降格人事とは?実施するときのポイントや注意点を詳しく解説
更新日: 2023.9.1
公開日: 2023.5.28
OHSUGI
降格人事は、問題がある社員や能力不足が明らかな社員に対し、おこなわれる処分です。マイナスの側面が強いため、実施する際は十分な準備をしなくてはいけません。
社員に対しての説明や論理的な根拠が不十分な場合は、トラブルになる恐れがあります。
本記事では降格人事の基本から、実施する前に知っておきたいポイントを解説します。
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1. 降格人事とは?
降格人事は、組織内の役職や職務上の資格を降格させることを指します。部長を課長に引き下げる、役職についていた人を平社員にするなど、降格の幅はさまざまです。
また、降格人事には「人事降格」と「懲戒処分」の2種類があり、処分内容も異なります。
1-1. 人事降格
会社が持っている権利を行使し、労働契約に基づいた降格をおこなうのが人事降格です。就業規則違反はないものの、能力不足や職務怠慢などがみられる場合に適用できます。
人事降格には「降職」と「降格」があり、降職では職位(部長や課長など)は下がるものの、必ずしも減給が伴うわけではありません。
降格は職能資格や給与等級を引き下げるものです。そのため、ほとんどの場合減給が伴います。
1-2. 懲戒処分
懲戒処分は社内規則の重大な違反がみられた社員に対し、会社が懲戒権を使って降格させる方法です。ハラスメントや会社の名誉を傷つける行為などが該当し、制裁的な意味合いが強いです。
懲戒処分によって降格する場合は、懲戒処分の規定があることや合理性が示せることなどの条件を満たす必要があります。
1-3. 降格人事の処分内容
何らかの理由によって降格人事がおこなわれた場合の処分内容は、以下の6つに分類されます。
戒告・けん責
戒告は降格人事の処分内容の中で最も軽い処分で、文書や口頭による注意のみに留まります。
けん責は注意に加えて始末書を提出させて戒める方法です。この場合も職位の変化や減給はないため、軽い処分に分類されます。
減給
減給は給与の一部を差し引き、減額する処分です。減給できる限度は労働基準法第九十一条で賃金の総額の10分の1までに定められているため、無制限に減給ができるわけではありません。[注1]
出向・異動
出向や異動も降格人事の処分のひとつです。減給はせずに出向や異動のみの処分で完了するケースもみられます。
出勤停止
労働契約は継続した状態で、一定期間の出勤を禁止する処分が出勤停止です。出勤停止期間中は賃金の支払いも発生しなくなります。
法律による出勤禁止期間の定めはありません。しかし、一般的には一週間~1カ月の間で命じることが多いです。
降職・降格
降職や降格も選ばれることが多い処分です。降職の幅や降格による減給額は、降格人事をする理由にもよりますが、不当性がないように注意しなければいけません。
懲戒解雇
懲戒解雇は懲戒処分で選ばれる処分で、最も重い処分です。会社側が一方的に労働契約を破棄し、解雇予告はおこなわれません。
また、退職金が支払われないこともあります。
2. 降格人事をおこなう主な理由
降格人事は、本人に問題行動があったか、能力やスキルが足りていない場合に主におこなわれます。具体的にどのような状態が降格人事の理由になりやすいのか、知っておきましょう。
2-1. 問題行動があった
コンプライアンス違反があった場合や、勤務態度に問題があった場合などが該当します。コンプライアンス違反は、パワーハラスメントやセクシャルハラスメントをはじめとした、社会的倫理観や規範に違反している行動や、不正や不平等を意図的に作り上げる行為です。
勤務態度の問題は、遅刻や欠勤の常習化や、備品を盗んだり横領をしたりする犯罪行為も含まれます。
社員のコンプライアンス違反や問題行動は、会社の名誉を傷つけ信用問題に関わる事案に発展する恐れもあるものです。問題行動の度合いにもよりますが、明確に制裁を加える必要があるため、わかりやすい降格人事をおこないます。
2-2. 能力が不足している
能力やスキルが不足していると判断できる場合も、降格人事の対象になります。目標に対し、実際の成績が大幅に下回っている場合や、明らかに成績が低迷している場合などは能力不足と判断されることが多いです。
管理職は自分の成績だけでなく、管轄している部署の業績や生産性が低迷すると、管理やマネジメントができていないと判断され、降格になることがあります。
また、配置転換によって部署が変わった場合も、降格することがあります。このケースの降格には処罰の意味合いはありません。
違う部署の同じポジションについてしまうと、最初から求められるスキルが多いことから、下位の職位からスタートさせてスキルアップすることが目的です。
3. 降格人事を実施するときのポイント
降格人事には社員に不利益が生じるケースが大半で、トラブルになりやすいです。実施する際には以下のポイントを押さえて、事前準備や通達をおこなうようにしましょう。
3-1. 降格をする前に指導をする
降格人事をする際は、段階的に注意や指導をしましょう。とくに能力不足や軽度の問題行動である場合は、本人への指導によって改善できる可能性があります。
トラブルになりやすい降格人事に至る前に、できる限りの手を尽くすことが大切です。
また、最終的に降格人事をすることになった場合も、これまでの指導した履歴があれば正当性が認められやすくなります。
3-2. 降格する根拠を集めておく
給与減給や出勤停止、懲戒解雇など、社員に不利益が発生する降格人事は、労使間でのトラブルが大きくなりやすいです。降格人事の処分が妥当であることを証明できるように、行動の履歴や事実が確認できる根拠を収集しておきましょう。
書面や画像、映像や音声データなど、どのようなものでも降格人事に至った経緯に関連するものは残しておくと安心です。
3-3. 伝える場所やタイミングを見計らう
降格を伝えられた社員は大きな衝撃を受け、不満を感じます。トラブルを防ぐにはそれらを少しでも軽減しなくてはいけません。
丁寧な説明をする十分な時間と、プライバシーを守れる空間を用意して伝えるようにしましょう。
また、伝えるときは、降格されても終わりではなく、復活や別のキャリアプランがあることを示唆し、自暴自棄にならないようにケアすることも大切です。
4. 降格人事を実施するときの注意点
降格人事は条件によっては認められない場合や、トラブルに発展するケースがあります。決定する前に以下の点に十分に注意しましょう。
4-1. 法律を遵守して実施する
降格人事は会社が持つ権利を行使しておこなえますが、労働基準法を守って実施しなくてはいけません。給与減給の限度が設定されていることや、就業規則の根拠や合理的な理由が必要なことなど、さまざまな条件が設けられています。
くれぐれも職権濫用にならないように注意しましょう。
4-2. モチベーションの低下をフォローする
降格人事で処分が決定した人は、ほとんどの場合モチベーションが低下します。中には退職を考える人も出てくるでしょう。
そのような社員がいると、周囲の社員が気を使い、パフォーマンスが低下する恐れがあります。降格された社員の動向には注意し、積極的に悩みや不安に思うことを聞く機会を作るようにしましょう。
5. 降格人事をする際は段階を踏んで通達しフォローも徹底しよう
降格人事は処分的な意味を持たないケースもありますが、多くの場合は減給や降職、異動などの処分を伴います。そのため、通達された社員が不満を持つケースも多々あり、トラブルに発展する恐れがあります。
降格人事をする際は必ず注意や指導をおこない、段階を経てから丁寧に通達しましょう。
多くの人が動揺するため、フォローも忘れてはいけません。なぜ処分に至ったのかを説明し、頑張り次第で取り戻せる余地があることを伝え、モチベーションの低下や不信感を招かないようにすることが大切です。
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