ISO 30201とは?人的資本経営実現のための要求事項やISO 30414との違いをわかりやすく紹介【岩本隆氏監修】 - ジンジャー(jinjer)|統合型人事システム

ISO 30201とは?人的資本経営実現のための要求事項やISO 30414との違いをわかりやすく紹介【岩本隆氏監修】 - ジンジャー(jinjer)|統合型人事システム

ISO 30201とは?人的資本経営実現のための要求事項やISO 30414との違いをわかりやすく紹介【岩本隆氏監修】 - ジンジャー(jinjer)|統合型人事システム

ISO 30201とは?人的資本経営実現のための要求事項やISO 30414との違いをわかりやすく紹介【岩本隆氏監修】

人的資本経営の重要性が提唱されてから早数年、「ISO 30414」に続く新たな国際規格として「ISO 30201」の開発が進められています。

発行前ということもあり、まだ世の中に情報の少ないこの新規格について、人的資本経営の分野で豊富な知見を持つ慶應義塾大学講師/山形大学客員教授の岩本隆氏にお話を伺いながら、ISO 30201の概要やISO 30414との違い、そしてこれからの企業経営に求められる「人事データの活用法」について解説します。

カタチだけの人的資本経営になっていませんか? 調査で見えた3つの課題と解決策

人的資本の情報開示が義務化されてまもなく3年が経過します。
人的資本経営に取り組んむ企業は増えていますが、その成果をきちんと示せる企業は多くありません。
そこで今回、アンケート調査から見えてきた「人的資本経営の課題とその解決策」をまとめた資料を無料配布しています。

・人的資本経営を実行しているが、成果として公表できるものがなくて困っている
・人的資本経営を進める上で課題を言語化したい
という方は、ぜひこちらから資料をダウンロードの上、お役立てください。

1. ISO 30201とは?

ISO 30201は、ISO/TC 260*で出版されている30を超える国際規格において、キャップストーン(集大成)となる規格です。岩本教授は、この規格の本質を「企業が人的資本経営を実践するための仕組みとして最低限整えるべきもの」と定義しています。

品質や環境などのメジャーなISO規格にも含まれるマネジメントシステム規格であり、組織が目標を達成するためにPDCAサイクルを回す仕組みそのものを規格化したものです。リーダーシップ、計画、支援、運用、パフォーマンス評価、改善などの共通のフレームワークを採用しており、その枠組みの中で人的資本をどう管理・運用していくかが定められています。

ISO 30201の項目として特徴的なのは、採用から退職に至るまでの「従業員のライフサイクル」全体が含まれている点です。岩本教授によると、単にデータを測るだけでなく、次項で紹介する12領域などについて、組織としての方針を定め、実行し、改善するプロセスが社内に構築されているかが問われます。また、ISO 30201は「要求事項」であるため、将来的には企業が第三者機関から「認証」を取得する対象となり得る点も重要です。

*国際標準化機構(ISO)において、「人的資本管理」に関する国際規格を専門に策定する技術委員会

2. ISO 30201の要求事項と構成

現時点では「ISO/FDIS 30201」という原案段階となりますが、ISO 30201の要求事項には、以下の12領域などが想定されます。

  1. 労働力計画
  2. 労働力配分
  3. 報酬、表彰及び称賛
  4. 採用
  5. オンボーディング
  6. 学習と開発
  7. ナレッジマネジメント
  8. タレントマネジメントと定着
  9. パフォーマンス管理
  10. 後継者育成計画
  11. 労働力の異動
  12. 離職

ISO 30201では、これらの項目について「計画(Plan)、実行(Do)、評価(Check)、改善(Act)」というサイクルが組織内に組み込まれているかが問われます。
以下の図は、PDCAサイクルとISO 30201の文書構成との関係性を示すものです。

ISO 30201の構成図

3. ISO 30201とISO 30414の違いと関係性

では、これまで注目されてきた「ISO 30414」と「ISO 30201」では何が違うのでしょうか。岩本教授によると、ISO 30414とISO 30201の決定的な違いは、「報告のための要求・推奨」か「経営のための要求事項」かという点にあります。

規格 定義 焦点
ISO 30414 人的資本データを外部へ報告・開示するための要求・推奨 メトリック(測定基準)や報告の考え方
ISO 30201 企業が人的資本経営を実践するための要求事項 マネジメントプロセスやPDCAサイクル

岩本教授は、人的資本経営の規格構造を以下の階層で説明しています。

  • マテリアリティ(重要課題): 経営にとって最も重要なテーマ
  • KPI(指標): マテリアリティを分解した目標値
  • メトリック(測定基準): データを測定するための計算式や基準

ISO 30414は、この中の「メトリック(測定基準)」や報告の考え方に焦点を当てています。
これに対し、ISO 30201はこれら全体を活用した上で、人的資本経営を実践するための組織的仕組みです。

ISO 30414:2025に示されている人的資本フレームワーク

ここで注意が必要なのが、用語の定義です。日本では『Metric(メトリック)』を『指標』と訳しがちですが、岩本教授はこれを明確に否定しています。本来、指標(Indicator)は重要業績評価指標であるKPIなどを指す言葉であり、メトリックはあくまでデータを測るための『測定基準』に過ぎないからです。

この「測定基準」を用いてデータを定量化・報告するのがISO 30414であり、その数値を正しく活用した「経営の仕組み」があるかを問うのがISO 30201です。 言葉の定義を正しく理解することは、この2つの規格の役割を整理する上でも非常に重要です。

4. ISO 30201が注目される理由とは?

ISO 30201はまだ正式発行前の規格ですが、なぜ今から注目しておく必要があるのでしょうか。
岩本教授は、この規格が将来的にビジネスの「参加資格」や「資金調達」に直結する可能性があると指摘しており、主に以下の2つの理由から早めの対策が重要だと語ります。

4-1. サプライチェーン全体での取引条件化

一つ目は、サプライチェーン全体(製造から販売までの一連の流れ)への波及です。
過去に「ISO 9001(品質マネジメントシステム)」(※1)が普及した際、大手企業が取引先に対して「ISO 9001を取得していること」を取引条件にしたことで、一気に導入が進んだ歴史があります。岩本教授は、ISO 30201でもこういった大手の企業事例があれば、同様のことが起きると予測しています。

特に現在は、企業に対して「人権への配慮」が強く求められる時代です。しかし、大手企業が数ある取引先すべてに対して、一件ずつ監査して回るのは現実的ではありません。

そこで役立つのがISO 30201です。 岩本教授は、「ISO 30201の認証を取得していれば、『この会社は人権への配慮を含め、人的資本経営がしっかりできている』という証明書の代わりになる」と述べています。 将来的には、この認証を取得していないと大手企業との取引が難しくなる、いわばビジネスの「認証バッジ」のような役割を果たす可能性があります。

※1:JQAとISO 9001マネジメントシステム認証の変遷|一般財団法人日本品質保証機構(JQA)

4-2. 銀行融資や株価に直結する「信用力」の指標

二つ目は、お金の動きです。 企業が銀行からお金を借りたり、投資家から評価されたりする際の基準が変わりつつあります。
すでにメガバンク等では、既存のISO 30414をベースにした融資サービスが始まっていますが、岩本教授は「ISO 30201が発行されれば、これが新たな融資判断の基準になる可能性がある」と考えています。 ISO 30201は「要求事項」という明確な基準であるため、金融機関にとっても「この認証を取得していれば、金利を優遇する」といった判断がしやすくなるからです。

また、株式市場においても「人的資本経営を実践している企業」は株価が上がりやすい傾向にあります。
経済産業省と東京証券取引所が選定する「SX銘柄(サステナビリティ・トランスフォーメーション銘柄)」というものがあります。 「サステナビリティ」と聞くと環境配慮をイメージしがちですが、岩本教授は「SX銘柄に選ばれている企業のリストを見ると、実は『人的資本経営の先進企業』がずらりと並んでいる」と指摘します。

「環境」への配慮は、企業にとって利益を生み出しにくい一方で、「企業の持続的な成長」を示すことができるのは「人的資本」だからです。

SDGsのように環境への配慮はもはや当たり前になりつつあるなか、企業が将来にわたって成長できるかを見極める材料として、投資家たちは「人的資本データ」を最重要視し始めています。

5. ISO 30201の動向

現在、ISO 30201は開発段階で、近い将来に正式発行される見込みですが、日本企業が導入する上で一つのハードルが存在します。それが「JIS化(日本産業規格化)」されるかどうかという問題です。

JIS化がされると、ISO規格を日本の産業技術や事情に合わせて翻訳・整理し、日本国内の規格として採用・定着が促進されます。しかし、JIS化が決まらなければ公式な日本語版の文書が発行されない可能性があるため、企業は英語版の原文を読み解くか、民間のコンサルティング会社等が独自に翻訳・解釈した情報に頼るしかなくなります。そういった場合、概念の混同も起きてしまいがちです。

そのため、岩本教授は、公式な翻訳を待つだけでなく、規格の本質(マネジメントシステムとしての要求事項である点や、用語の正しい定義)を正しく理解している専門家の知見を参照することの重要性を語っています。

企業としては、正式発行を待つ間、単なる翻訳情報に惑わされず、「自社にとっての重要課題は何か」という本質的な議論を進めておくことが重要と言えるでしょう。

6. 岩本教授に聞く「ナラティブ」の重要性

ISO 30201やISO 30414に対応するためには、人事データの整備が不可欠ですが、岩本教授は「データを持っているだけでは意味がない」と警鐘を鳴らします。

多くの日本企業が直面するのが、「データは保有しているが、経営に活用できていない」(※2)という課題です。岩本教授は、「まずは経営会議の中で『人材戦略』を議論すること」が第一歩だと語っています。

その際、重要になるのが「ナラティブ(= 相手が腹落ちする物語)」です。ナラティブとは、単なる説明ではなく、従業員や投資家が納得し、思わず行動したくなるような物語のことです。まず自社にとっての重要課題を定義し、最初は定性的で構わないので、課題解決するための戦略的なナラティブを構築することが重要です。

ナラティブがあることで、その進捗や裏付けをするための「正しい人事データ」が必要になります。逆に言えば、ナラティブがない状態でデータを集めても、単なる数字の羅列に過ぎず、なかなかデータ活用は進まないでしょう。

※2:人的資本経営取組の現状と質向上のカギ|MS&ADインターリスク総研株式会社
関連記事:PDP(People Data Platform)とは?人的資本経営に「人事データの統合」が必要な理由|jinjerBlog

6-1. 議論すべき人事課題の例

岩本教授が、特に経営層との議論で重要になると挙げた人事課題には以下のものがあります。
これらの課題に正面から向き合い、経営層と対等に議論するためには、裏付けとなる「人事データ」の特定、定期的な収集・分析が不可欠です。

後継者育成

次世代リーダーの選抜だけでなく、「誰が、いつ、どのような状態になればリーダーになれるか」というのを継続的に注視することが重要です。

従業員エンゲージメント

日本では「離職防止」よりも「組織の活性化」の文脈で見られることが多い指標です。特に管理職の人材マネジメント力不足が課題となるケースが多く、ここを改善するためのデータ分析が求められます。

企業文化

「イノベーションを生み出す組織文化」への変革を目指す企業が増えています。トップダウン型からボトムアップ型へ変われているか、などを指標化してモニタリングする動きがあります。

7.ISO 30201を理解することが、人的資本経営実現への第一歩となる

ISO 30201は、単なる「認証取得」のための規格ではなく、企業が持続的に成長するための「人を活かす仕組み」そのものです。
岩本教授が指摘するように、多くの日本企業は「データは保有しているが、経営に活用できていない」という課題を抱えています。その原因は、情報開示ばかりに目が向き、データを正しく収集・蓄積するための「土台(マネジメントシステム)」が未整備だからではないでしょうか。

経営を動かす「ナラティブ(= 相手が腹落ちする物語)」を描くには、その裏付けとなる「正しい人事データ」を常に保持できる環境が最終的には不可欠となります。
今後強まるサプライチェーンや金融市場からの要請に備えるためにも、まずはISO 30201を指針として自社のデータ基盤を見直し、経営に資するシステム構築への一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか。

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