男女雇用機会均等法とは?禁止事項や違反のリスク・実施すべき対策を解説
更新日: 2024.11.15
公開日: 2024.10.11
OHSUGI
「男女雇用機会均等法について詳しく知りたい」
「男女雇用機会均等法に基づいた対策の講じ方がわからない」
上記のような悩みをお持ちではないでしょうか。「男女雇用機会均等法」は、職場における性別による差別をなくし、すべての従業員が平等に働ける環境を整えるために制定された法律です。
違反した場合、訴訟リスクや企業イメージの悪化につながるおそれがあるため、企業は適切な対策を講じる必要があります。
本記事では、男女雇用機会均等法の概要や禁止事項について解説します。違反した際のリスクや、企業が実施すべき具体的な対策も紹介するので、ぜひ参考にしてください。
目次
1. 男女雇用機会均等法とは
男女雇用均等法とは、職場における性差をなくし、男女平等の待遇をおこなうことを定めた法律です。1985年に制定され、1986年に施行されました。
男女雇用均等法では、以下のようなステージでの男女差別を禁止しています。
- 募集・採用
- 昇進・降格
- 福利厚生
- 退職・解雇
また、女性の結婚や妊娠、出産を理由とする不当な扱いも違反とされています。女性が差別を受けず、家庭と仕事を両立できる職場環境を整えることも目的の一つです。
企業は、職場でのセクシャルハラスメント防止を徹底し、適切な雇用管理をおこなう責任があります。
参考:Ⅲ 働く女性に関する対策の概況(平成15年1月~12月)|厚生労働省
2. 男女雇用機会均等法が定められた背景
男女雇用機会均等法が定められた背景には、以下の社会的な流れが大きく関係しています。
- 1960年代の高度経済成長期以降、日本で女性の労働市場への参入が大幅に進展した
- 国際連合が1975年を「国際婦人年」とし、女性差別撤廃への取り組みを宣言した
高度経済成長期以降、国内の女性労働者数は増加を続け、平均勤続年数も伸びていました。しかし、男女の賃金体系の差をはじめ、「女性のみ研修に参加させない」「女性にだけお茶くみ当番をさせる」など、性別による差別が多くの企業で見られたのです。
「男は仕事、女は家庭」といった、性別に対する固定概念が日本社会に深く根付いていたことが影響しています。
1975年、国際連合が「国際婦人年」を宣言し、女性差別撤廃への国際的な取り組みが活性化しました。日本においても男女の地位の不平等に対する意識が高まり、職場での男女平等を求める動きが強まったのです。
そして、1986年に男女雇用機会均等法が施行されました。2024年現在、企業は男女雇用機会均等法を遵守することが義務となっており、男女平等な職場環境の実現が求められています。
参考:Ⅲ 働く女性に関する対策の概況(平成15年1月~12月)|厚生労働省
3. 男女雇用機会均等法で制定されている禁止事項
男女雇用機会均等法で制定されている禁止事項は以下のとおりです。
- 性別を理由とする差別の禁止
- 間接差別の禁止
- 婚姻・妊娠・出産などを理由とする不利益な取り扱いの禁止
- セクシャルハラスメントの禁止
3-1. 性別を理由とする差別の禁止
男女雇用機会均等法では、以下の雇用管理の各ステージにおいて、性別を理由に差別することを禁止しています。
ステージ | 禁止事項の具体例 |
募集・採用 | ・募集や採用の対象を男女どちらかに限定すること
・男女で異なる採用試験を実施すること ・男性の選考終了後に女性を選考すること |
配置 | ・時間外労働や深夜シフトの多い職務を男性のみとすること
・女性にだけ会議の庶務やお茶くみ、掃除当番をさせること ・受付業務を女性のみ担当させること |
昇進・降格 | ・女性に昇進の機会を与えないこと
・昇進の合格基準を男女で違う内容にすること ・結婚や妊娠、出産を理由に女性のみを降格させること |
教育訓練 | ・研修の対象を男性のみにすること
・教育訓練の期間を男女で分けること ・一定の年齢に達している女性を教育訓練の対象から除外すること |
福利厚生 | ・男性のみ社宅を貸与すること
・女性にのみ配偶者の所得証明を求めること ・婚姻を理由として女性のみを社宅貸与の対象から除外すること |
職種や雇用形態の変更 | ・一般職から総合職への変更を女性のみ認めないこと
・女性のみを専門職から事務職への変更の対象とすること ・パートタイムから正社員登用の際に男性を優先すること |
退職勧奨 | ・女性にのみ早期退職制度の利用を促すこと
・退職勧奨の年齢を男女で差を設けること ・子どものいる女性にのみ退職を勧めること |
定年・解雇 | ・男女別で厚生年金の支給開始年齢に応じた定年を定めること
・一定の年齢の女性のみを解雇対象とすること ・同じ解雇基準を満たしていても女性を優先して解雇の対象とすること |
労働契約 | ・既婚の女性のみ労働契約の更新をしないこと
・男性が平均的な営業成績で労働契約を更新されるのに対し、女性は特別な営業成績がない限り更新しないこと |
ただし、特定の職務や業務において性別が業務の遂行に不可欠な場合には、性別に基づく区別が認められることがあります。
3-2. 間接差別の禁止
男女雇用機会均等法では、直接的な性差別だけでなく、間接差別も禁止されています。間接差別とは、性別に関係のない基準や条件が設定されているものの、実質的に特定の性別が不利な扱いを受ける状況を指します。
厚生労働省が定めている間接差別の禁止事項は以下のとおりです。
- 身長・体重・体力を基準とした募集や採用
- 転居に伴う転勤に応じることを条件とする昇進や昇格
- 転勤の経験があることを条件とする昇進
厚生労働省が定めている禁止事項は上記に限りますが、裁判ではほかの要件でも間接差別として認められることがあります。そのため、企業は雇用管理において、性別に基づく不平等を生んでいないかどうか慎重に見直すことが重要です。
3-3. 婚姻・妊娠・出産などを理由とする不利益な取り扱いの禁止
男女雇用機会均等法では、女性の婚姻・妊娠・出産などを理由とする不利益な取り扱いをすることを禁止しています。厚生労働省が定めている禁止事項は以下のとおりです。
- 婚姻・妊娠・出産を理由に退職させるルールを設定してはならない
- 婚姻を理由に解雇してはならない
- 妊娠・出産・産休(労働基準法に基づく休業)を理由に解雇したり、給与を下げたりするなど不利益な扱いをしてはならない
また、妊娠中の女性や産後1年以内の女性に対する解雇は、原則として無効です。ただし、解雇の理由が「妊娠や出産とは関係がない」と証明できる場合は、例外的に解雇が認められることがあります。
3-4. セクシャルハラスメントの禁止
従業員の尊厳を傷つけ、労働環境を悪化させるセクシャルハラスメントは、男女を問わず禁止されています。セクシャルハラスメントは、異性だけではなく同性に対するものも含まれます。性別に関係なく、だれでも被害者や加害者になり得る問題です。
企業は、セクシャルハラスメントに対して真摯に取り組む必要があります。適切な対策を講じ、健全な職場環境の実現に努めなければなりません。
4. 男女雇用機会均等法違反のリスク
男女雇用機会均等法違反のリスクは以下のとおりです。
- 従業員のモチベーション低下や離職
- 企業イメージの悪化
- 訴訟リスク
4-1. 従業員のモチベーションの低下や退職
法令違反やセクシャルハラスメントが横行する職場では、従業員のモチベーションが低下し、退職率の増加を招くリスクがあります。優秀な人材が流出すると、企業の成長に深刻な影響を与え、業績の悪化や人材不足などの問題を引き起こすおそれがあるでしょう。
さらに、不当な扱いや差別が続くと従業員のストレスや不安が増大し、メンタルヘルスの問題が発生することも考えられます。従業員の健康と働きやすさを確保するためにも、法令の遵守やハラスメント対策の徹底が不可欠です。
4-2. 企業イメージの悪化
男女雇用機会均等法に違反すると、企業イメージが悪化するおそれがあります。法令違反をすると、厚生労働省によって企業名が公表されることがあるためです。
とくに、セクシャルハラスメントやマタニティハラスメントが問題視された場合、企業の社会的信用は大きく損なわれます。取引先や顧客からの信頼を失い、ビジネスチャンスの喪失や取引の中断が生じる可能性が高まるでしょう。
また、企業イメージの回復に長時間を要することも考えられます。なお、厚生労働大臣に虚偽の報告をした場合は、20万円以下の過料に処される可能性があるため、正確な情報の報告と法令遵守が重要です。
4-3. 訴訟リスク
従業員が訴訟を起こし、企業に対して損害賠償を求める場合があります。企業は、賠償金の支払いを命じられるだけではなく、訴訟費用や対応に多くの時間を費やすことになるでしょう。
さらに、男女不平等や差別問題など悪化した職場環境を放置していると、集団訴訟に発展する可能性も考えられます。集団訴訟になれば、法的リスクがさらに拡大することになり、企業にとって重大な問題となるでしょう。
5. 男女雇用機会均等法にもとづき企業がおこなうべき対策
男女雇用機会均等法に基づき、企業がおこなうべき対策は以下のとおりです。
- ハラスメント対策
- 妊娠や出産に関する環境の整備
5-1. ハラスメント対策
各企業は、ハラスメント防止のための対策を講じなければなりません。厚生労働省は、雇用上必要なハラスメント対策の措置を講じることを、各企業に義務づけています。
具体的に以下のような対策をおこなえます。
対策 | 具体例 |
セクシャルハラスメントに関する方針の明確化 | ・セクシャルハラスメントの定義や具体例を従業員に周知
・加害者への厳正な対処について就業規則や社内規定に明記 |
セクシャルハラスメントに対する従業員への教育 | ・ハラスメント研修の実施
・コンプライアンス研修の実施 |
被害者からの相談に適切に対応するための体制の整備 | ・相談窓口の設置
・相談窓口と人事部の担当者が連携できる体制の構築 |
セクシャルハラスメントが発生した場合の迅速かつ適切な対応 | ・被害者への配慮をしつつ、事実関係を迅速に調査
・必要に応じて中立な第三者機関を利用 |
セクシャルハラスメントだけではなく、パワーハラスメントやマタニティハラスメントなどの対策も同時におこなうことが重要です。
5-2. 妊娠や出産に関する環境の整備
妊娠や出産に関する環境の整備は、従業員の働きやすさを確保し、企業としての責任を果たすために重要です。具体的には、以下のような対策をおこなえます。
- 制度の利用ができることを、妊娠・出産した本人を含め、周りの従業員に周知・啓発する
- 本人の体調に応じて適切な業務を遂行していくことを周知する
- 周りの従業員に業務の偏りが発生することを防ぐため、適切な業務分担をする
適切な対策を講じることで、職場全体の理解とサポートが得られ、妊娠や出産に関するトラブルを未然に防げます。
参考:事業主が職場における妊娠、出産などに関する言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置などについての指針|厚生労働省
6. 男女雇用機会均等法を正しく理解し働きやすい職場づくりを実現しよう
男女雇用機会均等法は、性別による差別をなくし、すべての従業員が平等に働ける環境を整えるために制定された法律です。法令にはハラスメントに対する規制も含まれており、企業は適切な措置を取る義務があります。
法律の趣旨を正しく理解し、積極的に取り組むことは、企業の持続的な発展につながります。男女雇用機会均等法に対する理解を深め、従業員が働きやすい職場環境を実現しましょう。
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