労働安全衛生法における高所作業とは?定義や安全対策を解説
更新日: 2025.3.21
公開日: 2025.3.14
OHSUGI
「労働安全衛生法における高所作業の定義は?」
「具体的な安全対策は?」
上記の疑問を持つ方もいるのではないでしょうか。
高所作業は墜落・転落のリスクが高いため、労働安全衛生法に基づいた厳格な安全基準が定められています。適切な安全対策を講じなければ、労働災害につながる可能性もあるでしょう。
本記事では、労働安全衛生法における高所作業の定義や必要な安全対策を詳しく解説します。高所作業の安全管理を徹底したい方は、ぜひご一読ください。
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1. 労働安全衛生法で定められている高所作業の定義
労働安全衛生法では、高所作業とは2メートルを超える高さでする作業と定義されています。
墜落や転落のリスクが高く、重大な労働災害につながる可能性があるのが2メートル以上の高さの作業です。そのため、法律では作業環境の整備や安全措置の徹底が求められています。
例えば、高所で作業をおこなう場合は作業床の設置が原則で、作業床の端や開口部には手すりや囲いを設けることが必要です。
高所作業は、適切な安全対策をしなければ大きな事故につながる危険性があるでしょう。労働安全衛生法に基づいた措置を確実に実施することが重要です。
参考:労働安全衛生法令における墜落防止措置と安全帯の使用に係る主な規定|厚生労働省
2. 高所作業の種類
高所作業の種類は下記の4つです。
- 足場を使った建設工事や解体工事
- 天井内の点検業務
- 高層ビルの窓清掃
- 屋外設備の保守点検
それぞれ詳しく解説します。
2-1. 足場を使った建設工事や解体工事
足場を使った建設工事や解体工事は、高所作業の一つです。
足場の種類は作業の安全性や効率に大きく影響します。無理な姿勢で作業をおこなうと転落や事故のリスクが高まるため、現場の状況に応じた適切な足場を使用しましょう。
足場の選定を誤ると、作業効率の低下や事故につながるおそれがあるため、慎重な判断が必要です。
2-2. 天井内の点検業務
天井内の点検業務も高所作業に分類されます。
天井内の点検は、高い位置にある点検口から内部に入ることが必要です。不安定な足場での作業になるため、転落や踏み抜きによる事故のリスクが伴います。
天井内での点検業務は高所作業に該当するため、適切な足場の確保や安全対策を徹底しましょう。
2-3. 高層ビルの窓清掃
高層ビルの窓清掃は、作業用のゴンドラやロープを使用しておこなわれる高所作業です。
ビルの外壁に設置された窓を清掃するためには、地上から手の届かない高さでの作業が必要になります。そのため、作業員は専用のゴンドラやロープを使って高所で作業をおこない、安全対策を徹底しなければなりません。
適切な安全対策を講じることで、作業員のリスクを最小限に抑えましょう。
2-4. 屋外設備の保守点検
風力発電設備や電波塔、太陽光パネルなどの屋外設備の保守点検は、高所作業に分類されます。
高い場所に設置されているため、定期的な点検やメンテナンスをおこなう際には、高所での作業が必要です。
屋外設備の保守点検は、設備の正常な運用を維持するために欠かせません。安全対策を徹底しながら、適切な方法で点検をおこないましょう。
3. 高所作業で発生しやすい事故
高所作業で発生しやすい事故は主に以下の3つです。
- 作業員の転落
- 道具や資材の落下
- 足場の不適正な操作・利用
それぞれ詳しくみていきましょう。
3-1. 作業員の転落
高所作業における事故の一つが作業員の転落です。
高所での作業は、足元の不安定さやバランスの崩れによって転落のリスクが高まります。特に、脚立や足場の上で不適切な行動を取ると、事故の危険性が上がるでしょう。また、転落事故は作業員本人だけでなく、下で作業している人にまで影響を及ぼす可能性があります。
脚立の上で無理な姿勢をとったり、別の脚立に飛び移ろうとしたりした場合、バランスを崩して転落するでしょう。
作業員の転落事故を防ぐためには、安全帯やヘルメットの着用を徹底し、安定した作業環境を整えることが大切です。
3-2. 道具や資材の落下
高所作業は、道具や資材の落下が事故につながります。
作業中に手を滑らせたり、不安定な場所に道具を置いたりすると、資材や工具が落下する可能性があるでしょう。高所から落ちるものは軽量なものでも勢いがついて凶器と化し、下にいる作業員や通行人に大きな被害を与えるおそれがあります。
事故を防ぐためには、道具や資材を腰袋に収納し、落下防止用のワイヤーを取り付けるなどの対策が必要です。
3-3. 足場の不適正な操作・利用
足場や高所作業車の不適切な操作は、転倒や衝突事故を引き起こす可能性があります。
高所作業車や移動式足場は、安全に作業をおこなうための必須道具ですが、適切に操作しないと事故が発生するでしょう。例えば、移動式足場のキャスターを固定しないままで作業を始めると、作業中に足場が動き転倒や落下の危険が生じます。
足場や高所作業車を使用する際には、必ず事前に操作手順を確認し、適切な方法で使用しましょう。
4. 高所作業の安全対策
高所作業の安全対策として、下記の対策が考えられます。
- 足場の設置
- ヘルメットの着用
- フルハーネスの使用
それぞれ詳しく解説します。
4-1. 足場の設置
高所作業をおこなうためには、足場の適切な設置が不可欠です。足場の設置は、種類を慎重に選び、法令に従った手順で組み立てましょう。
高所作業では、足場が作業員の安全を確保する基本的な手段です。建物の外壁や屋根・天井などで作業をおこなう場合、足場を使用することにより、安定した作業環境を確保でき転落や事故を防止できます。
足場を設置する際には、労働安全衛生法に基づき、作業主任者の監視下でおこないましょう。
4-2. ヘルメットの着用
高所作業をおこなう際、ヘルメットの着用は必須です。
高所作業において、最も多く発生する事故の一つが転落による頭部の損傷です。厚生労働省の統計によると、はしごや足場からの落下事故では、頭部への損傷が7割を占めるデータがあります。
万が一の転落が発生した場合でも、適切なヘルメットを着用することで頭部への損傷を最小限に抑えられるでしょう。
参考:はしごや脚立からの墜落・転落災害をなくしましょう!|厚生労働省
4-3. フルハーネスの使用
高所作業の際に作業員を守るためには、フルハーネスの使用が不可欠です。従来の胴ベルト型安全帯から、安全性が高いフルハーネス型へと移行が進んでいます。
フルハーネスは作業員の全身をしっかりと支えることで、転落時の衝撃を分散し、身体への負担を軽減するアイテムです。胴ベルト型に比べて転落事故時の重大なケガを防げます。
5. 2022年1月から高所作業時のフルハーネス着用が義務化
高所作業でのフルハーネスの着用は、2022年1月から法令により義務化されました。
フルハーネスの義務化は、以下のように段階的に導入されています。
2018年4月 | 「第13次労働災害防止計画」において、フルハーネスの使用義務化を推進 |
2019年2月 | 高さ6.75m以上(建設業では5m以上)の高所作業で、フルハーネス型安全帯の着用が義務化 |
2019年7月 | 従来の胴ベルト型安全帯の製造が禁止 |
2022年1月 | 猶予期間が終了し、胴ベルト型安全帯の使用が禁止。フルハーネスの着用が完全義務化 |
ただし、高さ6.75m以下でフルハーネスを装着すると、逆に地面に到達してしまうリスクがある場合は着用義務の例外となります。必要なシーンを理解し、適切に活用することが大切です。
今後は必ずフルハーネスを着用し、安全な作業環境を提供しましょう。
参考:安全帯が「墜落制止用器具」に変わります!」|厚生労働省
6. フルハーネス義務化により企業がすべき対応
フルハーネス義務化により企業がすべき対応は下記の3つです。
- 新しい規格のフルハーネスを使用する
- 点検を適切におこなう
- 安全衛生特別教育を受講させる
2022年1月以前に購入したフルハーネスが新しい規格に対応していない可能性があります。必ず最新規格のフルハーネスを導入しましょう。
旧規格の安全帯型ハーネスと新規格のランヤード(ハーネスに付ける命綱)を組み合わせると、墜落時に十分な安全性を発揮できないおそれがあります。
作業員の安全を確保するためには定期的に点検をおこない、使用するフルハーネスが正常な状態であることの確認が必要です。
フルハーネスを使用する作業員は、安全衛生特別教育を受ける義務があります。特別教育とは、労働者が特定の危険または有害な業務に従事する際に、安全や衛生に関する専門的な教育を実施することです。
内容や対象業務、必要な資格や講習は、厚生労働省のホームページで詳しく案内されています。
参考:労働安全衛生関係の免許・資格・技能講習・特別教育など|厚生労働省
7. 労働安全衛生法に従い高所作業の環境を整えよう
労働安全衛生法では、高所作業の定義や安全対策を定めています。具体的には、足場の設置基準やフルハーネスの着用義務などです。
対策を講じることにより、作業員の安全を守り企業の信頼性向上にもつながります。
企業は作業員が安全に作業できる環境を提供し、法令を守ることで事故防止に努めましょう。
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