フィードバックの意味とは?適切なタイミングやコツをわかりやすく解説
更新日: 2024.7.4
公開日: 2024.2.29
OHSUGI
フィードバックは従業員の改善点を伝え、人材育成やモチベーションコントロールをする手法です。
メリットがある反面、適切なフィードバックを実施しなければ逆効果になってしまうこともあります。
そこで本記事では、フィードバックのフレームワークやコツ、注意するポイントなども解説します。効果的なフィードバックを実施したい担当者様は、ぜひ参考にしてください。
目次
人事評価制度は、健全な組織体制を作り上げるうえで必要不可欠なものです。
制度を適切に運用することで、従業員のモチベーションや生産性が向上するため、最終的には企業全体の成長にもつながります。
しかし、「しっかりとした人事評価制度を作りたいが、やり方が分からない…」という方もいらっしゃるでしょう。そのような企業のご担当者にご覧いただきたいのが、「人事評価の手引き」です。
本資料では、制度の種類や導入手順、注意点まで詳しくご紹介しています。
組織マネジメントに課題感をお持ちの方は、ぜひこちらから資料をダウンロードしてご確認ください。
1. フィードバックとは?
まずはフィードバックとは厳密にはどのような手法なのか、発生しやすい場面とあわせて確認していきましょう。
1-1. 相手の行動に対して軌道修正を促すこと
フィードバックとは、従業員の業務成果や就業態度などについて、従業員本人に対し結果やアドバイスを伝える人材育成の手法です。
一般的には上司・人事労務のスタッフなどから伝えられますが、企業によっては同僚同士でフィードバックを実施している場合もあります。
フィードバックでは目標が達成できていないからと従業員を責めたり、行動を否定したりすることはおこないません。
結果に対する要因を調査したうえで、今後の業務に役立つ内容を明確に伝えることが大切です。
1-2. 人材育成に効果的な手法
フィードバックは従業員本人に対してアドバイスを伝えられるため、うまく活用できれば人材育成ができます。
改善すべき点や企業が求める方向性などを伝えられるため、成長の方向性を示しやすく、企業にとっても優秀な人材を育てられるというメリットが発生します。
また、スキルや技術面に加えて、やる気やエンゲージメントなどのメンタル面も同時に高められるため、人材育成とともに定着率を上げることにもつながるでしょう。
1-3. フィードバックが発生しやすい場面
フィードバックは上司と部下間でおこなわれることが多いですが、そのほかにもプロジェクトに対してや社外からのフィードバックなども存在します。
必要に応じてどこでフィードバックをおこなうか検討すれば、より有用性を高められます。
上司から部下
上司から部下へのフィードバックは非常に多く、日常的におこなわれています。会議や書類の改善点や、成果が出なかった場合の問題点などを伝え、部下の成長を促します。
注意しなければならないのは、叱咤やダメ出しだけにならないようにするという点です。また、伝える場所やタイミング、言葉や態度を誤るとパワーハラスメントになってしまう恐れがあります。
配慮すべき点は多いものの、人材育成を目的としたフィードバックでは非常に効果的な場面です。
プロジェクトに対して
プロジェクトが完了した際に、改善点を伝えるのもよく発生するフィードバックです。
プロジェクトリーダーからメンバーに対してや、メンバー同士でフィードバックをおこなうこともあります。
プロジェクトフィードバックは人材育成よりも、プロジェクトそのものの問題点や改善点を洗い出し、今後のプロジェクトに活かすことに重きが置かれます。
消費者や取引先から
社内でおこなうフィードバックとは別に、消費者から商品・サービスに対するフィードバックや、取引先からフィードバックがおこなわれることもあります。
これは従業員個人ではなく、商品やサービス、または会社全体の在り方に対するフィードバックに近いです。製品開発やサービスの改善などの参考として活かされるタイプのフィードバックです。
2. フィードバックの目的と効果
フィードバックを実施する目的はさまざまですが、主に目標達成率の向上や人材育成、意欲的に働ける環境づくりなどが挙げられます。ひとつひとつ掘り下げてみていきましょう。
2-1. 目標達成や業績アップに向けた軌道修正
まず企業・経営者視点におけるフィードバックを実施する目的として、企業としての目標達成が挙げられます。安定した企業経営を続けるためには、売上・利益が必要です。
企業が売上・利益を生み出すためには、従業員一人ひとりの目標達成が重要となります。従業員の目標達成に導くためにフィードバックを実施し、定期的に軌道修正や評価をおこない、業務に対するモチベーションを維持しましょう。
2-2. 人材の開発や育成
人は外部からの刺激やアドバイスを受けると成長が早くなり、スキルの習得や練度を上げやすくなります。フィードバックはこうした変化を促すことも目的です。
上司や先輩からのフィードバックを受ければ、自分では気づけなかった部分を発見し、ノウハウや方法論も学びやすくなるでしょう。
また、フィードバックをおこなう中で成果を認めたり、称賛する言葉を向けたりすればやる気が上がって「もっと活躍したい」という意欲につながることもあります。
2-3. モチベーションの向上
業務に対する反応が上司や先輩からないと「放置されている」「認めてもらえない」などの不満が溜まり、モチベーションが下がりやすくなります。
また「どうせ見られていないからさぼってもバレない」などという考えも生まれやすくなります。
上司から部下へのフィードバックをおこなえば、部下にも目を向けていることが伝わり、こうしたモチベーション低下を予防することができるでしょう。
2-4. 人材のミスマッチ防止
人事視点におけるフィードバックを実施する目的として、人材のミスマッチを防ぐ点が挙げられます。厚生労働省の資料によると、労働市場において企業と求職者のミスマッチが生じている点が報告されているからです。
企業と求職者のミスマッチが生じると、入社後に辞める従業員が増え、人材流出などが発生します。面接の際にフィードバックを取り入れ、企業が求める人物像や働き方を具体的に提示しましょう。
参照:令和4年版 労働経済の分析 -労働者の主体的なキャリア形成への支援を通じた労働移動の促進に向けた課題-|厚生労働省
2-5. 働きやすい環境づくり
働きやすい環境づくりもフィードバックの目的です。フィードバックによって環境を変えるのではなく、フィードバックそのものが働きやすさに関係しています。
厚生労働省の資料によれば、上司からのフィードバックを受けていないと、働きにくさを感じる割合が多いという結果が示されています。
定期的なフィードバックの実施により、部下は働きやすさを感じます。従業員が目標を達成するためにも、上司は働きやすい環境づくりを心がけましょう。
参照:令和元年版 労働経済の分析 -人手不足の下での「働き方」をめぐる課題について-|厚生労働省
3. フィードバックを受けた従業員が得られる2つの効果
上司からフィードバックを受けた従業員が得られる効果を知っておくことで、より効果的なフィードバックがしやすくなります。
前述した目的と効果と似た部分がありますが、従業員の変化に重点を置いて改めて解説します。
3-1. 業務意欲の向上(モチベーションアップ)
従業員に対してフィードバックすることで、業務意欲の向上(モチベーションアップ)が期待できます。仕事の進め方や考え方などを評価することで、従業員のやる気につながるからです。「自分を気にかけてくれている」という意識は「企業にとって必要だとされている」という意識にもつながりやすいです。
もし結果が出ていなかったとしても、結果を出すまでの過程や行動を讃えることで、従業員は「上司は部下の管理をしっかりとしてくれている」と実感できます。さらに良い結果へつながるように改善点を伝えることで、モチベーションを保ったまま業務に邁進できるでしょう。
3-2. 上司や同僚との関係性の強化
上司や同僚へフィードバックをすることで、お互いの関係性を強化できます。パワーハラスメントになるような高圧的な伝え方ではよくありませんが、従業員を鼓舞しながら実施するフィードバックは信頼関係の構築に繋がります。
フィードバックを通して信頼関係ができていけば、今までよりも円滑に仕事を進められるようになるでしょう。
上司や同僚との関係性がよくない職場では、コミュニケーション不足によるトラブルに発展する恐れがあります。フィードバックの実施により、タイムリーに報告・相談ができる環境が整うことも大きな効果です。
4. フィードバックの2つの種類
フィードバックの種類は、以下の2つです。
- ポジティブフィードバック
- ネガティブフィードバック
どのような違いがあるのか、フィードバックする側が気をつける点とあわせて見ていきましょう。
4-1. ポジティブフィードバック
ポジティブフィードバックは従業員の頑張りを褒めたり、業務の成果を讃えて業務意欲を向上させたりする手法です。従業員の自己肯定を高められるため、業務に対するモチベーションをアップできます。
ただし、単純に褒める・讃えるだけでは従業員のモチベーションは維持できません。今後に向けた考え方や行動のアドバイスを称賛や激励の言葉に織り交ぜ、具体的に成長した点や良かった点を伝えるようにしましょう。
4-2. ネガティブフィードバック
ネガティブフィードバックは反省点・問題点を洗い出し改善策を伝えて、解決に導く手法です。これまでの実績を振り返ることで、今後の行動指針を明確にでき、従業員の成長につながります。
ただし、ネガティブフィードバックは受ける側にとっては悪い印象や緊張感に繋がりやすいです。端的に反省点・問題点を告げるだけでは、従業員にストレスを与えるだけになるため注意しなければなりません。従業員が実行できる改善策や良かった点も織り交ぜて伝えましょう。
ポジティブフィードバックとネガティブフィードバックを比べると、従業員が持つ感情はポジティブフィードバックの方がよいです。しかし、人材育成にはネガティブフィードバックが重要であるため、伝え方を工夫して積極的におこなうようにしましょう。
5. フィードバックに適したタイミング
フィードバックは実施するタイミング次第で、従業員への影響が大きく変わります。従業員の感情に配慮しつつ、適切なタイミングで実施できるようにしましょう。
5-1. リアルタイムの実施がベスト
フィードバックのタイミングは、できる限りリアルタイムでの実施が望ましいです。
厚生労働省の資料によると、上司からのフィードバックの頻度が「毎日」の場合、働きやすいと感じる割合が最も多いという結果が示されています。
気づいた点をリアルタイムでフィードバックすることで、早めに軌道修正ができ、目標達成に導けるでしょう。
ただし、業務の内容や職場の環境によってはリアルタイムでのフィードバックが難しい場合もあります。そのような場合は無理な伝え方はせず、タイミングを見て早めに伝えるように努めましょう。
5-2. 定期的に実施することが重要
フィードバックは気づいた点があった時点でおこなうスピードも重要ですが、定期的に実施することも大切です。
目立たない従業員や裏方作業が多い従業員は、成果や問題が表面化しにくく、どうしてもフィードバックが減ってしまいやすいからです。
定期的なスケジュール(1週間に1回・3ヵ月〜半年に1回など)を決めて、フィードバックを実施しましょう。
参照:令和元年版 労働経済の分析 -人手不足の下での「働き方」をめぐる課題について-|厚生労働省
6. 代表的なフィードバックの手法は?3つのフレームワークを解説
フィードバックする上で活用される代表的なフレームワークは、以下の3つです。
- SBI手法
- サンドイッチ手法
- ペンドルトン手法
それぞれの特徴や実施する際の注意点をひとつひとつ見ていきましょう。
6-1. SBI手法
SBI手法は、Situation(相手の置かれていた状況)Behavior(相手の取った行動)Impact(それによって生じた影響)の頭文字をとった手法です。
それぞれの段階に分けてフィードバックをおこなうフレームワークです。伝え方の一例を見ていきましょう。
ステップ | 伝える内容の一例 |
相手の置かれていた状況 | 「今朝の会議のことだけど」
「昨日の取引先とのことだけど」 「さっきもらった資料についてだけど」など |
相手の取った行動 | 「資料をしっかりと準備してくれていたよね」
「商品の説明が少したりなかったかもしれない」 「画像やグラフを細かく挿入してくれていたね」など |
それによって生じた影響 | 「おかげで会議がスムーズだったよ」
「メリットがうまく伝わらなくて一押しがしにくかった」 「説明しやすくて相手方にも伝えやすかったよ」など |
このように、結果に至るまでの状況を整理し、どのような行動を実施したのか、その行動がもたらす影響について伝えます。結果、説得力のあるフィードバックが可能です。
ただし部下との関係性が構築されていないと、端的に物事を説明されたと捉えられる可能性があるため、言葉選びや伝え方に注意しましょう。
6-2. サンドイッチ手法
サンドイッチ手法は、以下の3段階でフィードバックをするフレームワークです。フィードバックで選ばれることが多い手法です。
名前の通りサンドイッチのようにポジティブな言葉の間にネガティブな言葉をはさみながら伝えていきます。流れとしては
- ポジティブな内容を伝える
- ネガティブな反省点・問題点を提示する
- 再びポジティブな内容を伝える
このような形になり、ネガティブな内容の後に再びポジティブな言葉を伝えることで、従業員のモチベーションを下げることなく伝えられます。
ただし伝えたいネガティブな内容が、ポジティブな内容に埋もれる可能性もあるため、伝え方には注意しなければなりません。
ポジティブな内容を大きく出しすぎず、ネガティブな内容とバランスよく伝えることが大切です。
6-3. ペンドルトン手法
ペンドルトン手法は、以下の5段階でフィードバックをおこなうフレームワークです。コミュニケーションをとりながらフィードバックをする方法です。
- ミーティング内容の確認
- 良かった点
- 改善点
- 次回のアクション
- まとめ
このような流れでおこない、フィードバックをする側と受ける側が会話や意見の交換をし、対等に近い立場で進めていくのが特徴です。
SBIやサンドイッチ手法とは異なり、業務の成果を讃えたり、部下と一緒に改善点や次回のアクションを検討したりもします。
部下と話し合って目標やアクションを決めるため、主体性のある行動計画を立てることもできるでしょう。
ただしフィードバックの時間がかかりすぎるため、リアルタイムでのフィードバックが難しい場合もあります。スケジュールを調整し、時間をかけて実施することが大切です。
7. フィードバックを実施する際に気を付けるべき2つのポイント
フィードバックを実施する際は、フィードバックを受ける側への配慮を忘れてはなりません。以下の3点は特に注意しましょう。
7-1. ほかの従業員と比べない
フィードバックを実施する際は、ほかの従業員と比べるような発言は控えましょう。
「〇〇さんもできているから君も大丈夫!」や「〇〇さんのやり方を参考にしたら」のように、たとえ激励やアドバイスのつもりで発言した場合でも、他人と比べられること自体に不快感や抵抗感をもつ人が少なくないからです。
そのようなマイナスの感情は業務意欲の低下や離職につながる恐れがあります。
フィードバックは、従業員本人と向き合う時間です。業務意欲の向上につながるように、従業員の頑張りを褒めたうえで、適切なアドバイスを伝えましょう。
7-2. 否定・批判ワードを並べない
ネガティブフィードバックの際は、否定・批判ワードの発言に注意しましょう。従業員の考えや行動を否定・批判するのは、嫌な気持ちになるだけで改善できません。
ネガティブフィードバックで重要なのは、言葉の選び方です。否定や批判の言葉は別の言葉に置き換えるように意識しましょう。
「ダメ」「できていない」「おかしい」など、否定・批判ワードを避け、「次はうまくいく」「挑戦してみよう」など、ポジティブに感じるワードを取り入れましょう。
また、性格や人格を否定する言葉は𠮟咤激励のつもりだとしても使用してはなりません。
7-3. 従業員が実行できる改善案を提示する
フィードバックを効果的に伝えるコツとして、従業員が実行できる改善策の範囲内にとどめることも重要です。
たとえ業務効率化につながる改善策を提示しても、従業員のスキルがなければ目標達成することはできません。プレッシャーや無理な業務に繋がり、デメリットが大きくなってしまうからです。
まずは従業員のスキルや業務で悩んでいることについて調査しましょう。調査したうえで、目標が達成できるように、具体的にわかりやすく改善策を提示してください。
8. フィードバックを成功させて業務意欲の向上や定着率改善につなげよう
フィードバックは、従業員本人に対して業務の成果や就業態度などについて、結果やアドバイスを伝える手法です。
適切なフィードバックの実施により、従業員の業務意欲が向上したり、職場の定着率がアップしたりするなどが期待できます。
ただし、フィードバックの内容や伝え方によって、モチベーションの低下や離職の恐れもあるため注意しなければなりません。
従業員のモチベーション向上・維持ができるように、これまでの頑張りを褒めたり・讃えたりしたうえで、適切なアドバイスを伝えましょう。
人事評価制度は、健全な組織体制を作り上げるうえで必要不可欠なものです。
制度を適切に運用することで、従業員のモチベーションや生産性が向上するため、最終的には企業全体の成長にもつながります。
しかし、「しっかりとした人事評価制度を作りたいが、やり方が分からない…」という方もいらっしゃるでしょう。そのような企業のご担当者にご覧いただきたいのが、「人事評価の手引き」です。
本資料では、制度の種類や導入手順、注意点まで詳しくご紹介しています。
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