エンジニアの評価制度における評価基準や注意点を紹介
更新日: 2023.11.17
公開日: 2023.3.10
OHSUGI
エンジニアの人事評価に悩む企業が少なくありません。エンジニアの貢献は定量的に把握しづらいため、スキルやノウハウを適切に評価していく必要があります。しかし、エンジニアの業務領域は専門性が高く、スキル評価の方法をイメージできない人事担当者が多くみられます。エンジニアの評価制度は、どのように設計すべきでしょうか。本記事では、エンジニアの人事評価の基準や、評価制度を導入するときの注意点を解説します。
目次
人事評価制度は、健全な組織体制を作り上げるうえで必要不可欠なものです。
制度を適切に運用することで、従業員のモチベーションや生産性が向上するため、最終的には企業全体の成長にもつながります。
しかし、「しっかりとした人事評価制度を作りたいが、やり方が分からない…」という方もいらっしゃるでしょう。そのような企業のご担当者にご覧いただきたいのが、「人事評価の手引き」です。
本資料では、制度の種類や導入手順、注意点まで詳しくご紹介しています。
組織マネジメントに課題感をお持ちの方は、ぜひこちらから資料をダウンロードしてご確認ください。
1. エンジニアの評価制度とは?
そもそも人事評価制度は、業績考課、能力考課、情意考課の3つの評価基準を組み合わせた制度です。
業績考課 | 従業員の成果や業績を評価する項目 |
能力考課 | 従業員のスキルやノウハウを評価する項目 |
情意考課 | 従業員の勤務態度を評価する項目 |
たとえば、業績考課は「顧客単価が●%増加した」「案件獲得数を●件増加した」など、従業員の成果や業績を評価します。しかし、エンジニアの場合、プロジェクト内での役割を与えられて業務を行うことが多く、企業への貢献度を数字で表すのが困難です。そのため、エンジニアの人事評価は、個人の成果や業績を評価しつつも、能力考課や情意考課がメインとなってきます。
1-1. エンジニアの評価制度の課題
エンジニアの評価制度は、能力考課や情意考課が中心となるため、定量的な評価が難しいという課題があります。
たとえば、エンジニアの能力考課として、原因究明力やリスク分析力、作業スピードなどの項目が挙げられます。情意考課の場合は、セルフ・コントロール能力、対人能力、新しいスキルの習得意欲などが評価項目の一例です。こうした評価項目は、数字で表すのが難しいため、人によって評価点数が変わります。また、ほとんどの人事担当者はエンジニアの業務領域に関する知識を持たないため、評価点数を付けた理由を明確に答えづらいのも特徴です。そのため、評価基準について問い合わせがあった場合、人事担当者が明確に回答できないケースも多く、エンジニアが人事評価に不満を抱く原因の一つとなっています。
1-2. エンジニアの評価制度の参考例
企業はエンジニアの人事評価の課題を解決するため、独自の評価制度を導入してきました。たとえば、クックパッド社の評価制度の場合、人事担当者ではなく、経験豊富なテックリードがエンジニアの人事評価を担当しています。これにより「人事担当者にエンジニアの知識がないため、専門スキルを評価できない」という課題を解決しています。また、VOYAGE GROUP社の事例では、エンジニアがスキルや技術力を自らプレゼンし、シニアエンジニアからのフィードバックを受けるというユニークな評価制度を導入しています。エンジニアの評価制度の納得感を高めるには、人事担当者だけでなく、よりグレードの高いエンジニアによるフィードバックを取り入れた制度設計が効果的です。
2. エンジニアの評価制度における評価基準
エンジニアの評価基準を考えるときに役立つのが、情報処理推進機構(IPA)が提供する「iコンピテンシ ディクショナリ(iCD)」です。iCDは、理想的なエンジニアの行動特性(コンピテンシー)を分析し、必要なスキルを4つのカテゴリに分類したものを指します。
- テクノロジ(技術やノウハウ)
- メソドロジ(マネジメント能力)
- 関連知識(業務知識)
- ITヒューマンスキル(ビジネススキル)
iCDをベースにしながら、エンジニアの評価制度における4つの評価基準を解説していきます。[注1]
[注1]iコンピテンシ ディクショナリ解説書|情報処理推進機構
2-1. 技術やノウハウ
テクノロジ(技術やノウハウ)のカテゴリには、エンジニアが業務で発揮する専門スキルなどが含まれます。IPAはエンジニアの専門スキルを6つのカテゴリに分け、合計25個の評価項目を挙げています。
システム(基礎、構築、利用) | ● ソフトウェア技術 ● データベース技術 ● ハードウェア技術 ● Webシステム技術 ● プラットフォーム技術 ● ネットワーク技術 |
保守・運用 | ● ITサービスマネジメント業務管理技術 ● ITサービスオペレーション技術 ● システム保守・運用・評価 ● 障害修理技術 ● 施工実務技術 ● ファシリティ設計技術 ● サポートセンター基盤技術 |
開発 | ● システムアーキテクティング技術 ● システム開発管理技術 |
非機能要件 | ● 非機能要件(可用性、性能・拡張性) ● セキュリティ技術(基礎、構築、利用) |
組込み・計測・制御 | ● 組込み技術(基礎、構築、利用) ● ディジタル技術 ● ヒューマンインターフェース技術 ● マルチメディア技術 ● グラフィック技術 ● 計測・制御技術 |
共通技術 | ● IT基礎 ● ナレッジマネジメント技術 |
3. マネジメント能力
メソドロジ(マネジメント能力)は、企画の立案や人材育成、情報セキュリティなど、エンジニアの業務領域に限定されず、幅広いシーンで求められるスキルを指します。マネジメント能力は5つのカテゴリに分けられ、合計33個の評価項目が含まれます。
戦略 | ● 市場機会の評価と選定 ● マーケティング ● 製品・サービス戦略 ● 販売戦略 ● 製品・サービス開発戦略 ● システム戦略立案手法 ● コンサルティング手法 ● 業務動向把握手法 |
企画 | ● システム企画立案手法 ● セールス事務管理手法 ● 要求分析手法 ● 非機能要件設計手法 |
実装 | ● アーキテクチャ設計手法 ● ソフトウェアエンジニアリング手法 ● カスタマーサービス手法 ● 業務パッケージ活用手法 ● データマイニング手法 ● 見積り手法 ● プロジェクトマネジメント手法 |
利活用 | ● サービスマネジメント ● サービスの設計・移行 ● サービスマネジメントプロセス ● サービスの運用 |
支援活動 | ● 品質マネジメント手法 ● リスクマネジメント手法 ● ITガバナンス ● 資産管理手法 ● ファシリティマネジメント手法 ● 事業継続計画 ● システム監査手法 ● 標準化・再利用手法 ● 人材育成・教育・研修 ● 情報セキュリティ |
3-1. 業務知識
関連知識(業務知識)は、エンジニアの仕事と直接関わりはないものの、円滑に業務を進めるうえで欠かせない知識を指します。たとえば、業務内容を最適化するためのビジネスインダストリ(情報システム)の理解や、企業活動の仕組みについての理解、自社の事業内容に関わる法規・基準・標準の理解などが含まれます。
3-2. ビジネススキル
ITヒューマンスキル(ビジネススキル)は、現代のビジネスパーソンに欠かせない基本的なスキルを指します。IPAは、エンジニアに必須のビジネススキルとして「創造性」「実行・実践力」「コミュニケーション力」の3つを挙げています。
4. エンジニアの評価制度を導入するときの注意点
エンジニアの評価制度を導入するときの注意点は2つあります。
- 客先常駐のエンジニアのケア
- テレワークやリモートワークで働くエンジニアのケア
エンジニアによっては、別企業に派遣されて働くケースもあります。自社で働くエンジニア(プロパー)と違い、客先常駐のエンジニアは人事担当者の目が行き届きません。テレワークやリモートワークなど、オフィス以外の場所で働くエンジニアも同様です。エンジニアの評価制度を導入するときは、オフィス以外の場所で働くエンジニアもきちんと評価できるような制度設計を意識する必要があります。たとえば、1on1のオンラインミーティングを導入し、客先常駐のエンジニアやテレワークで働くエンジニアのケアを行いましょう。
5. エンジニアの評価制度の課題を知り、納得感のある制度設計を
エンジニアの評価制度の課題は「エンジニアの貢献度が数字で表しにくい」「人事担当者がエンジニアの専門スキルを正確に評価できない」の2点です。クックパッド社やVOYAGE GROUP社の取り組みのように、経験豊富なエンジニアが人事評価に関わる仕組みを作ることで、評価制度の不公平感を解消できます。エンジニアの評価基準として「技術やノウハウ」「マネジメント能力」「業務知識」「ビジネススキル」などの項目が挙げられます。IPAが提供するiCDなどを参考にしながら、自社に合った評価基準を設けましょう。
人事評価制度は、健全な組織体制を作り上げるうえで必要不可欠なものです。
制度を適切に運用することで、従業員のモチベーションや生産性が向上するため、最終的には企業全体の成長にもつながります。
しかし、「しっかりとした人事評価制度を作りたいが、やり方が分からない…」という方もいらっしゃるでしょう。そのような企業のご担当者にご覧いただきたいのが、「人事評価の手引き」です。
本資料では、制度の種類や導入手順、注意点まで詳しくご紹介しています。
組織マネジメントに課題感をお持ちの方は、ぜひこちらから資料をダウンロードしてご確認ください。
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