評価制度とは?導入する目的や導入方法をわかりやすく解説
更新日: 2024.5.22
公開日: 2023.3.10
OHSUGI
評価制度は、多くの企業で導入されている従業員の人事評価をする制度です。従業員の育成や満足度アップ、適切な人材配置など、人事に関連するさまざまな決定に活用できるもので、評価制度の運用次第で会社の業績が変化することもあります。
ただし、導入に失敗すると従業員から不信感を持たれてしまう恐れもあります。不信感が芽生えると、業務意欲の低下が起こる可能性がありますが、まだ導入していない場合は検討の余地がある制度といえるでしょう。
本記事では、評価制度の概要や目的、作り方の流れなどを解説します。
目次
人事評価制度は、健全な組織体制を作り上げるうえで必要不可欠なものです。
制度を適切に運用することで、従業員のモチベーションや生産性が向上するため、最終的には企業全体の成長にもつながります。
しかし、「しっかりとした人事評価制度を作りたいが、やり方が分からない…」という方もいらっしゃるでしょう。そのような企業のご担当者にご覧いただきたいのが、「人事評価の手引き」です。
本資料では、制度の種類や導入手順、注意点まで詳しくご紹介しています。
組織マネジメントに課題感をお持ちの方は、ぜひこちらから資料をダウンロードしてご確認ください。
1. 評価制度とは?
評価制度とは、企業内での従業員の貢献度を評価する人事制度のひとつです。
どれくらい業績を上げたか、どんな働きぶりをしているか、スキルは何を持っているかなど、さまざまな観点から従業員を評価します。
評価内容は処遇にも反映されるのが一般的で、等級や報酬に影響します。評価が高ければ社内での立場が上がり、それに連動して給与も上がっていくかたちです。
加えて、人材の配置や最適化などをおこなう際の基準とされることも多く、評価制度は人事に大きく影響します。
しかし、評価制度は導入するだけでは本来の役割を果たせません。
目的や目標を設定したうえで、事業規模や業種にも合う評価内容を作り、それを活用する環境が必要です。
2. 評価制度を導入する目的
評価制度を導入する目的は企業によって異なります。一般的には待遇や配置の決定、従業員の育成などに活用されますが、適切な評価基準や項目を設定するためには、自社の目的を明確にしておくことが重要です。
ここでは、多くの企業で「導入する目的」となっている内容を紹介します。
2-1. 従業員の育成への活用
評価制度の明確で公正な基準によって下された評価は、従業員の納得感を高めます。その結果、評価が上がった人はモチベーションが上がり、満足感を持ってより業務に励めるようになります。
反対に下がった人や据え置きの人は、会社が重視する能力やスキルを知り、改善に役立てることが可能です。
従業員が自主的に目標を持ち、貢献度の高いアクションを起こそうとすることは、個人の成長につながります。そのため、従業員の育成も評価制度のひとつの目的となるのです。
2-2. 従業員の配置への活用
評価制度は、従業員の能力やスキル、実績や経験などによって、最適な場所に配置する目的でも導入できます。得意分野や経験豊富な分野に関連する部署に配置できれば、より高いパフォーマンスを発揮して業務を遂行できるでしょう。
また、役職に就かせる人材を決定する際にも活用できます。上司や役員の主観的な評価ではなく、客観的な評価によって従業員を配置することで、企業全体の業績改善にも役立つでしょう。
2-3. 従業員の処遇への活用
評価制度では、会社への貢献度や業績、役割に加えて、将来性や成長力なども考えて評価をします。
そのため、実力に応じた給与や賞与、役職などを決定する目的での導入は非常に有効です。
単純な年功序列では待遇への納得感は薄いですが、評価制度による明確な基準があれば、従業員は納得感を持って評価を受け入れやすくなるでしょう。
処遇に対する不満を減らし、モチベーションを維持する目的での導入も効果的です。
また、評価する人は基準があることで公正な評価を下しやすくなり、負担を減らすことができるでしょう。
2-4. 企業理念の明確化
評価内容に、会社の方向性や経営の方針を盛り込むことで、従業員全体に認識を広めることができます。必要な人材や能力も見えてくるため、従業員は貢献度を上げるためのアクションがしやすくなるでしょう。
従業員と経営陣が同じ方向を向くことで、会社はより理想に近づき、経営も安定しやすくなります。企業理念や経営方針の明確化のためにも評価制度は活用できます。
3. 人事評価基準策定の要素
人事評価は、明確な評価基準を策定することが重要です。基準があいまいだと、評価者によって評価結果が変わり、公平な評価ができなくなるかもしれません。
人事評価基準策定の要素は、主に下記の3つになります。
- 業績評価
- 能力評価
- 情意評価
「業績評価」は、会社への貢献度を評価するもので、個人単位やチーム単位、部署単位でおこないます。例えば、営業部の場合は売上、ソリューション部門であれば問題解決の達成率などが評価項目になります。
「能力評価」は、業務上で必要となる知識やスキルなどの能力で評価をします。求められる能力は職種によって異なりますが、実行力や企画力などが項目となるのが一般的です。
「情意評価」は、業務をおこなう姿勢やルール・モラルの遵守を評価するものです。「積極的に業務に参加しているか」「チーム内での協力ができているか」「責任感を持って仕事をしているか」などで判断をします。また、勤怠状況も加味されます。
業務や職種によって要素が異なることもありますが、基本となる3種類の要素をもとに策定しましょう。
4. 評価制度の作り方と導入の流れ
評価制度を導入する際は、計画を立てて進めていく必要があります。「評価をすれば良い」という考えで導入してしまうと、制度のメリットが得られないので注意しましょう。
しかし、忙しい業務の合間に計画を立てるというのは負担が大きく、時間もかかってしまうかもしれません。そこでここでは、スムーズかつ効果的に導入するための流れを簡単に紹介します。
4-1. 現状の分析
まずは、会社の現状を把握します。会社に必要な人材や能力、解決が必要な問題、将来の展望などを分析し、会社がどんな状況におかれているのか知ることから始めましょう。
現状を細かく分析することで、人材育成の指標や今まで放置していた問題を浮き彫りにできます。また、将来の展望の見直しもできるので、経営層や役員、管理職などできるだけ幅広い層で現状分析をおこなってください。
4-2. 目標の設定
現状分析をおこなったら、次は評価制度を何のために導入するのか、再度明確に設定します。分析結果によって判明した導入意義を踏まえ、「問題解決のため」「会社の方針を広めるため」などの目標を、従業員への効果と併せて考えながら設定しましょう。
目的がはっきりすることで、人事の評価基準や評価項目が決めやすくなります。
4-3. 評価基準の設定
従業員の何を見て評価をし、どのように処遇に反映させるのか、明確な評価基準を設定します。この部分に曖昧な表現があると、評価をする人によって結果に差が生まれてしまい、評価制度の意味がなくなる恐れがあります。
できるだけわかりやすい基準を設定し、評価する人と評価を受ける人のすべてが同じ認識を持てる内容にしましょう。
4-4. 評価項目の作成
評価制度を導入する目的と評価基準に合わせて、評価項目を作成します。項目は、業績・能力・情意の3つで評価をすることが多く、各区分の比重は評価制度を導入する目的によって変化させます。
評価項目は、評価をするうえで非常に重要です。評価をする人だけでなく、される側の意見も反映しつつ作成すると、不公平感がなくなります。
4-5. 評価方法の検討
評価は、一般的に複数の段階に分けておこない、どの段階でどのような評価にするかを決めておく必要があります。
一般的には5段階評価が採用されることが多いですが、企業の規模や業種によっては6段階や7段階の評価にしても問題ありません。ただし、段階が細かすぎると職種や業務によっては担当者の負担が増えてしまうので、3段階から4段階にしても良いでしょう。
また、段階評価から出た結果を処遇に反映させる場合は、どのような結果でどういった処遇にするかというルールも決めておきましょう。
4-6. 従業員への通達
必要事項がすべて決まったら、導入する前に従業員に周知します。経営陣の一方的な方針で導入すると反発が生まれる恐れがあるため、いつから導入するのか、評価基準はどのようなものかなどをわかりやすく通達しましょう。
また、周知するタイミングも注意が必要です。通達から導入までの期間が短いと、従業員が十分に理解しないまま制度が始まってしまう可能性があります。従業員からの疑問や質問に答える期間も含め、余裕を持って通達してください。
どうしても期間が短くなってしまう場合や浸透させるのが難しい場合は、文書で通達をするだけでなく、人事評価制度の説明会を開催したり、上司や担当者とヒアリングをおこなったりするなどのサポートでカバーしましょう。
5. 評価制度を導入するときの注意点
評価制度は、公平性を保ち、従業員が基準や項目に納得していれば、人材確保や育成、業績アップなどに有効です。しかし、基準が理解しづらかったり、評価結果の説明がなかったりすると反感を持たれることも多々ある制度です。
スムーズかつ効果的に運用するには導入時の対応が重要となってくるので、以下の3点に注意しましょう。
5-1. 評価項目をシンプルにする
評価項目が多ければ、さまざまな観点から従業員を評価できます。しかし、項目が多すぎると評価をする人の負担が大きく、一人ひとりの評価が雑になってしまう恐れがあります。評価を雑にするということは、従業員の働きを雑に評価していることになり、正確な結果にならず不満を招くきっかけになるかもしれません。
また、従業員も項目を把握しきれなかったり、そもそも理解するのが面倒になってしまったりするので、制度の効果がなくなってしまう可能性もあります。
多角的に評価をするのは悪いことではありませんが、評価者への負担になり、従業員も興味を示さない制度では意味がありません。
評価項目はできる限りシンプルにして、必要な項目だけに絞るようにしましょう。
5-2. 評価のガイドラインを作る
評価制度の規定を厳格に定めても、評価をおこなうのは人間です。人間には好き嫌いがあり、それぞれに価値観も異なるため、評価に感情が入ってしまう恐れがあります。
たとえば、まったく同じ業務をおこなっていても、評価者が好感を持っている従業員は評価が高くなり、好感度が低い従業員は評価も低くなってしまう、ということがあるかもしれません。いわゆる贔屓のような評価がみられると、従業員は会社全体に不信感を持ってしまいます。
評価者の感情による評価にしないためには、ガイドラインを作ることが重要です。好き嫌いや個人の価値観ではなく、客観的なガイドラインに沿って評価をおこなえば、贔屓や忖度のような不公平な結果にはなりません。
5-3. フィードバックを実施する
低い評価を受けた従業員は、例え自分の業績が悪かったとしても、不満や疑問を抱えることが多いのが実情です。また、自己否定感が強い場合、良いところを見ずにダメな点だけにフォーカスをしてしまい、評価されることへの不安で業務に支障をきたすこともあるかもしれません。このような状況を解決するには、フィードバックを実施することが有効です。
どのような点で評価が低くなったのか、評価者がどのような判断で低い評価をつけたのかを説明して、評価を受けた人が納得できるようにしましょう。すべての従業員を納得させるのは難しいかもしれませんが、結果だけ通知して終わり、という状況よりは理解を得ることができます。
適切なフィードバックは従業員の意欲を高め、会社にもプラスになります。
6. 評価制度は従業員の理解を得られるかたちで導入しよう
評価制度は、従業員をさまざまな観点から評価し、処遇を決める制度です。的確に評価ができれば、従業員の業務意欲アップにもつながるでしょう。
ただし評価の結果は、従業員の給与や賞与に大きく関係するため、評価内容によっては不満をもったり、評価制度そのものに疑問を持ったりすることもあります。そのため、導入する際にはそのような従業員の感情に配慮し、できるだけ反発がないように周知を徹底しなくてはいけません。
また、同時に評価内容や項目を明確化して、公平な評価ができるように設定することも必要です。
評価制度の運用次第では、従業員のモチベーションを上げることが可能です。ぜひ、導入して会社全体の利益になるように活用しましょう。
人事評価制度は、健全な組織体制を作り上げるうえで必要不可欠なものです。
制度を適切に運用することで、従業員のモチベーションや生産性が向上するため、最終的には企業全体の成長にもつながります。
しかし、「しっかりとした人事評価制度を作りたいが、やり方が分からない…」という方もいらっしゃるでしょう。そのような企業のご担当者にご覧いただきたいのが、「人事評価の手引き」です。
本資料では、制度の種類や導入手順、注意点まで詳しくご紹介しています。
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