企業年金と厚生年金の違いは?種類・受け取り方法・期間を解説
更新日: 2025.8.18 公開日: 2025.2.5 jinjer Blog 編集部

「企業年金と厚生年金の違いが知りたい」
「企業年金の種類は?」
「企業年金はいつまで支給する?」
企業年金や厚生年金について、上記の疑問をもつ人事担当者もいるのではないでしょうか。
企業年金と厚生年金は、年金の出どころが違います。企業年金は多様性があるため、事前に制度を把握しておくのが大切です。
本記事では、企業年金と厚生年金の違いや企業年金の種類と受け取り方、受取期間などを解説します。
目次
労務担当者の実務の中で、給与計算は出勤簿を基に正確な計算が求められる一方で、Excelからの手入力や別システムからのデータ共有の際、毎月のミスや抜け漏れが発生しやすい業務です。
さらに、昇格や人事異動に伴う給与体系の変更や、給与計算に関連する法令改正があった場合、更新すべき情報も多く、管理方法とメンテナンスにお困りの方もいらっしゃるのではないでしょうか。
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1. 企業年金と厚生年金の違い


企業年金と厚生年金が違う点は、年金の出どころと、支給の義務があるかどうかです。
厚生年金が公的機関から支払われる一方で、企業年金は従業員の属する企業、もしくはその関連団体から支払われます。
また、厚生年金は対象事業所の会社員や公務員に対して支払いの義務が生じますが、企業年金には必ずしも支払いの義務はありません。
年金は、3階建ての建物に見立てられることがあります。それぞれの内容は以下のとおりです。
| 建物の階数 | 年金の種類 | 概要 |
| 1階 | 国民年金 | 20歳から60歳未満までの国内在住者に加入が義務付けられる公的年金 |
| 2階 | 厚生年金 | 社会保険適用事業所に所属する70歳未満の会社員、もしくは公務員が加入する年金 |
| 3階 | 企業年金 | 各企業が任意で設定する私的年金 |
建物の下の階になるほど国民全体に影響し、上の階ほど限定的な範囲で適用される年金制度になっています。
企業年金はもともとは退職金として支給されていました。かつては定年退職する従業員に一括で退職金を支給していましたが、やがて分割して支給する企業が出はじめ、企業年金とよばれるようになった経緯があります。
退職金であっても企業年金であっても、退職後の従業員の暮らしを支える大切な資金源であることに変わりはありません。
2. 企業年金と厚生年金は両方もらえる


企業年金と厚生年金は支給開始の条件を満たせば、どちらも支給されます。
企業年金と厚生年金は、原資が異なるまったく別の年金制度であるため、片方を受け取ったら片方の資格が喪失するということもありません。
ただし、年金ではなく退職金(一時金)の形で企業年金を支給する企業や、年金と一時金を組み合わせて支給する企業もあります。勤続年数によっては年金形式で受け取れず、一時金のみの扱いになるなど、企業年金の仕様は多様です。
法律による制度内容の定めもないため、まずは自社の企業年金制度がどのような内容なのか、十分に理解しておく必要があります。
3. 企業年金制度がない会社もある


多様性のある企業年金ですが、なかには企業年金制度自体を導入していない会社もあります。
企業年金はあくまで私的年金制度のため、長年会社勤めをしたからといって厚生年金のような支給の義務は発生しません。年金の形だけでなく、一時金の形での支給もない企業もあります。
企業年金制度は企業の負担が大きくなる制度であるため、資金力のない小規模な企業ほど、企業の私的年金制度を取り入れていないのが実情です。
人事担当者は、新規採用時や従業員から質問があった際には、自社の企業年金制度について正確に説明できなければなりません。まずは自社に企業年金制度があるのか、あるとしたらどのような制度なのか、十分に理解しておきましょう。
4. 企業年金の3つの種類


企業年金の種類は、以下の3つに大別されます。
- 【確定給付企業年金(DB)】支給額固定の企業年金
- 【確定拠出年金(DC)】掛け金固定の企業年金
- 【厚生年金基金】厚生年金を代行する支給額固定制の企業年金
現在実質的に稼働しているのは、DBとDCの2つです。それぞれの具体的な内容について解説します。
4-1. 【確定給付企業年金(DB)】支給額固定の企業年金
確定給付企業年金は、年金額をあらかじめ定めておき、退職後にその額を支払っていく企業年金です。
確定給付企業年金は以下の2つに大別されます。
| 種類 | 概要 |
| 基金型 | ・従業員が所属する企業とは別の法人である企業年金基金を設立
・企業側は企業年金基金に掛け金を支払い、運営や給付を任せる ・年金規約は従業員と基金の間で設定 ・後述する厚生年金基金と類似するが、公的な厚生年金の運営を代行しない点が大きく異なる |
| 規約型 | ・従業員と直接取り決めた年金規程に基づき、企業が年金資産を管理・運用
・保険会社や信託銀行と契約のうえ資金運用と給付を任せる |
確定給付企業年金は、給付される年金額が事前にわかっているのが大きな特徴です。従業員にとっては安定して年金を受給できるものの、企業側にとっては、万が一積立金が不足した場合に補填が必要なリスクがあります。
ただし、掛金は全額損金へ算入できるため、税制上のメリットを受けることができます。
確定給付企業年金は運営コストがかかることから、主に大企業で取り入れる傾向が見られます。しかし近年では、企業独自ではなく、複数の企業が集まって運営する総合型が普及してきたことから、中小企業の参入も可能です。
4-2. 【確定拠出年金(DC)】掛け金固定の企業年金
確定拠出年金は、企業側が支払う掛け金を事前に定めておく企業年金です。従業員に給付される実際の年金額は運用次第で変動します。
従業員にとっては、運用益が伸び悩んだ場合に年金額が減額しますが、反対に運用が順調であれば年金額が増額するのが特徴です。
企業にとっては、収益不足を補填する必要がないため、負担を抑えて運用がおこなえます。確定給付企業年金と同じく、企業が拠出した掛け金は全額損金へ算入可能です。
確定拠出年金は企業が導入する「企業型DC」のほか、従業員が個人的に加入する「個人型(iDeCo)」も存在します。
4-3. 【厚生年金基金】厚生年金を代行する支給額固定制の企業年金
厚生年金基金はDB同様、支給額固定制の企業年金です。厚労大臣の認可で設立した別法人が、年金の運営管理をおこなう特徴があります。
前出の基金型DBと似ていますが、厚生年金基金は老齢厚生年金の一部を代行で給付するのが大きな特徴です。これまで厚生年金に企業年金の増額分を合算して支給してきました。
ただし、厚生年金基金は近年の不況とあいまって運用が立ちいかなくなり、現在では新規の設立を受け付けていません。実質的に終了し、DBへの移行が進められているのが現状です。
5. 企業年金の受け取り方は2種類


企業年金を受け取る方法は、年金と一時金の2種類です。それぞれの受け取り方の違いやメリットなどを解説していきます。
5-1. 年金として受け取る場合
企業年金を年金として受け取る場合は、定められている年金の支給回数に基づいて一定額を支給していく形になります。企業年金として受け取れる金額を分割で支給していくと考えましょう。
全額を年金として支給していくケースのほか、一部を後述する一時金で支給し、残りを年金として支給するケースもあります。
基本的には年金として受け取った方が受け取れる総額は多くなる傾向です。しかし、年金として受け取る場合は雑所得として扱われることになり、税金や社会保険料が高くなることがあります。
5-2. 一時金として受け取る場合
一時金は、退職金として企業年金を一括で支給する方法です。まとまった金額を支給することになるため、企業の負担が大きくなります。
従業員側の視点では、年金として受け取る場合よりも受け取れる総額は低くなります。しかし、退職金は退職所得として扱われ、控除を受けられるため税負担は軽くなります。
企業によってはどちらの受け取り方に限定されているケースもありますが、従業員が自由に選べることもあります。その場合はそれぞれのメリットとデメリットを説明できるようにしておきましょう。
6. 企業年金をもらえる期間


企業年金は、基本的には資格を喪失するまで支払い続けられます。企業年金の資格喪失とは、規約で定められた支給期間を過ぎた場合や、死亡した場合です。
資格を喪失するまでの期間は企業によって異なり、10年程度の有期年金の場合もあれば、公的年金のように終身年金の場合もあります。支給期間は、従業員が選べるのが一般的です。
企業年金の受給者が亡くなった場合には、規程の保証期間までの支払いとなる場合や、支払いがまったくない場合があります。
こうした部分にも法的な定めはないため、企業によって大きく異なる部分です。受け取り期間は従業員にとって非常に重要な部分であるため、誤解を招かないように案内できるようにしましょう。
7. 企業年金の支給額


企業年金の支給額は、企業や学歴、年齢、勤務年数、退職理由などによって千差万別であり、一概にいくらとはいえません。
ここでは、参考までに厚生労働省が発表しているデータを基に、企業年金や一時金の平均値を紹介します。
大学・大学院卒の従業員の場合、勤続年数による企業年金の平均値は以下のとおりです。
| 勤続年数 | 企業年金のみ実施する企業 | 退職一時金のみ実施する企業 | 制度を併用して実施する企業 | 制度全体 |
| 20~24年 | 1,224万円 | 892万円 | 1,490万円 | 1,021万円 |
| 25~29年 | 1,586万円 | 1,378万円 | 2,001万円 | 1,559万円 |
| 30~34年 | 1,598万円 | 1,642万円 | 2,352万円 | 1,891万円 |
| 35年以上 | 1,909万円 | 1,822万円 | 2,283万円 | 2,037万円 |
| 計 | 1,801万円 | 1,623万円 | 2,261万円 | 1,896万円 |
※勤続20年以上かつ45歳以上で定年退職した場合の支給額
上記はあくまで参考値ですが、以下のような傾向が読み取れます。
- 一時金として支給される額より、企業年金の方が支給額が増加する
- 企業年金のみの支給額より、一時金と併用する方が支給額が増加する
なお、退職理由も企業年金や一時金の額に影響するといわれています。自己都合で退職する場合には、定年退職時の8割程度の支給額にとどまるのが一般的です。
参考:令和6年就労条件総合調査 結果の概況令和6年就労条件総合調査概況|厚生労働省
8. 自社に合わせた企業年金制度で従業員の退職後を支えよう


企業年金と厚生年金が違う点は、年金の出どころと支給の義務の有無です。
現在の企業年金は、確定給付企業年金、および確定拠出年金の2種類に大別され、厚生年金基金は終息に向かっています。
企業年金は、企業側に支給の義務はありません。しかし、退職後の従業員の生活を支える大きな意義があります。
自社の事情に合わせた企業年金制度の導入を検討し、従業員の老後の生活をサポートしましょう。



労務担当者の実務の中で、給与計算は出勤簿を基に正確な計算が求められる一方で、Excelからの手入力や別システムからのデータ共有の際、毎月のミスや抜け漏れが発生しやすい業務です。
さらに、昇格や人事異動に伴う給与体系の変更や、給与計算に関連する法令改正があった場合、更新すべき情報も多く、管理方法とメンテナンスにお困りの方もいらっしゃるのではないでしょうか。
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