キャリア開発とは?メリットや注意点を簡単に紹介
更新日: 2025.8.4 公開日: 2025.4.23 jinjer Blog 編集部

キャリア開発とは、自身の希望するキャリアを従業員が形成するため、キャリア形成や能力開発を企業がサポートする仕組みです。
この記事では、より詳しいキャリア開発の概要や、キャリア開発のメリット、具体的な開発方法などを紹介しています。
この記事を読めば、キャリア開発を成功させて、従業員の業務へのモチベーションを向上させられるでしょう。
人的資本の情報開示が義務化されたことで人的資本経営への注目が高まっており、今後はより一層、人的資本への投資が必要になるでしょう。
こういった背景の一方で、「人的資本投資にはどんな効果があるのかわからない」「実際に人的資本経営を取り入れるために何をしたらいいの?」とお悩みの方も、多くいらっしゃるのが事実です。
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1. キャリア開発とは

キャリア開発とは、従業員一人ひとりが希望する自身のキャリアパスを踏まえて、企業が従業員のキャリア形成や能力開発をサポートする仕組みです。
キャリアを形成するのは従業員であるため、望んだキャリア形成ができるかどうかは従業員自身の選択や努力によるところが大きいでしょう。
しかし、企業側でも従業員の配置を検討することや、研修の実施などでキャリア開発がおこなえます。
従業員のキャリア開発に取り組めば、モチベーションの向上や自社でのより大きな活躍が期待できるでしょう。
2. キャリア開発が企業で求められる背景

キャリア開発が企業で求められる背景として、次の三点が挙げられます。
- 雇用形態に大きな変化が起きている
- 新たな技術が急速に普及している
- 優秀な人材確保の重要性が増している
2-1. 雇用形態に大きな変化が起きている
雇用形態に大きな変化が起きていることは、キャリア開発が企業で求められる背景の一つといえるでしょう。
日本の従来の雇用形態であった終身雇用・年功序列が崩れ始めたことで、労働者が自身のキャリアをより真剣に考えるようになったためです。
現代の不安定なビジネス環境においては、終身雇用を維持し続けられる体力のある企業は多くありません。
また、現在所属している企業がいつ倒産するかわからない状況において、労働者はキャリアを企業に任せるのではなく、自身のスキルを磨くことを重要視するようになるでしょう。
そのため、企業においても従業員が希望したスキルを身につけられるように、キャリア開発の視点から能力開発をサポートすることの重要性が増しています。
2-2. 新たな技術が急速に普及している
新たな技術が急速に普及していることも、キャリア開発が企業に求められる背景として考えられることが多いでしょう。
業務がデジタル化する中で、従来の仕事のやり方が大きく変化したり、労働者に求められるスキルが変化したりしています。
変化に対応して雇用を継続してもらうことは従業員にとっても重要なため、キャリアへの意識が従業員側でも企業側でも大きくなっているといえるでしょう。
2-3. 優秀な人材確保の重要性が増している
優秀な人材確保の重要性が増していることも、キャリア開発が企業で求められる要因です。
少子化や人材のグローバル化にともない、企業での優秀な人材確保の難易度が上がっています。
この状況に対応して人材確保の競争力をつけ、優秀な人材を確保・育成したいとの意図から、キャリア開発を重要視する企業が増えています。
3. キャリア開発をおこなうメリット

キャリア開発をおこなうメリットには、次のようなものがあります。
- 優秀な人材の確保や育成ができる
- 従業員の意欲が向上する
- 業績アップを目指せる
3-1. 優秀な人材の確保や育成ができる
キャリア開発を積極的におこなうことで、優秀な人材確保や定着した人材の育成に役立ちます。
新しいスキルや能力を身につけたいと自発的に考えられる優秀な転職者にとって、キャリア開発に積極的に取り組む企業は魅力的です。
また、すでに定着している人材にもキャリア開発を通じてスキルや能力の開発を支援することで、より長くより大きな活躍をしてもらえるでしょう。
人材確保の難易度が高い現代において、優秀な人材が集まることや定着した人材がより優れた能力を発揮することは企業にとって大きなメリットです。
3-2. 従業員の意欲が向上する
キャリア開発を実践することで従業員の意欲が向上し、モチベーション高く業務をおこなえるようになります。
キャリア開発では、従業員自身が望むキャリアを目指せるため従業員側もモチベーションを保ちやすいためです。
出世や昇進はこれまで企業側や上司に委ねられることが多く、従業員は意欲的に業務に取り組むことが難しい状況でした。
しかし、キャリア開発では従業員自身が望むキャリアに対して企業がサポートをするため、従業員も意欲的に能力開発や業務に取り組めるようになります。
3-3. 業績アップを目指せる
キャリア開発が成功すると、業績アップを目指せることも企業にとって大きなメリットです。
キャリア開発によって確保・育成した人材は、自身のキャリアのために開発した能力を積極的に業務に活用します。
結果として、自然に業務が効率化され、業績の向上が見込まれるでしょう。
主体的に業務に取り組む従業員が増えれば、周りも影響を受けて組織全体が活性化する可能性も高まります。
4. キャリア開発の具体的な方法

キャリア開発の具体的な方法には、上司との定期的な面談実施(1on1ミーティング)や、研修サービスの提供など、さまざまなものが挙げられます。
令和4年度に厚生労働省が実施した「能力開発基本調査」によると、次のような方法が企業でのキャリア開発として実施されています。
| 取り組み内容 | 実施した企業の割合 |
| 上司による定期的な面談の実施(1on1ミーティング等) | 66.0% |
| 職務の遂行に必要なスキル・知識等に関する情報提供 | 51.4% |
| 自己啓発に対する支援 | 46.7% |
| 人材育成に関する基本的方針の策定 | 37.0% |
| 経営者や管理職から主体的なキャリア形成の重要性を発信 | 30.0% |
| 労働者の主体的な取組に対する人事考課における考慮 | 26.4% |
| 社内公募制等の労働者の意向を重視した人員配置 | 19.1% |
| 労働者の意向や課題に応じて個別最適化したOFF-JTの実施 | 18.4% |
| 社内兼務制度の導入・実施 | 15.3% |
| 兼業・副業の推進・容認 | 15.3% |
| キャリアコンサルティングの実施 | 11.9% |
| 人材育成に関するPDCAのための労働者に対する調査 | 9.5% |
| その他の取組 | 4.9% |
上記のような方法を参考にしつつ、自社の体制や従業員の要望にマッチしたキャリア開発をおこないましょう。
ここでは以下の具体的なキャリア開発手法について解説します。
4-1. 1on1
1on1(ワンオンワン)ミーティングは、上司と部下が定期的におこなう個別面談です。上司と部下の対話を通じて、部下の成長課題に焦点を当て、目標設定やフィードバック、キャリアに関する相談などを進めます。
1on1ミーティングを実施することで、個別のニーズに合わせたきめ細やかなサポートが可能となり、部下のエンゲージメントや自律性を高める効果が期待できます。
4-2. 研修
業務に必要なスキルや知識を習得させるための研修プログラムも、キャリア開発の基盤となります。階層別、職種別、あるいは特定のテーマに特化した多様な形式の研修があり、体系的な知識やスキルの習得を促し、組織全体のパフォーマンス向上に貢献します。研修実施にあたっては、一方的な座学だけでなく、ワークショップやOJT(On-the-Job Training)など、実践的な内容を取り入れることで、学習効果をさらに高めることができるでしょう。
4-3. キャリア面談
人事部門や専門のキャリアコンサルタントが従業員とキャリアについて深く話し合う場がキャリア面談です。キャリア面談では、現状のキャリアプランの確認、将来の目標設定、必要なスキルの洗い出しなどがおこなわれます。
キャリア面談では、企業側の都合を押し付けるのではなく、従業員の希望や適性を踏まえた対話を通じて、自律的なキャリア形成を支援する姿勢が求められます。
4-4. 自己啓発のサポート
自己啓発のサポートとは、従業員が自ら学び、成長しようとする意欲を会社が支援する取り組みです。具体的には資格取得支援、通信教育費用補助、書籍購入費補助、学習時間の確保などが含まれます。
従業員の学習意欲を刺激し、主体的なキャリア形成を促すだけでなく、企業にとっては従業員のスキルアップが自社の競争力強化に直接つながるというメリットがあります。
4-5. 副業や兼業の許可
従業員のキャリア開発に有効なのが、副業や兼業の許可です。企業が副業や兼業を許可すれば、従業員は社外で新たなスキルを習得できるため、経自身の興味関心を深め、市場価値を高める機会を得られます。
副業や兼業で得た経験を自社の業務に還元すれば、新たなキャリアにつながります。
4-6. リスキリングのサポート
従業員が新しいスキルや知識を習得し、再教育を受けることを支援するリスキリングのサポートも、キャリア開発の手段です。
特にAIやデータサイエンス、デジタルマーケティングなど、将来的に需要が高まる分野を対象としたリスキリングは自社の企業のDX推進や新規事業創出につながります。
5. キャリア開発に活用できるツール

キャリア開発に活用できるツールは主に次のとおりです。
- ジョブ・カード
- キャリアアンカー
- 外部講師を招いた人材開発プログラム
5-1. ジョブ・カード
厚生労働省が提供するジョブ・カードは、個人の職務経歴や学習成果、キャリアプランなどを記録し、自己理解を深めるためのツールです。
従業員にキャリア面談の事前準備としてジョブ・カードへの記入を促すことで、彼らが自身の強みや弱み、そして将来の興味関心などを整理するきっかけが生まれます。
5-2. キャリアアンカー
組織心理学者のエドガー・シャインが提唱した概念がキャリアアンカーです。具体的にキャリアアンカーとは個人がキャリアを選択する際に最も重要視する価値観や動機を指します。
キャリア面談や1on1の場でキャリアアンカーの概念を紹介し、従業員自身の核となる価値観を認識する手助けをすれば、より満足度の高いキャリアパスを選択できるよう支援できます。
5-3. 外部講師を招いた人材開発プログラム
多様な視点を取り入れたい場合に有効なのが、外部講師を招いた人材開発プログラムです。
例えば経営者、コンサルタント、大学教授などを外部から招き、講演やワークショップを実施します。
外部講師を招いた人材開発プログラムでは、リーダーシップ開発、イノベーション創出、メンタルヘルス対策など、特定のテーマに特化した質の高いプログラムを提供し、従業員の学びを深めることができます。
6. キャリア開発を実施する際の注意点

キャリア開発を実施する際の注意点として、次の三つが挙げられます。
- 従業員主体でおこなうこと
- 企業と従業員間の信頼関係を構築すること
- 人事制度や働き方を見直して環境を整えること
6-1. 従業員主体でおこなうこと
従業員が主体でおこなうことは、キャリア開発において必須と考えましょう。
従業員がキャリア開発に対して「会社の指示でしかたなくおこなっているもの」との認識をもつと、キャリア開発のメリットが発揮されないからです。
従業員の希望に合わせた能力開発を企業が支援するとのスタンスを崩さずに、キャリア開発をおこないましょう。
6-2. 企業と従業員間の信頼関係を構築すること
企業と従業員間での信頼関係を構築することもキャリア開発においては重要です。
信頼関係ができていないと、従業員はキャリア開発に対して前向きになれません。
さらに、キャリア開発に成功した場合、新しく身につけた能力でよりよい条件の企業に転職する可能性があります。
キャリア開発の前に、自社に対して従業員が高いロイヤリティをもってもらえるよう、経営陣と従業員の関係性を見直しましょう。
6-3. 人事制度や働き方を見直して環境を整えること
人事制度や働き方を見直して環境を整えることも、キャリア開発の注意点として考えられます。
キャリア開発をおこなおうとしても、人事制度が整っていなければ従業員の志向にあわせた人事異動ができません。
また、過度な残業が続くような状況では、目の前の仕事をこなすのに精一杯でキャリアを考える精神的・時間的余裕がないことも多いでしょう。
このような状況にならないために、キャリア開発の前に人事制度や働き方を見直し、効率的にキャリア開発がおこなえる環境を整えることが必要です。
7. キャリア開発で組織を活性化しよう

キャリア開発とは、従業員の希望に合わせたキャリア形成や能力開発を企業が支援する取り組みです。
優秀な人材確保や従業員の意欲向上、業績アップを目指せるなどのメリットがあり、企業においても重要性が増しているでしょう。
あくまで従業員が主体であるとのスタンスを崩さずに、企業と従業員の信頼関係の中でおこなうことで、キャリア開発はより大きな効力を発揮します。
人事制度や働き方の改革と同時にキャリア開発も実施し、組織を活性化させましょう。
企業価値を持続的に向上させるため、いま経営者はじめ多くの企業から注目されている「人的資本経営」。
今後より一層、人的資本への投資が必要になることが想定される一方で、「そもそもなぜ人的資本経営が注目されているのか、その背景が知りたい」「人的資本投資でどんな効果が得られるのか知りたい」という方もいらっしゃるのではないでしょうか。
そのような方に向けて、当サイトでは「人的資本経営はなぜ経営者から注目を集めるのか?」というテーマで、人的資本経営が注目を集める理由を解説した資料を無料配布しています。
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