等級設計とは?メリットデメリット、等級制度のやり方・事例をわかりやすく解説
更新日: 2024.10.18
公開日: 2024.5.21
OHSUGI
「等級設計」は従業員の待遇や給与に直接影響する部分です。そのため、導入して人事制度を設計したり、見直ししたりする際にはさまざまな悩みや課題が発生します。
人事制度は会社で働く社員のモチベーションに影響を及ぼすため、等級設計について正しい知識を得て理解しておくことが重要です。
本記事では等級設計のやり方、メリットやデメリットをわかりやすく解説します。等級設計を導入している企業の事例紹介も参考にしてください。
人事評価制度は、健全な組織体制を作り上げるうえで必要不可欠なものです。
制度を適切に運用することで、従業員のモチベーションや生産性が向上するため、最終的には企業全体の成長にもつながります。
しかし、「しっかりとした人事評価制度を作りたいが、やり方が分からない…」という方もいらっしゃるでしょう。そのような企業のご担当者にご覧いただきたいのが、「人事評価の手引き」です。
本資料では、制度の種類や導入手順、注意点まで詳しくご紹介しています。
組織マネジメントに課題感をお持ちの方は、ぜひこちらから資料をダウンロードしてご確認ください。
1. 会社の等級設計とは
会社の等級設計とは、人事制度における骨格となる重要な仕組みです。正しく等級を設計するために、まずは等級制度の概要から説明します。
1-1. 等級制度の定義
等級設計により制定される等級制度とは、社員の能力、役割や職務に応じて等級を付けてレベル分けするものです。また、会社から社員に対して会社が求めている人材像を明確にする目的があり、それに対する対価として給与をはじめとした待遇を示せるでしょう。
新入社員、入社10年目の中堅社員、課長や管理職など役職に応じて、会社が求めることは違います。会社での経験や知識習得によりできることも違うにもかかわらず待遇が同じであると、社員のモチベーションは下がるでしょう。
等級設計することで社員に対して正しく評価し、基準に基づいた待遇を与えられます。
1-2. 等級制度の種類
等級制度には3つの種類があります。
制度名 | 等級を決定するポイント |
職能資格制度 | 能力、勤務年数 |
職務等級制度 | 職務内容の難易度 |
役割等級制度 | 職能等級と職務等級の混合 |
等級を決定する際に重視するポイントが違うため、等級制度が違えば同じ人物に対する評価も変化します。
たとえば職能資格制度では、勤務が長く経験や資格を有する人物が高い評価をて等級も高くなりやすいです。しかし、職務等級制度では業務の内容が評価の基準になります。勤続年数が浅くても難しい業務をしている人の方が評価が高くなりやすいため、職能資格制度と職務等級制度では順位が入れ替わる可能性もあるわけです。
それぞれの等級制度に応じたメリットとデメリットがあるため、会社にあった制度を決めることが求められます。等級の階層に応じて等級制度を組み合わせることも方法の一つです。
2. 会社の等級設計の3つのメリット
会社の等級設計の3つのメリットは、以下のとおりです。
- 等級に応じて期待する能力や職務を示せる
- 等級に応じた給与設定ができる
- 等級に応じて職位を明確にできる
それぞれのメリットについて見ていきましょう。
2-1. 等級に応じて期待する能力や職務を示せる
会社が等級に応じて期待する能力や職務を社員へ提示できます。
等級ごとに求められる基準が明確になるため、上司は部下の等級に応じた教育方針で育てられるでしょう。また、社員はキャリアアップに必要なことの把握や目標の設定をしやすいです。
新入社員、5年目の社員、中堅社員では、同じ期間で達成できることに差がでます。管理職や課長などの上司は、それぞれの等級に応じて目標設定や期待する内容を伝えなければなりません。
等級設計により、社員の能力に応じて人材開発が可能です。
2-2. 等級に応じた給与設定ができる
等級ごとに給与の差をつけた設定が可能です。等級ごとに期待する仕事レベルを設定しているため、会社は社員に対して仕事レベルに応じた給与を支払う必要があります。
仕事の結果に応じて給与に差をつけなければ、社員のモチベーションは下がり、生産性低下や退職理由につながるでしょう。
等級に応じた給与設定により等級が上がることは、社員のモチベーションアップと会社の生産性向上につながります。
2-3. 等級に応じて職位を明確にできる
職位の明確化は等級に応じた責任や仕事内容をはっきりさせ、会社での地位もわかりやすくなります。
職位は主任、調査役、係長、課長や部長などがあり、職場におけるポジションと担当する仕事の意味です。役職と混同されやすいですが、役職は組織上の単なるポジションそのものしか表しません。
会社は期待に応える社員に対して、等級をあげることで新たな職位をもたせて社員の仕事に対する意識を向上させられます。
関連記事:職位とは?役職との違いや具体的な名称をわかりやすく解説
3. 会社の等級設計の3つのデメリット
会社の等級設計の3つのデメリットは、以下のとおりです。
- 社員の昇給に対するモチベーションが下がる
- 社員が評価対象の仕事しかしなくなる
- 評価管理の手間がかかる
デメリットについて見ていきましょう。
3-1. 社員の昇給に対するモチベーションが下がる
等級設計では、等級の数により社員の昇給に対するモチベーションが下がるおそれがあります。
等級数が多すぎると昇給幅が小さくなるためです。一方で、等級数が少なすぎると昇給幅は大きいものの、昇格する機会の減少となり昇格までの道のりが長くなります。
昇格する機会が多すぎて給与の増加も微小であると、給与が増えている実感や達成感を得にくいでしょう。また、昇格までの道のりが長いと求められることも多くなります。
昇格の機会があることは会社にとって社員へのアピール要素です。等級数が適正であるかは定期的にチェックしておきましょう。
3-2. 社員が評価対象の仕事しかしなくなる
社員は上司に評価される仕事しかしなくなる可能性があります。等級をあげる評価だけを意識するためです。
評価をあげるため、等級ごとに提示されている仕事だけしようとします。能力の変わらない型にはまった社員ばかりになり、柔軟な対応ができる社員が育たないでしょう。
等級ごとに提示した仕事だけが評価のすべてではないことを会社から伝えることが重要です。
3-3. 評価管理の手間がかかる
等級設計したあとの運用では社員を評価する必要があり、評価管理に手間がかかります。評価するための作業や、評価者に評価スキルを学ばせる必要があるためです。
会社は評価者に向けて、適切な評価を学ぶ研修などを実施します。評価スキルを習得した上司は、部下へ目標を設定させたり、進捗を確認したりすることが必要です。
評価のための準備や管理に時間を割かねばならないのはデメリットといえます。
しかし、社員の納得度の低い評価は会社への不満につながるため、評価スキルを習得する機会を設けることは重要です。過度に時間をかけすぎない適切な評価管理を心がけましょう。
4. 会社の等級設計の方法
等級設計は以下のやり方でおこないます。
- 会社の現状を分析する
- 等級制度の種類を選択する
- 等級数を設計する
- 等級に応じた役割を設定する
それぞれの行程をみていきましょう。
4-1. 会社の現状を分析する
会社の現状分析をしましょう。会社の現状をあらゆる角度から分析することで、会社の人事構造の問題や必要としている人材を把握できます。
会社の目指す方針を認識でき、等級設計する目的がはっきりするでしょう。
このステップを怠ると等級制度に不公平感を感じる従業員が出てきたり、会社の課題解決に繋がらなかったりする可能性があります。分析と目的の設定は時間をかけておこない、等級制度の土台にしましょう。
4-2. 等級制度の種類を選択する
企業のビジネスモデルや現状を踏まえて、職能等級制度、職務等級制度、役割等級制度の中から最適な等級制度を選択します。
一般職層には職能等級制度を、管理職層には役割等級制度を採用するなど、組み合わせて設計する方法も有効です。具体的には、職能等級制度では従業員のスキルや知識を評価し、職務等級制度では担当する業務の重要性を評価し、役割等級制度では業務上の責任範囲を評価します。
4-3. 等級数を設定する
会社の目指す姿を想像して等級数の設定をします。会社にとって必要な役割を逆算して等級数を決めることで、仕事レベルの明確化ができるでしょう。
企業規模によって等級数は異なります。等級数が多すぎると、等級の違いがわかりにくく有効ではありません。一方で、等級数が少ないと同じ等級内で社員間の能力の差が出過ぎる可能性があります。
等級数の設定は、等級間の違いの説明や等級を分けすぎていないか検証しながらおこないましょう。
4-4. 等級に応じた役割を設定する
最後に等級に応じた役割を設定し、会社が期待することを明文化します。役割を明確に定義づけすることは公平に評価するために重要です。
等級ごとの役割設定を全職種共通か職種別にするかは会社ごとの判断になります。全職種共通で設定する際は、どの職種にも当てはまる基準設定が必要です。職種別の設定は具体的に基準を設けてください。
等級に応じた役割を明確化することで社員にとっても目標設定しやすくなり、評価管理の負担軽減にもつながります。
5. 会社の等級設計のを成功させる3つのポイント
等級設計が効果を発揮するために会社が押さえておくポイントは以下のとおりです。
- 社員が納得できる評価結果を出す
- 社員へ評価基準を明確に示す
- 社員へ評価基準の公平さを示す
等級設計は人事制度として社員の将来に関わるものであるため、社員へわかりやすく伝える必要があります。
社員に正しく伝わらなければ、会社に対しての不平不満につながりモチベーションを下げ、生産性の低下につながりかねません。最悪の場合、離職につながり人材の流出が起きるため、注意が必要です。
評価基準がわかりにくいと、別の解釈ができる可能性があります。具体的な根拠や目標値を設定しましょう。
また、説明会を開催したり、ガイドブックを作成したりする手段もあります。等級設計について全社員へ明確に伝えて社員の納得感を高めていく努力が必要です。
6. 会社の等級設計の事例を紹介
会社の人事制度に等級設計を導入している3社を紹介します。
- A社|給与水準を職種ごとに設定
- B社|等級制度を組み合わせ
- C社|職務に応じた給与
以下で詳しく各社の事例を見ていきましょう。
6-1. A社|給与を職種ごとに設定
A社では、役割等級の給与を職種別に設定しています。年功序列による賃金テーブルであったため、上位職に留まる状況と組織内での活性化が問題視されていました。
また、若い世代の活躍が年齢を理由に軽視される傾向や、評価につながらない空気もあり、これも人材育成やエンゲージメント向上の妨げになっていると考えられていました。
こうした問題を職種ごとの給与に変更し、年齢や勤続年数に縛られず、仕事別に競争力のある給与水準へ見直しした事例です。
このような変化は業種による専門性や難易度に差があり、年功序列による格差や不公平さが強い企業で実施すると抱えていた課題を改善しやすくなるでしょう。
6-2. B社|等級制度を組み合わせ
B社では、全社共通で役割等級制度を導入し、職務ごとには職群制度も導入して組み合わせによる運用を実施しています。
部門や職種に応じた評価水準により、社員が感じると予想される評価の不公平感を解消している点が特徴です。
A社と同様に実際におこなっている業務や部門によって評価が変わり、等級や給与にも表れると制度は不満の解消がしやすいです。しかし、能力主義に偏りやすいという問題もあるため、複数の制度を組み合わせてバランスをとることが大切です。
6-3. C社|職務に応じた給与
C社は年功序列型から職務に応じた給与の支払いをするための等級制度に切り替えています。
それぞれの職務に応じて項目を定量化や点数化して職務等級を作り、職務等級に連動した評価と給与が決定される仕組みです。
職務等級制度を利用した成功事例として、導入を検討する他社から参考にされています。
職務のみで等級を決める方法はシンプルですが、同じ職務をしている人でも経験やスキルによる差があるため、そこで不公平さが発生する可能性があります。この点は何らかの差をつけたり、別の評価制度と併用したりすることで帳尻を合わせる必要があります。
7. 設計した等級制度を定着させるための注意点
また設計した等級制度は会社に根付き、評価の基準として定着させなければいけません。では、等級制度を定着させるために、どのようなことをおこなうべきなのでしょうか。注意点を紹介します。
7-1. 考課者・被考課者の研修を定期開催する
新しい人事制度導入時に考課者および被考課者のための研修を実施することは一般的ですが、継続的におこなう企業は少ない傾向にあります。継続的な考課者研修と被考課者研修の実施は、組織全体の視座向上に寄与しています。定期的な研修を続けていくことにより、評価基準に対する理解が深まり、評価制度への信頼性が高まります。
7-2. 評価において振り返り・調整する会議を設ける
評価調整会議とは、考課者が人事評価結果を持ち寄り、それぞれの評価基準や根拠を確認し合う場です。
この会議を定期的に設けることで、評価の透明性と公平性が向上します。この会議を設けている企業では、評価調整会議を導入し、評価基準や部門目標との連動性を確認する場となっています。このような取り組みにより、社員の成長課題にも目を向けることができ、人事制度の効果が最大化されます。
8. 会社に適した等級設計で人事管理を効率化しよう
等級設計は会社の人事制度の骨格として重要な仕組みです。等級があることで社員へ等級に応じた仕事レベル、給与や職位を示せます。
等級設計して適切に評価するうえで評価管理に手間をかけたり、定期的に見直すべきか確認したりすることが必要です。
紹介した等級設計のやり方で自社でも等級設計をつくりあげましょう。等級設計を取り入れている紹介した企業も参考にしてください。
会社の規模によりそれぞれの形があります。会社に適した等級設計で効率的な人事管理を実現しましょう。
人事評価制度は、健全な組織体制を作り上げるうえで必要不可欠なものです。
制度を適切に運用することで、従業員のモチベーションや生産性が向上するため、最終的には企業全体の成長にもつながります。
しかし、「しっかりとした人事評価制度を作りたいが、やり方が分からない…」という方もいらっしゃるでしょう。そのような企業のご担当者にご覧いただきたいのが、「人事評価の手引き」です。
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