる評価制度になると感じれば、強い反発心を持ちやすいです。誤解がないように丁寧な説明をし、必要であれば複数回説明の場を設けることや、個別での相談などを受けるようにするとよいでしょう。
評価制度への認識が正確にされていないと、不信感が従業員の間で広まりやすいです。会社が一方的に新しい評価制度を押し付けるようなイメージを持たれないように、十分に注意しましょう。
5-4. 評価の実施と見直し
行動評価を導入し、評価を実施したら課題や問題点を洗い出します。
わかりにくい評価項目はないか、各部署や業種にあった項目設定はされているか、評価者の負担は大きすぎないかなど、さまざまな視点から改善点を見つけてブラッシュアップすることが大切です。
また、定期的に評価項目やモデルの見直しをおこない、会社が求める最新の人物像とそれに対応する評価項目を設定することを続けましょう。
従業員へのアンケートも必要に応じて実施し、新しい評価制度に対する感情をしっかりと把握しておくことも大切です。
6. 行動評価では納得度が高く具体的な評価項目の設定が重要
行動評価とは、成果の高い従業員の行動特性を評価項目に設けるという手法です。実際の行動をフィードバックすることで、企業の方向性に応じた効果的な評価をおこなうことが可能となります。
行動評価をおこなう際には、具体的な評価項目を設定することが重要です。納得度の高い項目を設けて行動評価を運用し、生産性向上につなげていきましょう。
人事評価制度は、健全な組織体制を作り上げるうえで必要不可欠なものです。
制度を適切に運用することで、従業員のモチベーションや生産性が向上するため、最終的には企業全体の成長にもつながります。
しかし、「しっかりとした人事評価制度を作りたいが、やり方が分からない…」という方もいらっしゃるでしょう。そのような企業のご担当者にご覧いただきたいのが、「人事評価の手引き」です。
本資料では、制度の種類や導入手順、注意点まで詳しくご紹介しています。
組織マネジメントに課題感をお持ちの方は、ぜひこちらから資料をダウンロードしてご確認ください。
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