ロクイチ報告とは?法的な義務・対象企業・提出先を解説
更新日: 2025.7.31 公開日: 2025.3.8 jinjer Blog 編集部

「ロクイチ報告の概要や義務について知りたい」
「ロクイチ報告はいつまでに提出するのか知りたい」
上記のようにお悩みの方も多いでしょう。
ロクイチ報告とは、毎年、事業主が国へ書類の提出により実施する、自社の高年齢者や障害者の就業機会の確保や雇用状況に関する報告のことです。
また、条件に該当する事業主には、法律で定められた提出義務があります。
本記事の内容は、ロクイチ報告の概要や義務、対象企業や提出先、障害者雇用状況報告書と高年齢者雇用状況報告書の未提出に対する各罰則の解説です。
そのほかに、実施の注意点や電子申請の可否、いつまでに提出するのかについても解説しているため、ぜひ参考にしてください。
人事労務担当者の実務の中で、従業員情報の管理は入退社をはじめスムーズな情報の回収・更新が求められる一方で、管理する書類が多くミスや抜け漏れが発生しやすい業務です。
さらに、人事異動の履歴や評価・査定結果をはじめ、管理すべき従業員情報は多岐に渡り、管理方法とメンテナンスの工数にお困りの担当者の方もいらっしゃるのではないでしょうか。
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1. ロクイチ報告とは


ロクイチ報告とは、高年齢者や障害者の就業機会の確保や雇用状況について、事業主が厚生労働省に対して毎年おこなう報告のことです。それぞれ「高年齢者雇用状況等報告」「障害者雇用状況報告」と呼ばれます。
ロクイチ報告は、呼び名の由来にもなっている、6月1日時点の状況を報告します。それぞれの概要や報告の目的、違反した場合の罰則などを知っておきましょう。
参考:「令和6年高年齢者及び障害者の雇用状況報告」について|厚生労働省
1-1. 高年齢者雇用状況等報告
高年齢者雇用状況等報告は、高年齢者の雇用に関連する報告書です。
定年や高年齢者の継続雇用制度、創業支援などの措置状況、そのほかの高年齢者の就業を確保する状況について、厚生労働大臣に報告するものです。これは企業に義務付けられているもので、違反した場合は罰則もあります。
高年齢者雇用状況等報告の目的は、高年齢者の雇用確保措置・就業確保措置の実施状況の把握と、実施していない企業に対する指導や助言の実施です。高年齢者の安定した雇用確保や就業機会の確保をするために必要なものだと考えておきましょう。
報告の義務がある企業にはハローワークから報告書用紙が郵送されます。
1-2. 障害者雇用状況報告書
障害者雇用状況報告書は、障害者の雇用状況を報告するためのものです。
障害者雇用促進法により、一定数以上の従業員がいる企業には障害者を雇用することが義務付けられました。その雇用状況を毎年報告するのが「障碍者雇用状況報告書」です。
企業がどれくらいの障害者を雇用しているのかを確認し、雇用促進を実現することが目的です。なお、こちらも報告義務を怠った場合は罰則があります。
1-3. ロクイチ報告の罰則
障害者雇用状況報告書・高年齢者雇用状況報告書の未提出に対する各罰則は、以下のとおりです。
| 高年齢者雇用状況報告書の未提出に対する罰則 | 無し |
| 障害者雇用状況報告書の未提出に対する罰則 | 30万円以下の罰金の対象となる |
障害者雇用状況報告においては、障害者雇用促進法に基づき、報告しない場合だけでなく虚偽の報告をした場合にも罰則の対象となります。
高年齢者雇用状況報告後に必要に応じて実施されるのは、企業に対する公共職業安定所からの勧告や指導です。事業主が勧告や指導に従わない場合や、雇用の改善が進まない場合には、企業名が公表される可能性があることも覚えておきましょう。
参考:障害者の雇用の促進等に関する法律第86条|e-Gov法令検索
2. ロクイチ報告の対象企業


ロクイチ報告の高齢者雇用状況報告書と障害者雇用状況報告書の提出は、すべての企業に義務付けられているわけではありません。義務の対象になる企業の条件をそれぞれ確認していきましょう。
2-1. 高齢者雇用状況報告書の対象企業
高齢者雇用状況報告書の提出が義務付けられているのは、常時雇用する従業員が31人以上の企業です。
常時雇用する従業員には、正社員だけでなく1年以上の雇用継続が見込まれているパートやアルバイト従業員も含まれます。雇用保険や社会保険の加入の有無は問わないため、多くの従業員が含まれることになります。
派遣社員と取締役などの雇用する立場である経営幹部は含まれません。ただし、役員でも雇用形態や業務内容によっては従業員として数えられることがあります。
参考:「令和6年高年齢者及び障害者の雇用状況報告」について|厚生労働省 東京労働局
2-2. 障害者雇用状況報告書の対象企業
障害者雇用状況報告の義務は、常用雇用労働者数から障害者の法定雇用率に応じた労働者数を控除した数が一定数以上の企業に発生します。2024年度の障害者の法定雇用率は2.5%で、従業員数が40人以上の企業に障害者雇用状況報告書の提出義務があります。また、雇用する障害者数が0人の場合も報告義務が生じることを覚えておきましょう。
障害者の法定雇用率は段階的に引き上げられる予定で、2026年には2.7%になり、従業員数が37.5人以上の企業に義務化が広がる見通しです。
また、除外率は引き下げられました。除外率とは、一般的に障害者の就業が困難とされる仕事に従事する業種(除外率設定業種)の事業所に対する、常用労働者数の除外割合のことです。除外率設定業種においては、除外率により障害者の雇用義務が軽減されます。
この除外率引き下げにより、これまで除外率が10%以下であった業種は除外率制度の対象外になっています。
参考:障害者雇用状況報告書の提出義務と提出方法等について|厚生労働省
参考:障害者の法定雇用率引上げと支援策の強化について|厚生労働省
3. ロクイチ報告の提出期限


ロクイチ報告は提出期限を守って提出しなければなりません。対象企業には報告書用紙が郵送されるため、届いた期限を守れるように作成をはじめることが望ましいです。提出期限と、万が一提出期限を守れなかった場合の対応も知っておきましょう。
3-1. ロクイチ報告の提出期限は7月15日
ロクイチ報告における以下の書類の提出期限は、毎年7月15日までです。
- 高年齢者雇用状況報告書
- 障害者雇用状況報告書
毎年5月下旬から6月初旬ごろ、公共職業安定所から上記の書類が、対象企業に郵送で届きます。6月1日時点の雇用人数などを算出し、届いた書類に必要事項を記入して、7月15日までに提出しましょう。
3-2. 提出期限を守れなかった場合
ロクイチ報告のうち、高年齢者雇用状況報告書の提出期限を守れなかったことに対する罰則はありません。障害者雇用状況報告書は、報告をしないと30万円以下の罰則が発生する可能性があります。
提出期限を守れなくて即座に罰則が発生するとは考えにくいですが、期限を守った提出ができるようにしましょう。
なお、ロクイチ報告の提出は企業本社を管轄するハローワークへの持ち込みや郵送に加えて、電子申請も可能になりました。電子申請には報告書用紙に同封されているユーザーIDとパスワードを利用します。郵送や持参よりも手間がかからないため、電子申請を利用できるようにしておくと業務負担が軽減できるでしょう。
4. ロクイチ報告の提出先と電子申請


ロクイチ報告の提出には電子申請も利用できるようになりました。提出先と電子申請について解説していきます。
4-1. 高齢者雇用状況報告書
高齢者雇用状況報告書の提出先は、管轄の公共職業安定所か、一部地域では労働局です。提出期限の7月15日までに、持参・郵送・電子申請いずれかの方法で提出しましょう。支社や支店などがある場合は、支社や支店の分を本社でとりまとめて、本社を管轄する公共職業安定所に提出します。
電子申請をする場合はe-Gov電子申請システムの「高年齢者雇用状況等報告」よりおこなえます。
申請をする際は前年度の提出実績を元に事業所宛てに通知がおこなわれます。通知されたユーザーIDとパスワードを利用して電子申請をおこなえますが、これらの情報は再発行がされないため慎重に取り扱いましょう。
4-2. 障害者雇用状況報告書
障害者雇用状況報告書も高齢者雇用状況報告書と同様に、本社を管轄する公共職業安定書か労働局におこないます。持参・郵送・電子申請いずれの方法でも受け付けています。
電子申請をする際はe-Gov電子申請システム「障害者雇用状況報告」よりおこなえます。
高齢者雇用状況報告書と異なり、指定のExcelファイルを利用する必要があります。自社のものやほかのサイトからダウンロードしたものは使えないため、必ず指定のファイルをダウンロードして利用しましょう。
参考:令和6年高年齢者・障害者雇用状況報告の提出について|厚生労働省
5. ロクイチ報告の実施の注意点


ロクイチ報告の実施の注意点は、以下の4つです。
- 正確な時点の情報を用いる
- 就業規則で高年齢雇用状況を確認する
- 雇用障害者数や法定雇用率を把握する
- 書き方を厚生労働省の記入要領で確認する
5-1. 正確な時点の情報を用いる
ロクイチ報告を実施する際の注意点の一つは、正確な時点の情報を用いることです。正確な時点とは、6月1日になった瞬間(午前0時)を指します。
必要書類に記入する際には、上記の正確な時点の状態を把握した上で書き込みましょう。
電子申請にあたりe-Govホームページからダウンロードが必要な書類も、6月1日以降にダウンロードして入力しなければなりません。
正確な人数のカウントが求められる
6月1日になった時点で計算する必要があるのは、以下の4つです
- 常時雇用労働者数
- 定年到達者数
- 45歳以上の高年齢者のうちの離職者数
- 障害者数
常時雇用労働者数は、短時間労働(週20時間~30時間未満の労働)に該当する場合は0.5人としてカウントしなければなりません。
障害者数にカウントできる条件は、障害者手帳の所持です。障害者雇用の短時間労働(週20時間~30時間未満の労働)に該当する労働者は、常時雇用労働者数と同様に0.5人としてカウントしなければなりません。
また、重度身体障害者・重度知的障害者に該当する労働者には、ダブルカウントが適用されます。該当労働者1人につき2カウント(短時間労働の場合は1カウント)として計算できる点に注意しましょう。精神障害がある短時間労働者には、算定特例が適用されて1カウントになります。
5-2. 就業規則で高年齢雇用状況を確認する
高年齢者雇用状況報告書へ記入する際には、就業規則で高年齢雇用状況を確認することも、ロクイチ報告の実施の注意点です。
実状や慣行の記入ではなく、就業規則の内容を記述しなければなりません。例えば、慣行による定年制は存在するが就業規則に定年制の記載がない場合は、無しと記入します。
就業規則に以下のような制度の定めがある企業では、雇用状況について記述する際、過去1年間の定年到達者数も書き込まなければなりません。
- 定年制度
- 継続雇用制度
各制度の定めの上限年齢により記入欄が異なるため注意が必要です。
5-3. 雇用障害者数や法定雇用率を把握する
雇用障害者数の数え方も、ロクイチ報告を実施する際の注意点の一つです。雇用障害者数の数え方では、障害区分と程度と所定労働時間数により、以下のようにカウント率が異なります。ここまでで触れた部分もありますが、改めて確認しておきましょう。
| 週所定労働時間 | 30時間以上 | 20時間以上30時間未満 | 10時間以上20時間未満 |
| 身体障害者 | 1 | 0.5 | – |
| 重度の身体障害者 | 2 | 1 | 0.5 |
| 知的障害者 | 1 | 0.5 | – |
| 重度の知的障害者 | 2 | 1 | 0.5 |
| 精神障害者 | 1 | 0.5 | 0.5 |
また、常用雇用労働者の週所定労働時間別の名称は次のとおりです。
| 週所定労働時間 | 名称 |
| 20時間以上30時間未満 | 短時間労働者 |
| 10時間以上20時間未満 | 特定短時間労働者 |
法定雇用率は、全従業員に対する雇用しなければならない障害者の雇用率です。厚生労働省が定めるもので、2025年の法定雇用率は2.5%でした。これは「従業員40人ごとに1人の障害者を雇用しなければならない」という数値で、従業員が40人の企業は1人以上の障害者を雇用しなければなりません。守れない場合は勧告や指導がされます。
法定雇用率は見直しがされる予定で、今後引き上げられていきます。毎年最新の情報を確認し、把握しておきましょう。
5-4. 書き方を厚生労働省の記入要領で確認する
ロクイチ報告の実施の注意点として、書き方を厚生労働省の記入要領で確認することも挙げられます。
高年齢者雇用状況報告書は、制度や定年の年齢などの状況別で書き方が異なるためです。障害者雇用状況報告書においても、除外率設定業種を営む複数の事業所があるケースでは、書き方が異なります。
自社の状況に適した書き方や様式を選ぶためにも、厚生労働省の記入要領を熟読して参照しながら必要事項を書き入れましょう。
参考:障害者雇用状況報告書の提出義務と提出方法等について|厚生労働省
6. ロクイチ報告は企業の義務!提出期限を守れるように対応しよう


ロクイチ報告とは、事業主が厚生労働省に対しておこなう、自社の高年齢者や障害者の就業機会の確保や雇用状況に関する報告のことです。法律で定められた義務があり、未報告や虚偽の内容に対する罰則もあります。
必要書類を揃えて必要事項を書き入れ、郵送や持参の場合は管轄の公共職業安定所に提出しましょう。なお、電子申請も可能ですが、専用の様式が用意されているため注意が必要です。
本記事の実施の注意点なども参考にしつつ、ロクイチ報告について理解を深めて、期限までに申請や提出を完了してください。



人事労務担当者の実務の中で、従業員情報の管理は入退社をはじめスムーズな情報の回収・更新が求められる一方で、管理する書類が多くミスや抜け漏れが発生しやすい業務です。
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