障害者雇用促進法をわかりやすく解説!企業の義務や直近の改正点とは
更新日: 2025.4.21
公開日: 2025.2.12
jinjer Blog 編集部
「障害者雇用促進法の内容について詳しく知りたい」
「自社は障害者雇用促進法の対象になる?」
「障害者雇用促進法で気を付けるべき点は?」
障害者雇用促進法について、上記の疑問をもつ人事労務の担当者もいるのではないでしょうか。
障害者雇用促進法とは、障害のある方の雇用を安定させる法律です。要件にあてはまる企業では、決められた人数だけ障害者を雇用する義務が生じるため、正確に制度を把握しておく必要があります。
本記事では、障害者雇用促進法の内容や、障害者を雇用すべき対象の企業、対象となる障害者について解説します。障害者雇用促進法を守らなかった場合のペナルティや、対応する際のポイントもあわせて解説するので、ぜひ最後までご覧ください。
従業員の採用が決定した際は雇用契約を締結し、法令で定められた事項を明示した上で労働条件通知書を発行する必要があります。しかし、会社によっては独自の試用期間があったり、新たに従業員を採用せずとも既存の雇用契約を更新・変更する必要が出てくるタイミングもあるでしょう。
そのような際に、当サイトでは雇用契約に関して「よくある疑問」を簡単な基礎から応用編まで、まとめて一挙に解説した資料を無料配布しています。
資料では、一問一答形式で勤務形態ごとの契約書における注意点や、試用期間の正しい取り扱い方、さらには契約違反や違法性が疑われる契約トラブルへの対処法をまとめて解説しています。雇用契約に関して抱えている課題に対して、すぐに解決できる資料がほしいという方は、ぜひこちらからダウンロードしてお役立てください。

1. 障害者雇用促進法とは
障害者雇用促進法は、障害者が安定的に働き、生活の安定を図れるようにするため、企業の規模に応じて雇用すべき障害者の人数を法律で定めています。
1-1. 障害者雇用促進法が制定された目的
障害者雇用促進法が制定された背景には、全ての国民が障害の有無にかかわらず個人として尊重し合う共生社会を実現するという理念があります。
この法律は、職業生活においても障害者が経済活動に参加し、自身の能力を発揮する機会を確保することが目的です。
2. 障害者雇用促進法で決められた内容
障害者雇用促進法では、障害者の雇用についてルールが定められています。厚生労働省のページをもとに、それぞれのルールをわかりやすく解説します。
参考:事業主の方へ|厚生労働省
2-1. 障害者雇用率制度
従業員数が一定数以上の規模の事業主には、身体障害者や知的障害者、精神障害者などを雇用する義務が課せられています。この雇用率は法律で定められており、企業はその割合を達成する必要があります。
例えば、従業員が40名の場合、少なくとも1名の障害者を雇用しなければなりません。
(一般事業主の雇用義務等)
第四十三条 事業主(中略)は、厚生労働省令で定める雇用関係の変動がある場合には、その雇用する対象障害者である労働者の数が、その雇用する労働者の数に障害者雇用率を乗じて得た数(中略)以上であるようにしなければならない。
2-2. 障害者の差別禁止及び合理的配慮の提供義務
事業主には、障害者の雇用に関して不当な差別を禁止し、均等な機会を提供する義務があります。例えば、障害を理由に募集や採用の機会を制限したり、賃金や待遇で不当な差別をおこなったりしてはいけません。
また、事業主は障害者に対し合理的な配慮を行う必要があります。具体的には、障害者の特性に応じた措置を講じ、平等な機会を確保することが求められます。加えて、障害者が能力を最大限に発揮できるよう、必要に応じて施設の整備やサポート役の配置をおこなう責任があります。
ただし、これらの措置が事業主に過重な負担を強いる場合は、その限りではありません。
2-3. 障害者職業生活相談員の選任
障害者を5人以上雇用している事業所には、必ず「障害者職業生活相談員」を選任する義務があります。この相談員は、障害のある従業員の職業生活に関する相談や指導をおこないます。
企業には、厚生労働省の定める資格認定講習を受講した従業員などから相談員を選任し、ハローワークに対して選任報告書を提出する必要があります。
2-4. 障害者雇用に関する届出
従業員が40人以上の事業主は、毎年6月1日時点の障害者の雇用状況をハローワークに報告する義務があります。
報告書は、事業主の基本情報をはじめ、雇用状況や事業所別の内訳、障害者雇用推進者などについて記載します。提出期限は7月15日までです。
報告書の提供は、電子申請も利用できます。報告書の作成は、プライバシーに配慮したうえでおこなうようにしましょう。
また、事業主が障害者を解雇しようとする際にも、ハローワークへの届出が必要です。
2-5. 障害者の虐待防止
障害者を雇用する事業主には、障害者の虐待防止に関する措置を講じることが求められます。
具体的には、障害者の人権や特性に配慮した接し方を学ぶ研修を実施したり、障害者やその家族からの苦情処理体制の整備したりなどです。
3. 障害者雇用促進法の対象となる企業の条件
障害者雇用促進法では、障害者を雇用すべき対象企業と人数について、法定雇用率を用いて定めています。
2025年1月時点、民間企業の法定雇用率は2.5%です。つまり、常時雇用者が40人の民間企業では、1名の障害者を雇用する必要があるということです。
常時雇用者が39人以下の企業では、障害者を雇用する義務は発生しません。ただし、2026年7月からは雇用率が引き上げられ、37.5人以上の企業が対象となることが決定している点に注意しましょう。また、80人規模の企業であれば2人、120人規模であれば3人のように、企業規模に応じて雇うべき障害者の人数は増えていきます。
ここでいう常時雇用者とは、1年以上継続的に雇用している、もしくは雇用が見込まれる従業員です。正社員以外にも、パートやアルバイトの雇用形態で働く従業員も対象となります。
雇用者の人数は、週の所定労働時間が20時間以上30時間未満の労働者については0.5人とカウントする決まりです。1人とカウントできるのは、所定労働時間が30時間以上の従業員であり、20時間未満の従業員はカウントできません。
なお障害者雇用促進法は、公共団体や地方の教育委員会を含めたすべての事業主に対して適用され、民間企業とは別の法定雇用率が設定されています。
参考:障害者の法定雇用率引上げと支援策の強化について|厚生労働省
4. 障害者雇用促進法の対象者
障害者雇用促進法において、雇用すべき対象の障害者と設定されているのは、基本的にはなんらかの障害者手帳をもつ人です。既定の障害者手帳をもたない人を雇用しても、障害者の人数にはカウントできないため注意しましょう。
障害者雇用促進法の障害者として、具体的には以下の人が該当します。
- 身体障害者手帳をもつ身体障害者(重度の場合を含む)
- 各自治体が発行する療養手帳や、知的障害者と判定する判定書をもつ知的障害者(重度の場合を含む)
- 精神障害者保健福祉手帳をもつ精神・発達障害者のうち、就労ができる程度に症状が安定している人
障害の重さや週の所定労働時間により、障害者の人数のカウント方法に違いが生じます。具体的なカウント方法は、以下の表のとおりです。
週の所定労働時間 | 障害の重さ | カウント人数 |
30時間以上 | 一般 | 1人 |
重度(身体障害者・知的障害者) | 2人 | |
20時間以上30時間未満 | 一般 | 0.5人 |
重度(身体障害者・知的障害者) | 1人 | |
10時間以上20時間未満 | 一般(精神障害者のみ対象) | 0.5人 |
重度(身体障害者・知的障害者) | 0.5人 |
障害の重さは、身体障害者については1級か2級、知的障害者についてはA(自治体によっては1度もしくは2度)に該当する人を重度とします。
精神障害者については、週の所定労働時間が20時間以上30時間未満の場合、以下の要件を満たす場合は1人、それ以外は0.5人の勘定です。
- 新規雇い入れから3年以内であるか、精神障害者保健福祉手帳の取得から3年以内
- 2023年3月31日までに雇用されており、かつ精神障害者保険福祉手帳を所持している
一口に障害者といっても、重症度や勤務時間によって人数の扱いが異なります。障害者の雇用時には、十分留意しましょう。
5. 障害者雇用促進法の改正点
障害者雇用促進法は頻繁に見直される傾向があるため、担当者は最新の情報に注意を払わなくてはなりません。2024~2026年に変更された、または、変更の予定があるポイントを解説します。
5-1. 法定雇用率が引き上げられる(2026年7月~)
2026年7月より、法定雇用率が2.5%から2.7%に引き上げられます。
これまで、従業員が常に雇用されている人数が40人以上の企業は障がい者の雇用を義務付けられていましたが、この改正により、2026年7月以降は37.5人以上の企業が対象となります。
5-2. 除外率が引き下げられる(2025年4月〜)
除外率制度は、特定の業種において障がい者の就業が困難と認められる際に適用される仕組みです。この制度により、企業は雇用労働者数を計算する際に除外率に相当する労働者数を控除することができ、障がい者の雇用義務が軽減されます。
しかし、近年のノーマライゼーションの理念に基づき、この制度は段階的に廃止される方針です。2025年4月からは、障害者雇用促進法の改正によって、各除外率設定業種で10ポイントずつ引き下げが実施されます。2023年度の時点で除外率が10%以下の業種は、2025年4月以降、除外率制度の対象外となりました。
5-3. 短時間で働く重度身体障害者、重度知的障害者および精神障害者も実雇用率に算定できるようになった(2024年4月~)
2024年4月から、新たに短時間で働く重度身体障害者、重度知的障害者および精神障害者が実雇用率の算定対象に加わりました。
これまで、週の所定労働時間が10~20時間未満の障害者は法定雇用率の計算から除外されていましたが、改正によってこれらの方々も算入できるようになります。 この場合、1人をもって0.5人とカウントする点に注意しましょう。
5-4. 合理的配慮が義務化された(2024年4月~)
2021年に障害者差別解消法が改正され、合理的配慮が義務化されました。この法律は2024年4月から施行され、現在では、この改正障害者差別解消法と障害者雇用促進法によって、障害者の合理的配慮の提供が企業に義務付けられています。
合理的配慮の提供とは、具体的に
- 行政機関等と事業者が、
- その事務・事業を行うに当たり、
- 個々の場面で、障害者から「社会的なバリアを取り除いてほしい」旨の意思の表明があった場合に
- その実施に伴う負担が過重でないときに
- 社会的なバリアを取り除くために必要かつ合理的な配慮を講ずること
とされています。
6. 障害者雇用促進法の違反で生じる3つの問題点
障害者雇用促進法に違反した場合には、以下のような3つの問題が生じます。
- 障害者雇用納付金を納める必要がある
- 改善指導を受ける
- 企業名が公表され社会的信用を失う
それぞれの内容について、具体的に説明していきます。
6-1. 障害者雇用納付金を納める必要がある
企業規模に応じて、障害者雇用納付金を納める必要がある点に配慮しましょう。常時雇用の従業員が100人以上の企業では、障害者の不足人数1人あたり月々5万円、年間60万円の納付金を納める必要があります。
この納付金は罰金ではありません。障害者を雇用する義務を果たしているか否かでの経済的負担の格差を埋める意図で設けられています。納付金を納めたからといって、障害者雇用に関する違反行為を埋め合わせたことにはならない点には注意しましょう。
6-2. 改善指導を受ける
障害者雇用促進法に違反した場合には、行政からの改善指導を受けます。具体的には、ハローワークから「障害者の雇入れに関する計画」の作成命令が発令され、1月1日から2年間にわたる計画を作成しなければなりません。
指導を受けた企業は計画書を作成するにとどまらず、計画書に沿って粛々と障害者雇用の手はずを整えていく必要があります。
2年間の計画期間を終了した後、以下に該当する場合には、9ヵ月間の特別指導の対象になるため注意しましょう。
- 障害者の雇用不足数が10人以上
- 障害者の実雇用率が、全国平均実雇用率に満たない(最終年の前年6月1日時点のデータ)
この段階では、実質的なペナルティの実施までまだ猶予があります。既定の障害者雇用数を満たせるよう、迅速に対策を練ってください。
6-3. 企業名が公表され社会的信用を失う
違反行為に対し、なかなか改善が見られない場合には、労働局や厚生労働省からの指導を受けます。それでも改善されない場合、最終的には社名が公表されることになるので十分注意しましょう。
社名が公表されれば、社会的責務を果たせていない企業として露呈します。厚生労働省のホームページにも掲載されるため広く社会に知られることとなり、周囲からの信用を失う事態になりかねません。
これまでコツコツと積み重ねてきた企業努力を無にしないよう、障害者雇用について積極的に取り組みましょう。
7. 障害者雇用促進法に対応する際の3つのポイント
障害者雇用促進法に対応する際のポイントは以下の3つです。
- 社内理解が得られるよう従業員の教育を進める
- 受け入れた障害者を適切にサポートする
- 調整金や助成金を活用する
具体的な内容について解説していきます。
7-1. 社内理解が得られるよう従業員の教育を進める
障害者雇用促進法に対応するには、社内理解が得られるよう従業員の教育を進めましょう。
経営陣や人事担当者が熱心に障害者雇用を進めても、実際に現場で働く従業員の理解と協力がなければうまくいきません。
例えば、従業員の配慮が足りず障害者が働きにくい現場環境になった場合、労力をかけて雇用した障害者がすぐに離職する可能性があります。また、一般社員と障害者の労働内容に差がある場合には適切なフォローがなければ、一般社員が不公平を感じ、不満を募らせる事態にもなりかねません。
社内の受け入れ態勢を整えるとともに、社内研修や会議を実施し、全社の共通認識として障害者雇用に対する知識や理解を深めておきましょう。
7-2. 受け入れた障害者を適切にサポートする
受け入れた障害者に対するサポートも重要です。
障害者はなんらかのハンディキャップを背負っているため、一般の人には思いもよらないところで不便や不安を感じることもあるでしょう。現場任せのまま放置すれば、障害者に多大な負担を強いることになりかねません。
障害者が気軽に相談できるような窓口を設置し、雇用した障害者を継続してサポートできる体制づくりに努めましょう。
7-3. 調整金や助成金を活用する
調整金や助成金の活用も視野に入れましょう。
障害者雇用に積極的に取り組む企業には、雇用の達成状況に応じて調整金や報奨金が支給されます。具体的な支給内容は以下のとおりです。
支給条件 | 支給額 |
常時雇用者が101名以上である企業で、障害者の法定雇用率を超過している場合 | 1人あたり月々2万9,000円の調整金が支給される |
常用雇用労働者が100人以下である中小企業において、障害者の雇用率が4%を超える、もしくは雇用人数が必要人数より6人を超える場合 | 1人あたり2万1,000円の報奨金が支給される |
これらの支給金は、障害者の受け入れ態勢を整える資金として活用可能です。
また、状況に応じて以下のような助成金を受け取れる場合もあります。
助成金の種類 | 管轄 |
障害者の雇い入れなどを支援する助成金 | 都道府県労働局・ハローワーク |
障害者が働き続けられるよう支援する助成金 | 同機構の都道府県支部高齢・障害者業務課 |
障害者雇用の相談援助をおこなう事業者に対する助成金 | 独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構 |
積極的に障害者を迎え入れるのであれば、行政からのサポートを受けられるため、障害者雇用に対して前向きに取り組みましょう。
参考:障害者雇用納付金制度の概要|独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構
参考:事業主の方へ 5.障害者雇用に関する助成金|厚生労働省
8. 障害者雇用促進法を把握し企業運営の健全化に役立てよう
障害者雇用促進法には、障害者に雇用の機会を与え、社会のノーマライゼーションを進める意義があります。
現時点では、40人以上の常時雇用者がいる企業には障害者を雇用する義務があり、2026年7月以降は、37.5人以上の企業で障害者雇用が必須となります。
障害者の雇用を上手に活用することで、経営の多様化や業務の効率化にもつなげることができます。法令を正しく理解し、企業運営の健全化に役立ててください。
従業員の採用が決定した際は雇用契約を締結し、法令で定められた事項を明示した上で労働条件通知書を発行する必要があります。しかし、会社によっては独自の試用期間があったり、新たに従業員を採用せずとも既存の雇用契約を更新・変更する必要が出てくるタイミングもあるでしょう。
そのような際に、当サイトでは雇用契約に関して「よくある疑問」を簡単な基礎から応用編まで、まとめて一挙に解説した資料を無料配布しています。
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